永遠亭を出た2人は、永琳のアドバイスで冥界、白玉楼へ向かっていた。
魔理沙は「霊夢が霊魔を襲ったのでは」そして、
「霊魔はそれが恥ずかしくて隠しているのでは」と推理していた。白玉楼に着くまでまだ時間がある。親友への疑念をどうにかしようと考えた魔理沙は、霊魔に問い質すことにした。
「なぁ霊魔」
「はい」
「霊魔の『2人目の相手』……誰だ?」
「……合流した時に、言った通りですよ。それが僕も分からないから、僕が来たんです」
「本当か?」
「…………」
「緋月や巫月、霊愛や霊麗、霊子の事もある。私はもう、なんて言われようとスルーするさ」
「………………お父さんです」
「ははっ、やっぱりな〜。だと思っ…………え?」
「?」
「聞き間違いかな……今、『お母さん』じゃあなくて
『お父さん』……って聞こえたんだが?」
「?……そうですよ」
「はぁっ!?あいつ……はぁ!?男だろ!?」
「僕がお父さんにお願いしたんです」
「!?」
「その……挿入されてる方はどんな感じなのかって、僕、分からないから……。おまんことお尻っていう、違いはあるんですけど……。ちょっと知りたくなってワガママ言っちゃったんです」
返す言葉が無かった。ここまできたらもう自分の推理通り、「
だって母と息子という組み合わせなら「娘を犯すエスカルゴに感化されたから」という、尤もらしい理由が考えられるし、言い訳にも使えるからだ。
しかし現実は違っていた。まさかの、いつも通りエスカルゴによる近親相姦だった。しかも、息子を犯しているときた。
魔理沙は強烈な目眩がした。
「……なんか疲れたな」
「そうですか?」
「疲れたから……もういいや。飛ぶのはやめだ。もう私の転送魔法で冥界に瞬間移動する。箒に掴まれ」
霊魔が返事する前に、掴んだのを確認すると特に詠唱する事なく冥界、白玉楼の前に瞬間移動する。どうやら、妖夢が門番をしているらしい。
「魔理沙さんに霊魔くん……?何用ですか?」
「この数字の可視化異変を解決にな」
「成程、情報収集に来たという事ですね。ですが、今は通せません。少し、取り込み中でして」
「ほぉう、取り込み中ねぇ。気になるな、通させてもらうぜ!」
「通しませんッ!!」
楼観剣を抜いて、門の前にドンと構える。見れば門の屋根の上には祖父の妖忌が仁王立ちしている。腰に二振りの刀を
「妖夢!修行の成果を見せてみよッ!」
「はい!」
「……魔理沙さん。ここは僕がやります」
「任せた。今の妖夢は、恐らく私の手には負えん。背後に祖父が控えていたんではな……」
魔理沙が下がると、反対に霊魔が一歩前に出る。そして2人の戦いはまさに、文字通りの「一瞬」でケリが着いた。
「
「魂魄妖夢、参るッ!」
同時に動き出した2人。姿が消えたかと思えば、霊魔は門の前に現れ、妖夢は魔理沙の前に。そして2人揃って、力が抜けたように膝から崩れ落ちる。
「ガハッ……まさか…………刃の方……使…………ぅ……」
「霊魔ぁっ!……クソッ、妖夢ぅ!!」
「……不覚……ッ」
「え」
霊魔は再生力に優れる吸血鬼である。妖夢は心を鬼にして、そこを利用して、今回は峰打ちではなく刃の方で霊魔を攻撃した。
対する霊魔はすれ違いざまに二連撃を与え妖夢をノックダウンさせた。一撃目は自らの腹に滑り込む楼観剣の軌道を変える為に。二撃目は妖夢の本体を攻撃する為に。
「……お、おぉ……えっと…………勝った、のか?」
「…………この未熟者め。居合で幼子に負けるとは」
「!!」
妖忌がスタンと飛び降りた。霊魔は膝をついて、再生の方に全力を使っている。今にも気絶しそうなくらいフラフラな霊魔へ、妖忌は手を伸ばす……。
「待て妖忌、動くなッ!!」
「魔法使いよ、お前は妖夢を連れて来なさい」
「……あん?何だって?」
「儂は妖夢を打ち倒したこの少年を寝かせてくる。幽々子様は、西行妖の下だ。……妖夢を適当な部屋に置いたら、そこに行くといい」
「!……おうっ!ありがとな!」
妖忌、妖夢の頭上にはそれぞれ「1」の数字が。妖夢は妖舞の親だから分かる。そして妖忌────彼も妖夢とは血の繋がった祖父である以上、過去に性行為にて子を為したのは、当たり前だが、それが普通だ。
しかし魔理沙は、この厳格な老人が女性を相手に腰を振り、あまつさえ射精する様子など、全く想像できないでいた。彼女もまたエスカルゴとは何度か交わっているので、だからこそ「セックスの動き」というものが、何となく分かってしまったからだ。
そして妖忌に言われた通り、妖夢を適当な部屋に寝かせ、かつて春雪異変を解決しに来た時以来に、あの巨大な妖怪桜、西行妖の元へ……。
しかし西行妖はどう見てもまずい状況にあった。
