「*────ひとやすみ しようぜ」
「……はぁ?」
座り込むSansを前に霊夢は気の抜けたような声を出す。子供達も、揃ってキョトンとした顔でSansを見ている。
ウインクするように片眼だけ閉じていたSansは、今はもう両眼を閉じている。しかし次の瞬間、その頭蓋骨に、ピシッ……パキッ……とヒビが走る。
「え」
「*ハハハ……。まさか
「!?この声……まっ、まさか……エスカルゴ!?」
ニタリと笑ったSansの両眼は、交互に白黒に点滅しており、非常に神経を逆撫でするような見た目をしている。ゆっくり立ち上がると、両手をブランとぶら下げ、身体と横にユラユラ揺らし始めた。
「*いいや、オレはSansだ。紛れもなくな。ただ、この『眼』に込められた能力をフル活用して、博麗霊夢。オマエを追い詰めてみせるぜ」
「……ッ!」
「*『
「きゃっ!!」
重力操作の能力で霊夢を彼方へ吹き飛ばしたが、それを振り切った霊夢はターンして向かってくる。重力の方向は、前後左右上下の6方向だけではなくそれぞれの斜め方向まで加わった、実に実に多様な方向で、霊夢でも目を回してしまう程だった。
「*☝✋✞☜ ✡ ✌❄❄✌ 」
「「!?」」
霊夢と霊子が、Sansのセリフに反応した。やはり霊子も気が付いたか。最終形態のSansのセリフは、霊子が開発した魔法言語を元にしているのだ、と。霊子が姉や兄にそれについて話しているのを横目で見ながら、霊夢とSansの戦いを見守る。
ブラスターや骨の弾幕の雨。オレンジ攻撃に続く青攻撃、青攻撃に混じるオレンジ攻撃。何故霊夢はこんなにも巧妙に襲いかかる攻撃に対応できるのか未だに不思議でならない。
「……お父さん」
「ン。どした霊魔」
「Sansの、あの眼……もしかして……」
「気付いたかい」
「うん。お姉ちゃんは、まだ気付いてないと思う。アレに気付けるのは僕とお母さんだけだよ」
「Sansは、俺の技術の結晶だ。俺の持つ式神の技術だけじゃ、あそこまでのパフォーマンスは出来ん。せいぜいが、藍の式神の橙より少し弱いくらいだと思う。ならどうする?────そう、伊弉諾物質を使うのさ」
「……やっぱりかー」
「おう。Sansは俺の式神、俺にしか扱えんワケだ。霊魔の『
「Sansは、『眼に込められた能力をフル活用して』なんて言ってた。……アレに込めた能力は何なの?」
「能力名なんて考えてなかったなぁ。だが……敢えて名付けるとしたら《データを溜め込む程度の能力》みたいになるかな?」
「え?でも、だって……え?だってSans、その能力でお母さんを倒すって……」
「だから、『これまで得た情報で』って意味だよ」
「!?」
「Sansには、もう、奥の手なんか残ってねーのさ。動力となる妖力が尽きるまで、暴れ回るのみ」
「……Sans……」
「案ずるな。Sansは死なねえ。たとえ、依代となるあの骨が粉々にされたとしてもな」
「え」
「ヒントをあげようか。Sansの両眼に使った伊弉諾物質に込めた能力は、さっき言ったもの。ならば、その伊弉諾物質に込められた『魂』は何だと思う?あのSansに『魂』なんてものは無いぜ」
「え。僕の『安穏遊戯』は僕の魂のコピーだけど……あれ?でもお父さんは不老不死で、肉体じゃなくて
『魂』が『本体』になってる……んだよね」
「もう1つヒント。今の俺は神の力を持ってるな?神は『本体と変わらぬ強さの分身』を出せるよな。これを何と呼ぶ?」
「────まさかSansの伊弉諾物質には……!!」
「そゆこと。あの伊弉諾物質には、俺の『
「ッ……!!」
重力の扱いに特化させた式神、Sans。これなら、少しくらいは霊夢を追い詰められると思ったのだがやはりそれは自分の技術を過大評価しすぎたのか、霊夢を追い詰めてやるどころかこちらのSansの方が追い詰められている。
「*☟✌❄ ✋☞ ✡ ✌❄❄✌ ⚐☜ ☠ ❄ ☟✋❄✍ ❄☟☜ ☞ ✋☠☝」
「何言ってんのか分かんないわよッ!」
「*…………」
「!?」
瞬間、ガクリとSansは膝をついた。見てみると、白黒と点滅していた彼の両眼は点滅をやめて、元の真っ黒な眼孔になっていた。
霊夢は、いつSansからのブラスター攻撃が来てもおかしくないからと身構えており、しかも、近付く様子さえも見せない。
「*……クソ……
最後にそう言ってウインクしたSansはポケットに手を入れ、立ったまま目の色を失って、プツリと、呆気なく機能停止してしまった。
◆
「結局、レーザーと骨と重力ばっかりだったわね」
「それがメインウェポンだからな。で、どうだよ?霊夢から見て、式神の出来はどう?」
