「訓練名は兎も角、簡単に言えば皆で
——その言葉に私達は息を呑んだ。専用機を奪う?
「とは言っても生身の生徒がIS、ひいては専用機を直接、奪うのは難しいでしょう。其処で代わりに『専用機の腕輪』を用意しました」
『白式』や『ブルー・ティアーズ』と言った名称が刻まれた腕輪を一夏達は見やる。
「本来ならば安直に『腕輪狩り』と言う名称が提案されましたが凡庸過ぎて印象に残らないと言う事で『セスルーム』と言う名称になりました。その話は兎も角、説明を続けます。
既に理解していると思いますがまず、専用機持ちと、そうではない一般生徒に分かれているでしょう」
——確かに専用機持ちは7人。それ以外はISを持たない一般生徒達……。まさか。
「察しの良い生徒達は訓練内容に関して気付いていると思いますが……織斑君達が持っている専用機の名称が書かれた『腕輪』を何らかの手段で奪い取ってください。織斑君達、専用機持ちは一般生徒達に奪われない様に『腕輪』を守り切って下さい」
「「「ッ‼︎」」」
その瞬間、殺気が溢れた気がした。
「勿論、『腕輪』を奪われたとしても奪い返す事が出来れば問題ありませんし、誰かが手に入れた腕輪を横から奪うのもアリです。当然、専用機持ち達は一般生徒達に反撃、奇襲、強襲も当然、アリです」
「せ、先生ッ‼︎ 素手でやれって言うんですか⁉︎ 流石に簡易的なシールドバリアがあるとは言え……」
仮にそうだとしたら、専用機持ち達の圧勝だろう。豊富な武装の前に一般生徒達は成す術は無い。
「いえいえ、それでは訓練になりませんので、ルールが設けられていますので安心して下さい。先ず、専用機持ち達には此方で用意した類似品の武装を使用して貰います」
そう言い専用機持ち達の前にワゴンが押されてくる。其処には模造の日本刀や薙刀、他にも各種、銃火器が用意されていた。しかし、特殊兵装に当たるモノは当たり前だが無い。
「衝撃砲は禁止って訳ね……」
「ティアーズも無いのですね。弾は模擬弾ですわね」
「フン……」
「流石にパイルバンカーはやり過ぎだよね」
「これらを用意したのもたとえば織斑君は零落白夜で簡易バリアを簡単に貫通して死傷せしめる可能性がありましたし、凰さんの衝撃砲で終わりかねません」
訓練には訓練たり得る状況で無ければならない。その為、ある程度のハンディキャップは必要だろう。
「専用機持ちの方は完全展開の制限はありませんが、武装は此方が用意した物を使用して下さい。但し、高度は制限させて貰います。高高度に逃げられては他の方々が手出し出来なくなりますので」
ISを展開する事は自由。但し、高度制限がある。遥か上空に飛ばれると完全な逃げ勝ちとなってしまう為。
「また、専用機持ちの皆さんの専用機の残存エネルギーは残り20%の状態でスタートとなります」
「「「なっ⁉︎」」」
——ずっと、起動させる訳には行かないって事だね。
そうなると必然的に隙が生まれる。どのタイミングでISを展開し、エネルギーを温存出来るかの見極めも求められる。残り20%だと乱用は出来ない事を意味している。
「次に一般生徒の方々には好きな武器を選んで貰います」
次にワゴンで運ばれて来たのは大量の銃火器類や近接武装と言った装備。
「途中で持ち替えても構いませんし、複数持つのもアリですよ?」
——必然的に逃げる役と鬼役……かなり物騒な鬼ごっこだ……。そして、私はクラス代表だけど専用機持ちじゃない、一般生徒……つまり鬼役の1人。
「『セスルーム』の舞台はこの五稜遊獄島
簡易バリア発生装置の予備のバッテリーもあるらしい。あれば便利だ。
「この訓練のタイムリミットは午後6時です。そして、皆さんが気になるであろう合格条件」
