教室に入れば露骨なまでに分かりやすい空気が漂っていた。教室に集う生徒達、その表情は決して明るいモノでは無い。
理由は1つに集約される此の儘、IS学園に通い続けて良いのか?と言う悩みだった。
それはクラス対抗トーナメントに起こった複数の侵入者による襲撃事件に起因している。
学園側は『各々の生徒の判断に委ねる』との事だった。結果、多数の生徒は己の将来の選択に大いに悩まされる事となる。
何しろ今回の襲撃における被害は器物破損、重軽傷者多数、そして死者。生徒の死者は少なかったが教師の死者の方が多かった。しかも凄惨な殺され方をしたのだから尚更だ。
『死亡』。その事実が多くの生徒を悩ませる大きな要因となっている。
当然の話だ。
彼女らは去年まで、IS学園に入学するまでは普遍的で普通の中学生だった。そりゃIS学園に入学する為に予備知識としてISに関連する内容を学習してきた。ISにはシールドバリアがあり絶対防御があり、搭乗している限りは安全。
そして、ISを手にする事は女性として栄光を掴むと同義——。
だが、いざ人の生き死にを見せつけられ、気付かされた。女尊男卑の世の中で女性が強く尊いと言う思想が蔓延する中で、自分達がこうもアッサリと死に至る概念はずっと昔から存在していた事に。
ISは競技用でファッションだと考える者達が今年の1年生は特に多かった。だが、兵器と言う側面がある事を忘れてはならない。兵器である以上、自分達が何処へ進むのか分からない程、無知では無い筈だから。
——……多分、何人も悩んでいるんだろう。
そんな同級生を他所に簪は自分の席に座り、空間投影ウィンドウを開く。完成しているとはいえ、まだまだ自身の専用機の微調整は日々行わなければならない。他人の進退に構っていられる程、簪はお人好しでは無い。
——中にはもう
誰でも自分の命は惜しい。生身の人間がISに襲われては一溜りもない、かと言ってISには数に限りがあり、生徒全員にISを貸与する事は物理的に不可能だ。そして、ISを与えられるのは極少数のエリートのみ……。
——私は代表候補生だから、その辺りはもう承知している。彼女達が不安するのは勝手だし、今は……自分の事を優先。
優先と言えば、今日の夜に実行を移すと言う神楽が提案したIS学園で出来るシチュエーション。そちらの方が優先事項と言えたのだ。
——4組は奇跡的に死者は出なかったけど、1組とか8組は死者が出たみたいだし、彼方の方が荒れてそうだなぁ。
今日も今日とて連絡事項等は全て聞き流す事になりそうだ……。
——……ただ。
簪は当時、リーリスの様子を注視していた。素手で銃弾を打ち払い、指を鳴らしただけで武装を破壊、さらに吹き飛ばす。『ストラトス・デザイア』の者達は皆、ISを有しているのは明白……。
その代表も持っていても不思議では無いだろう。まだ、自分はレーキュのISを見た事が無い……彼方も彼方で可笑しいが、リーリスも可笑しい。
——……既存の考え方と全く違う。アレは……まるで……。
「「「衣笠代表、退院おめでとう‼︎」」」
所変わって3組。
3組はIS学園のクラスの中で一際、各生徒が協力、同調する姿勢が強い。それがクラス代表対抗トーナメントにて顕著に現れ、危機的状況にも関わらず死者が出なかった。のみならず、交戦していた名刀以外、重傷者は居なかった。
陽動部隊として放送室に向かった生徒は、挑発を受けた鈴音の衝撃砲の破砕余波に当てられて軽傷を負った程度に留まった。
そして、舞台装置のISを纏った少女と対峙した名刀は交戦中及び撃墜された際に負った負傷が理由で医務室に入院していたが、昨日無事に退院したのである(入院中に報告書の作成の為、事情聴取を受けた)。
「う、うん。ありがと……」
名刀はまさか退院で此処まで祝われるとは思っていなかったので、若干唖然としていた。
「しっかし、一時はどうなるかと思ったわな。煽ったと思ったらホンマに砲撃ブチ込むとか、正気の沙汰やなかったわ……」
「一歩遅れてたら私達、天に召されてたわ……。確かに危険だって承知の上だったけど、アレは無いわー……」
陽動役を買って出た生徒達の内の2人。桃色の長髪にIS学園の制服を腰結びにしている七五三 泳と長い茶髪に制服を肩掛けで羽織っている雅楽代 沙莉の2人は当時の状況を思い返して笑い飛ばしていた。2人揃って座学は悲しいレベルだが、クラスの中では運動が出来る。言わば脳筋みたいな女子であった。
「2人とも……。正直に言うとあの一撃で2人とも死んだッ⁉︎ って本気で思った所なのよ……」
「……はい。2人ともあの一撃でお墓になったモノかと」
その様子を見て呆れているのは紫色の髪を靡かせ中抜きを多用して通気性が高く改造された制服を纏う靏蝮 芹那とクラスの中で一際小柄で肌が白く水色の髪の水流 槐の2人。この2人は名刀の救助部隊に参加していた為、放送室が破壊される光景をダイレクトに見ていたのだ。
「勝手に殺すなやッ⁉︎」
「はいはーい。朝のホームルームを始めるから、ちゃっちゃと席に着きなさい」
と、そのタイミングで朝の予鈴が鳴り響き3組の担任である岸川 百合香が手を叩きながら教室に入って来た。その声に従い、生徒達は次々と自分の席に座っていく。そして、教室全体を見渡すように首を動かす。欠席者は0。
「…………先ずは皆、無事で本当に良かったわ……‼︎」
百合香は心底安堵したかの様な声音でそう告げた。襲撃事件から数日、土日を挟んでの翌週の月曜日。その間は、メンタルケアも兼ねて授業は休止されていた。
「……私はIS関連にはノータッチな一般教師で本当に何も出来なかった。……貴方達は自分達の判断で匙を投げてもおかしくない状況を誰1人欠ける事なく切り抜けた。もう、何を言ったら良いか分からないわ……」
一般的な教師の身として、あんな戦場の光景に介入出来る訳では無かった。生徒達は観客席室、教師は別の場所にいた……どうする事もできなかった中、彼女達は自分達で考え行動に起こした。
「ただ……生身でアリーナへ飛び込む行為や、放送室に乗り込んで砲撃を受けた光景を見た時は心臓が止まる思いだったわ……」
そう言われて該当する生徒達は揃って目を逸らした。確かにかなり危ない真似だろう。最も1番、危険な状況だったのは名刀である事は言うまでも無いが。
「それに……あんな事件が起きた。学園側としては残留するか自主退学するかは生徒達に委ねる方針を出した」
もう一度見渡す限り、欠席者は居ない。3組は全員、出席している。
「……敢えて聞くわ。正直に答えてちょうだい……今此処に、IS学園を辞めると言う人は居るかしら? 私は責めはしないわ……」
その言葉に答える者は現れなかった。
「……当事者では無い私がアレコレ言っても仕方ないわね。貴方達自身が1番分かっている……。じゃあ、私が言う事は何も無いわ、それじゃあ、授業を始めましょう」
3組のネームドキャラ、他の作品で登場させる予定だった。そして難読苗字ばかりと言うオチ。因みに担任のキャラ設定はまさかの再登板。
次回のイベントは?(タッグマッチの代わりに)
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1学年合同紅白戦
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臨島学校