「な……なんだよ、これ……!?」
「あら、お久しぶりね。あの宴会以来かしら」
「なら大して久しぶりでもないだろうぜ。それより幽々子、この桜……確か、春を集める?とかしないと咲かないような桜じゃなかったか?」
「そうなのよ。なのに朝起きたら……ご覧の通りよ。殆ど、満開に近い状態で開花しているようなのよ。今朝の話よ、これは」
「な……ッ!?」
かつて幽々子が西行妖を咲かせようと春雪異変を起こした時でさえ、せいぜいが、八分咲きだった。しかしどうだ、九分咲きどころではないくらい殆ど満開だった。
「この、頭上に数字が現れる異変と同時に起きた。不可思議ね」
「ん?幽々子、もしかして、頭上の数字が何なのか分からないのか?」
「ええ。妖忌や妖夢に会ったでしょ?彼らを見ても分かる通り、白玉楼には、0か1しか居ないのよ。さっき、妖忌が誰かを運んでいるのをチラッと見たけれど、その子は『2』だったわね」
「あぁ、霊魔だぜ。妖夢と殆ど相討ちだったから、妖忌が霊魔、私が妖夢を運んできたんだ」
「そう、そうだったのね。……霊魔くんが、2、ね。この数字、何なのかしら。あの言い方から察するにあなたは既に、この数字の正体を掴んでいるように聞こえるのだけど?」
「9割ほど掴んでる。だがまだ確信が持てないし、犯人も掴めなくてな」
「ふぅん……この数字は、何を意味しているの?まだ確定でなくてもいいから、教えてくれるかしら?」
「あまりに荒唐無稽で笑いたくなるようなモンだ。心して聞け。私達は、これは────『セックスの経験人数』を表していると睨んでいる」
「……セックスの経験人数?」
「そうだ」
扇子を口元に当て、西行妖を見つめて考え込む。魔理沙は幽々子の視線に釣られるように、西行妖を眺める。
本当に美しい桜だ。数多の命を吸い取ってきた、邪悪な桜だという事実さえ知らなければ────、或いは今ここで、異変解決を中断してでも、花見をしたいと思っていた事だろう、と唇を噛む。
しかしその根元に視線を移した魔理沙は、驚愕の光景を目にしてしまった。西行妖の根元には彼女がよく見慣れた「1」の数字が浮かんでいたのだ。
「………………はぁ!?」
「気付いたようね」
「ゆ……幽々子?これは……」
「あなたには、言っていなかったけれど……西行妖の根元には、私の死体が埋まっているの」
「!?」
「西行妖の封印の依代とする為にね」
「な……成程……?」
「実は、私はすぐに、この数字が『経験人数』だと分かったの。小春や妖舞くんだけが、この白玉楼で
『0』、私、妖夢、妖忌が『1』だからね。他には思い付かなかったの。さっきまで紫も居たけれど、紫も『1』だったからね」
「え、でもさっき、まるで知らないみたいな……」
「ええ。私の推測は間違ってたと、そう思ったの。だって、おかしいでしょう?西行妖の根元に……私の死体の頭上に『1』があるんだもの」
「………………」
魔理沙は考え込んでいた。エスカルゴは、娘達を犯している。そして頼まれれば息子すらも犯す男。それなら、幽々子の死体は?白骨化などしていない幽々子の死体。封印の依代なので、劣化などしないだろうと仮定すると、エスカルゴは、亡霊の幽々子のみならず、生身の幽々子すら犯した可能性が浮上してくるのだ。
「でもまぁ……冥界を訪れる前に、幻想郷で、様々な例を見てきたのでしょう?魔理沙と霊魔くんは」
「まぁな、だからこそその結論に至ったワケだし」
「はぁ……全く。エスカルゴくんの仕業ね……」
「!」
「うふふ、ホント、あの子ってばしょうがない子……そんなにエッチしたいものなのかしら……?」
「えッ……ゆ、幽々子?そんなにサラッと……」
「?」
「生身の幽々子は……死んでるん、だよな?」
「そうよ?そうでないなら、今ここにいる私は何?今の私は亡霊よ?生身はとうの昔に死んでいるわ。それこそ1000年以上も昔にね」
「ならそれはおかしいだろ!エスカルゴが幽々子の死体を犯してた事になる!」
「その仮定に、不思議は無いわ。エスカルゴくんは私の死体を犯した。だから、生身の私の経験人数はエスカルゴくんの『1』。それだけの話よ」
「あいつが死姦したって言いたいのかッ!?」
「?それの何が疑問なの?」
「何が……って…………どう考えてもおかしいだろ!」
「私の彼はそれくらいするわ。私と交わるんだから生身の死体と交わってもおかしくないわよ」
「!?」
そんな所に、霊魔を部屋に寝かせてきた妖忌まで合流。言い合いをしている魔理沙と幽々子を見て、それを咎めるが、魔理沙は事の次第を説明。論争は更に激しさを増すばかり────。
死姦については第1部で書いた通りですね。