「*おいおい たにんのいえを ふきとばすとは どういう りょうけんだ?」
「*まったく これからスパゲティつくる よていだったのにッ! なんてこと してくれるのッ!」
「うっさいなぁ。ダーリンの気配を放つアンタらの存在自体が気に食わないのよ。分かる?私の恩人はこの世にたった1人の……エスカルゴ・スカーレットだけなんだから♡」
「*……アンタ そうとう やんでるな」
「あん?何言ってんの、そこのチビ骨。どこの誰が病んでるってェ!?」
大玉の弾幕を放つエリス、しかしサンズはそれを嘲笑うかのように瞬間移動で回避していく。段々とエリスは先を読みつつあったが、それでも瞬間移動というコンマ数秒すらも用いない0秒での移動には追い付けず、サンズに翻弄されている。
「*やるぞ Papyrus オイラたちが くまないと だいあくまエリスには かてない」
「*えッ ほんと!? もう じっせんなのッ!? わぁ! ドキドキ してくるね! ういじんだ!」
「*バカいえ そんなヒマ ないぞ」
弾幕を回避していく骨兄弟、しかし回避した先を狙ってレーザーを放つエリス。サンズはともかく、パピルスは瞬間移動をしない分、エリスにとっては格好の標的とも言えた。それなのに未だパピルスを仕留めきれないのには理由があった。
「っ……邪魔なのよ、この骨ェッ!!」
「*そいつは なによりだ」
「*オレさまの 『あおこうげき』を くらえ!」
サンズの骨弾幕がエリスの翼を貫く。しかし翼の殆どは皮膜のようなものだし、貫かれることなんかこれまでに何度もあった。
エリスはそれにも慣れてきたので、先にサンズを仕留めようと飛び掛かるが、目の前からパピルスの青い骨の壁が迫ってくる。隙間から抜けられそうに見えたので、エリスは咄嗟に蝙蝠に変身して隙間を抜けようとしたが、当たり判定が見た目より大きいらしく、蝙蝠状態であるにも関わらず青い骨に被弾してしまった。
「────ッ!?」
ジワジワと、自覚できる速さで減ってくる体力。蝙蝠状態のままではまずいと直感したエリスはすぐ元の姿に戻ったが、サンズはすかさず……。
「*コウモリから もどってくれて たすかった。さもないと ねらいにくかった からな」
「待っ……」
「*くらえ」
地面を突き破って生えてきた骨は、エリスを強く上空に吹き飛ばしたが、そんな彼女に強力な重力を付与し地面へと叩き付け、土埃、雪まみれにする。
しかしそれが、誰より「大悪魔」を強く自覚し、誇りにも思っているエリスの逆鱗に触れた。
「ぐぎぎ……う、動け、ない……ッ」
「*オレンジこうげきだ ブラザー」
「*わかったよッ! そらッ くらえ!」
「────轟炎『
「*なッ」
10方向から、10本もの炎のレーザーが放たれる。氷雪世界の万年雪すら溶かし水にしてしまう炎は、骨だろうとも、喰らえばタダでは済まない。
しかもその炎は一度、二度、三度、四度────五度も行われても尚まだ攻撃が終わる気配は無い。
「*しつこいな なんど やれば きがすむ?」
「あらあらぁ、式神のクセして、主人のダーリンと比べて無知ですこと。そんなザマで、式神としての仕事とかできるの?林檎の守護者『ラードーン』をご存知ないのかしらァ?」
「*『ラードーン』…… だと……」
「そっ。私ったら親切だから教えてあげるけどぉ、このスペカは、黄金の林檎の守護者・ラードーンがモチーフでね。攻撃は10×10、つまり100発よ♡」
現在、第6波が終わった頃だ。つまりあと四度。あと四度もこんな攻撃が来るのかと、サンズは汗を浮かべながら思考を巡らせていた。
「*こりゃ ホネが おれそうな あいてだな」
「*だいじょうぶだよ にいちゃん! こうやってホネをだせば たえられるよッ! ほらッ!」
「*!」
パピルスの助言を受けて、サンズはわざわざ回避する必要も無いじゃないかと思い直し、パピルスと同じようにレーザーが来た方向に対応して骨の壁を出して対応しようとしたその瞬間────!
