※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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ヤることヤッちゃおう!〜最強ノ巫女〜

 

「わーお。レイチェルおねーちゃん、すっごぉ……。まるで無血開城の如く、相手の心を折らずそのまま降参させるなんて……」

 

「む、ムケツカイ……?ふ、ふふん、そうでしょっ!霊子も思い知った?運命力の恐ろしさを!!」

 

「うんうん、思い知った思い知った。それじゃー、残り全員もレイチェルお姉ちゃんと紐付けるだけでお姉ちゃん1人脱落するだけで勝ち確じゃん!」

 

「……それができるなら、開始と同時にそうしてると思わない?」

 

「っ!」

 

 霊幻チルドレン最強ベルを自ら棄権に追い込んだレイチェル。それを見た霊子は、同じ事をすればと思い至り、姉にそう進言するが──当然、彼女とて同じ事くらい思いついているのである。

 つまり、それをしない、という事は────。

 

「そう、ダメなんだよね。『紐付け』は1人にしか設定できない上に、もしも解除しちゃうとしばらく使えなくなっちゃう」

 

「なんだ、じゃあ解除しなきゃいいんじゃん」

 

「おバカっ。解除しなかったらさっきの『棄権』と同時に私も負けてたでしょ」

 

「別に負けても良くなーい?」

 

「なんですって!?」

 

「だってレイチェルお姉ちゃんを倒したのは、あのベルってヤツじゃないんだよ?それならお姉ちゃん棄権したってレミリアもお姉ちゃんも犯されない。負けても負けにならない、サイコーな方法じゃん」

 

「……運命力を甘く見すぎ。私が棄権を表明する前に流れ弾に当たって気絶したらどうする?それにより私が心折れて再起不能になったら?……その流れ弾を放ったヤツが私を倒した判定になる。私やお母様はソイツに犯される事になる」

 

「うー、アイツの棄権とお姉ちゃんの棄権が紐付けされてるワケじゃないんだ?」

 

「そういう事。紐付けされているのは、あくまでも

『2人は同時に敗北する事になる』という運命よ。その運命を自ら指定したのに、それを破棄したの。しばらく能力が使えなくなるなんてデメリットは、結果から言えば安いものよ」

 

「うーん、そっかぁ。まっ、さっきのアイツは霊幻チルドレン最強だって言うし?大金星じゃん☆」

 

「……だと、良いんだけれど」

 

「……?」

 

 ◆

 

「……」

 

「ふふっ。ふふふっ!どーお?ジワジワと切られる感触!痛すぎて言葉も出ないかしら?」

 

「えぇ、まぁ……くだらな過ぎて言葉も出ません」

 

「……はァ?」

 

 空気を操るマコにより空気の刃で身体を刻まれる虔魔。ナイフを持つ手も刻まれ、再生を済ませても素手となってしまう。

 

「この程度で心を折れると思ったら大間違いです。これで心折れるとすればせいぜい、末の妹くらいの幼い子供まででしょう」

 

「自分は違うけど────とでも言いたげね?」

 

「リリスに腹部を貫かれて、ジワジワ殺されかけたあの時の方が、今より圧倒的に苦しかったですし、死ぬかもと心から覚悟しました。この程度の痛み、自殺にすら値しませんから」

 

「ッ……!この私が、あんな大罪人より劣るとでも?アンタは、そう、言いたいのねッ!!」

 

「ええ、そうで」

 

 虔魔の言葉がその先まで紡がれる事はなかった。首が飛ぶどころじゃない──綺麗に縦に割られて、真っ二つになってしまったからである。

 

「……。あなた、虔魔(おとうと)を倒すなんて中々やるのね」

 

「執事の次はメイド?ふふ、レベルの低い従者ね、束ねる主人の器も知れるというもの」

 

「なんですって?もう一度言ってみ──」

 

「退きな、弦月姫」

 

「────ッ!?」

 

 虔魔を倒され、自分がマコの相手をしようと前に出た弦月姫、しかし──姉の「威圧」により、前に踏み出したはずの足は自然と引っ込んでしまう。

 

「霊愛お姉様……!」

 

