一方、その頃。
「なぁ、黎華。こっちでホンマに合ってんのか?」
「どんどん秘境っぽくなっています……」
「黙れ、脳筋。方角自体はこっちで合っている筈だ。……地形以外、問題は無い」
「問題と言えば足元が不安定で泥濘になっている事かな……」
「何と言うか探検隊って気分だね」
西側から島の中央部にある『遊獄館』を目指す事にした3組一行。しかし、踏み込んだ先は湿地地帯が広がっていた。キャリーケースを引っ張ってはとてもじゃないが通れない地帯。幸い、3組はキャリーケースでは無くリュックサックで完結させていた為にその心配は無い、無いが……それでも辛い場所と言える。
「……沼には踏み込むな。嵌れば、抜け出すのも一苦労だからな。最悪、底無し沼ってオチもあり得るな」
「ゆーても、其処彼処に沼地があるやんけ‼︎ どないせいちゅうねん‼︎」
「比較的、硬い土壌を伝って沼地地帯を避ける形で少し外れて進もう、流石に此処を突っ切るのは無謀だ……」
3組代表の名刀がその判断を下す。多少、遠回りになっても沼地地帯を突っ切るよりは遥かにマシである。
——リュックサックを背負っている以上、沼に落ちたら這い上がれないかも知れない……底無し沼だったら最悪だと思うし。
「賛成。歩き難いのに変わりは無いし……2時間も歩きっぱなしだから、流石に休憩を取りたい」
芹那も名刀の意見に同意。他の面々も重量物を持っての歩き通しだ。歩き難さに疲労も溜まる上に湿気により疲労は倍増となる。
沼地地帯から逸れて森林が広がる地域へと移動する。方角的に少し遠ざかる形になるかも知れないが、此の儘沼地を横断するよりは精神的に余裕が出来るだろう。
「長ズボンで助かったかな、ドロドロになっちゃったけど」
「せやけど、足元気持ち悪いで……‼︎ 足がふやけて靴の中に砂利が入ったら痛ーて、敵わんな」
沼地地帯は抜けたは良いが、靴とかは泥塗れでズボンもドロドロに汚れてしまっている。
「……沼地特有の悪臭も気になります。川と言った水源があれば洗い落として少しはマシになるのですが」
——気持ちは分かるけど……。
「無いモノ強請りしても仕方ないよ。今は取り敢えず、進もう」
視界が悪い森林地帯を進む。雑草の高さも高く、腰くらいの茂みを掻き分けながら奥へ奥へと進む。
「黎華、方角は?」
「現在、北東に進んでいる形だな……。ただ、こうも深い森だと、目標を見逃しかねん事が懸念材料だ」
南東の方角に進んでいない様だ。ただ、進み過ぎると方角が反転してしまう。到着した時、この島の全容は把握し切れなていない。どんな構造の島かは分からないのだ。
「……方角だけ分かっても距離が懸念、かぁ」
突き進む事、30分程が経過。歩き通しであった為に各々の体力的にもそろそろ限界が訪れようとしている。
「……? 皆、何かある……‼︎」
「マジか? まさか、『遊獄館』が見えて来たって言うんか⁉︎」
森林を抜けた先は開けた広場が広がっていた。森林地帯の中にぽっかり開けた場所。其処にはレジャー施設のキャンプ地を思わせる吹き曝しで簡素な造りの建造物が幾つか立っていた。
「陽炎、陽炎。この薬はこうしてこうすれば……良い感じにならない? なるよね⁉︎ 天にも昇るって感じに‼︎」
「……姉様、それは強い毒になるから、こうした方が、良い。眠たくなる程に」
そのキャンプ地、木造の机の上に様々な実験道具等を広げて、2人の女性があーだこーだ言いながら何かしている様子が見えた。
闊達でテンションが高そうな紅髪の女性とエグめの目の隈がある蒼髪の女性と言う言動も外見も対照的な2人。年齢は自分達と大差ないようにも見える。
ただ……その服装はこの場所には似つかわしくないだろう。
お互いお揃いの灰色のローブを羽織り、下の服の上には胸を上下で挟むように黒い革ベルトが胸元と胸下を走っている。手首には黒革のベルトが巻かれており、黒いフィンガーレスタイプのロンググローブを片方だけ着けていた。
スカートはサスペンダー固定されており胸の下の黒革のベルトと連結されている。
そして、首には重厚な首輪が嵌められており、その首輪は胸下の黒革のベルトと鎖で連結されていると言う服装。
それはまるで囚人服か拘束衣を彷彿させそれらを制服に魔改造した様な装いだった。
「「「…………」」」
日常的な生活ではまず見ない服装の2人。
しかもチョーカーでは無く本物の首輪、そして鎖で繋げられており、囚人服の意匠や拘束衣を彷彿させる多数の黒革のベルト。ファッションと言うには、流石に抵抗のある様な服装だ。
「ん〜、おやおや〜? 陽炎、陽炎。来たみたいだよ〜?」
「うん、姉様。来訪者が来たみたい」
その時、その2人が名刀達の姿を認めて作業を止めてその方角へ視線を向けた。
太陽な笑みの紅髪の女性、月を思わせる静かに無表情の蒼髪の女性。
「おぉーい、其処に立って無いでこっちに来たらどう? IS学園の人達ぃ〜」
紅髪の女性はテンション高く手を振っている。完全に此方を認知している様だ。
「私達の事を知っている……?」
「いや、IS学園以上に特徴的な制服は他に無かろう? 仮にも国際的な学園で尚且つ高倍率の学校だ。……知らぬ者はそういまい」
「せやな。……服装は気になるっちゃ気になるけど、取り敢えずこの島の住人やったら『遊獄館』の事、知っとるんちゃう?」
あの2人から敵意は感じない。キャンプ地らしく、テーブルやベンチも置かれている。此処で一旦、休憩するのもアリかも知れない。
3組一行は、手招きしている紅髪の女性の誘いに乗り、キャンプ地へと足を踏み入れた。
「そう、警戒しないでよ? 別にとって喰おうって訳じゃないからさ‼︎ あ、貴方達って臨島学校でこの島に来たんでしょ?」
——あ、此方の事情を知っているっぽい。
「あ、はい。それで『遊獄館』へ自力で向かうようにとの事でして……」
「私達は此処で『遊獄館』へ向かうIS学園の生徒達が来るまで暇を潰しながら待っていたんだよ〜」
ロンググローブと革ベルトが付けられた方の手をブラブラと揺らしながら紅髪の女性はケラケラと笑う。
「私達を待っていた? どう言う意味だ?」
「あっはは〜。警戒心を持つのは良い事だよ。でも、今は必要ないかな。だって、この島は私達の
「……『遊獄館』は私達にとって別宿舎」
「そして『遊獄館』は私達
「それってつまり……貴方達の案内が無ければ、見つけられないって意味?」
——自力で辿り着こうとしても、無理って意味なのかな?
「当ったり〜。関係ない部外者にはそう簡単には辿り着けないようにってね‼︎」
「つまり、アンタらは遊獄館への水先案内人っちゅーワケかいな」
「そう言う事〜。私達以外にもこの島の各地に臨島学校に参加したIS学園生徒を待っている人が居るよ。あ、自己紹介はまだだったね」
「私は病 灯火だよ‼︎ で、こっちが」
「妹の病 陽炎……。私達、双子……」
人呼んで『病姉妹』の2人だった。