※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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乗っ取り

「ヒャハハハハッ!ひっさしぶりだぜェこの空気!澄んでて澄んでて、逆に違和感しかねェなオイ!」

 

「けれど、綺麗な空気は素晴らしいものですわね♡心まで澄み渡るようです……この空のように♪」

 

 現れたるは堕天使の一団「グリゴリ」。男も女も関係ない、堕天使の集団である。そしてリーダーの1人が────。

 

「シエル……あなた、何をして……!?」

 

「ごめんねぇ、リエ♡……私、ずぅっと前から堕天使集団のリーダーだったの♡」

 

 シャムシエルだ。シャムシエルは「グリゴリ」のリーダーの1人。そして今こうしてサリエルが追放される神判というゴタゴタに乗じて「グリゴリ」の仲間を呼び出した。

 シャムシエルには、「エデンの園の番人」という側面もある。番人、それはつまり「他者を呼んだり拒否するのは自由自在」ということでもある。

 

「ふふふっ、番人である私が神様の敵なんだもの、楽園への侵入なんて楽勝だよねぇ♪」

 

「そんな……シエル…………まさかあなたが……」

 

 とある場所で犯罪行為をするのに最も難しいのは何だろうか。実行する事?確かにそうだ。しかし、その「場所」によっては「侵入」が最も難しい事になり得るのだ。

 ある怪盗は、変装して警備を欺いて、美術館へと侵入を果たした。またある泥棒は、警備システムをハッキングしてシステムを無効化させ、侵入した。

 警備、つまりは「番人」、「門番」の処置こそが鬼門と言える。

 今は戦国時代、そして、これから難攻不落の城を攻めると仮定しよう。堀、石垣という様々な障害がある城に、敵は篭城している。

 ならばどう攻める?門も簡単には破壊できない。兵糧攻めする時間は勿体ないだろう。

 そう、門番を「懐柔」する。「俺達が城を奪った暁には褒美をやろう」などと懐柔してやる。すると余程の忠誠心を持つ者以外は、策を弄することなく呆気なく門を解放し、敵を呼び込んでしまう。

 ある時代、ある日、ある場所に、とある警備員が居た。彼は巡回中、異変に気付いた。しかしそれを深く探る事も無く、無視してしまった。

 その結果として事件が発生したのだが、警備員の彼はどうして異変に気付いていたのに無視したか?彼は後にこう答えている。「それを調べる程の金は貰っていない」と。

 これは何を意味しているのか。彼の雇い主は彼を金で「懐柔」出来ていなかった事実を表している。実際問題、彼が追求しなかったのは「まともな金が払われていないから」である。

 彼の理屈を信じるとするなら、逆に言えば「彼の満足するだけの給料を払っていれば、事件は未然に防げた」という事だ。

 もうお分かりだろう。防衛における「要」とは、警備、門番などの「番人」であると────!

 

「……マジで呼ぶとは思わなかったよ」

 

「え〜?それが計画(・・)なんだから、呼ぶに決まってるじゃんっ☆」

 

「そんな……まさ、か……あなたは────!!」

 

「お。Howdy, リエ!」

 

 堕天使集団「グリゴリ」は代替わりした。それはおよそ3日前(・・・)────シエルが俺を「グリゴリ」に引き入れた日のことだ。

 そしてこの集団はリーダーが20人も居た。だから俺が反対する者を全員ブチのめし、力でリーダーとなった。無論、リーダー20人は元通り据え置きで、俺は、その上(・)に立った。

 

「────我こそは、新生グリゴリの頭首、そして現・ギリシア神界の最高神にして、魔術の神であるヘカーティア・ラピスラズリが第二(・・)の配下ッッ!!同じく魔術神(・・・)エスカルゴ・スカーレットであるッ!死にたくない者は従え!逆らえば穢れに塗れた死を与えてやるッ!!」

 

「「!?」」

 

「最高神の配下だと!?」

 

「しかも第二(・・)だと……?」

 

「じゃ、じゃあ……第一(・・)は……」

 

「第一はどんだけ(・・・・・・・)ヤバいヤツなんだ(・・・・・・・・)……!?」

 

