※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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6面:予測できた黒幕

「それにしてもアレだな……。幽々子って思ったよりアイツのこと好きなのな。あいつが幽々子を大好きなのは、何となく分かるけど……」

 

「それはもう……私の彼ですもの……///」

 

「うん、皆の、な」

 

「妖忌はご覧の通りの堅物で、そもそも苦手だし、妖舞くんは赤ちゃんの時分から見てきたからねぇ。やっぱりエスカルゴくんなのよ。彼、ああ見えて、かなりの聞き上手だしね。妖夢や妖舞くんみたいに話を聞き流さないから、そこも高ポイントだわ」

 

「妖夢……お前まだそのクセ治ってないのか」

 

「うっ」

 

「ましてや息子もそれに似るとか、やれやれだぜ。霊魔を見習えってんだ。浮気者の親父と愛が重めの霊夢の息子なのに、どちらにもあんまり似とらん。反面教師にしたからだろ。妖舞もそれくらいの事ができんとなぁ……」

 

 魔理沙は幽々子の話を聞き、魂魄親子に厳しめの評価をする。しかし現実問題、それが妥当だった。思えば幽々子もお嬢様である。基本的に身の回りに敵対しそうな者など置くはずもなく、従者の多くはイエスマンなのが普通だろう。それが無いのなら、それが無いだけでその者への評価は他とは異なる。

 

「────まぁ、なんだ。あの話はもういいとして問題はこれからだよ。この可視化異変を、さっさとどうにかしなくちゃ。西行妖の例を見ても分かるがバレたくないモノまでバレちまうからな」

 

「そうね……これからどうするの?」

 

「妖夢は気にしなくてもいいさ。なんとかなるよ。幽々子、紫を呼べるか?」

 

「ええ」

 

 フラリとどこかに向かうと、少しして、頭の上に

「1」の数字を浮かべた紫を伴って、ひょっこりと西行妖の下に現れた。魔理沙はその隙に、兄や妹と話していた霊魔に声をかけ、出発する旨を伝えた。

 

「御機嫌よう。元気そうね魔理沙、霊魔くん」

 

「ご……っ、ご無沙汰、してますっ……」

 

「この結論に至るまで随分と掛かったわね魔理沙」

 

「最終的に、黒幕に勝てばよかろうなのだ。過程や方法、掛かった時間なんぞ、どうでもいい」

 

「まぁ、こんな危機的状況でもない異変だものね。さぁ、2人共。このスキマに入るといいわ」

 

 迷いなくスキマに飛び込む魔理沙。霊魔はそんな彼女に続くようにして、ぺこりと幽々子、紫に頭を下げてから飛び込んでいった。

 

「……思ったより可愛いわね、あの子」

 

「やっぱり紫もそう思った!?」

 

 

 ◆

 

 

「うーん、後戸の国か、ここは……」

 

「わ……わぁ……扉だらけ……」

 

「ここに摩多羅隠岐奈とか居るんだぜ」

 

「……阿弥お姉ちゃんが犯人だと思うから、多分もう正解だね」

 

「なっ……阿弥だと!?」

 

「隠し事を暴露するのって、阿弥お姉ちゃんの領分だから。能力は《表を司る程度の能力》で、建前を取っ払う事も出来るし、逆に建前しか使わせない事なんかもできるから……」

 

「お前なー……気付いてたんなら言えよなー」

 

「西行妖、幽々子さんの攻撃を防御した時の反省会してたから……」

 

「反省は大事だが帰ってからにしろー」

 

「はぁい……」

 

 そんな2人の前に現れたのは、バックダンサーの2人。爾子田里乃、丁礼田舞。この2人が来るかと魔理沙は内心腰が引けていた。

 初めて戦った時が一番激しい攻撃をしてきたが、この2人の弾幕は中々に鬼畜なのである。

 

「やっほー!もう少しでゴールに到着だよーっ!!頑張れっ、頑張れっ♡」

 

「でもボス戦の前に小休止!そして覚悟の時間だ!ケツイを漲らせよう!さぁ、2人共!覚悟はいい?

