お昼休みの時間帯。
その時間帯では各々が自由に過ごしている。大食堂で食事を摂る者も居れば、自炊して教室や中庭等で摂る者も居る。
こと、3組に至っては。
「代表代表、1組に国家代表候補生が転入して来たんだってしかも2人‼︎ その上に片方は男子だって‼︎」
「フランスとドイツ……。イングランドも中国もアレだったけど、一癖ありそうね。特にドイツの代表候補生って……軍人みたいで隙が無さそう、要警戒ね」
「フランスの子は2人目の男性操縦者……って触れ込みやけどなぁ、あんな女みたいな男子は早々居らんと思うで‼︎ ほっそ過ぎやろ、アレ‼︎」
「このしおり読むだけでウンザリしそう……うわ、中身も凄く細かい……‼︎」
「サバイバル関連の内容も記載されています。コレってもしかして、臨島学校ってフィールドワーク関連?」
教室内で弁当を持ち寄って食べる傍らで今後の作戦会議みたいな構図と化していた。弁当を食べながら今日集めた他クラスの情報の擦り合わせや、急遽決まったと言う『臨島学校』のしおりを読み込んで理解に努めている。
「一先ず、情報がゴチャゴチャし過ぎ‼︎ 1つずつ纏めていこう」
自前の弁当を食べている名刀がそう言い、一先ずは今日、唐突に転校してきた2人の代表候補生のお昼休憩までに集めた情報を纏める事にした。
「まずドイツからね。えーと、名前はラウラ・ボーデヴィッヒ。銀髪に眼帯を着けていて男装の服装。それで織斑先生を『教官』って呼んでいたみたい」
「軍人みたいな固い奴やな。で、1組の生徒との人間関係は最悪やな。遠目から見とったけど、高圧的で他人を寄せ付けん鋭いナイフみたい奴……ありゃ連携取ると言うよりも単独行動するタイプや。組織だった行動やと問題児かも知れへんな」
「後、男性操縦者の織斑君を敵視しているみたい。織斑君自体には心当たりは無いから、何かしらの確執があるのかな」
ドイツの代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒで現状判明しているのはこのくらいと言える。代表候補生でこんな時期に転入が認められているのだから専用機を持っているのはほぼ確実視されているが、詳細はまだ掴めていない。
「じゃあ、次はフランスの子かな。こっちもこっちで怪しさが大きいよね」
「確か、シャルル・デュノア。だったね、デュノアと言えば……」
——名前だけは知っている、確か……。
「IS関連シュア3位。フランスのデュノア社……IS学園に配備されている量産型ISのラファール・リヴァイヴの製造元だ」
「あ、二さん‼︎」
教室の扉を開けて教室に入って来たのは二 黎芽と言う少女?眼鏡を掛けた普通とは少し変わった生徒。このクラスでは主に技術関連に視野を向けている裏方の役割に担っていた。
「お、何や何や? このタイミングで割り込んで来るったぁ、何か掴んだんか?」
「掴んだと言うよりも、以前から言われていたって所だな。まぁ、それは海外のニュースだ。日本ではニュースでは流れなかったな。
話を戻す、デュノア社は確かにIS関連企業では最大手に位置する大企業だ。其処は揺るがん」
ISに関連する事ではデュノア社は有名だ。ISの道に行くならば必ず耳にすると言っても過言では無いだろう。
「だが、デュノア社は今、業績不振が囁かれている。元々第二世代機のラファール・リヴァイヴは最後発に完成した機種だった。
其処に欧州では第三世代機の基準選考品評会があるそうだ。イングランド、ドイツ、フランス……他にもギリシャとか参加する欧州の国際プロジェクト。その中でフランスだけ大きく出遅れている」
「へぇー……で、その続きは?」
「先の情報は私が知っていた情報だ。該当国家出身の生徒ならば知って当然の内容だ。で、件のフランスの代表候補生で」
「2人目の男性操縦者……ですか。しかもデュノア性」
「……本音を言わせて貰えばそんな都合よくデュノア一族で男子かつIS適性を持つ者を用意出来るとは思えん。それに私も奴を見たがアレで男性と信じられるか?」
黎芽の言葉に同意する者は居ない。3組の誰もがシャルル・デュノアを男性と信じる事が出来ない。
