※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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第3.5章:東方暴牙狂〜The second vampire.
1面:ハーレム主が消えた日


「ヘイSans、明日の俺の予定は?」

 

「*あしたは こうまかんに とまる よていだ。やくもけと もりやじんじゃは とばすからな」

 

「紅魔館────か」

 

「*それと チルノと とっくんだな。それから だいようせいと デートの よていも あるぞ」

 

「そーいやぁ、明日は久しぶりにチルノと特訓の日だったっけか。……ちょっと特訓しとくかな。可愛いチルノの前でダサい真似なんてできないからねェ」

 

 

 ◆

 

 

「────遅い。もうすぐ夕飯の時間なのだけど」

 

「そうですわね」

 

「咲夜、エスカルゴから何か聞いてないの?」

 

「いいえ?そう言うお嬢様こそ、旦那様から、何か聞いていませんので?」

 

「聞いてるワケないでしょ?聞いてたらあなたにも伝えてるわよ。フランは?何か聞いてない?」

 

「なーんにも?エスカルゴったら遅いね」

 

 ある日。幻想郷からパッタリとハーレムの主ことエスカルゴが消えた。

 前日は博麗神社。そこから紅魔館に移動する日にフラリと姿を消したのだ。博麗神社と言えば霊夢。互いを溺愛するあまり霊夢が独占したんだろう、と邪推したレミリアは、咲夜を使いとして博麗神社に向かわせた。

 しかしその博麗神社で得られた答えは、紅魔館と大差ないものだった。

 

「え?博麗神社でエスカルゴを囲ってないかって?何言ってんのあんた」

 

「霊夢は旦那様を独占した前科があるからでしょ。お嬢様や妹様から疑われるのも無理ないわよ」

 

「そーかもしんないけど。でもエスカルゴのヤツ、今日はヤる事ヤッてさっさと博麗神社を出たわよ?紅魔館の方に向かったはずだけど?」

 

「本当に?紅魔館の誰も、旦那様を見てないわよ?小悪魔は勿論、妹様もね」

 

「モルモーは?天子は?」

 

「モルモーは寧ろ旦那様を探す素振りを見せてる。新たに魔法を開発中らしいわよ。天子も、旦那様が不在だからかいつも以上に真面目にメイドの仕事をしてくれてるわ。あとシャロンちゃんも旦那様には全く会ってないそうだし、紅魔館としては、とうにお手上げ状態なのよ」

 

「うぅ〜ん……。霊愛、霊麗、霊子。エスカルゴから何か聞いてないの?」

 

「「「なーんも」」」

 

 霊夢の問いに、博麗三姉妹は声を揃えて答える。性格的には合わないように見えるのに、何故だか、こういう時は合わせ鏡のように息ピッタリである。

 咲夜はそれが何だか可笑しくて、笑っている場合ではないというのに、クスリと笑ってしまった。

 ありふれた家族の団欒。が、そこにあるべき姿が1つ欠けている事に気が付いた。

 

「……あら?そういえば霊魔くんは?」

 

「あれ?居ない?さっきまで居たのに。霊魔ぁー?お客は咲夜よ、出てきなー!」

 

 奥の方へ声を掛ける霊夢だったが、その霊魔は、霊夢の背後からひょっこり顔を出した。縮めていた身体をパキパキ関節を鳴らしながら伸ばしている。

 

「うわっあんた後ろに居たの?」

 

(((お母さん、気付いてなかったのか……)))

 

「こんばんは、霊魔くん」

 

「……こんばんは。誰か来たと思って……つい慌てて隠れちゃいました」

 

「ふふ、ゆっくり慣れてくれればいいわ。ところで霊魔くんも、旦那様が何処に行かれたとか心当たり無いかしら?」

 

「無いです。紅魔館に行く前に、誰かと特訓する、なんて話は聞きましたけど……。誰と特訓するのか、どこで特訓するのか、とかは分からないです……」

 

「え?でもお父さん、紅魔館の方に向かったよね?お姉ちゃん達と見送ったから覚えてるよ」

 