『僕はできてる!』」

 

「『私はできてる!』と思う者だけ進んでよし!」

 

「……え?弾幕ごっこは?」

 

「今回は妨害する為に来たワケじゃないからね〜。2人の『覚悟の準備』を促しに来たの♪」

 

「何だ、そんな事か。覚悟なんてのは、異変解決に踏み切った時点で出来てるぜ」

 

 そう言って魔理沙は2人の横をすり抜けていく。しかし霊魔はそれが出来ず2人の前で立ち止まる。少し離れてから魔理沙は霊魔が居ない事に気付き、仕方なくUターンする事に。

 

「おい霊魔、何してんだ?行くぞ?」

 

「……覚悟、しなくちゃって。相手が阿弥お姉ちゃんだから……特に…………何されるか分からないもん」

 

「あぁ?さとりじゃあるまいし大丈夫だろ?それに隠し事なんてのは誰にでもあるし、そこまで個人に踏み入るようなヤツでもあるまい」

 

「………………かなぁ」

 

「そうだぜ。ほら、行こう」

 

「……うん」

 

 魔理沙に手を引かれ素直に従う。そんな2人を、手を振りながら見送りながらも、バックダンサーズ2人はクスクスと笑いを堪えきれない様子だった。

 

「あの2人、負けたね」

 

「あの2人、終わったね」

 

「もう、本当の意味で阿弥には勝てない」

 

「本当の意味で阿弥に勝つ為には、お兄さんや娘……巫月ちゃんや、昔の虔魔くんみたいにならなくちゃいけない」

 

「『厚顔無恥』こそが阿弥に勝つ為の第一の武器」

 

「『覚悟』こそが阿弥に勝つ為の第二の武器」

 

「「武器を持たぬ者を待ち受ける末路は、残酷なる敗北だけだ!!」」

 

 クスクスと、くつくつと笑い、2人はお師匠様、隠岐奈へ事の次第を報告しに、るんるんと、身体を弾ませながら向かったのである。

 

 

 ◆

 

 

「やぁやぁよく来たな弟よ。……と、誰?お父さんの新しい娘か何か?」

 

「霧雨魔理沙だッ!解決屋くらい覚えとけ!」

 

「どもどもー、摩多羅阿弥でっす。ういーす」

 

「……テンションおかしくない?酒飲んでる?」

 

「飲んでるよ?だってさぁ、アレコレ話し合ってる連中、面白いんだもん?全然的外れなのに、これで確定だとか思ってんの。いやいや滑稽だよねぇ〜。勘違いヤローと右往左往してるヤツを肴に酒飲むのマジで最高すぎィ〜」

 

 これが次期賢者である。母親である隠岐奈が頭を抱えるのも仕方ないというものだろう。紫の方が、余程まともな子育てをしているんだな、と魔理沙はドン引きした。

 

「と、とにかく!私達はこの可視化異変を解決しに来たんだ、さっさと解除しな!さもないと……」

 

「撃つ……って?いいよぉ、撃ってきなよ。霊魔も。私、これまで皆の前で戦ってこなかったもんねぇ。エスカルゴチルドレンの皆、そしてその身の回りの全員が『摩多羅阿弥は戦えない』────そういう共通認識を持ってる。違う?」

 

「……!」

 

「……」

 

 魔理沙も霊魔も、黙るしかなかった。まさに図星だったからだ。阿弥は舌戦を専門としていて、神愛どころか樹理愛以下の戦闘力────誰もが阿弥をそう評価していた。

 しかし阿弥は「それは違う」と言う。

 

「霊魔は分かんないけど〜……魔理沙には勝てるよ。あー、勝てはしないかな。でもボロ負けはしない。たとえ全力だとしてもね〜」

 

「……ほぉう、イイぜ。酔っ払いの小娘が私を相手にどこまでやれるのか、見せてもらおうかッ!霊魔は見てな!!恋符『マスタースパーク』ッ!!」

 

 ゴオオオッと凄まじい圧のマスパを放つ。言われなくても霊魔が手を出すまでもないだろう、酔って気が大きくなってるだけ────霊魔でさえ、そう判断してしまった。

 そして実際問題として、阿弥はマスパを回避する様子は無い。モロに被弾する、そう思った直後。

 

「は」

 

「えっ」

 

 阿弥の姿が消えた。マスパに消し飛ばされたとかそういう手応えが無いのは術者本人である魔理沙がよく分かっていた。

 

「ばぁ♡」

 

「「!?」」

 

 すると直後、霊魔の肩にポンと手を置いて、舌をベッと出して現れる。彼女の背後に緑の扉がある。アレをスキマのように使って回避したんだろうなと魔理沙は直感するが、霊魔がつい反射的に、顔面に裏拳を喰らわせようとしたその時、謎が判明する。

 

「おっと危ないぃ」

 

「は……!?」

 

(霊魔の裏拳を避けただと!?私でも見えない攻撃だったのに……なんで阿弥が…………偶然か?)