 第二の配下である俺の格が上がる度に対外的には第一の配下であるクラウンピースの(・・・・・・・・)格も上がる(・・・・・)……。名声による相乗効果と言うべきこの流れ、最高だ。最ッ高に────。

 

「キンモチイィ〜……♡」

 

 自分が敢えて2番目の地位に甘んじる事で、その俺自身が強くなったり格が上がったりすれば、俺の上に位置する「誰か」は更に上だと万人は解釈するだろう。俺が幻想郷で2番目を目指すのもそうだ。

 

「届いてるかいクラウンピース。お前、今、世界で一番……最高神以上にビビられてる存在だぜ……?」

 

 ────尤も霊夢については「どう足掻いても」俺には勝てず、幻想郷で成れるのは、霊夢を除いた頂点、つまり2番目が限界なのだが……。

 

「楽園・エデンの園は、我がギリシア神界の最高神へカーティア・ラピスラズリに捧げるものとする!神も天使も、大人しく俺らに従いなッ!!」

 

 当然ながら、そんな事を言って大人しく従う奴らじゃないというのは分かっている。ましてや、この世界の神も目の前に居るのだ、逆らえるはずがないというのは分かっている。

 

「ふざッけんなテメェ!!」

 

「誰がそんな事を許すものですか!」

 

 ────だからこそだ。だからこそ神を前にして逆らえぬ腰抜け(・・・・・・・)を、今ここで、一掃してやるという話だ。

 

「テメェら、楽しめェ!楽園を滅ぼす時が来たッ!グリゴリィ!かかれえええええッッ!!!」

 

「「うおおおおおおおおっ!!」」

 

 雑兵の相手は雑兵に任せ、俺やシエルはボス級の天使達と相対する。ミカ、リエの殺気は凄まじい。サエ、ルビーは恐怖しているのかカタカタと身体を震わせている。

 一方で、追放の宣告をされたサリエルは神と対峙しているようだった。そちらは追々皆でフォローに向かうとして、今は────。

 

「何故ですか、シエル……エスカルゴさん……!」

 

「んー、そろそろ乗っ取りたいな〜って思って?」

 

「俺は、俺にとって都合の悪い存在が嫌いなんだ。でもそんなの、皆、同じだろ?……俺は、それじゃあ我慢できねーんだよ。ワガママだからね」

 

「そんな理由で……天界を滅ぼすと!?」

 

「俺にとってこの天界は無縁だものな、滅ぼす理由なんてどうでもいい。ただ、サリエルに害を及ぼすから、ここを滅ぼしてやるのさ。理由なんかただのそれだけでいい。知らない人間を手に掛けるのと、理屈は同じだよ」

 

「……分からない。意味が分かりませんわ!」

 

「分からなくて宜しい。悪魔の思考なんてモノ理解できちまったら、それこそ────リエ。お前は、天使ではなくなるよ?」

 

「────ッ!」

 

「良かったじゃあないか、リエ。悪魔(オレ)の考えを理解できないという事は、お前は立派な天使って事だ。それって、とても素敵なコトじゃあないか……?」

 

 そう、悪魔の考えを理解できる者など悪魔だけで構わない。人間の思考や掟などは人間が勝手に共有していればいい。所詮、悪魔とは違う生物なのだ。神と天使にだって、この方式は当てはまる。ただ、それだけの事なんだ。

 

「サリエルの中のザラキエルにとって故郷だよな、この天界は。故郷が滅ぼされるこの光景を見たら、ザラキエルはどう思うのかな。気になるよねぇ」

 

「ふざけないでください!!」

 

「ザラキエルの考えが知りたいのなら、サリエルの行動に注目すればいい。サリエルにとっても、俺と同じく、天界なんて思い入れの無い場所。滅ぼすも滅ぼさないもサリエル、ザラキエルに任せるだけ。俺は────復讐が無意味(・・・・・・)だと思っていない(・・・・・・・・)んだ。復讐の手伝いをしてあげたいだけなのさ」

 

「復讐の……手伝い?」

 

