IS学園の生徒達は午前中は自由時間であった為、殆どが海へ繰り出し12時頃になると昼食の為に大食堂へと集まり、食事を摂る事となる。
「しゃ、シャル⁉︎」
「あ、一夏……‼︎」
昨晩の一件でシャルロットの事を気にしていた一夏。午前中は姿が見えず心配していたが、昼になると大食堂に姿を見せた。
「え、えーと……」
「わ、分かっているさ……‼︎ そ、それで如何なったんだ?」
大食堂の隅の方に移動して小声で経緯を訊ねる。内容は勿論、男装と男性操縦者に対するスパイ容疑の件だった。真耶が言うには国際問題で未遂であっても重罪。一介の学生如きにどうこう出来る問題を超越している。
「う、うん。これから行われる『午後の訓練』でボクが合格すれば……内容が内容だから流石に完全な無罪放免とは行かないけれど、経緯説明の後に女子として改めて編入する事になる、かな」
「無罪放免じゃない、のか?」
「順当に行けば国家代表候補生の権利剥奪、専用機剥奪で一般生徒と言う形に落ち着くだろうってね。山田先生はフランス政府と交渉してかなり温情な条件を引き出してくれたと思う」
その言葉に一夏は胸を撫で下ろす。
代表候補生や専用機持ちの肩書こそは失うが学園に残れる条件を見つけたのだ。強制送還からの牢獄送りに比べればかなり温情な対応だと言える。
最もその裏ではデュノア社の倒産が確定する事になるのだが。
「そ、そうか‼︎ 合格すれば良いんだな……‼︎」
「でも、それはあくまで合格出来た場合の話だよ。……不合格なら、フランスに強制送還からスパイ容疑で終身刑か死刑で断罪され、2度と外には出られないと思う」
「……ッ‼︎」
逆に不合格であった場合、スパイ未遂の国際犯罪者として裁かれる事になる。事実上、生死の天秤を掛けた瀬戸際に立たされている。
「訓練の内容を条件の引き合いに出した以上、その訓練も簡単に合格出来るような内容とは言い切れないと思うよ。初日のサバイバル行軍の時点で察せれるし」
「…………」
初日の『遊獄館』に現地集合の訓練もかなりハードと言えた。ほぼ半数しか辿り着けなかったのだから。訓練如きで重罪の罪が軽くなるとはシャルロット自身、到底思えない。
「いや、大丈夫だ。俺がお前を助けるからな。そうすればお前はIS学園に居られる……‼︎」
「あ、う、うん……」
一夏はシャルロットがIS学園に継続在籍出来る条件を聞き、意気込んだ。
何はともあれ、シャルロットを救う手立てが見つかったのならば達成に向けて全力を尽くすだけ。シンプルで分かりやすく、学生である自分達で達成出来る内容だ。
「……で、訓練って何するんだ?」
「生徒達には伏せられているみたいで、誰も知らないみたいだよ。……その時になるまで分からない」
「訓練の内容が分からないんじゃ、対策のしようが無いな……‼︎」
考えても明確な案が出ずに、時間が経過。
そして、訓練開始の10分前に真耶が大食堂へ訪れて『ISスーツに着替えて遊獄館前の広場に集合』と言う連絡事項を生徒全員に通達し、生徒達は慌しく客室や更衣室、脱衣所等でISスーツに着替えて指示された場所へ向かった。
女性が三人寄れば姦しい。それがクラス単位ともなれば騒がしいを通り越して喧騒だ。
「遂にこの時間が来たね……」
「朝も感じ取っちゃおったけど、やっぱ空気が悪いな」
「海で遊んで気が晴れるかと思っていたけど、そう簡単には行かないみたい……」
——女の嫉妬は厄介って昔読んだ本で書いていたし、その通りかも知れない。
遊獄館、鉄門から外の広場。集合場所はその地点となっており、学園指定のISスーツに着替えた生徒達が此処に集まっていた。スクール水着に近いデザインのISスーツ姿の女子達が此処まで集まると中々、別の意味で壮観な光景だ。周りが森に囲まれている為に異様とも言えるが。
また、其処には多数のテントが張られており、その少し離れた場所にはドラム缶風呂と思われる設備も散見される。
