リィエルと言う女性の案内で『遊獄館』に到達した一夏一行(しかも一番乗り)。
一夏は夕食を食べた後、泊まる部屋に荷物を置いた後に大浴場へ向かう事にした。男子2人と言う事で一夏はシャルルと相部屋となった。
IS学園は女子ばかりで男子1人と言うのは肩身が狭かったのだ。そんな折に現れたフランス代表候補で2人目の男性操縦者であるシャルル・デュノア。こう言う機会に仲良くなりたいと考えた一夏は『裸の付き合い』と言う事で一緒に大浴場に行こうと誘ったのだ。
「ええっ⁉︎ い、一緒にお風呂⁉︎」
「ああ、折角だから一緒に行こうぜ‼︎ 男湯と女湯に分かれているから時間とか気にしなくて大丈夫だしさ」
「ぼ、僕は後で行くから織斑君は先に行っててよ⁉︎」
挙動不審な様子のシャルル。
「いや、別に分かれて行く必要はないだろ? それに汗だくな上に制服も結構、汚れたしさ。やっぱ早めにスッキリしようぜ‼︎」
何かと妙な態度のシャルルの反抗はなんのその、あれよあれよと言う間に大浴場の脱衣所に連れ込んだ。
「あ、あわわ……来てしまった……‼︎」
「おー、脱衣所も広いな。マジで銭湯って感じだな」
「そ、そうだね。こ、コレがジャパニーズ・セントウって感じなんだねっ⁉︎」
「シャルル、何でそんな緊張しているんだ?」
「な、何でも無いよ⁉︎」
——変な奴だなぁ、男同士なんだからそんなに恥ずかしがる事は無いのになー。
如何にも様子が変なシャルルを尻目に一夏は脱衣所で服を脱いで行く。もしかしたらフランスでは銭湯の類が無いから困惑しているのかも知れない。
「じゃあ、俺は先に行っているからな。あ、先に掛け湯してから風呂に入るのがマナーだからさ」
「う、うん‼︎ わ、分かった‼︎」
服を脱いで裸になった一夏はバスタオルを下半身に巻いて脱衣所から浴室へと一足先に向かった。
「おおー、大浴場の窓ガラスから地下洞窟の風景が見えるのか……こりゃ凄ぇな」
湯気が立ち込める浴槽は相応に大きく、その奥の壁は巨大な窓ガラスで仕切られていた。その向こう側には鍾乳洞が広がっており下の方では段々畑の様な水源が広がっており、光の反射で幻想的な風景が望めた。オーシャンビューならぬケイヴビューと言った所だろう。
壁際には鏡とシャワー、そして洗剤が置かれているのが見えた。
一夏は入り口近くの掛け湯で身体を温めてから浴槽へと足を付けた。温度が高い、正に銭湯と言うべき温度と言える。
「おっと、時間がダブったか?」
——え?先客か?
その時、湯気の向こう側から声が聞こえた。男性の声……しかし、この島で自分達以外の男性と言えば1人しか思い浮かばない。
「よう、噂は彼方此方に轟いているぞ? 世界初の男性操縦者」
大浴場の奥、窓際近くに凭れて浸かっているのはバーベキューの時、豪快に肉を焼いていたあの男性だった。近くに『天狗舞』と明記された酒瓶を置き、お猪口で酒を飲みながら風呂に浸かっていた。両手首に枷を付けたまま、風呂に浸かっている。
「あ、ど、どうも……。てか、お酒を飲みながら風呂に入ってんのか⁉︎」
——と言うか、この人俺達と年齢大差ない様に見えるけど⁉︎
「そんな細かい事、気にすんな気にすんな‼︎ この島は公海にあるからな」
「だからと言って俺と年齢然程変わらないだろ⁉︎」
「年齢だとかどーたらこーたら、俺は気にしねぇ。と言うかこう言う時くらいしか酒飲めねぇんだよ」
彼はそう言いながら酒をお猪口に注いで口を付けて飲む。どうやらこの人には常識が通じそうに無さそうな気がする。
「……風呂に来たんだからボサっとせずに浸かれよ。目の前で野郎が突っ立ってたら、酒が不味くなるだろうが」
「あ、ああ……」
——……この人、囚人服見たいな服装で手枷付けてたよな……。あ、そう言えば……あのリィエルって人も囚人服みたいな服着ていたし、一緒のグループだよな。
「ん? お前さんも酒を飲みたいのか?」
「……アンタもISに乗れるのか?」