「そろそろ私に戦(や)らせてよ。暇でさ」

 

「私も暇なんですが……。人数のバランス、明らかにおかしいですよ」

 

「もし仮に、今ので虔魔が心を折られたとしたら?そしてもし、弦月姫もやられたとしたら?」

 

「っ!」

 

「あんたら姉弟と咲夜はあのシスターに犯される。だから弦月姫は、すっこんでな。せめて──虔魔が復活するまではね。2人やられなきゃ咲夜の無事は担保されるんだし、今あんたが前に出るのは決して良い判断じゃあないよ」

 

「……ありがとうございます。お姉様」

 

「霊魔ンとこ行ってな。霊魔の結界、多分、茜とか私よりも強いから。霊幻世界の連中になんか絶対に破れないからさ」

 

 小さく頷くと、混戦の中で、弦月姫は駆け出す。博麗の息子を──弟を探しに駆け出す。近くでは、唐竹割りにされた弟(虔魔)が再生を終えようとしていた、しかしそれでも霊愛は戦闘態勢を崩さず、目の前の敵との戦闘を夢想し、舌舐めずりしていた。

 

「……あなた、人間?」

 

「惜しい、人間との混血。いわゆるハーフだよ」

 

「あぁそう、ハーフ。それも人間ベースの、ね?」

 

「そこまで、見て分かるもんなんだ?」

 

「えぇまぁ、私くらいになれば?」

 

「まぁ誰でも分かると思うけど」

 

「……っ!幻想郷のヤツって、どいつもこいつも口が減らないのよね……!ウザイわ!黙りなさい!!」

 

「────ッ!!」

 

 霊愛は半妖、しかも人間ベースの半妖であり──なんなら普段は肉体強度以外は人間そのものとすら言えてしまうくらい、普通の人間的な肉体だ。

 そんな霊愛に向けて、マコはジワジワと苦しめる為に、敢えて、一気に酸素を奪わず──ジワジワと酸素濃度を薄めていくという悪魔的手段に出た。

 

「ガッ……ッ、カハッ、ハーッ、ハーッ……!?」

 

「あはっ!あはははははははは!苦しいでしょう?死にたくなるでしょう……?さっさと降参しなさい?それで楽になれるわ?」

 

「……誰が、この程度で……ッ!!」

 

「!……ならもっと苦しむがいいわ。人間ベースの、弱いよわぁ〜いお姉様……♡」

 

「………………」

 

 胸を抑え、膝をつく。マコはそんな彼女の前へと舞い降り、さっきの虔魔にやったように、しかし、それでいて粉微塵にしようと風の刃を用意。

 するとそれを見た霊愛は、弱々しげなか細い声で呟くように言葉を発する。

 

「──お母さんは昔、月に行った。遠く離れた──宙(そら)に浮かぶ、あの月に。今の私と同じくらいか──下手したら、今の私より(・・・・・)幼いくらいの頃に(・・・・・・・・)ね」

 

「?」

 

「その時に必要だったのが『神降ろし』の技術だ。お母さんが言うには、三柱を同時に降ろしたみたいだけど、そんな芸当ができるの、私は、お母さんとお父さんしか知らない。居るとすればお姉ちゃんの言う『ヨリヒメ』ってヤツくらいなんだろーけど、私はそいつを見た事ないから知らない判定ね……」

 

「それが何だと言うんですか?……全く、時間稼ぎか何かのつもりかもしれませんが。時間稼ぎをすればするほど、自分の寿命が縮まるだけですよ?」

 

「……私、弱い(・・)からさァ。強くなったと思ってもまたすぐ壁にぶつかる。だけど何だかんだで、いつも、その壁を乗り越えてきた」

 

「それももう限界ですね」

 

「へっ。へへ、そーみたい。もう私には、この壁、乗り越えられそーに……無い、っぽいなー……」

 

 呼吸をすれども、脳に酸素が回る事は無い。今の霊愛は、酸欠による失神寸前。というより常人なら失神しているし、過半数は死んでいる酸素濃度だ。

 なのにこうして意識を保てているのは、一重に、彼女が尋常ならざる訓練を積んできた「次の博麗の巫女」だからであろう。

 本気でヤバい──そう感じ始めた霊愛は、ラストワードには一歩届かないながらも、本気のスペカの使用を宣言する。

 

