※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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美鈴、格闘紅魔館最強疑惑

「聞いてくださいエスカルゴさんッ!!」

 

「ど、どした……?」

 

「私!更に強くなりました!エスカルゴさんじゃ、更に私に格闘では勝てなくなりましたよ!」

 

「格闘では、ね」

 

「う、やっぱ聞こえます?地獄耳凄いですね〜」

 

「俺ぁ、ラブコメの難聴系主人公じゃないからな。周囲の雑音が無ければ、だけど」

 

「アハハ、確かにそうですね!」

 

 ある日の事。紅魔館の地下の大図書館で魔導書を読んでいると、門番をしているはずの美鈴が地下の俺の元まで来て、唐突に「試合お願いします!」と言い出した。

 どうやらまたまた強くなったらしい。しかもただ強くなったのではなく、しっかり技術を体得したと言っている。

 色は違うが、ドラゴンボールの「かめはめ波」を習得、数年前にジョジョの奇妙な冒険の「波紋」を習得して────今回は、何を習得したのだろう。

 館を出て、門の前で向き合う。その居住まいは、まるで隙らしい隙も無く……。

 

「────で?今回は何を習得し(おぼえ)て、何を使用(つか)って俺をブチのめすつもり?」

 

「今回は……刃牙シリーズで有名なアレです!!」

 

「刃牙ときたか……俺も刃牙はギリ履修済みだけど、武蔵編までなんだよな……続編も出てるみたいだけど絵柄が太過ぎて……やっぱ範馬刃牙の頃が俺は……」

 

「『バキ』で初めて出た技です。あなたも、よーく知っていますよ。そして真似しようとも(・・・・・・・)している(・・・・)。さぁ、あなたから攻めてきてください」

 

「……OK、攻めるよ」

 

 グィィッと地面を踏み締め、後方に地面の欠片を飛ばして美鈴へ肉薄────吸血鬼の持つ、この、大木すらへし折り、ブン投げる膂力を全開にして、殺す気で拳を打ち込む……!

 

「っだらァッ!!」

 

「────っ!」

 

 回転(まわ)った。拳の速度に合わせて、ギュルギュルと美鈴の身体が縦に回転し始めた。縦の回転で威力を完全に殺され、しかもその縦回転の威力を利用して俺の顎に蹴りでのアッパーを見舞う。

 

「ひぐっ」

 

 歯は砕かれて口の中は全域が鉄の味、温い液体で満たされる。ジャリジャリ、ガリガリと砕けた歯が口内で血に揺られて踊っている。

 

「ゔっ……お゙ぇぇぇっ……」

 

「ふふふ……どうですかッ!?私の消力(シャオリー)はッ!」

 

 消力────攻撃を受けたときに人間が反射的に力んでしまうのと反対に、敢えて力を抜くことで、打撃の威力を吸収する……というもの。

 最強の中国拳法の使い手、郭海皇(かくかいおう)の得意技だ。

 

「……お見事、と言うしかない。それしか言えない。でもまぁ……アレだな。烈海王は武蔵に斬られたろ。つまり俺の斬撃ならその消力も無力化できる」

 

「果たして本当にそうなのでしょうか?日光を克服しているあなたにさえ通じる程に波紋を鍛えている私が、今以上(・・・)を目指して鍛えていないとでも?」

 

「ま……まさか?」

 

「私の消力は烈海王、師の郭海皇を超えています!疑うのであればエスカルゴさん!あなたの斬撃を、どうぞ私に!あなたの事です、有事の際は即効果を発揮する治癒魔法を掛けてくださるでしょう?」

 

「分かったよ。────唐竹割りだ」

 

「!!」

 

「いくぜ美鈴……『喘げ』、魔剣『妖魔雷霊剣』!」

 

 幻想入りしてそんなに経たない頃に小傘に鍛えてもらった俺専用の魔剣。妖力、魔力、電力、そして本来なら妖怪は持ち得ない霊力────それら全てこの一振りに込められているのだが、込められた力全て引き出し、この一撃で、全て放出する。

 

「『魔界断裂斬』ッッ!!!」

 

 魔界の大地をも叩き割る、俺の中で最強の斬撃を美鈴1人の為に放出(つか)うッ!威力、速度、重さ、全て問題無し!ベストコンディションだと断言できる!何をされても言い訳のしようが無い完璧な斬撃ッ!

