紅魔館に入ると目の前には不機嫌そうな顔をした燕尾服の少年────虔魔が立っていた。右手にはナイフ。2人は、嫌な予感がしていた。
「おやおやおやおやおやおやおやおや……。お兄様に魔理沙さん、ようこそ紅魔館へ。どうされました?弾幕ごっこというかバトルの音が聞こえましたが?まさか美鈴さんを倒したという事ですかね?」
「お、おう、そうだ!捜査の邪魔してきたからな!お前も邪魔するならそうなるぞ!」
「いえいえ僕など魔理沙さんには敵いませんよぉ。僕が狙っているのは────」
時が止まる。気が付けば虔魔は霊魔の背後に居て彼の首筋にナイフを当てていた……。
「お兄様。あなただけです」
「……僕が、何したっての」
「ただ単に羨ましいんですよ。お兄様だけですよ、エスカルゴチルドレンでの非童貞なんて。僕など、こんなにも異性に囲まれた環境だというのにッ!!お兄様より恵まれた環境だというのに!なのに僕は未だに童貞なんですッ!!」
「そんなんだから好かれないんじゃないの」
「言いましたね?思えばあなたはいつもそうです、僕にばかりそうやって冷たく当たる……!」
「虔魔には温かく接する必要が無いから」
「〜〜〜〜〜ッッ……うおおああああああっっ!!」
虔魔は怒りに任せてナイフを振り上げるが霊魔は黙って振り向きざまに股間を蹴り上げるッ!!
「かッ…………くぉ…………」
白目を剥き、虔魔はその場に倒れ込んでしまう。魔理沙はミニ八卦炉を構えていたが、もう、出番は無さそうだった。
「よ……容赦無いのな……」
「僕……弟だけど、コイツが嫌いなので」
「……まぁ……男子だけでも5人居るんだものなぁ。相性の良いヤツ、悪いヤツは、どうしても出てくるものだよな」
するとそこに、カツン、コツンと軽快な靴の音を鳴らして十六夜母娘が現れる。虔魔の敵討ちか、と魔理沙は身構えるが、どうやらそんな様子は無い。
それどころか股間を押さえて気絶している虔魔へ軽蔑するような冷たい視線を飛ばすくらいだった。
「……どうやら、また虔魔が迷惑をかけたみたいで。ごめんなさいね、霊魔くん」
「……いえ」
咲夜、そして話を聞かされていた弦月姫は、彼の頭上の数字を見て「経験人数の数字ではない」と、密かに確信した。何故なら彼女達にとっても霊魔は圧倒的「純愛派」、そして「
「霊魔、少しついて来てくれる?」
「え」
「図書館に来て欲しいの」
「え、でも……」
「うん?あぁ大丈夫、私の事は気にするな!咲夜は私に用があるみたいだからな!」
「!」
十六夜母娘の意図を汲んだ魔理沙は、2人の思惑通りに、別行動になるように敢えて促す事にした。
まずは魔理沙。霊魔が姉と共に地下の大図書館へ向かう道へ消えた所で、咲夜に向かってこの異変について詳細を訊ねる事にした。
「なぁ、咲夜。この妙ちくりんな数字は何なんだ?何か分かるか?弦月姫は0、咲夜は1らしいが……」
「分からない。現状はね」
「ふむ。博麗神社では『経験人数』っていう結論に至ったみたいだが、紅魔館では、そういった答えは出てないんだな」
「はぁ?何よそれ、魔理沙が考えたんじゃなくて?博麗神社の総意だと言うの?」
「あぁ、霊魔が言ってたんだよ。だから霊夢達は、今回は答えが分かったようなものだからって、まだ様子見してるんだ」
「呆れた。もし『経験人数』だとしたら霊魔くんのあの数字は何なのよ。あの純情派の霊魔くんが一体どこの誰と『経験』したというの?」
「うん。霊魔もそこに疑問を持っているからこそ、自分から解決に乗り出してるそうだ」
「!……成程、だから彼が……。いいわ、お嬢様達が待ってるから、ちょっと来て。色々と、情報交換をしましょう。こちらとしても……あんまり、このまま外には行きにくいから」
「そうだな。どんな数字にせよバレたら恥ずかしいモノの可能性がある以上……迂闊には動けんな。私のような独り身より、咲夜みたいに組織に属してりゃ尚更な」
「……悪いわね」
「いいってことよ。貸し、1つな。次、私の侵入を見逃せ。いいな?」
「それは業務上できかねるわね」
「くははっ、やっぱそーかー」
「個人的なお願いにしてちょうだい」
「ん、考えとくぜ」
そこから魔理沙はフランとレミリア、そして娘のレイチェルの4人で、あれやこれやと話し合う事になった。紅魔館も、博麗神社のように「経験人数」という結論に至った事や、様々な事実を加味すると逆に怪しくなる事など……。
