※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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1面:集う精鋭たち

 霊魔は初めての異変解決の為に博麗神社を出る。するとそこに、魔法の森方面から普通の魔法使い、霧雨魔理沙が、いつものように優雅に箒に乗って、レーザーのように直線的に飛んできていた。

 

「あ、ま、魔理沙、さんっ……」

 

「よう霊魔、また恋人に会いに行くのか?」

 

「えと、こ、今回は……僕が…………行くの……で……」

 

「?……霊魔が行くって?どこにだ?紅魔館?」

 

「異変解決……」

 

「ヘェ!じゃあもう博麗神社に行く必要は無いな、よし行こう!よろしくなっ!」

 

「ふぇえっ!?ぼ、僕は1人で行くのでっ……!」

 

「なぁに言ってんだ。異変解決ってのは組んだ方が早いんだぜ〜?『三人寄れば文殊の知恵』っていう言葉があるじゃないか。知ってるかい?」

 

「し、知って、ます、けど……」

 

 魔理沙は、霊魔の幼い頃も同じように博麗神社に通っていたが、当然のように霊魔は押し入れだのに引き篭っていたので、未だこのような反応である。

 しかしそんなのは気にしない。それが魔理沙だ。霊魔が魔理沙に対して悪い感情を抱いていないのが大きな要因だと言える。

 

「んー、何処に行こうなぁ。霊魔は何処がいい?」

 

「や……やっぱり、えと、情報を得るなら、紅魔館がいいと……思いますけど……人数も多いですし……」

 

「恋人に会いたいだけじゃないか〜?ん〜??」

 

「ちちちっ、違いますっ!こ、こんな時にそんな事考えてられませんっ……から……!!」

 

「ハハッそうか、まぁどっちでもいいんだけどな。よし、じゃあ紅魔館に行くか!」

 

「え」

 

「危機的状況ってワケでもないんだ。そう、慌てる必要も無いぜ。季節が滅茶苦茶だったり、変な霧が出てきてるワケでもない。謎の数字が出てきているだけだからな。カウントダウンでも無さそうだし」

 

「……そう、ですね……」

 

 流石、何度も何度も異変解決に参加してきただけあるな、と霊魔は尊敬にも似た感情を抱いていた。これまで魔理沙のことは、「母の友人」としてしか見ていなかった。しかしこの異変解決を通してまだ見た事のない一面が見れそうだと感じていた。

 

「……さて、紅魔館まで行く間に情報交換しようか。私の数字は見ての通り、1だ。霊魔は2らしいな」

 

「あ、はい」

 

「魔法の森に住んでる奴らのは来る前に見てきた。ルーミアが1、真宵が0。アリスが1、香霖が0、朱鷺子が1、成美が1だったよ。だから2だなんて数字を見たのは霊魔が初めてなんだぜ」

 

「そう、なんですね」

 

 成美という聞き覚えの無い名前は気になったが、恐らくは父・エスカルゴが襲った子なんだろう、と変に納得してしまった。

 しかし魔理沙が名前を上げた中には、どうにも、霊魔にとって気になる人物名があった。

 

「朱鷺子さんって……」

 

「あぁ、香霖のやってる香霖堂って店で助手しつつ同居してる、鳥の妖怪だ。香霖が名付けたらしい」

 

「あ、はい……えっと、会ったことあります」

 

「ん、そうなのか?じゃあどうして?」

 

「朱鷺子さんって、霖之助さんのことが好きなはずだよなー……って……思ったんです。霖之助さんを、誘惑もしてたはず……?」

 

「……成程。って、待て霊魔。この数字が何なのか、粗方の目星がついてるかのような言い方だな?」

 

「……博麗神社では、この数字は『経験人数』だって結論になってます。お母さんも霊愛お姉ちゃんも、霊麗お姉ちゃんも霊子も、皆それに賛成してて……。だから、答えさえ分かっていれば解決は後でいい、みたいな感じで、後で動くみたいで……」

 

「もし仮にそうだとすると……霊魔、純愛派のお前がシガレット以外の誰とヤッたんだ?」

 

「……それが分からないから、僕が来たんです」

 

「あぁ、そういう……成程ね」

 