「ザラキエルは死の天使だからと、穢れていると、差別を受けていたそうだな。天使や神がこの天界でヌクヌクと過ごしている間、ザラキエルは下界に。表立って追放はされていないものの、実質的に追放されていたような扱いをされていたザラキエルは、世界を漫遊していたサリエルと出会ったそうだぜ。そして、能力的な繋がりもあり友情を深めた」

 

「………………」

 

「前置きが長くなっちまったな。いつもの事ながらこれは俺の悪い癖だ。遅ればせながらここで問題。

────ザラキエルは、天界をどうしたいと思っているでしょ〜ぉか?」

 

「「「「…………………………」」」」

 

「その答えは────サリエルをご覧下さーい☆」

 

 

 ◆

 

 

 雑兵同士が戦い、俺達がそんなふざけてる会話をしている中、サリエルは静かな心持ちのまま、神と対峙していた。

 

「神よ。私を追放しようとも、私は元々天界所属の天使ではありませんから、堕天使にはなりません。ただ『この場を出て行く』だけです」

 

「〜〜〜〜〜ッ……うるさいうるさい!貴様は堕天!堕天使になるのだ!楽園が穢れるからさっさと出て行くがよい!命は取らないでおいてやる!」

 

「……ならば、神よ。謝罪を。ザラキエルに、彼女に差別をした事への謝罪を要求します」

 

「……はァ?死人に謝って何になる。そもそも其奴はサリエル、貴様が融合吸収してしまったのだろ?」

 

「私の中で生きていますよ。あなたのその言葉も、彼女は聞いています」

 

「くだらぬ。穢らわしきを司る己(おの)が力を恨めと奴に伝えておけ。『私の中で生きている』などと阿呆な事を抜かすのならな!ハッハッハッハッハッ!!」

 

「────そうですか。ありがとうございました。あなたの心からの答えが聞きたかった────!」

 

「……えぅ?ゴホッ……ゴホォオ゙オオエェェッ!?」

 

「神よ。あなたの命、ザラキエルへ捧げましょう」

 

「きさ、まァ……!サリ、エルゥゥ……ッ!!」

 

「愚かですね。自らを脅かしかねない存在の事は、邪険に扱うべきではないのです。寧ろ、自らの傍に置き丁寧に扱うべきなのです。そうする事で自らに迫る脅威を排除しやすくなるというのに────。まぁ、今更そのような教訓を得ても……あなたの命はとうに尽きているのですがね」

 

 神は死んだ。血を吐いて死んだ。尽き果てた命をサリエルは冷たい目で見下ろし、ミカ達と相対する俺達に、ゆるりと口元を緩ませ、どこか晴れやかな笑顔を見せてくれた。




エスカルゴがリエ、ミカ、シエルに「お前らの正体分かったぞ」と告げたあの時、シエルだけが何故か焦っていたのは、まさにコレが原因です。

エスカルゴには聖書の知識があります。
なのであの時点でシエルは「もしかしてコイツは、私が堕天使集団『グリゴリ』のリーダーである事も知ってるのでは?」と考えていました。
当然その事はリエ達には隠しているので、あの時はシエルにとって、かなりギリギリの綱渡りでした。
エスカルゴから「シャムシエルって、堕天使集団のリーダーだよな?」とかバラされたら、割とガチで一巻の終わりだったのです。
だからあの時、シエルは「じゃあリエは!?」と、シャムシエルの話題から話を逸らしたのです。

だからシエルは、エスカルゴがリエたちに「シャムシエルって堕天使集団のリーダーだぜ?」とバラす前に、セックスを対価に、仲間(グリゴリ)に引き入れました。
エスカルゴがロリコンなのは彼が自分で言ってる事なので、この時ばかりはシャムシエルも自らの幼児体型にかなり感謝したようです。

自分の天敵になり得る者を差別したり冷遇するのはバカのやる事だと思います。もし敵対されたら、と考えたりしないのでしょうか。
(ジョジョ5部で、ディアボロが暗殺チームを冷遇していたのも『神と天使たち』と『ザラキエル』のこの関係に近いかもしれません)

早期に消すか、それが出来ないなら最低限、自分の手で、目が届く範囲で反逆されないように、適度に飼い殺すべきですね。
シャムシエルも、エスカルゴが敵対しないようにとグリゴリに引き入れただけですしね。
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