現状、「最有力」な説が「経験人数」であるのは変わりないが、やはり確信にまでは至らないそう。魔理沙は、捜査が振り出しに戻ってしまったのを、密かに感じ取っていた。
もしや本当に、霊魔の言う通り霊夢達の見解こそ間違っているのではないか、と────。
◆
「え……シガレットお姉ちゃん……?」
「……霊魔くんは……『2』なんだね」
大図書館にまで連れてこられた霊魔は、凄まじいモノを目にした。まず同伴してくれた弦月姫は0。図書館の主、パチュリーは1。ここあは3。一方、小悪魔は図書館のどこかで仕事をしているらしく、姿は見えないが、シガレットは脅威の4である。
霊魔は、この数字が「経験人数」だと確信に近いモノを感じている。だからこそ、この「4」という数字に違和感があった。
霊魔の知る、シガレットの経験人数は「2」だ。彼女の処女を散らせたのは言わずもがな、父であるエスカルゴ。魔力の供給の為にという名目で2人の処女を食い荒らした。そして、2人目は彼氏である霊魔。そのはずだ。
「お姉ちゃん……?なん……で……?」
「霊魔くんこそ、どうして『2』なの……?」
「先に質問したのは僕だッ!!」
「っ……!」
「もう誰ともセックスしないって!僕以外の誰ともセックスしないって約束した!なのに!なんで4になってるの!」
「……ごめんね。信じてもらえるかは分からないけど本当に覚えがないの。そもそもセックスはお父様と霊魔くんの2人としかシテないのに……」
「……」
「霊魔くん。主人の私が保証するわ。シガレットは決して嘘なんてついてないわ。彼女がセックスした人はエスカルゴと霊魔くん、2人だけよ。これらの客観的事実から考えるに、この数字は、『経験人数ではない』と考えるのが自然だと思ったのだけど、どうかしら」
「…………そう、かも。ごめんなさい……お姉ちゃん」
「んーん、いいよ。私もそうだと思ってたからさ。だって、そう考える方が辻褄が合う事の方がずっと多いんだもの……」
「……うん」
シガレットの「経験人数」は4人ではなく2人。ここあの経験人数は1人。これにより霊魔の確信は揺らぐ事になる。しかし、ずっと何やら考えていたここあが、ふと言葉を漏らす。
「……あれ?もしかしてシガレットの経験人数って、2人じゃなくて4人じゃない?」
「!?」
「なっ……!?何言ってるの、ここあ!?」
「そうよ、憶測でモノを言うのはやめなさい」
「だって聞いてくださいよパチュリー様。お母様に色々教わる時に、お母様や私ともセックスしてると思うんですけど。百合?レズセックスってヤツ?」
「あっ!」
「えっ?」
「ゔっ♡」
「「「!?」」」
同性とのセックスも含む。霊魔は知っていたにも関わらずすっかりその可能性を忘れていた。そしてここあのその指摘にて気付かされたシガレットは、まさか同性も含むのかと驚きの声を漏らす。
パチュリーは「小悪魔も親子セックスしたの?」という意味の驚きの声を漏らす。
そして霊魔は美人な小悪魔姉妹の百合セックスを想像して精液を漏らした。
霊麗は、姉妹の近親相姦を題材とするエロ漫画が大好きだ。だから霊魔もそういうモノは多少ながら目にした事がある。お陰で、実際には目にした事が無くとも、小悪魔姉妹をその場面に当てはめる事ができてしまった。
「え……えっ?霊魔くん……イッた?」
「はふ……はふ…………♡」
「……性癖まで、親子で似るの?エスカルゴも、確か百合が好きだったわよね」
「あははは!霊魔くん、おもしろ〜い!今度、私とシガレットのレズセックス、見せてあげる?」
「!?」
「ちょっ、こ、ここあっ!」
「……か…………考えて……おく……よ…………///」
「よっし……!」
「えぇ〜……」
そして興奮冷めやらぬまま、霊魔は、自身の経験人数が本当に2人である事実を暴露した。弦月姫は勿論、パチュリーは顎が外れるかと思うくらいには口をあんぐりと開け、小悪魔姉妹はゲラゲラゲラと大笑いした。
シガレットへの秘密が無くなって、霊魔は少し、心が軽くなったようだ。しかしこの日以降、確かに弦月姫とパチュリーの、霊魔、そしてエスカルゴを見る目が変わったのであった────。
魔理沙やレミ咲などは経験人数「ではない」と確信
霊魔や図書館組などは経験人数「である」と確信