 流石に、父と交わったなどと言えるはずもない。嘘をついて申し訳ないとは思いつつ、どうにか既に出てしまった結論以外の新たな結論を求めて、彼は異変解決に向かうのだ。

 

「もし仮に『経験人数』だとすると朱鷺子の数字が0ではなく1なのは、確かに気になる所ではある。香霖の事が好きで誘惑までしているのなら、って、思うが……でもまぁ、普通に考えれば、エスカルゴが襲ったんじゃないかな?」

 

「……ですかね」

 

 父がロクでもない事になるその説に、残念ながら納得出来てしまうのが悔しい、と霊魔は密かに唇を噛む。現状、否定できないのが辛いところだった。

 ハッキリ言って霊魔は、エスカルゴには肯定的な息子だ。だから最近は妖舞との折り合いも少し悪く虔魔とは言わずもがなの関係。駆翔の方が霊魔とは話が合うくらいだった。

 そうこう話している内に、2人は紅魔館へ到着。いつも通り美鈴は起きている様子だ。

 

「およよ……?霊魔くんと魔理沙さん?」

 

「1……」

 

「ま、美鈴は1だろう。エスカルゴだけだろうし」

 

「あ、成程。この数字の可視化の異変を解決しに?今回は霊愛ちゃんじゃなくて霊魔くんなんですね!あれ、もしかして初めての異変解決では?」

 

「は、はい……っ!」

 

「頑張ってくださいねっ!応援してます!」

 

「……///」

 

「さぁ、情報収集の為だ。通らせてもらうぜ」

 

「あ、それはダメです。プライバシーの侵害になるという結論が出ています。他を当たって下さい」

 

「共通点が分からねば答えを確かめられん。だから退け。こんな異変、さっさと解決してやるぜ。そのプライバシーとやらも、鎖国するより確実に守れるだろう。さぁ、退かねば撃つぞ!」

 

「どうぞ撃ってみてください。宣戦布告と看做(みな)し、侵入者として対処させてもらいますよ」

 

「……チッ。退く気は無いようだな?」

 

「微塵も。ですが霊魔くんはお通りください」

 

「えっ?」

 

「シガレットちゃんに、逢いに来たんでしょう?」

 

 そう言って、魔理沙には見せた事もないような、輝くような笑顔を見せる。そうと言えば通らせる、そう言っているのだ。その意図に気付いた魔理沙は先に霊魔だけでも潜り込ませようと、背中を押す。

 

「……そうだよな霊魔?ほら、そう言えっ!」

 

 しかし、悲しきかな。霊魔という男子は、よりによって、バカ正直な所が父親に似てしまっている。勿論、嘘をつく事もあるが、そうではない。虔魔のように、悪くも正直なワケではない。

 霊魔の持つ小さな誇りが、今この場で、敵対者の美鈴に嘘をつくのを許さなかった。

 

「違います。僕は……この異変を解決しに来た!」

 

「……あっちゃ〜……」

 

「……仕方ない、ですね。じゃ、霊魔くん。痛くても泣いても、降参するか気絶するまで相手しますよ。エスカルゴさんですら勝てない私に勝てますか?」

 

「エス……マジかよ!?」

 

「お父さん……ですら……!?」

 

「さ、どうぞ。2人同時に掛かってきてください。その方が手間が省けますので」

 

 どこからどう見てもいつも通りの美鈴ではない。明るく、笑顔の溢れる美鈴じゃない。まるで、敵。噛み付くような気配こそ無いが、外敵と認識されたような、この冷たさ。

 霊魔は、初めて美鈴に恐怖した。

 

「……やるぞ霊魔。美鈴のヤツ、どうやら、全く嘘をついてない様子だぜ」

 

「はい……。でも、お父さんが負けるなんて……」

 

「考えにくいが、何らかの条件下ならエスカルゴも美鈴に勝てないんだろう。恐らくは、エスカルゴは美鈴の『必勝パターン』に巻き込まれたのかな……。もしくはエスカルゴ自らがそれに挑んだか、だな」

 

「!!」

 

 必勝パターン。少し前に、姉の霊麗がその特訓の為に博麗神社で父と戦った事を霊魔は思い出した。霊夢のアドバイスによってそれを身に付ける為に、そして、相手を自分のパターンに持ち込む為の特訓だったはずだ。

