「……む? 私は何故、此処に……?いかん、前後の記憶が欠けている。うーむ……森で雑魚共を蹴散らしていた事は覚えているがその後、私は何をしていた……?」
「ボーデヴィッヒさん? 何故、遊獄館のエントランスにいるのですか?」
「む……私も前後の記憶が無い。訓練の一環で森林地帯で無能な雑魚共を薙ぎ倒していた所までは覚えているのだが……気付いたら此処で倒れていた」
「訓練は終わっていないのに遊獄館に戻って来るのはルール違反です。まぁ、貴方の性格上、彼らに喧嘩を売りに行ったのでしょうが……。
まぁ、兎も角不合格と見做します。勿論、反論は受け付けません」
「な、何ッ⁉︎」
「おっ、皆、見てみぃ‼︎ コイツが例の島内に隠しとる〜と言っていた奴やないか⁉︎」
一方、その頃。
3組一同はターゲットであるシャルル・デュノアを追跡している最中であった。その捜索中に大木の根元に箱が置かれているのを発見した。
「落ちていると言うには不自然……。となると先生達が設置したモノかも」
名刀がその箱の蓋を開けてみる。その中に入っていたのは3組にとって馴染み深い閃光弾であった。
「閃光弾、これは使えるね……‼︎」
如何にISのシールドバリアが強固であろうとも激しい閃光や高周波は防ぎようが無い明確な弱点と言える。それはクラス代表対抗トーナメントで実証済みであった。
「おおー、使い慣れた奴やと有難い話やでな」
「一応、3個入っていた。無駄には出来ないね」
「寧ろ上等かと。普通は1個でしょうし……」
「……それよりも対象が居なければ話にならんだろう。万が一と言う事もある。とっとと、デュノアを探すぞ」
その後、追跡を再開しシャルル・デュノアを捜索するも、中々見つからない。途中で交戦したと思わしき生徒達を見掛けたが、当人達も捜索しているようだ(女尊男卑絡みの思考だと遠目からでも伺えたので距離を取った)。
時間だけが無情にも経過しタイムオーバーまで残り1時間を切っていた。
「……マズいかも、本当に見つからない」
午後6時が時間切れの時間となる。此処から見つけて遊獄館へ辿り着けるかどうかの瀬戸際となる。仮に『腕輪』を奪っても遊獄館へ戻らなければ合格にはならないからだ。
夕方になれば視界も悪くなってくる。此の儘では逃げ切られてしまう。
「クソッ、もう此処ら辺には居らんっちゅう訳か⁉︎」
「ヤバい、こっちに他クラスの人達が」
——ッ‼︎ この声……もしかして⁉︎
「皆、居たッ‼︎ 南の方向ッ‼︎」
「「「了解ッ‼︎」」」
声が聞こえた瞬間、名刀は声を発し簡潔に告げる。その言葉を聞いた面々は瞬時に理解して行動を起こす。相手にも気付かれるが、問題無い。此処で逃げ切られれば、打つては無くなる。此処は地力の勝負であった。
——閃光弾は何時でも投げれる。暗くなって来たから夜目によって効果は増す……後は投げるタイミング。
「ヤベェ、3組だ‼︎ 他のクラスと違って妙に連携が取れているんだよ‼︎」
3組の団結力の話は徐々に広がっていた。まぁ、あれだけ協調性が取れていれば他のクラスからそう見えても可笑しくないし当然、耳に入る。
「織斑も居るんかいなッ‼︎ ズレは出てるが、やるで‼︎」
泳は2人の姿が見えた瞬間、閃光弾を投げつける。やると言う言葉は合図だ。
「アレは閃光弾⁉︎ 一夏、目を閉じてッ‼︎」
「え?」
シャルロットは気付いたがその直後、閃光弾が炸裂し眩い閃光が暗くなり始めた世界に広がった。
「ぐわぁぁぁぁぁ⁉︎⁉︎」
何時ぞやと同じ様に一夏は閃光をモロに浴びて両目を覆って悶絶する。シャルロットも気付いて腕で目を保護するが、その隙を突いて3組の生徒達複数人で肉薄し1人がタックルで押し倒して他の面々が押し倒したシャルロットを抑えて腕輪を外す。
「あっ⁉︎」
「腕輪取れたッ‼︎ 代表、パスッ‼︎」
「彼女は私達が抑えるから、今の内に‼︎」
「名刀代表、走れッ‼︎ 方角は其の儘、南だ‼︎ 」
放り投げる形で渡された『腕輪』をキャッチした名刀はその言葉に頷き、走り出す。他の生徒達も護衛と援護の為に一緒に走り出す。
「く、クソッ‼︎ シャルのISを返せッ‼︎」
「させるかッ‼︎ お前の相手はウチやッ‼︎」
一瞬の出来事、あっという間にシャルロット の腕輪を奪った3組。そしてその腕輪はクラス代表である名刀の手に渡った。その事に憤慨した一夏が後を追おうとするも泳が近接ブレードを振り立ち塞がる。
「シャルが不合格だとマズいんだ、だから退いてくれ‼︎」
「知るかッ‼︎ そんな事ッ‼︎」
「クソッ‼︎ 残り少ないがやるしか無ぇ‼︎」
その時、一夏はISを完全展開する。残り残量は僅かではあるが今は緊急時、やるしか無い。
「はぁ⁉︎ エネルギーが枯渇して無かったんかいなッ⁉︎」
此処まで時間経過していれば専用機持ちのISのエネルギーはほぼ枯渇している筈だったが、まだ完全展開出来る程度の残量が残っていた事実に泳は驚愕する。その隙に一夏は泳の頭上を通り過ぎて高速で飛行して名刀の後を追う。
「ああーッ、クソがッ⁉︎ ウチもええカッコ付けたかったちゅーのに‼︎ せめて、デュノアの」
「……あ、あの、泳さん。デュノア君ね……その、胸が……ある。やっぱり、男性じゃなくて女性だったみたい」
その時、シャルロットを抑えていた生徒の1人が気まずそうな顔でそう伝えて来た。
「ほー、やっぱ女やったんか……って何やてェェェェェェェェ‼︎⁉︎」
顔立ちから男じゃないだろ。と言う意見が多々あったが実際に言われるとやっぱり、驚いたのであった。