その言葉に息を呑む生徒達一同。状況的に此処は合格したい者達で溢れている事だろう。
「専用機持ちの織斑君、オルコットさん、凰さん、四十院さん、デュノア君、ボーデヴィッヒさん、更識さんはタイムリミット時に自身の専用機の名称が書かれた『腕輪』を持っていれば合格となります」
専用機持ちは『腕輪』を制限時間を迎えるまで死守すれば合格。仮に奪われたとしても時間超過するまでに取り返せば問題は無い。
「次にそれ以外の一般生徒達の皆さんですが……誰かの『腕輪』を奪取し、遊獄館に帰還すればその時点で合格となります。今回、特別に目印を設置させて頂きましたので参考にして下さいね。
また、『腕輪』を奪ったものの時間内に遊獄館に辿り着けなかった場合は不合格となりますので注意してください」
「それって、つまり……‼︎」
この訓練の合格者は最大でもたった7人しか出ない事を意味する。
また、一般生徒に『腕輪』を奪われ取り返す前に遊獄館へ逃げ切られた専用機持ちは不合格が確定するし、タイムリミット時に自身の『腕輪』を持っていなければそれでも不合格となる。
「不合格者には引き続き夕飯は自炊、野宿となりますので、張り切って臨んで下さい。
そして、合格者についてですが……一般生徒が『腕輪』を奪取し合格した場合……その
「「「は⁉︎」」」
その言葉に全員が驚愕した。それはとんでもないご褒美だからだ。
「例を1つ挙げましょう。例えば相川さんがオルコットさんの『腕輪』を奪い遊獄館に辿り着き合格した場合、相川さんには『ブルー・ティアーズ』の所有者としてイングランド政府に対して専用機貸与の交渉権を得ます。
現行候補生から奪い、出し抜ける程の人材ならば再考の余地は出て来るでしょう」
「それって、つまり……」
「運が良ければ、夢の専用機持ちになれる……⁉︎」
「誰を狙うかの駆け引きにもなる……⁉︎」
「勿論、諸般の事情で認められない可能性もありますのでチャンスの1つとして考えてください。勿論、権利なので交渉せず元の所持者に返却と言う選択肢もあります」
女尊男卑の世の中でISを欲しがる女性は大多数。当然ながら、専用機を持っている生徒に嫉妬している生徒も多数いる。
そして、現在……生徒達は今回の臨島学校での格差待遇により真っ二つに割れている。此処に来て、そんな暴力性を全面に押し出した訓練を提示したのだ。
——2組と4組はクラス代表かつ専用機持ち……。そして、そのクラス代表だけが初日合格。つまり、同じクラスの生徒から優先的に集中砲火を浴びる事になる……‼︎ 昨日の訓練結果に納得していない筈……。
専用機持ちは専用機を誰かに奪われる可能性が出て来る。更には代表候補生としの地位も危ぶまれる事になる為、不合格は絶対に避けたい。
一般生徒達には千載一遇の大チャンスと言える。夢の専用機を得られる可能性があるのだ、当然ながらやる気が溢れてくる。
「まず、専用機持ちの皆さんは好きな方角へ向かってください。15分後に訓練開始となります」
先ず、先に専用機持ち達が遊獄館前から移動を始めた。基本的に逃げに徹せねばならはい為、何処でスタートするかが重要となる。
「では、他の皆さんは各々、好きな武装を選んでください」
一般生徒達はワゴンに群がり、各々気に入ったり使い慣れた武装等を選択して手に取っていく。そして、15分が経過した。
「皆さん、準備は宜しいですか? IS訓練は危険が伴います。貴方達、一般生徒達には自身の身が危険と判断した場合、リタイアの権利があります。簡易バリア発生装置には無線機の役割もありますので、緊急の場合は連絡する様に。
それでは……」
「『セスルーム』、開始‼︎」