「*ぐっ……!?」
「*にいちゃん!?」
「あんたバカァ?骨で耐えられるかどうかなんて、受け止めるレーザーの本数によるでしょうよ」
「*がはっ」
「*にいちゃぁん!!」
見てみれば、パピルスはレーザーを10本のうちの3本を受け止めていた。対するサンズは残り7本を受けていた。倍以上の数の攻撃を、パピルスと全く同じ方法で受け止めるなんて、冷静になれば無謀な事であるとすぐに分かるはずなのに────。
「*はあ…… はあ…… うかつ だったな……」
「*にいちゃん! だいじょうぶ! オレさまが たすけに いくからねッ!」
「*くるな Papyrusッ!!」
「*ッ!?」
サンズはガクリとその場で膝をつく。もはや瞬間移動も難しいくらいに体力を消耗しており、既に、肩で息をするまでに弱ってしまっている。
「あら、なぁに?命乞いでもすんの?」
「*ああ…… そうだ」
「*にいちゃん!?」
「*だまってろ Papyrus!」
「*ッ!」
「*きいてくれ だいあくま エリス……
「そっちのノッポの骨を見逃せ……って?」
「*そうだ」
「ふぅん?……そぉいえば、そっちのノッポさぁ」
「*オレさまの ことかッ!?」
「他に誰が居んのよ。……さっきからこのチビの事、
『兄ちゃん』とか呼んでるけど、兄弟なの?」
「*そうだぞッ!! オレさまと にいちゃんは まかいで さいきょうの きょうだいなんだッ!」
「その『兄ちゃん』が、自分が殺される代わりに、アンタを見逃せって言ってんだけど、どう思う?」
「*オレさまは イヤだ! やっと あえたのに! こんなところで
「*
「*にいちゃん! こんなときに ボケないで!」
「アハッ!面白いじゃん、チビ骨!……じゃあ、その兄弟愛に免じてノッポだけ助けてあげる!代わりにチビ骨、アンタは死にな?」
「*もとより そのつもりだぜ」
「*やめて にいちゃん! オレさまが しぬ!」
「*にいちゃんは おとうとを たすけるんだぜ」
「*にいちゃんッ! にいちゃんッ!!」
「中断したスペカ残り3発分、ううん、残り30本を一気にぶつけちゃうよ?助からないよ?いいの?」
「*かまわん」
「*やめろーーーっ!!」
30発の炎のレーザーが、一斉にサンズを貫いた。彼が居た地面にはポッカリと穴が空いており、彼のパーカーの欠片だけが風に吹かれヒラヒラどこかへ飛んで行ってしまった。
「*サンズーーーーーーーっっ!!!」
「アハハッ♡ 無様だねぇ弟ってのは。守られるだけ守られて、自分は何もできないなんて……♡」
「*サ…… サンズ…… サンズぅ…………ッ……」
「さーて、か〜えろっと。ダーリンったら、こんな骨を置いて何処に行ったのかしら?紅魔館にはもう居なさそうだしなぁ〜……」
踵を返して骨兄弟の家の跡地を後にするエリス。本当ならば、レミリアやへカーティアと戦った時のように瞬間移動魔法で退散できるが、今回はわざとそうしなかった。
「*オマエなんか…… オマエなんか────」
「……もしかして、『兄ちゃん』が助けてくれたのにわざわざ私と戦って殺される気?バカなの?」
「*スパゲティを たべる しかくもないッ!!」
「……はぁ?スパゲティ?いやいや、この期に及んで何言ってんの?ウケるんですけど〜♡」
「*キサマは
「クソ悪魔で結構よ〜?その程度で精神的ダメージ受けるとでも思った?」
「*うぅっ…… うあああああーーーっ!!」
突然、パピルスの左眼が輝き出す。黄金にも似た黄色にも近い光を放ち、パピルスは光に包まれる。
「*……『スケルトン・モデルPapyrus ver.2.3.1』にアップデートしました」
◆
「*オイラ ふじみだから なくなよブラザー……。だがたまには こういうのも わるくないかもな。ふっかつは ようすみ してからだな」
復活前のタマシイ状態で周辺を漂いながら、彼は弟を見守る事にした。