「8組の生徒一同はほぼ落第点ですな」
「基礎情報を見る限り、他人任せの者が多く使いモノにはならなかったでしょうからね」
「逃げ惑ってばかりでは話になりません。しかもたった1人を相手に何も出来ない者ばかりでは、一般市民と大差ない」
VIP観客席。其処では多数の来賓達がこの状況における生徒達の行動を具に観察、評価していた。既に大凡、何が起こるのかはリーリスから通達されている為に、悠然と構えて非常事態における行動を視察している。
「1組はかのブリュンヒルデが担当するのだから、期待はしていたのですが……期待外れも良い所です」
「折角、ISの第一人者から直々に教鞭を受けられると言うのに全て不意にしている時点でマイナス点だ」
「剰え、自分達は部外者で何もしなくて良いと言う態度では、採用する側としてはとても困りますね」
「イングランドの代表候補生は何をしていたのだろうか?まさか自分の事だけ考えていたのであるまい」
他にも第一試合での結果に関しても考察が進められている。無論、今日に至るまでの各クラスの行動を鑑みての評価も含まれている。専用機持ちの存在にかまけて何もしていないクラスの生徒に関しては評価は散々だ。
「それに引き換え3組の生徒は有望そうな者達が多そうです」
「自ら相手の情報を集約し、対策を立てクラス代表に伝えて、準備を進める……。教師に言われるまでもなく生徒自身の自発的な行動力は評価出来ますね」
「例え有象無象の面々だとしてもクラスが纏まって問題に取り組める……。良い傾向です」
「是非ともこの状況をどう切り抜けるか、見せて貰いたいものです」
1学年の中で3組の評価は上々の様だ。専用機持ちの居るクラスを含め殆どのクラスの面々がクラス代表に任せ切りで他人事の様にこの日を迎えたのに対して3組は自分達なりに出来る限り準備を進めてこの日を迎えた事に評価されている様だ。
——茶番劇は順調、か。
来賓達が考察や評価付けに盛り上がっている一方で、仕掛けた側のリーリスは席の後ろの方で事の成り行きを見守っている。
——うに娘はアリーナで試合中だった者達を相手にしている。ルヴィアは観客席で生徒達を襲撃し、既に1つのクラスが壊滅……。蔡歌はインフラ破壊中、……でサリアは暇を持て余している、と。
襲撃者役の者達の動向を確認してリーリスは状況を纏める。正直な所、IS学園の生徒達がバーサーカー相手に勝てる見込みは薄いだろう。強いて言えば何処まで喰らい付けるかと言う状況である。
『和奏君、どうやら招かれざる客が来ちゃったみたい』
その時、秘匿通信を介してIS学園の某所に潜伏中のリデアから連絡が寄せられた。
『へぇ、如何やら第三勢力が茶番劇に飛び入り参加したい様だな』
イベント事に乗じて襲撃を掛ける勢力……。まぁ、大半がテロリストの類だ。イベントの状況になれば部外者が増える為に学園内警備に穴が出来やすくなる。
『如何する? 多分、IS学園の戦力はガタガタだと思うけど』
主にサリアが理由だ。今頃、サリアによって教員部隊は壊滅的な損害を被っている……他の戦力となりそうな者は専用機持ちとなる。使用すればコレはコレで、後の政治的な意味合いで問題がありそうなのが頭に痛い話と言えるが。
『何、アクシデントは世の常だ。何事も恙無く事が進む方が珍しいモノだ。乱入者共の規模は分からんが……取り敢えず暇になっているサリアを当たらせようか』
——第三勢力ならば、余計に遠慮する必要は無ぇだろ。
『ん、分かった。私から通達しておくね』
通信が切れたタイミングでアリーナの方で動きが発生した。今回の茶番劇の一応、申し訳なさ程度の考慮でアリーナのバリアシールドを維持させた状態で始めた(理由はVIP観客席に攻撃の余波が来る可能性を考慮した)が、そのバリアシールドが無効化されたのだ。
その直後、白い機体に搭乗した男性操縦者がアリーナへと飛び込んで行く姿が見えたのだ。
『ふーむ、如何やら此処も安全では無くなった様だな』
「その様ですね……。どうも、例の男性操縦者は問題を大きくするのがお好きな性格やも知れませんね」
