※この作品はR-18です。

ストラトス・デザイア   作:夢現図書館

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セスルーム Ⅷ

 

 

 

 シャルロットと一夏は腕輪を狙う一般生徒達との交戦を避けて隠れる事を優先し時間切れになるまで粘っていた。見つかりそうになれば不意を突いて移動し隠れる事を繰り返して残り1時間となった矢先に事態は急変した。3組の生徒達に見つかったのだ。

 

 

 3組は個人主義の多い他のクラスと違い、各生徒同士の連携、共同、協力姿勢が強く連帯行動力が高い異例のクラスだ。コレが、1組であればIS男性操縦者が在籍しクラス代表と言う事情から1組の大半の面々は一夏に何かあれば全て丸投げして頼り切り、その分報酬を要求すると言う厚かましさだ。

 代表候補生も専用機持ちも企業代表も居ない、無名の一般家庭出身者だけで構成された文字通り普通のクラス。

 だが、普通であるが故に各々が自分が出来る事を考え、誰かに依存する事なく他の者と協力して物事に当たれる強みがあった。

 他のクラスの情報を集め、纏めて対策を練る。代表も驕らず堅実に、勝てる算段を組み立てる……。この姿勢から担任からは勿論、件の『評価表』でも高い評価を得ていた。

 

 

 結果、シャルロットをターゲットにしていた3組の連携によりシャルロットの腕輪は奪われてクラス代表である名刀の手に渡り、一目散に遊獄館へと逃亡を開始したのだ。

 

——シャルの腕輪が奪われた‼︎ 此の儘だと、シャルは不合格になっちまう‼︎ そうなれば、シャルは牢獄送りだ‼︎

 

 一夏はシャルロットを助けると意気込んでいた。ISを得て皆を守ると誓った。シャルロット1人、助けれなくて何が織斑 一夏だと。

 

 セシリアや鈴音と一緒に訓練して体得した瞬時加速で木々を薙ぎ倒しながら薄暗くなっていく森の中を突っ切って距離を詰める。ISに備わっているハイパーセンサーの熱源反応でどの方角に居るかは分かる。

 

「悪いけど、通す訳には行かないわッ‼︎」

 

 その時、前方に3組の生徒達が横一列に並んで構えた銃火器の銃口を此方に向けていた。

 

「頼む‼︎ 退いてくれッ‼︎」

 

——シャルが不合格になる訳には行かないんだッ‼︎

 

「それは無理ッ‼︎ 撃って‼︎」

 

 撃鉄を鳴らす音が響き渡り、放たれた銃弾が一夏へ向けて飛来する。本来ならば数発喰らっても押し通ると言いたい所だが、エネルギー残量が枯渇寸前の状態でシールドバリアが消耗させられる訳には行かない。

 

「くっ‼︎」

 

 一夏はその姿勢のまま上昇して銃弾を躱す。その刹那、煙幕が焚かれて森の中に粉塵が舞った。視界の全てが白い煙幕に覆われた。

 

「なっ⁉︎ 煙幕だって⁉︎」

 

——3組は、正々堂々戦うつもりは無いのかよッ⁉︎

 

 クラス代表対抗トーナメントの時もそうだった。3組代表は手榴弾や閃光弾、煙幕や銃火器を使い、一夏を翻弄して勝利した。その結果に一夏は納得は出来なかったが、負けは負けだった。

 

「……クソッ‼︎ ハイパーセンサーの熱源反応もバラバラになってる‼︎」

 

——センサーも誰が誰なのかまでは分からない……‼︎ 然も、バラバラに逃げているから誰が持っているかまでは分からないッ‼︎

 

「好きアリやッ、織斑ッ‼︎」

 

「なっ、ぐわっ⁉︎」

 

 その時、後方から強烈な衝撃が襲い掛かり一夏は地面に向けて墜落。

 その一撃により白式の僅かなシールドエネルギーが削られ機体維持が出来ずに粒子となって消滅し機体から放り出された一夏は地面に投げ出された。

 幸い、墜落時には高度は2、3mであり、シールドエネルギー残量が枯渇寸前の時、自動的にISは絶対防御が発動して搭乗者を守る為、今回の場合、一夏は地面に投げ出されこそはしたが無傷だった。