(三姉妹で旦那様を見送ったの?仲良しなのねぇ。弦月姫と虔魔にも見習わせたいわ……)

 

 咲夜が呑気にそんな事を考えている間も、子供達4人や霊夢は、真面目、そして必死にエスカルゴの行方について考えていた。疑われてはたまったものではない。霊夢としても余計なトラブルなどは極力避けたいからだ。

 

「美鈴さんと特訓とか?ほら、格闘だけなら未だに美鈴さんの方が強いって、お父さんも言ってたし」

 

「それなら美鈴以外の紅魔館の誰かもお父さん目撃してるはずでしょ。……どう思う、お母さん?」

 

「どうって……私はどうとも言えないわよ。で、結局うちにエスカルゴは居ないんだけど。どうすんの、咲夜?レミリアになんて報告するのよ?」

 

「どうもしない。ありのままを報告するだけね……。全く、旦那様は本当に気ままなんだから……」

 

(((((気ままで済む問題なの……?)))))

 

 結局、紅魔館では「エスカルゴが何処かに遊びに行ってしまい戻ってくるのが遅くなってる」という結論に至ってしまい、それきりになった。

 確かに、エスカルゴは幻想郷でも類を見ない程に行動範囲が広く、とてもではないが捜索など不可能だからである。

 しかし博麗神社のメンバーは知っている。元々の予定を何よりも大事にする彼は、第三者に洗脳でもされない限り、決してそんな事をしない男だと。

 

「……あんたら、分かってるわね?」

 

「モチのロンだよ」

 

「お父さんを探し出して紅魔館に突き出す」

 

「……問題はどこに居るか、だけど……」

 

「ま、適当に探せばイイっしょ」

 

「よろしい。夜は吸血鬼にとって絶好のステージ。夕飯を食べて腹拵えして、食休みに準備を整えたら出発しなさい」

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

 

 ◆

 

 

 数時間後。腹拵えと戦闘準備を整えた子供達は、夜の幻想郷に飛び出した。霊夢は留守番。もし彼が博麗神社に帰ってきた時の為に、備えているのだ。

 まず子供達が向かったのは今日泊まる予定だった紅魔館────の近く。紅魔館に攻め込んでも特に情報は得られないのは確定なので、今日に限っては美鈴から紅魔館の周辺に関する情報を聞き出して、それから次に進もう────そう考えていた。

 

「……ん?チルノじゃん」

 

「霊愛?どーしたんだ、こんな夜に〜」

 

「こっちのセリフ。あんたって夜も遊んでたっけ?夜は適当にどっかに行ってるイメージだったよ」

 

「……うん。今日は……ちょっとね」

 

 リボンまでもが萎びているように見えるくらい、明らかに肩を落とす。どうにも、様子がおかしい。美鈴へ話を聞きに行くのは霊麗が行くことにして、チルノへは、霊愛、霊子が聞き込みをすることに。霊魔は霊愛の背後に居る。

 

「実は今日の昼間はさ、エスカルゴと特訓する予定だったんだ」

 

「へぇ、今日も?」

 

「うん。エスカルゴが紅魔館に泊まる日に合わせて特訓の予定を立ててるんだ。大ちゃんのデートも。あと、エッチする予定もね。それなのに、今日は……エスカルゴ、来なくってさ」

 

「……まさかチルノ、昼間から待ってたの?そろそろ夜中の0時になるけど……」

 

「そうだよ。大ちゃんは夕方くらいに帰ったけど、あたいはまだ待つんだって言ってさ……待ってたの。でももう夜だし……エスカルゴ、忘れちゃったかな」

 

 そう言って悲しげに微笑むチルノを見て、霊愛は目の前のチルノが恋敵でもある事すら忘れ、心から彼女に対し同情のような気持ちが湧いてきていた。

 

「……構えな、チルノ」

 

「え?」

 

「私が相手してあげるよ」

 

「霊愛じゃエスカルゴの代わりにはなれないよ」

 