昨日の不合格組は此処で寝泊まりした様だ。旅館前で野宿とは待遇の差が目で見てありありと伝わる。
「……その光景を改めて見せつけて合格と不合格、優越感と劣等感を自覚させる、か……IS業界は競争社会と言うからな。気を引き締めさせる狙いもあるのやもな」
不合格だった者は優越感に浸る合格組に嫉妬し、合格した者は目の前の光景を見て不合格になるまいと奮起する。待遇の差は向上心を促すのは当然の事。誰とて恩恵が大きい方を選びたいのだ。
「広場とは言え、此処で訓練するとしては流石に狭い気がします……」
ISの訓練は搭乗する機体の大きさの関係上、相応の広さを確保しなければならない。遊獄館前の広場は1学年が訓練する意味では流石に足りないかも知れない。
「私もそう思っていた……。もしかしたら、私達が考えている内容とは違うのかも知れない」
「考えても答え出ぇへんやろ。此処は素直に答えを待った方がええで」
量産機に搭乗して訓練……とは違うのかも知れない。そんな憶測が3組生徒を中心として飛び交う中、遊獄館の鉄門を潜り真耶を始めとした教員達が複数台のワゴンを押して生徒達の前に現れる。
「皆さん、クラス毎に整列。教師は人数確認をして下さい」
今回の臨島学校の代表引率の真耶の登場により、全員が整列した後。各クラスの担任が人数を確認し欠員が居ないことを確認する。
「では、これより本日午後の訓練を行います。先ずは代表候補生を始めとした専用機持ちの方達は前に出て来てください」
1学年の専用機持ち達が指示された通り、生徒達の前に出る。
1組・織斑 一夏 男性操縦者
1組・セシリア・オルコット イングランド代表候補生
1組・四十院 神楽 日本代表候補生
1組・シャルル・デュノア 男性操縦者
1組・ラウラ・ボーデヴィッヒ ドイツ代表候補生
2組・凰 鈴音 中国代表候補生
4組・更識 簪 日本代表候補生
以上、7名。こうして見ると如何に1組に専用機持ちが偏っているのかが分かる。一旦、専用機持ちと一般生徒を分けた形をとった。
「訓練内容の説明を始めます。担任教師の方は各生徒に訓練備品を渡して下さい」
一般生徒達に配られた物は細い腕輪の様な物であった。
「それは簡易バリア発生装置と呼ばれる物です。簡単に言えばISが無くてもISのシールドバリアを纏える状態にする装置です。
勿論、量産型とは言え打鉄やラファールと言ったISのシールドバリアには遠く及びませんが、多少の衝撃類は吸収してくれます。
コレらは『ストラトス・デザイア』が試作品として提供してくれました」
つまり、ISコア、IS操縦者以外でもシールドバリアで身を護れる装置である。例外と言えばIS学園の各種アリーナのバリアシールドが挙げれる。
だが、彼方は大掛かりな装置や設備が要求されるのに対して、個人携帯レベルでは何処の企業、国、組織ですら実現出来ていない。
「最初の日からくれれば良かったのに」
そんな呟きが聞こえた気がしたが、真耶は続ける。
「勿論、何度も攻撃を受ければバリアのエネルギーは尽きますので注意してください。パネルにはエネルギーの残量が表示されますので、定期的に確認して置くようにしてください」
生身の一般生徒達にバリア発生装置を配った。この時点で普通の訓練内容とは思えない。そんな憶測が浮かんでくる。
「次に専用機持ちの生徒達にも渡します」
次に真耶は一夏達、専用機持ち達にも簡易バリア発生装置を渡すと同時に自分達の専用機の名称が書かれた腕輪も渡された。
「身に付けましたか? バリア発生装置は兎も角、其方の専用機の名前が書かれた腕輪は無くしてはいけませんよ?」
必要最低限の備品が各生徒に行き渡った事を確認した真耶はいよいよ、訓練の中身を説明する。
「では、訓練の説明を始めましょう。
訓練名は『セスルーム』」
「「「セスルーム?」」」
聞き慣れない単語に疑問符が浮かぶ。一体、どう言う訓練内容なのか検討が付かない。
「訓練名は兎も角、簡単に言えば皆で