※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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新たに幻想入りした人間は

 突然だが「幻想入り」という言葉、または概念をご存知だろうか。「外の世界の人間などが幻想郷に迷い込む」ような、大体はそんな意味で使われる。

 かく言う俺も20年以上前に幻想入りしたのだが、俺と俺の弟・ヒビキに関しては、紫さんにより誘拐されて幻想郷に連れて来られたという経緯なので、

「幻想入り」よりは「神隠し」という言葉の方が、より真実に近いかもしれない。

 それは置いといてだ。俺の住まうこの幻想郷に、幻想入りした者は、何人居るだろうか……?

 実のところ、公的な記録に残っている数としてはここ20数年ではたった2人(・・・・・)なのである。

 これは、俺と弟……坂田兄弟の幻想入りの記録だ。しかし山奥だろうと平気で人間が出入りする昨今、幻想入りしたのは、本当にこの2人(・・・・・・・)だけなのか(・・・・・)?

 否、否、否。大いに、盛大に、そして全力で否定させてもらう。「否である」と。

 ならば、公的な記録に残っていない幻想入りした人間達は、一体、どこに消えているのか────?

 

 

 ◆

 

 

 10年以上昔────。

 

「相変わらず散歩日和だぁ……ふぁ〜ぁ、ねむ……」

 

 その日俺は、無縁塚の辺りを散歩していた。特に目的があったワケじゃない。ただ、無縁塚辺りにはよく外からの物品が流れ着くので掘り出し物などがついでに見付かればいいな、とは思っていた。

 そして、俺は見付けた────1人の人間を。

 

「う……どこ、だ…………ここは……?」

 

 中肉中背の男、外見は人間、気配も匂いも人間。さてこれは幻想入りだろうか、それとも神隠しか。妖怪化していれば後者だと思うがそんな気配は無いという事で、俺は前者、「幻想入り」と判断した。

 本来ならば博麗神社に連れていき、正式な流れで外の世界に帰す事になるか、人里で暮らす事になるというのが通例だと、里の自警団の小兎姫や、霊夢から話を聞いている。

 しかし霊夢は俺の嫁。みだりに会わせたくない。何故なら俺は嫉妬深いし独占欲が強いからだ。

 そして俺は、俺個人の能力で外の世界との往来が可能になっている。だから俺が外に送り返せばいいだけの話ではあるのだが────人は一度幻想入りしたのならもう一度幻想入りしないとも限らない。

 警戒した俺は、男に接触を試みる事にした。

 

「よォ人間」

 

「ひっ!?ば、バケモノッ……いや悪魔かッ!?」

 

「お前、他所から流れ着いた人間か?外の世界から流れ着く人間なんてそうは多くない────お前、中々にツイてるな」

 

「流れ着く、だと?見たところ川も何も無いが……」

 

「無縁塚に転がってたんだから、無意識に、結界を越えたんだろ。知らんけど」

 

「無縁塚?……まさかここは幻想郷なのかっ!?」

 

「お。もしかしてお前、東方Project、知ってる?」

 

「知ってるも何も大好きだが……」

 

「へー!俺も人間の頃ァ東方オタクでよー♪」

 

(元人間だと……!?いや、悪魔というものは大抵が元天使や元人間、神だったりするから有り得なくは無いのか……?)

 

「なぁなぁ、推しは誰よ?場合によっちゃあ、俺がお前の推しに会わせてやるぜ?大抵の子とはとうに知り合いかそれ以上なんだよ」

 

「そ、そう、なのか……?お前みたいなヤツは原作に居なかったはずだけど……」

 

「原作から外れた世界線なんだろ、知らんけど」

 

「あ、あー……二次創作的な世界なのか、ここは」

 

「んで?お前の推しは誰だよ?俺の推しはフラン、レミリア、鈴仙、霊夢……ん〜数えらんないねぇ〜。とりあえず原作キャラの8割は推しだわ、ケケケ」

 

(待てよ?「原作知識を持った男が幻想入り」って二次小説の入りのテンプレじゃねぇか?つまりこの幻想郷では俺が主人公……ってコト……!?この男を噛ませ犬にして、俺の無双展開、来るのか!?)