 

「当たんないよ?おかしいね、ほぼゼロ距離なのに攻撃当てられないなんて。ザーコ♡」

 

「っるあぁぁああっ!!」

 

 牙を剥き出しにしながら、振り向きざまに顔面を殴り飛ばそうと拳を振るう霊魔。しかし阿弥は手を顔の前に持っていくと、パシと受け止めてしまう。

 

「……う……」

 

「当たんない当たんない、まるで当たんないよぉ?これぞ摩多羅流酔拳、なんちゃって」

 

 霊魔は距離をとる。そして魔理沙はミニ八卦炉を構え照準を合わせる。マスパの太さ、当たり判定を大きくさせる為に1段階目の変身をすると、透明な結晶の、フランのような翼がバサリと生えてくる。

 

「わーお。ガチだね。いーよ、来なよ」

 

「……恋心『ダブルスパァァァーーク』ッッ!!!」

 

「……っ……!!」

 

 回避はギリギリの所で間に合わなかったようだ。しかし威力が高過ぎたか、阿弥の左腕は、マグマに浸したかのようにグチャグチャになっている。

 

「ッ!?……そ、んな……やり過ぎちまっ……」

 

「あー大丈夫、こんなの『秒』だから」

 

 ジュルンッ、と体液のようなモノを出しながら、見る見るうちに再生されていく腕。その速度たるや吸血鬼の中でも特に再生に慣れている者のようだ。巫月は純血の吸血鬼でないにも関わらずズバ抜けた再生力を持っているが、彼女に負けずとも劣らずな再生速度であった。

 

「な……!?」

 

「あーあ、バレちゃった。私、生まれつき再生力が高くてね。でも知らなかったでしょ。私、普段から戦えないフリ(・・)をしてきたから♡」

 

「「!!」」

 

「実は私のフィジカルって、吸血鬼寄りなんだよ?弾幕は鍛えてないから、弾幕の戦いができないって話は嘘ではないんだけど」

 

「……お前、どうして……」

 

「そんな事より、いいの?魔理沙はその箒、大事にしてるのに。異変解決の為に乗ってきちゃってさ」

 

「?どういう意味だ?」

 

「その箒でオナニーしてんじゃん」

 

「はッ!?な、何でそれをっ、て、いや違う!」

 

「霊魔もだよー。お父さんとホモセックスしたのがお姉ちゃんやお母さんにバレたくないからって異変解決に乗り出して。自分からバラしちゃえば、私がこの異変に飽きるまで神社でグータラできたのに、バカだねぇ」

 

「阿弥お姉ちゃんとは違うから……バレたくない事は隠したい……!」

 

「ふぅん?ま、秘密なんて、『表』を司るこの私の前には無意味、無力、無駄でしかないけどね。あと魔理沙に関する秘密と言えば────」

 

「うるせえええええっ!!!魔心『ダブルファイナルマスタースパーク』ッッ!!」

 

 怒鳴り声と共に、火力より打撃力に傾倒した、超高威力のマスパを阿弥にぶつけ、遙か彼方に彼女を吹っ飛ばした。

 

「はぁ!せいせいしたぜ!帰るぞ霊魔ァ!神社まで送って行ってやる!!」

 

(余計なお節介かもしれないけれど……お父さんに、魔理沙さんをもっと襲うよう言ってみようかな……。寂しがってるからわざわざ箒を使ってるんだよね?うぅん……言わない方がいいかなぁ)

 

「ほらさっさとしろ、後ろに乗れ!」

 

「え」

 

「『使ってる』のは前の方だ気にすんな!それでもお前は気にするか?」

 

「あ、えと、ううん、大丈夫!ありがとう!」

 

「全速力で飛んで帰ってやるッ!わざわざ瞬間移動魔法なぞ使うもんかよ!!」

 

 かなり怒っているようだったので、霊魔は余計な事は何もせず、暫くそっとしておこう……と、密かに決めたのだった。

 そして程なくして、頭上の数字は消えて、可視化異変は静かに終焉を迎えたのである。

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