「────幼戯(ようぎ)『最強ノ巫女』」

 

「……ッ!?」

 

 玉造魅須丸を神降ろしする。副次効果(魅須丸の加護)によって、アビリティカード「空色の勾玉」装備。

 雷神、武甕槌命を神降ろしする。副次効果により常に帯電体質となり、弾幕も電撃を帯びるように。

 最後に地獄の女神へカーティア・ラピスラズリを神降ろしする。副次効果により、神降ろし中に限り魔力及びハイレベルでの魔法の行使が可能となる。

 

「ふーっ。酸欠、苦しいね。でも『空色の勾玉』があれば大丈夫。このカードは酸素ボンベと同じってお父さんが言ってた」

 

「!?!?」

 

「さぁさぁ、フルボッコにしちゃうよ〜。こちとらお姉ちゃんに次いでお父さんを昔から見てるんだ。雷の能力の使い方、魔法の使い方────それこそ門前の小僧習わぬ経を読む、ってね。習わなくとも知ってる、習わなくとも使える……ッ!!」

 

「っひ……ぁ……あぁアッ……!?」

 

「一閃『Mishap of Thunder』──か〜ら〜の〜、

 魔砲『魔光線百門砲(ハンドレッドキャノン)』ッッッ!!!!」

 

 極大の雷に貫かれ棒立ち状態のマコに向かって、追撃として百個もの魔法陣からマスパの如き光線を全方位から当てる霊愛。

 虔魔が切られた恨み──なんてものは全く無い。そんなものを抜きにして、完璧に敵を叩きのめす。その為だけに、全力を尽くした。

 獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす──といった言葉が存在するように、霊愛にとってこの戦闘は、ライオンによる兎狩りに等しかった。

 そして何よりも……。

 

「ふぃ〜。試運転だったケド中々のモンだったね。これなら少しくらいお父さん達にも通じそうっ♪」

 

 今の技は、鍛え上げたものではなく──考案した技を試しにぶつけてみたという──つまりは単なる試運転に過ぎなかったのだった。

 というのも、今の2つの技は、父がトドメに使用しがちな技であり、それを神様から力を借りて行うということは、彼に等しいレベルの威力になるとも言えるからだ。

 そんな技、試運転だからと誰に使えるだろうか?

 使えるワケが無い。

 だからこそ、殺し合いが解禁されたこの戦いで、やっと試運転ができた。やっとお披露目ができた。

 ──現に、マコは死んでいる。霊愛の予想は全て1から100まで正しかった。

 加減が難しく、過剰な威力になってしまう、と。

 

「く……っ!そんな、そんな、もので……ッ!」

 

「お。やっぱ領域の中だからかな?復活、早いね」

 

「そんなモノで私が折れるとでも思ったのですか?半妖風情がァ……!!」

 

「……お父さんにエッチしてもらえない、クソ処女の分際で」

 

「ッッッ!!!」

 

「逆レイプする勇気も無いのにお父さんにアピールしてるつもり?不死身のクセに、思い切りの欠片も無いんだね。てかさ、不死身でもそんなつまんない人生はつまんなそーだねぇ……退屈しない??」

 

「誰の人生がつまんないですって!??!?!?」

 

「受け身なのはお父さんで十分。恋する乙女なら、好きな人にはガンガン攻めなきゃね♡」

 

「ッ!?」

 

「────せぃ、やァッ!!!」

 

「ガギャッ……!?あ゙あ゙あ゙あ゙ァァッッ!!!」

 

 超強化したお祓い棒で、マコが虔魔にしたように霊愛はマコを縦に真っ二つに割ってしまった。

 

「なーんだ。奥の手(吸血鬼化)、使うまでもないや」

 

 霊幻世界最強シスター・マコ────脱落。

 しかし、この戦闘開始以降初めての「混乱」が、幻想チルドレンに起きようとしていた……。

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