 それを見て何を感じたか。何を思ったか。そして何を学んだか────霊魔は走馬灯のようにそれら全てを映像のように思い出していた。

 

「────魔理沙さん。トドメお願いします」

 

「えっ?」

 

「僕は吸血鬼。身体の耐久だけなら魔理沙さんより上です。美鈴さんの攻撃は、お父さんすら殺せる。そう考えて動いた方がいい」

 

「……確かにな。エスカルゴは、気絶なんてしない。気絶する前に自殺して復活するからな。それなら、どうしてエスカルゴが負けたのか?────美鈴に殺されたから、か」

 

「はい。お父さんはそういう決着を好みますから。気絶か死亡、お父さんなら絶対に自殺(死)を選びます。一瞬で気絶させる方法なんてそれこそ電撃くらい。手刀だってろくに効かないでしょう。絞め落とすのだって時間かかりますから、お父さんだったら自殺するでしょう」

 

「OK、霊魔。任せた。援護射撃は任せろよな」

 

「ありがとうございます」

 

 言うなり、霊魔は地面を蹴って美鈴へ急襲する。美鈴はドスンと四股を踏むようにドッシリ構えて、霊魔の攻撃を受け止めた。

 

「重い攻撃ですね……ですがッ!」

 

「!」

 

 拳を構えた美鈴。退避しようと身を引くがそんな霊魔を逃す美鈴ではない。退避する霊魔よりも速く移動し一瞬で霊魔に追い付いたかと思うと、構えた拳を霊魔へ突き出す────!!

 

「『山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)』ーーーーッッ!!!」

 

「!?」

 

 ドドドドドドドドドドドドッッ!!!と凄まじいラッシュを両腕で受け止める。太陽を克服しているはずの霊魔、けれども美鈴の拳を受け止める毎に、ほんの少しずつ、腕が削り飛ばされるような、妙な感覚に襲われ始めた。

 

「な……あぁっ!腕がっ!?溶け……」

 

「大丈夫、死にません!気絶はしてもらいます!」

 

「ぐぅああぁあああああっっ……」

 

「霊魔ァッ!……くそっ、美鈴、覚悟ッ!恋符……」

 

「ムッ!防備『クラッドアーマー』ッ!!」

 

 ミニ八卦炉を向け魔力を充填する魔理沙。しかし美鈴はラッシュ中であるにも関わらず、透明な気の鎧のようなものを纏う。美鈴と背景の境界はまるで陽炎のようにユラユラと揺らめいている。

 

「……『マスタースパァァァァーク』ッッ!!!」

 

「効きませんッ!むんっ!!」

 

 美鈴のラッシュの餌食になっていた霊魔を空中に投げ飛ばす。そしてそのまま、マスパに向かって、回避するどころか逆に胸を張って受け止める。

 

「な、にィ……!?」

 

「無駄無駄無駄無駄ァッ!今の私には、その程度の火力は通用しませんよォッ!!」

 

「なら────」

 

 しかし、その時。美鈴の頭上にて、幼き男児の、どこか頼りなさげだが雄々しくも聞こえる、元気が溢れるような声が響き渡る。

 

「卍ッ!解ッ!!」

 

「!?」

 

「『安穏遊戯(あんのんゆうぎ)・曇電兌死(どんでんがえし)』ィッッ!!」

 

 彼女が拳を空へ向けた時には、既に遅く……霊魔は着地しており、美鈴の透明な鎧を砕かんばかりに、凄まじい連撃を叩き込んだ────!!

 

「しゃアッッ!これで────魔理沙さん!!」

 

「トドメだ!恋心『ダブルスパァァーク』ッ!!」

 

 霊魔の攻撃によって、透明な気の鎧が壊れた事を見届けた魔理沙は、ダブルスパークで美鈴を強かに撃ち抜き、紅魔館へとフッ飛ばしてしまった。

 

「ハァッ……ハァッ…………勝っ、た…………?」

 

「ナイスガッツだぜ!霊魔!」

 

「あ……ありがとう、ございますっ……!」

 

 パチンとハイタッチした2人は、遂に、幻想郷の最強戦力を保有する紅魔館へと、満を持して、足を踏み入れた────!

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