時間が無いので短めです。
「……ん」
微睡む意識の中、金属が軋む様な音が耳の中に入ってくる。
——えーと、確か……?
身体の自由が効かない。その事実に気付いた時、意識は一気に覚醒した。
「んん……ッ‼︎」
——……拘束されている……‼︎ ちゃんとやってくれたんだ。
目覚めた時、黒と赤で彩られた部屋の中に簪はいた。黒いベッドの上で寝かせられていた。身動ぎしつつ起き上がる。
「……んー」
周囲を見渡すと狭い部屋であった。四畳程度の部屋であるのは自分が寝ていたベッドの他には壁に掛けられた鏡と、正面の鉄格子の扉しか無い。つまる所、独房以外に形容する言葉は見当たらない部屋と言えた。
——取り敢えず、自分の姿を確認しよう。
ベッドから立ち上がる。脚も拘束されている為、歩き難いが鏡の前に立つ。
——うわぁ……。これは、恥ずかしい……。
自分の拘束された姿を見た簪は思わず顔が赤くなった。羞恥と言うよりも興奮の意味で。
顔はハーネス付きのマスクギャグで言葉を封じられている。マスクは開口型で蓋を付け外しが可能なタイプで、首には黒光りする首輪が嵌められている。
身体はボディハーネスで縛りブラジャーとパンツしか服と呼べる状態では無い。
脇の下に黒革ベルトが巻かれ、胸元のハーネスと連結されて開けないようにされている。両腕には黒いロンググローブが付けられて手首には黒革ベルトと鎖で両手が繋がれている。更にダメ押しと言わんばかりに拘束ミトンで指も満足に使えないようにされていた。
脚は比較的フリーだが、サイハイブーツで膝下には腕と同じように黒革のベルトが巻かれ鎖で繋がれている。此方は腕よりも鎖が短く、歩くのやっとの歩幅しか動かせないようにされていた。
「……んんっ」
——……腕は前にされているけど、この拘束用のミトンの所為で物を掴めない。歩いたり座ったり出来るけど、この不自由さ……興奮する……‼︎
時計が見当たらない為に、時刻は分からない。地下区画の為、外はどんな状態かも分からない。
「……んん」
——ミソラさんは、脱出するゲームって言っていた。
どんな罠が仕掛けられているかは分からないが、折角お膳立てしてくれたのだから楽しむ以外に道は無い。一先ず、この独房から脱出する事からである。
「……んー」
——腕も封じられているし、口もマスクギャグで口を使って持ち上げる事も叶わない。それに足指で掴む事も出来ない……どうやって脱出しよう。
強いて言えばミトンで封じられた手で挟んで持つくらいだろう。取り敢えず、独房内に何か無いか探す事から始める。
「……ん」
——ベッドの裏手に張り紙がある。
独房の中のベッドをズラして見ると其処に張り紙が貼られていた。
『IS学園の生徒の皆様は午後13時より訓練が始まるとの事ですので、午後12時半までに地下区画を脱出なさってください。
もし、時間になっても辿り着けなかった場合は、私共で地上へお連れしますのでご安心ください』
その張り紙には達筆な文字で今回の脱出ゲームのルール説明が書かれていた。
『また、地下区画内では私の身内の方々が遊んでおられます。……見つかればお仕置き部屋へ連れ込むように通達しておりますので、見つからないように気をつけてください』
廻空は地下区画は『遊び場』だと言っていた。つまり簪視点で言えば『ストラトス・デザイア』の職員は脱出の妨害役と言う訳である。
——お仕置き部屋ってのも、気になるけれど……。
その内容が気になったと言えば気になった。見つかるなと言われ、お仕置きと言われると逆に気になってしまうのは被虐性癖の性と言うモノなのか。
基本的なルールの記載を読み終えた後、下の方に鍵が置かれていた。よくよく見れば独房の鉄格子の扉は内側にも鍵穴があるタイプのようであった。
「…………」
その鍵を拘束ミトンで挟む形で拾って鍵穴に差し込み上手く捻って解錠に成功した。
——……取り敢えず、他の人に見つからない様に進まなきゃ行けないって事だよね。スニーキングゲームみたい……。