行動は理解は出来るのだが、……返って状況を悪化させてしまった事も否めない。コレは想定されていない『アクシデント』の1つと言えるだろう。
「来賓の皆様方、此処は危険です。脱出経路は私達が確保しますので至急、避難して下さい」
「……私達がご、護衛しますので」
更に数秒遅れてVIP観客席の扉が外部からの衝撃で破壊された。亀裂の様な破壊音の後に、日本代表候補生である神楽と簪がVIP観客席へと現れた。この緊急事態における来賓達を避難させる為に代表候補生として行動を起こした様である。
『コレはありがたい。何分、扉が開かなくて我々も立ち往生していた所だ‼︎』
——うわぁ、白々しい。が、コレも評価の内に入るのだろうな。どうせ、観客席の様子は後で監視カメラの類を確認して評価するだろうから、この辺が潮時だろうよ。
「……お二人共、感謝するわね。さて、来賓の皆さん。代表候補生が学園外へ避難誘導してくれます。今直ぐに離脱しましょう」
リーリスがVIP観客席全体にそう告げるや否や、来賓達は席を立ち上がり避難するべく移動を開始した。内心では2人の代表候補生の行動を評価する方針に切り替えたであろう。
——さてと、如何転ぶのやら。
「音が大きくなってきている。もう直ぐ其処にまで来ているよ……‼︎」
「扉は開きそう?」
「IS学園の扉は全部、自動ドア……システムがダウンしている以上、復旧しない限りは開かないと思う。今、やってみている」
その頃、一般観客席。1年3組のクラスに割り当てられたこの場所では3組の生徒達が観客席の扉を開こうと行動を起こしていた。既に8組の観客席で殺戮染みた光景が起こっているのは遠目からでも見えた。
そして、その殺戮者が壁を破壊して他の観客席へ侵入して殺戮を繰り広げている様子も見えた。モタモタしているとこの場所に到達されてしまう、その前に観客席から脱出しなければならない。
「やっぱ、クラックで開けるのは無理っぽい。電力自体が途絶えているみたい……」
自動ドア近くにある制御システムに弄る生徒がそう言い諦める。システム自体が生きていてクラッキングを受けて制御を奪われていたのならば奪い返して開く事が出来たが、大元の電力が落ちている以上、意味が無い。
「なら、残るは……」
「物理的な破壊、だよね」
残された手段は扉なり壁なり、物理的な力で破壊するしかない。しかし、観客席にあるのは地面に連結されるタイプの椅子(生身の女子の力では取り外すのは無理)。他には観葉植物の植木鉢(コレで壁や扉を壊すのは無謀)と役に立ちそうなモノは無い。
「皆、アリーナのシールドバリアが……ッ‼︎」
そのタイミングでアリーナ全体を覆うバリアシールドが消え去ってしまった。今でこそはアリーナ内からの戦闘の余波は来なかったが、今からはそうでは無くなる。
「……最悪、って……あれは織斑 一夏⁉︎ と言う事は白式の零落白夜でアリーナのエネルギーのバリアを壊したって言うの⁉︎」
アリーナへ飛び込んで行く彼の姿を見た1人の生徒が悪態を吐くかの様に叫んだ。1組の代表の情報は調べている。だからこそ、この光景を理解出来た。
「彼って余計な真似をするタイプ⁉︎ 冗談じゃ済まないわよ、この状況……‼︎」
「……いや、賭けになるかも知れないけど、衣笠さんに連絡出来る⁉︎ あの人もギリギリかも知れないけど、或いは……‼︎」
その時、生徒の1人がある事を思い付く……しかし、当人は侵入者に加えて何故か共闘するべき筈の鈴音からも攻撃に晒される異常事態に陥っている。……自分でも無茶だと自覚はある。
「でも、その隙はあると思う?」
「空間投影ウィンドウで伝えるにしても、隙を作っちゃう……」
「あ、床に文字を書けば……‼︎」
「でも、如何やって気付いて貰う……?」
「危険じゃない⁉︎ もし、衣笠さん以外に気付かれたら……‼︎」
「やれるだけ、やってみましょう……。悔しいけど、私達だけじゃ手詰まりよ……‼︎」
ウィキ姫やらリデア達の話を書く時、YouTubeでクラッシュ・フィーバーのディザスター級ボスの『Astral Call』を聴きながら書いているけど、雰囲気が合い過ぎる……。