 

「おーい人間、聞いてるか?」

 

「えっ、あ、あぁ……推しの話だったっけか?」

 

「そーそー」

 

「……霊夢だよ。同担拒否だったら悪いな」

 

「あー……霊夢か。なら会わせらんねーわ」

 

「な、何でだよ!?幻想入りした人間は博麗神社で霊夢に外に帰されるって設定もあるはずだろ!?」

 

「いやぁ、霊夢は俺の嫁だからよ。外からの人間、まして男になんざ会わせらんねーの。旦那として、許せねンだわ」

 

「な……っ、よ、め……?何言ってんだ……お前?」

 

「絶賛2人目を妊娠中だぜェ。写真、見るか?まあ本当なら見せたくもないんだけどね」

 

「う……嘘…………だろ……?霊夢が……ボテ腹……待て、な、なんだよ、この翼は……っ!?これじゃあ……」

 

「霊夢は俺の眷属だよ。俺、吸血鬼なもんで♡」

 

「は……?何言って……」

 

「俺は独占欲が強くてなぁ。人間のままだといつか死ぬだろ?それに耐えられないんだよ」

 

 本当の理由なんてものは、言わない。言う価値も無いからだ。どうせコイツも、自分が主人公だとか勘違いしている類の人間なのだから。

 

「きゅ、吸血鬼ならッ!どうして日の下を歩ける!レミリアだって原作で日傘を使ってるじゃないか!何なんだっお前は!」

 

「お前、吸血鬼のこと知らないのな。吸血鬼には、デイウォーカーっていう個体も居るんだぜ。有名なキャラだとHELLSINGって漫画のアーカードかな。日光を克服した吸血鬼、それがデイウォーカーだ」

 

「!?」

 

 俺に関しては、並行世界の幻想郷に居る、焔炎火(ほむらえんか)という友人に貰ったペンダントで克服しているだけなのだが、人間を脅す為だ。これくらいのブラフ、許されるだろう。

 

「さてと。お別れの時間だね。霊夢推しのお前には死んでもらう。俺ぁかなりの同担拒否なモンでね。残念だったなぁ〜、霊夢推しでさえなきゃあ……」

 

(……この吸血鬼の手に落ちた霊夢を助け出すのが、幻想郷での俺の役目なんじゃないのか!?なら俺も能力でコイツを倒す……いや、殺すッ!!発現しろ、俺の能力!!覚醒しろッ!!)

 

「?……何構えてんのか知らないけど……人間如きに魔法とかなんて使わねーよ?大丈夫、死ぬ時は一瞬だから。お前はまだ俺らに明確な危害を加えてないから、優しく殺してやる」

 

「あぴ」

 

 デコピン一発で頭を吹き飛ばし、男を殺害した。東方を知りながら幻想入りした者は老若男女問わず死すべし。ましてや、推しが被っていれば尚更だ。人間、死ぬ気になれば何でもできる。指一本でも、俺の推しには触られたくないし、見られたくもないものだ。

 

「能力で俺を倒そうとでもしてたのかな。構えとかまるで素人だったから、格闘で相手をしようとしたワケでも無さそうだし。……ただの人間が、能力とか使えるワケねーだろ。夢見てんなよな」

 

 指笛で近くの動物や、魔獣、妖獣を呼び出して、その人間の死体の始末をさせる。幻想郷に住む獣の餌になれたんだ、コイツも本望というものだろう。

 

「俺も、供養代わりに少し食っとくか。おい、腹の皮は俺んモンだぞ、お前ら」

 

 

 ◆

 

 

 そしてまたある時。この時は前回から数ヶ月しか経っていない頃だっただろうか。妖夢推しだと宣言してくれたので、今度は写真すら見せず、そして、返答すらせずに殺してやった。妖舞を妊娠していた頃なので、写真でも見せてやればこれまた凄まじい絶望顔を見せてくれそうな気もしたのだが。

 そこから更に間が空き咲夜さん推しに出会ったりレミリア推しに出会ったり、鈴仙推しだったり等、実に多くの幻想入りした人間を見てきた。しかも、奇しくも俺がそういう場所に行く時ばかり幻想入りしてくるのだ、やはり俺はツイ(・・)てる。