「私は式神とか作らないし、式神関連なのも、紫、藍、橙しか見てきてないからねぇ。何とも言えないけれど……ま、霊愛と霊麗はあの骨に勝てないわね」
「は!?」
「私はともかく、本気のお姉ちゃんも?」
「あの骨、吸血鬼の……ううん、エスカルゴの気配がしたわ」
「「「「────ッ!?」」」」
「エスカルゴ、そろそろネタバラシしなさいよ」
「おう。俺の式神のSansは、創造魔法じゃあなく、俺の骨を元にして生み出してるんだ。そんでもって錬金魔法で少し外見を作り替えてる。光る眼は創造魔法ではなく、霊魔のけん玉、霊愛の陰陽玉と同じ伊弉諾物質によるものでな。データバンクの役割を果たしてるんだ」
「じゃ、じゃあ、お父さんがコイツの強度とか運動性能にヤケに自信があったのは……」
「
「……でも骨の弾幕は単調だったし、能力だってあの重力の能力しか使わないんだ、頑張れば勝てるよ」
「『
「えぇ……」
「Sansは気分屋というか、サボり魔でね。戦闘中も例外じゃあない。さっきだって、Sans本人は本気を出してないんだ」
「さっきの、目が白黒に点滅したヤツが、コイツの本気なんじゃないの?」
「あのモードは伊弉諾物質に込められた魂がSansの人格を乗っ取るように設定してる。だから、Sansを名乗っていても本当はSansじゃないんだよ。Sansの本気を見たいなら、『phase3』に移行する前に、コイツから『オレ』の一人称を引き出すことだな。本気になると『オイラ』から『オレ』になるから、それが目印になるよ」
普段のSans、手抜きのSansは「オイラ」、本気のSansは「オレ」、phase3のエスカルゴ・Sansも同じく「オレ」、ただし声が俺のもの、それに加え眼が白黒にバグる。
その3つさえ把握していれば、Sansが本気なのか手抜きしているのか、それとも伊弉諾物質に人格を乗っ取られているのかが判別できる。
「お母さん。霊愛お姉ちゃん、霊麗お姉ちゃんは、Sansに勝てないって言ってたけど、僕と霊子は?」
「霊愛と霊麗より熱くなりにくいから選んだだけ。霊魔はあの連続攻撃をもっと長く続けて、瞬間移動できなくなるまで追い込めればって感じね。霊子もそんな感じよ」
「うーん」
「つまり体力勝負ってワケだね。それなら私もギリイケるかな?」
「被弾回数を制限した弾幕ごっこじゃなきゃ霊子も勝てるとは思うわ。今みたいに被弾回数を制限した戦いだと、霊子も負けるでしょうね」
「ちぇっ」
縁側で眠るSansを、子供達は揃って物珍しそうに観察している。式神Sansは、実質、肉体を利用した俺の分身だ。そして恐らく、これから俺が作るのも同じように俺の骨を元にした式神となるのだろう。
そうしなければ、俺の式神は破壊されたら死ぬ。そんなのはきっと、俺には耐えられないから……。
「だってよ、Sans。どうやらオメーは、もっと強くなれるようだぜ。……これからも頑張ろうな」
「*……Zzz……」
キュッキュッとスベスベの頭を撫で、次の式神の製作に取り掛かった。
名前:スケルトン・モデルSans(ver.2.13.1)
種族:スケルトン(式神)
能力:重力を操る程度の能力
特技:瞬間移動(精度:B→消失→〃)
言語能力:A
運動性:B→A→C
能力使用性:S
学習能力:S
強度:A→B→C
式神Sans自身の戦闘が長引き、戦闘データの収集に伴う自動的なアップデートを遂げた姿。
バージョンナンバーの頭にある「2」という数字は
「1:原作寄り」に対して「2:AU寄り」という意味がある。
「UNDERTALE AU」とは「UNDERTALEの二、三次創作ゲーム(本編とは別の世界線)」というもの。
エスカルゴは「Last breath」というAUを参考にして式神Sansを制作している。
疲労により、得意の瞬間移動も「見て」から発動し回避するようになった。phase2からは瞬間移動を発動できない程の凄まじい疲労度なので「消失」としている。
実は式神Sansの肉体を構成する「骨」は、吸血鬼のエスカルゴ自身の骨を元にして錬金魔法で「改造」しているので、普段の運動性や強度は「S」。
しかし疲労した式神Sansは「疲労」しているので、当然ながら運動性能も落ちているのでこのレベル。
式神Sansの両眼は伊弉諾物質から作られている。
phase3にまで追い込まれると自動的に発動する。その伊弉諾物質に込められている魂こそが製作者のエスカルゴの魂(のコピー)である。
その為、かなり好戦的。太く長く、暴れ回る。
伊弉諾物質に込められた能力は《データを溜め込む程度の能力》で、これにより様々なデータを無限に溜め込む事が可能となっている。