ふと、一夏は疑問に思った事を口にした。自分達を『遊獄館』へ案内したリィエルと言う女性はまず間違いなくISの機能を使った。拡張領域にパラミツを格納する光景を見たからだ。コレはセシリアもシャルルも同意している。
となれば、目の前の男性を始めとした囚人服を着た女性達のグループはISに関係している。それに、IS学園の学園長が『この島を貸して欲しい』と依頼した程だ。
「何故、そう考えた?」
酒を飲みつつ彼はそう返す。
「……この島にはIS学園関係者の教師と生徒。そしてアンタら囚人服の者達しか居ない、そうだろ? で、リィエルって人がISの機能の1つである拡張領域にパラミツを格納しているのを見たんだ」
「だから、それ以外の面々もISを持っていると、考えたのか?」
「ああ、そうだ」
「残念ながら、それはハズレだ。世界には世界初の男性操縦者であるお前さんと、2人目の……ああ、デュノアの倅しかいねぇよ。
それに、技術は今も進歩しているからな。ISコア無しでも簡易版拡張領域なんてモノも発明されつつある。既に幾つか試作品なんかも出来ているしな」
一夏の質問に彼は返答を返す。だが、それは一夏の求める答えはでは無かった。
「そ、そうか……」
——もし、3人目ならばIS学園に来る事になるから、かなり気が楽になる。同級生に同性が居るってだけで、気が休まるのに……。
「……おっと、遅れて来た奴がいる様だな」
其処で話が完結され、意識は別の方に向けられた。視線を向けた先には遅れて大浴場に入って来たシャルルの姿が見えた。バスタオルを胸元にまで巻いており、まるで女性の様な巻き方だった。
「よう、シャルル‼︎ こっちだこっち‼︎」
「あ……う、うん」
ぎこちない動きで浴槽に足先を付けたその時、彼……和奏は呆れ気味にお猪口に注いだ酒を飲み終えて一言。
「……いい加減、見るに堪えん猿芝居もその辺にしておけ。此処は男湯だ。……女湯は向かい側にある」
——え……?
その言葉に一夏は一瞬、思考が停止して、和奏へ視線を向ける。当の本人は、酒瓶からお猪口に酒を注いでいる。
「え?お、女……?」
——え? 男子じゃなくて、……オンナノコ?
一夏、困惑中。その様子を和奏は呆れ気味な半目になる。
「お前、マジで気付いていなかったのかよ……。俺は合同夕食の時、肉焼いている時点で気付いたぞ」
尚、コレは身内に逆に女みたいな容姿の野郎が居るのが理由の内に含まれているし、尚且つ自分も諸事情で女装しなければならないからと言うのもある。
「最初の時点で気付かれていたんだ……」
「逆に騙し通せると考えたのならば、道化がお似合いだな。……今すぐにサーカス団に入団する事をお勧めするが? 本来ならば、とっとと出てけと言いたいが、女に風邪をひかせる趣味は無ぇからな。距離を置くかどうかは任せるが、まぁ、浸かっとけ。俺は向こう向いててやるから」
事実上、混浴状態と化した。何故、直ぐに追い出さなかったのは男装していたのならば、女である事がバレる訳にはいかない事情があると察したからだ。此処でノコノコ女湯に行けば女である事がバレる。男性操縦者と言う肩書が崩れるとある意味、大問題に発展するし発覚するならIS学園内でやって欲しいから此処では見逃す事にした。
そして、和奏は2人を視界に収めぬよう、そっぽを向きながら酒を飲む事を再開する。一夏とシャルルの話題には興味が無いと言わんばかりに。
「え、あ、おい⁉︎」
「……お前さんらが如何言う人間関係かは興味が無いし、俺がその『情報』を知ったとしても利用する事も活用する事も出来やしない。どんな情報が彼女の口から出たとしても、如何でも良いからな。
俺はまだ酒が飲み足りねぇから退く気は無い。俺に話を聞かれたく無いのならば、此処じゃなくても部屋でも出来るだろうよ、其処でしろ」
IS学園の内訳事情に関わるつもりは無い。ましてや男性操縦者絡みなど以ての外だ。