「「「その腕輪、置いて行けェェェェェェェェェェェェ‼︎‼︎」」」
一方、その頃。島の東側では怒号と狂騒が入り混じった咆哮が鳴り響いていた。眼前には多数の女子生徒達。支給された武器を片手に次々と襲い掛かって来る‼︎
「くっ、幾ら何でも必死過ぎだよッ⁉︎」
「それでも渡す訳にはいかねぇよ‼︎」
シャルロットと一夏は2人で行動する事にしていた。シャルロットの存亡が掛かった訓練は余りにも無茶苦茶な内容だった。
何せ、専用機を奪い合うと言う前代未聞の内容。シャルロットにとって不合格となれば国際犯罪に加えて国家戦力を左右する専用機を奪われたとなれば、死刑は確実……。是が非でも合格せねばならない。
一夏も一夏で姉と同じ単一能力を持つ白式を誰かの手に渡るなど認めたく無かった。
「専用機があれば‼︎ 私にも専用機があれば、将来は安泰なのよ‼︎ だから、早く寄越しなさいッ‼︎ 織斑‼︎」
「千冬様と同じ専用機‼︎ それさえあれば私は……千冬様の妹になれるッ‼︎」
「男だからってISに……剰え専用機が与えられるなんて絶対に認めないッ‼︎」
一夏に向かって襲い掛かる生徒達の大半は女尊男卑に罹患しもはや手遅れな生徒達だった。模造日本刀やアサルトライフルを片手に発砲や、斬撃を持って一夏に迫って来る。
「くっ‼︎」
一夏とて1学年の生徒全員が自分に好意的だとは思ってはいる程、自惚れていない。女尊男卑の世の中だ、自分に敵意を持つ者だって居ない訳では無い。ただ、周りに集まるのは自然と好意的な者達ばかりだっただけ。
IS学園では千冬の目があったから水面下に潜んでいただけ、だが此処では千冬は居ないし公的に専用機を奪える機会、更には初日の待遇面での格差により、いよいよその感情が爆発したのだ。
「ぐっ⁉︎ 男の癖に女に手をあげるって言うの⁉︎」
『白式』を奪われる訳にはいかない。ISに搭乗しての戦闘はまだまだ覚束ないが、陸上での戦闘訓練は剣道場で箒(半ば無理矢理だが)と剣道で感覚を徐々に取り戻している為、素人相手ならば幾らでやりようはある。
上段からの振り下ろしに対して受け流して胴体に横薙に模造刀の刃を叩き込む。生徒達に配られた簡易バリアシールドにより傷は無いが衝撃は防げず後方に倒れ込む。当然、その生徒は女尊男卑の風潮を挙げて批難の声をあげる。
「襲って来て言う言葉がソレかよ⁉︎」
真耶の提示した訓練は余りにも無茶苦茶だが、有無を言わせずに敢行された。開始した以上、最早やるしか無い。
「一夏ッ‼︎ こんな開けた場所で籠城するのは得策じゃないよ‼︎」
「わ、分かった‼︎」
相手が生身とは言え、多人数で連続で攻めて来られてはジリ貧となる。自分達は誰か1人に奪われてはならないと言う精神的プレッシャーがあるからだ。しかも、数時間ずっと戦い続けると言うのは生まれて初めての経験だ。IS学園の試合と雖も30分前後だと言うのに5時間ぶっ通しは過酷と言える。
——シャルが言っていたな……。エネルギーが残り20%だと機体を維持出来るギリギリの残量だと……完全展開出来ても、もって数分。なら、使う時は今だ‼︎
「一夏ッ、行くよ‼︎」
「おうッ‼︎」
シャルロットと一夏は専用機を完全展開して速やかに上昇して北へ飛び去って行く。その先にも生い茂る森林が広がっており、徒歩で追い掛けるのは困難を極める。
「あ、逃げるなッ‼︎ そのISを置いてから行きなさいよッ‼︎」
「あーもう、専用機持ちはズルい、ズル過ぎる‼︎ いつでもお気軽にISを使えるんだからッ‼︎」
「私にもISがあれば、あんな男なんて‼︎」
後方で負け惜しみに近い声が聞こえて来る。自分達も必死だから、聞き分ける訳には行かないのだ。
「……やはり残量が少ない。一夏、この辺りで降りて更に移動しよう」
「あ、ああ」
森林のど真ん中に降り立ち機体を量子変換で格納する。飛行して離脱したは良いが、此処で立ち止まり続けるのも得策とは言えない。
「一夏、取り敢えず身を潜めれる場所を探そう」
「隠れるって言うのか?」
「うん、山田先生は潜伏は禁止とは言っていない。この訓練、専用機持ちは迫って来る一般生徒達相手に戦い続けなければならないと思いがちだけど、それなら限られた場所内で乱闘させる方が時間的に効率が良い筈だしね」
「な、成程……」
「島全体を使うんだ。隠れられる場所も当然、あると思うんだ。見つかりそうなら移動する……それを繰り返せば安全に僕達は合格出来る。山田先生は『腕輪を守り切れ』と言ったんだ、隠れる事も作戦の内だよ」
「おお……流石、シャル。頭良いな……‼︎」
「逃げるも作戦の内って言うでしょ?此処で駄弁っても仕方ないし、行こう。一夏」
「ああ」
シャルロットと一夏のペアは潜伏して時間切れまで粘る作戦を立てた。無論、反則では無い。原則、最初から一般生徒達を相手する必要は無いからだ。
一方、その頃。
「……フフッ、皆様。私達がまさか『遊獄館』の地下区画に居るとは夢にも思ってはいないでしょうね」
「……神楽、凄く悪どい笑みを浮かべている」
『セスルーム』開始後、簪と神楽もまた2人で行動していた。そして、その2人はと言うと午前中にも世話になっていた『遊獄館』の地下区画に潜伏していた。
最初、遠くへ逃げ去ると見せ掛けて遊獄館の裏手に隠れて一般生徒達や教員達が遊獄館前の広場から出払った瞬間に遊獄館内へ入り其の儘、地下区画へと滑り込んだのだ。地上階だと教員に見つかる可能性があるのだが、地下区画内ならばその心配は無い。
当然、誰もが『
「何を仰いますやら♪ 山田先生は『遊獄館に隠れてはならない』とは一言も言っていませんよ? この島全体が訓練の舞台ならば当然、遊獄館も含まれて然るべきですわ」
「……言われて見れば、確かにそうかも」
「それに、卑怯汚いは敗者の戯言ですわ」
「それは流石に酷いと思う……」
屁理屈も理屈の内。守り切れば手段は何だって良いのだ。
「それに今頃、4組の方達は必死に簪さんを探して島を駆け回って居る頃でしょう」
神楽から『この訓練の特性上、簪さんは4組の皆さんから集中的に狙われます』と言われていた。初日の格差や合格者の内訳から予想は出来た。
訓練開始前、説明の時の時点で周囲の目線が突き刺さる様に痛かったのもまた事実。
「……学園に戻ってから憂鬱にな……」
——あ……。
「簪さん? どうされました?」
「う、ううん。ちょっと……あるお誘いを受けたから」
「ほう? 差し支えなければお伺いしても宜しいでしょうか? 折角ですから談話室やリビングルームで話しましょうか。午後6時まで時間がありますし」