「お父さんの代わりになんてならないよ。だけど、チルノのストレス発散を受け止める強さはあるよ、私は。昼間から待ってて、さぞストレス溜まってるだろうと思ったんだけど?」

 

「……なら、やる!!」

 

「そう来なくちゃ」

 

 霊魔と霊子は、やれやれと苦笑いし、一歩引いたところから観戦することにした。

 そして、美鈴からも話を聞き終えた霊麗も続けてそんな2人に合流を果たした。チルノと戦い始めたばかりの姉を見て、首を傾げる。

 

「お姉ちゃん何やってんの?チルノとケンカ?」

 

「チルノのストレス発散の相手になってやるって。でも、何でこんな時にやってるんだろう……」

 

「お父さんが好きな人同士、何かしら思うところがあったんじゃないかな。僕はそう思うけど」

 

「あ〜、そうかもね」

 

「え待ってチルノもお父さんが好きなの?ていうかチルノのお父さんって誰!?」

 

「?……あ、いや、そういう事じゃなくて。チルノも僕らのお父さん……エスカルゴ・スカーレットが好きなんだよって話ね」

 

「………………知ってますけど??」

 

「「えぇ……」」

 

 霊魔達がそんな事を話している間も霊愛達2人の戦闘はますます激しくなっていくばかり。チルノは相当鬱憤が溜まっているらしく、かなり荒々しい。しかしそれでいて、トリッキーな戦いをしてくる。

 

「氷剣『アイシクルソード』ッ!ハァアアッ!!」

 

「うわっ!?氷の礫……!?」

 

 氷の剣を作り出したと思うと、それを振り回し、氷の礫を発射する。当たると中々のダメージがあり巫女服までもが切れてしまうだけの鋭さがあった。

 

「中々やるじゃんっ……!少し前までは、ソッコーで終わらせられたってのに……」

 

「あたいはいつか巫月に勝つんだから!いつまでも雑魚なチルノじゃ、居られないんだっ!!今すぐは勝てなくてもいい、でも!いつかはッ……!!」

 

「そりゃ……大した目標だわ。私だってお姉ちゃんになんて勝てないのに。けど────」

 

「きッ、消えたッ!?それなら!!」

 

 数打ちゃ当たるとばかりに、全方位に闇雲に氷の礫を飛ばすチルノ。しかし霊愛はその攻撃をとうに見切っていた。

 

「霊符『夢想封印』ッ!!」

 

「うわぁ!?霊愛のヤツ、あたいの上に居たの!?あっヤバい、防ぎ切れな……ふぎゃあぁああっ!!」

 

「────悪くないんじゃない?頑張りなよね」

 

 地面にボスッと墜落したチルノにも、霊愛らしくないくらいに素直にエールを贈る。妹達の目にも、それはおよそ霊愛らしくなく映ったが、こんな姉も存在するんだと、意外な一面を見せる事になった。

 

「ちくしょ〜……ダメかぁ……」

 

「効かないって分かったときに────」

 

「スグに攻撃変えてればなぁ……」

 

「……分かってんじゃん。やっぱ強いね、あんた」

 

「ヘヘッ……まずは妖精最強になんないと、巫月には手も足も出ないもんね。けど、今度は夢想封印への特訓を優先しようかな〜」

 

「……余裕まであんね。なんかムカついてきた」

 

「もう1回、相手してやろっか?今度は、あたいが一矢報いちゃうかもよ?」

 

「やーだよ。そんな時間、勿体ないもんね。子供は寝る時間だよ、さっさと帰りな」

 

「霊愛の方が子供じゃん!!」

 

「精神的には私の方が大人です〜」

 

「んぐぐぐ……なんかムカつくけど、まぁいい!今回負けたのはあたいだからな!大人しく帰ってやる!」

 

「お父さんに会ったら、チルノを待たせてたって、ガッツリ叱っとくからね!」

 

「はいはーい、任せたー!」

 

 チルノと戦った霊愛は、3人と合流。再び、父を探しに行動を開始する。自分達が思っているより、ずっと事態は深刻な事になっているとも知らずに。

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