※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

61 / 196
現か幻か

「治療ナノマシンフル動員に加えての担当医師の診立てでは、ざっと全治1ヶ月との事です」

 

 同刻、IS学園の医務室。

 一般的な怪我等ならば保健室に通されるが予期せぬ戦闘行為等の負傷の場合はより総合的な診断が可能となり大学病院クラスの設備が備わっている医務室に通される。

 生徒会長である更織 楯無はクラス代表対抗トーナメント時にインフラ施設に侵入した囚人服か拘束衣と思う人物と交戦し無様な敗北をした。

 

「右大円筋、僧帽筋の裂傷。項靭帯の断裂。右腕の骨折、肋骨、鎖骨、肩甲骨の骨折……。ISの保護機能と絶対防御。それから瞬間冷凍されたかの様にコールドスリープ状態だった為にこの程度で済みましたね」

 

 楯無は騒動後にランドマークの根元で氷漬けに近い状態にされていた所を発見された。

 

「……生身の人間相手、しかも一撃でこのザマなんて学園最強とは名乗れないわね。私の専用機『霧纏の淑女』の損傷具合は?」

 

 楯無はベッドの隣に立ち容態を通達した自分の従者でもある布仏 虚にそう訊ねる。

 

「……大破レベル。集中的な修理が必要で輸送して本国で本格的なオーバーホールが必要との事です」

 

「はぁ……。あのレベルの侵入者が現れるなんて、世も末ね。私自身の身体もこのザマじゃ、暫くは動けそうに無いわね」

 

 楯無は憂いの目で天井を見上げる。シールドバリアを貫通する打撃、つまり余程の事が無い限り受け切れない(・・・・・・)。当時、他にも侵入者がおり、1人は舞台装置の様なISを纏い交戦相手を洗脳する能力を持っていた、他にも膨大な電気をその身に纏いとても近付けないIS。各国が第三世代機で躍起になっているのに、数世代すっ飛ばす上に明らかに軍用……いいや戦略級レベルの機体と思われる。

 

「その、お嬢様。その件に関してなのですが……不可解な点があります」

 

 虚の口調が強張っている。何か思うところがあるのだろう。その態度に楯無は病床の身であるがその目は暗部の者としての意思が宿った。

 

「……何かしら?」

 

「お嬢様と対峙した女性……。監視カメラや『霧纏の淑女』が記録した映像記録から、身体的特徴等で該当する人物が居ないか漁った所……」

 

「見つかったの?」

 

「はい。見つかりました、ですが……もうこの世にいません(・・・・・・・・)」

 

「え……?」

 

 虚のその言葉に楯無は思わず驚きの声音が漏れた。この世に居ない? それはつまり……。

 

「身体的特徴が該当した人物はオトゥール・エフェルリス。たった数ヶ月で248人を殺害した……。暴力的で素手で凄惨な死体ばかり作る残虐性の高さから世に情報が出回らなかった程です。そして、未成年でありながら死刑判決となりました」

 

「……脱獄囚、と言う訳?」

 

 拘束衣で囚人の様な服装……。だが、虚は楯無の言葉を否定するかの如く首を横に振った。

 

「いいえ、彼女は既に死刑が執行されました。10年前のイングランドで」

 

 虚が言うにはその死刑囚は10年前に死刑執行されこの世を去っているとの事。

 

「じゃあ、他人の空似?」

 

 見た目だけならば似ている人間が居ても不思議では無いだろう。黒髪長髪で巨乳……あり得なくは無い。

 

「それもあり得ないかと、その死刑囚は素手で信号機を圧し折る程の膂力を持つ異常体質だったそうです。早々に起こりうる体質では無いと思われます」

 

「…………」

 

「他にもIS保管庫前で虐殺行為を行った侵入者、観客席で死者を含む多数の重軽傷者を出した侵入者。…………調べた限りその2人も死刑囚で、既に死刑が執行された者と身体的特徴が酷似していました。しかも何方も未成年かつ10年前の年に死刑として処刑されていました。片方はドイツ、もう片方は日本で死刑執行されています」

 

 その言葉に此処まで偶然が重なるものなのかと楯無は手を頭に当てる。4人の侵入者の内、3人は死刑囚と酷似し尚且つその死刑囚は10年前に死刑執行されている。他人の空似が3人も同時に現れてIS学園に襲撃してきた。

 

「……虚ちゃんの意見としては?」

 

「……もし死刑がブラフだとしても10年の年月ならば既に成人……。監視カメラや映像記録からでは、生き写しの様でした」

 

「ならクローン人間、なのかしらね?」

 

 クローン人間と言う概念は論理的にどうかと思うが、場合によっては実行に移す組織はいなくは無いだろう。

 

「現段階では明確な答えは出ません。ただ、そうなると中国代表候補生と男性操縦者と3組のクラス代表と対峙した舞台装置型のISを纏った女児が不可解となります。彼女だけ死刑囚だった事実がありませんでした」

 

「そんな幼い子供を死刑にする方がどうかしているわ」

 

 女尊男卑云々の前に論理的に間違っていると言いたい。そんな短絡的な判決はあってはならないと楯無は思う。報告を聞く限り、その幼女操縦者自身は観客席には攻撃は一切しなかったと言う。

 

「インフラ攻撃は兎も角、生徒や教員に攻撃しましたが、1番狙われる男性操縦者には身体的な攻撃は行わず、第2にISコアに対して一切手付かず……。侵入者達の狙いが全く分からないのが1番の懸念事項と言えます。単純に集団殺戮(ジェノサイド)だとしても……中途半端な気がします」

 

 明確な狙いが不明瞭……。

 

「……虚ちゃん。その10年前に死刑執行された者の中で未成年だった者達をリストアップしてくれないかしら?」

 

「暗部の長としての勘、ですか?」

 

「ええ、そんな所よ」

 

「分かりました。私としても腑に落ちませんし、何より……これ一回だけとは限りませんから」

 

「……IS学園は敵が多い。テロリスト、第三勢力……。今年は男性操縦者が居るから狙われ率は倍増だわ。……情報は集める事に越した事は無い。今年は大変な年になる、そんな予感がする」

 

 楯無の眸には、今回の件に関して背後に潜むモノを窺う意思が宿っていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。