 

「……なっ⁉︎ もう追い付いて来たのか⁉︎」

 

——瞬時加速して飛ばしたって言うのに⁉︎

 

「悪ぃけど、コチとら山育ちや。都会の運動不足の奴と一緒にすんなや。コイツ担いで木登りとか余裕や余裕」

 

 近接ブレードで肩をポンポンと叩き、泳は笑みを浮かべる。彼女は生身の状態で近接ブレードを担ぎ、木に登って一夏に跳び掛かって打ち落としたのだ。本音を言えば、かなりの無茶である。

 

「ハイパーセンサーに」

 

「ハイパーセンサーの熱源反応? 一定温度が無けりゃ反応せぇへんって盲点あんの知っとるか? まー、ちと無茶やったがな。流石にもうしたないわ」

 

 泳はそう言い制服の上着の裏から大量のドライアイスの小袋を地面に落として捨てる。3組生徒達が飲料水を冷やす為に持ち込んだドライアイスを集めて自身の体温を下げてISのハイパーセンサーの探知をすり抜けたのだ。

 

「そんなの、聞いて無いぞ……‼︎」

 

「そんなん、教える奴も居らんわな。実用性無ぇし。ほんじゃ、ウチの相手して貰おやないか。織斑‼︎」

 

 泳は近接ブレードの鋒を突き付け、宣戦布告するや否や、何の躊躇いもなく一夏に斬り掛かる。

 対する一夏は白式のエネルギーは枯渇し完全展開は愚か部分展開すら不可能な状態だ。頼みの綱の雪片弐型の量子展開もままならず、躱す事しか出来る事は無い。素手で、近接ブレードを相手取るには分が悪い。

 

「ぐっ、卑怯だと思わないのか⁉︎」

 

 此方がISが使えない状態で攻めてくるやり方を批難する一夏。

 

「あん?何言うとんねん。あの手この手使わな、ウチらの様なコネも後ろ盾も無い一般連中は専用機持ちとか言うチート連中に勝たらへんねん」

 

 泳はそう言い返した。一般人から見れば専用機持ちは天上の存在だ。引き摺り降ろすには様々な策を講じなければならないからだ。ISの試合でも高性能な専用機に対して正面から馬鹿正直に戦っても勝ち目なんてある訳が無い。

 

「雑談は終いや。ついでにお前の腕輪も貰って行こやないか。成績はええ方が後が楽になるしな」

 

——くそっ、此の儘、俺の白式を奪われて堪るか‼︎

 

 そのタイミングで簡易バリア発生装置からサイレンの様な音が鳴り響いた。タイムオーバーを告げる音だった。

 

「……時間切れか。しゃーないな、時間切れになったんやったら、やり合う必要は無いわな」

 

「じ、時間切れ……⁉︎」

 

 ルールでは『腕輪』は持ち主が持ってなければ合格にならない。つまりシャルロットの腕輪はシャルロット本人が持っていなければ不合格となる。

 

「ま、ウチは織斑の足止めって役割やったし、妨害出来たから結果オーライやな。後は代表がゴール出来たかどうか、やしな」

 

 泳は時間切れとなり一夏と対峙する理由もなくなったので其の儘、踵を返して遊獄館の方へと向かって歩き出した。

 

「…………嘘だろ……?」

 

 シャルロットの腕輪は3組に奪われた。取り返す事が出来なかった時点で不合格は確定である。

 

「い、いや、まだ諦めるには早い……。きっとシャルが奪い返している筈だ‼︎」

 

——そうだ、そうに決まっている。俺は……役に立たなかったかも知れねぇけど、自分で取り返しているかも知れねぇし‼︎

 

 一夏は希望を持って遊獄館へと歩き出した。此処で立ち止まっても仕方が無い。シャルロットが腕輪を無事に取り返している、そう信じて。

 

 

 

 

 

 

 

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