 中にはロリス推しも居た。そういう者にはキツくモザイク加工をしたハメ撮り写真を見せてやって、その上で獣の餌にしてやった。

 そもそも東方を知らない者には、軽く催眠を掛け外に送り返している。知らないのなら、再度、俺の知らない所で幻想入りしたとしても無害に近い。

 皆には「同担拒否が力を持つとどうなるのか」をしっかりと理解(ワカ)ってもらいたい。俺が息子、妖舞を軽く敵視しているのだって、幽々子さん推しなのが被っているからなのだから。

 

「つっても、俺が目を離した隙に幻想入りしてくる事もあるだろうからな」

 

 ある時、俺は土地そのものに罠を仕掛けた。その発動条件は、地に足をつけたまま突然人間の気配が現れた場合にのみ発動するというもの。里の人間が無縁塚まで来ることは殆ど無い上に、そもそも発動条件の「突然人間の気配が現れる」事も殆ど無い。

 コレの発動条件を地面限定に設定したのはただの気まぐれだった。今思うとこれも含めてかなり運が良かっただけなのだと、自分の浅はかさを恥じる。

 

 

 ◆

 

 

「どーりで最近は誤作動が多いと思ったんだよな。茜が蓮子を連れてくるのもたまにカウントしてたんだもの……そら誤作動も起こすわな。改良しなくちゃダメだなこりゃ。危険すぎる」

 

 足を掴まれ、宙ぶらりん状態になっている人間を見上げてクスクスと笑う。数年ぶりにまともに起動してくれたと思ったら、まさか2人組とは。

 

「────もし『空から飛来した場合』も含まれていたなら、エデン異世界調査隊の奴らがゼウス達の後に幻想郷に来た時────ゼウスの騒動と一緒に巨人騒動まで起きてた所だったかもな。なぁ?」

 

「うわあああっ!!く、食われるっ!助けてええ!イギャアアアァアアッッ!!!」

 

「いやっ!いやだあああぁぁっ!!」

 

「今の蓮子は不老不死、もう蓬莱人みたいなもの。この幻想郷に、人の幻想入りはもう起こり得ない。俺達の楽園に邪魔者は不要なのさ……」

 

 人間を食べ終えた巨人は勝手に蒸発して消える。たまに、近くを通り掛かった妖精のことまで人間と一緒に食べてしまうこともあるようなのだがやはり自動で発動する魔法は制御が極めて難しい。

 だから今、数年ぶりにこの罠に手を加えるのだ。魔術の神としての神徳も得た今の俺ならば、詳細な設定も可能。今のままだとこの罠はまるでジョジョ5部のノトーリアスB.I.Gのように、1人歩きする罠になっていただろう。

 改良してやれば、ノトーリアスや、自動操縦型のスタンドより、ずっとずっと使い易いモノになる。

 

「よしよし、よく噛んで食べるんだぞ鎧(ライナー)」

 

 若い女も殺すのはやり過ぎたか。2人共、東方のことなど知らなさそうだったし、今は送り返しても良かったかもしれない。

 尤も、あの2人のお陰で罠の改良もできたので、尊い犠牲としてカウントしておこう。

 

「うーん……俺の発想力じゃ、カッコイイ巨人なんて造形できそうにないな。やっぱり原点にして頂点、原作通りの造形が一番カッコイイのかもなー……」

 

 人間を食べ終わり、シュウシュウと蒸気を上げて消えていく鎧の巨人の頭を撫でて、塚を後にする。何年も前から用意していた魔法がやっと完成した。これで、ただの人間の幻想入りは、完全に不可能になった。もし仮に能力なんかを持っていたり、人間以外が来た場合、俺が感知できるようにしておけばそれで済む話。

 邪魔者というモノは、可能性から排除するのだ。徹底的に。そして、容赦なく────俺達の、いや俺の楽園を壊させない為に。




次回、幻想郷に新たな異変が……!?

早鬼との初戦闘を見ても分かる通り、エスカルゴは巨人達の中でも鎧の巨人(ライナーバージョン)が最推しです。
終尾の巨人の骨から生えてきていた、過去の鎧よりライナーの鎧の方が好きです。
俺は戦鎚の巨人が好きですが。
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