 

「ぜやあああああぁぁぁああッッ!!!」

 

 治癒魔法がかなりの高レベルで行使(つか)えるからと、驕り高ぶっているかのようなまでの全力。こんなの到底ガールフレンドなどに喰らわせる技じゃない。それなのに美鈴は、また旋回(まわ)った────!!

 剣先が地面に触れると同時に地面に亀裂が走り、凄まじい地震が起きる。バカァッと割れてしまった地面には砂やら石やらがボロボロと落ちていった。やがて伸び続けた亀裂は紅魔館に及び、紅魔館にはバキバキと嫌な音を立ててヒビが走る。あれも後でしっかり補修(なお)さねば。

 

「……っと……ふぅっ!何とかなりましたっ!」

 

 着地後、そう言って笑う美鈴の額からは、薄らと一筋の血が流れるだけ。それ以上には深手を負った様子は無い。治癒魔法を掛けるまでもない。

 

「だがッ!烈海王は横の斬撃で死んだんだぜッ!!これはどうだッ!?」

 

 全ての力を引き出したまま美鈴の胴体を上半身と下半身に分断させる為、真横に剣を振り抜く。俺の突然の攻撃に流石の美鈴も反応が遅れかけるが……。

 

「破ッ!!」

 

「!?」

 

 確かに斬れたと思った。魔法の準備をしなくてはいけないだろうとさえ思った。それなのに美鈴は、またもや俺の予想を上回り────横にも回転(まわ)って見せてくれた。

 

「はいぃぃぃぃッッ!!!」

 

「烈海王かよ……」

 

「ふっふっふ……やはり消力はかなり強力ですね!」

 

「ッ……なら俺はコレ(・・)だな」

 

「?」

 

 妖魔雷霊剣をスキマに仕舞い素手になる。そしてダラリと両腕から力を抜く。

 

「な……ッ!?」

 

「俺だってよう……能力バトル漫画以外からもな……パクれるモンは何でも……パクってンだぜ……?」

 

「ま……さか……まさか、まさかそれは……!」

 

「旋回(まわ)って見せろ……美鈴」

 

 腕がしなやかに揺れる。適度な脱力がなされて、関節に僅かな空間(スキマ)を感じ指先に血が溜まり始める。そして微弱ながらも確かな「鼓動」を10本の指先で感じる頃に────俺の脱力は完成される。

 

「しィアッッ!!」

 

「〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎〰︎︎ッッッ!!!!」

 

 俺の鞭打(べんだ)は美鈴の衣服をも破り、皮膚まで裂けて血が出たようだが、そこまで俺の鞭打が到達して、遅れながらも美鈴は再び縦に旋回(まわ)る。

 平たく言えばビンタの強化版。これはダメージを与えるというよりは「痛み」を与える為の技術だ。その速度は、そして痛みは無類。

 美鈴の反応を遅らせ消力の発動すら遅らせる程の超速攻撃。決まった────と思ったのも束の間、美鈴は着地と同時にビシリと構えて見せる。

 

「……激痛(いた)くないの?」

 

「苦痛(いた)いに決まってるじゃないですか!ですが前に弾幕や剣でブッ飛ばされたときよりはマシと思えば我慢もできるというもの……!」

 

「……紅海皇(ホンかいおう)って呼ぶぞ……海王(烈)超えたら海皇だろ」

 

「ふふふっ、それも悪くないかもしれましぇ…………あぇ……んぇぇ〜………………?」

 

 目を回した美鈴は、その場に倒れてしまった。

 流石に回転(まわ)りすぎたようだ。だが可愛い。思わず頬が緩んでしまう。魔法で軽く紅魔館を修復させ、美鈴を彼女の部屋で寝かせてからはレミリアに酷く怒鳴られ、説教されてから────美鈴と、漫画について色々と語り明かしたのだった────。




前作で書いた通り、本作の美鈴は「主に」太極拳を使いますがそれ以外も余裕で使いますし、何なら、割と普通にダーティな手も使わなくもないです。
そして現状、格闘のみでのバトルだとエスカルゴも美鈴に勝てません。というか彼のみならず紅魔館の誰も(格闘だけだと)美鈴に勝てないです。
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