「現状、状況証拠のみだが……私が考えられる事は2つ。デュノア社は新機体開発に難航しており、データが不足している。其処で男装させて男性操縦者に仕立て上げてIS学園から他の機体の情報を盗む。専用機に使われる程だから参考になるだろうからな。
男性操縦者ならば他の専用機持ちが自分から寄って来る。現に、1人目の織斑の周りには専用機持ちの代表候補生が2人寄って来ている。可能性は無くは無い」
「そんなアホな作戦、成功するんか?」
「其処は知らん。上層にも背に変えられん状況は来ると言うモノだ」
「で、もう1つは?」
「過程は違うが、概ね似た内容だ。外部から一族の外見に近い者を調達してデュノア姓を名乗らせてデータ採取。一族かどうかの違いだな。……正直、これくらいしか思いつかん。無論、私の推測が的外れの可能性があるから頭の片隅程度に留めておく方が良いだろう」
「少なくとも男性……とは思えませんね」
槐はシャルルが女性にしか見えないようだ。あの容姿で男性は流石に無理があるだろう。
「うん、アレで男性と信じている人って……本当に男性を見た事無い人なんじゃないかな?」
「……チョロ過ぎにも程ってもんがあるじゃん」
——首都圏だと男性は政治家以外、他の県に行っちゃったって言われているくらいだし……。
「ほな、着替えタイミングで更衣室に乗り込んで脱がしにかかって見るか? アレが付いてるか付いてないか確認してみるのもアリやろ」
其処で泳が爆弾発言をぶち込んだ。つまり、服を脱がしてバラして見ようかと言う中々、ダイナミック脱衣であった。
「……七五三さん、中々エゲツナイ真似しますね。軽蔑します」
「何でやッ⁉︎ 分からんかったら、調べるのが定石やろ⁉︎ ウチとしては奴が女やと思うがな」
「だが、そのデュノアに織斑が接近しており距離が近い。それに他クラスだ。かなり難しいぞ。確かめるのならば他の手を考案する事を勧めるが?脳筋」
呆れた様子で黎芽が諌める。口調は厳しいが本心で言っているんだろう。
「ガリ勉に言われたくないわ。が、アンタの言葉にも一理はあるわな……。ほな、今は様子見と行こうか……1組がポカってくれたら万々歳やしな。で、次は例の臨島学校やったな」
話題は次の『臨島学校』だった。
「うん、しおりをパッと見たけど、用意すると良い物やサバイバル関連の知識が書かれていた。ただ」
名刀が弁当の近くにしおりを置いて口を開く、そして最大の疑問を口にした。
「臨島学校で
「何だって……? そう言うのは1日の大まかな流れとか記載されているもんじゃ……あ、本当に無い。目次にも無いじゃん」
「当日になるまで分からない、ね。……IS学園だから、野外訓練だと思うけど」
「……それだけじゃない。岸川教師も言っていただろう? 急遽変更、と。が、それでも日程の書き忘れは考えられんな」
「……それにサバイバル関連の記載内容も気になる。ただの臨島学校じゃなさそう」
「キャンプ関連なら分かるけどね」
名刀や芹那、沙莉、黎芽も疑問符を浮かべている。
「それに前回みたいな事も忘れてはならんわな。また、あんな突拍子も無い襲撃も起こるやも知れへんし」
「……1回ある事は2回目もある、か」
「そんなん何度もされては身が持たんっつーけど、気には留めておいた方がええかもな。……てか、サバイバル関連の記載があるって事は、まさかと思うけど…………食糧とか、現地調達とか言わへんでな?」
泳は引き攣った顔でそうぼやいた。
臨海では無く島だ。何処の島に行くかは分からないがサバイバル知識も記載されている以上、あり得ないとは言い切れない。
「「「……………」」」
「……ジビエに詳しい方、このクラスに居るでしょうか?」
「調理班、編成した方が良いかも知れないっ⁉︎」
当然、自炊出来ない生徒も居る。流石に目の前で餓死者が出られるのは困る。
「記載されている内容以外の物も調達した方が良いよね、コレ……」
「考え過ぎかも知れないが……準備は怠らぬ方が良いだろうな……‼︎」
深読みかも知れないが、用意しないよりはマシと言えるだろう。3組は情報を共有、発展させて来たる臨島学校へ向けて準備を進めるのだった。