一夏がバリアシールドを破壊する数分前、観客席室では……。
「開けて‼︎ 如何して開かないのッ⁉︎」
此処は1年1組が使用している観客席室。千冬曰く『馬鹿共の巣窟』であり一夏がクラス代表を務めているクラス。……正直な所、楽観的かつ他人任せの者が多くスカウトマンから見ても目星い人材は居ないと纏めて低評価としね見られているクラスである。そのクラスでも観客席室の扉を開けようと何度も扉を叩いているのだが、女子1人の力ではどうしようもなく虚しい打撃音だけが返って来ていた。
——……コレは困りましたわね。幸いにも、一夏さんは1回戦の敗退を受けて何が行けなかったのか反省点を纏めるよう、織斑先生から通達されて此処に居ないのが救いですわね。
混乱の中で冷静に物事を見ていたのはイングランドの代表候補生であるセシリア・オルコットであった。クラス代表決定の為の模擬戦まではクラス間との間はギクシャクしていたが、模擬戦の後、一夏に絆されたのかその影響で態度は軟化し謝罪した為に取り敢えず受け入れられた。
「……システム自体がダウンしている以上、破壊するしか方法がありませんわね。皆さん、退いて下さいまし‼︎ 扉を破壊して、退路を作りますわ‼︎」
セシリアはそう言い自身の専用機である『ブルー・ティアーズ』を展開する。室内で大型のスナイパーライフルをぶっ放すのは些か、不釣り合いではあるが、武装構成の都合上仕方ない。
セシリアの言葉に従って混乱していた生徒達は開かない扉の前を開けて壁の端へと寄って行く。少しでも余波から逃れる為である。
「行きますわ……‼︎」
「あーそーぼーッ‼︎」
「「「きゃぁあぁぁぁぁぁぁ‼︎⁉︎」」」
——ッ⁉︎ 此処まで到達されましたのッ⁉︎
セシリアが引金に手を掛けたその直後、壁をぶち破ってこの場所に無差別で襲い掛かるルヴィアが現れたのだ。破壊された側の壁際にも生徒達が寄って居た為に倒壊に巻き込まれ衝撃で吹き飛ばされた者もいる。
この観客席室からでも、他の観客席室にいた別クラスの生徒達が彼女に襲われている様子が見えた。そう言う恐怖心も相俟って、殊更にパニックに陥っていたのだ。
「あ、あいえすですね⁉︎ じゃあ、ボクと遊んで下さいっ‼︎」
大量の返り血を浴びて得物である爪の様な腕部装甲にも大量の鮮血が付着し恐怖を遺憾無く煽るルヴィアの標的は現在、扉の破壊を試みようと専用機を展開していたセシリアに向けられた。
「くっ……此処で戦えば、いえ……皆さん‼︎ 此処は私が引きつけます‼︎ 破壊された壁から避難を‼︎」
こうなってしまっては仕方ない。丁度、ルヴィアが破壊し穴が開いた壁から脱出するしか他にない。広いとは言えどISを展開すればこの観客席室は狭く感じる。自分の戦闘スタイルに加えて室内戦で一般生徒達を守りながら戦うのは無理だと分かり切っている。
「遊んでくれるんですかッ⁉︎ じゃあ、ボクも……ちゃんと、てんかいしなきゃ楽しめませんね‼︎」
「ッ⁉︎」
「一緒に遊びましょう‼︎ 『エラキス』ッ‼︎」
その言葉の直後、落雷の様な轟音が鳴り響く。ルヴィアの両腕のガントレットから膨大な電力が放出され、彼女を中心に強烈な電場が発生している。その光景はもはや雷の嵐と化している。その暴力的な迄に膨大な電気は近付くだけで、焼け焦げて煤と化す。
当然、ルヴィアの周囲には転倒して逃げ遅れた生徒も居たのだが、ルヴィアがエラキスを展開した直後が強力なのか、その生徒は一瞬で黒焦げ原型を留めない程の焼死体と化した。
——ち、近付いただけで人間の肉体は耐えきれませんわ‼︎ 感電を通り越して焼け死ぬんですかッ‼︎
ISも機械、あれ程までの膨大な電磁パルスを浴びれば機能停止に追い込まれる‼︎ 対IS用ISだと言うのですの⁉︎ 接近を許せば、それだけで即
「ていやッ‼︎」
可愛らしい掛け声と共に迅雷とも呼べる速さでセシリアへ肉薄した。セシリアの戦闘スタイルは超遠距離が主体、一度接近を許せば切り返しが難しい。そして、接近を許す事は——。
「ガッ、あ、はッ⁉︎」
ルヴィアの膨大な電力を纏った爪型装甲がセシリアの胴体へと直撃し、物理的な衝撃と共に膨大な電力が直接、身体に流れて感電させられた。
巨大な電磁嵐と化しているルヴィアには接近すらも敵わない。それが向こうから突っ込んでくる。機械鎧であるISも機械、雷が連続で突っ込んで来られる様な環境はとても耐え切れない。
「あ、あがが……ッ⁉︎」
「あれ〜? もう終わりですかー? もっと遊び足りませんよ〜」
膨大な電力に当てられてISのシステムが誤作動を引き起こし絶対防御も不可解な形で発動。中途半端と言えども生命保護機能も機能した為、辛うじて即死は免れたが機体自体は暴力的な電力に当てられて内部機構はメチャクチャに熔解し掛けており、各種連結部に至っては熱でグチャグチャになってしまった。
とても戦える機体損傷レベルでは無かった。
「貴方はつまらないです。じゃあ……‼︎」
「ひっ……‼︎」
ルヴィアの興味はルヴィアがセシリアに襲い掛かっている間に逃げ遅れた生徒へと向けられた。血塗れに加えて生身ではとても近付けない程の膨大な雷を纏ったIS……。とても女尊男卑云々で敵う相手ではない。
「次は、貴方と遊びますッ‼︎ 他の皆さんよりは耐えて下さいねっ⁉︎」
「い、嫌ァァァァァァァァァァァァァァ‼︎」
その叫び声と一夏がアリーナのバリアシールドを壊してアリーナへ突入したのはほぼ同時のタイミングであった。