※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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2面:歪められたおしどり夫婦

 

「────で?霊麗は、美鈴から話を聞いてきたんでしょ?何か言ってなかった?」

 

「やっぱ見てないってさ。まぁ、チルノが霧の湖で待機してたんだから、そのチルノが見てないなら、美鈴も見てるハズないんだけどさ」

 

「だよね。となると…………いや、まさかね。永琳の薬なら完璧だろうしな……」

 

「……?どしたの、お姉ちゃん?」

 

「ん……いや。お父さん、まさかまた人間に戻ったりしちゃったのかな、だから、行方をくらましてるんじゃないかって思って……」

 

「「「────ッ!?」」」

 

 3人は揃って目を見開き、叫ばんばかりに大きな口を広げ驚きを露わにする。隠せなかった。まさかあの父親が、人間に戻っているんじゃないか、とは全く考えもしなかったからだ。

 

「……って、待ってよ。お父さんが元人間なのは私も聞いて知ってるけど『また』って何よ?まさか前に人間に戻った事があるっての?」

 

「僕もそんなの聞いた事ないよ」

 

「そうだったっけ。霊麗までしか話してなかった?あんま良い話じゃないんだけど……聞く?」

 

「聞きた……」

 

「んじゃいいや。胸糞悪くなるだけなんだろーし」

 

「!」

 

「……霊魔は聞くのね。あれは確か、お父さんがまだ誰とも結婚していなかった頃だったはず────」

 

「い、いいよ、いい!やっぱ聞かない!」

 

「あ、そう?お父さんとお母さんの過去話だよ?」

 

 霊魔は、悪い話と知りながらも詮索しようとした自分を恥じた。

 両親の過去なのだ、例え内容はどうあれ子供には知る権利というものがある。霊魔がそう思うのならそうすればいいだけの話。

 しかし、末の妹の霊子は、空気を読めない発言をする事もあるし、それにより他者と軋轢を生む事も少なくない子供だ。

 それが、そんな霊子ですら、詮索を止めたのだ。ならば兄は、霊魔はどうすべきか。妹を押し退け、自らの好奇心を優先させるのか?

 否である。少なくとも彼は「知る権利」を放棄し妹を見習う事にした。知りたいという好奇心は未だ彼の中で燻っている。しかしそれでも霊魔は、彼を探している途中のこの場で知る必要は無いだろうと自分を納得させた。

 

「やっぱいい!霊子が聞かないなら僕も聞かない。ほ、ほら……1人しか聞かないなら時間の無駄だし。だから、ね?もう、次に行こ?」

 

「……そだね。次、行こうか」

 

「次って言っても、アテ無くない?あんの?」

 

「そーだね。さっきの話の途中の事だけど、人間に戻ったお父さんは妖怪の山に向かったんだ。そこで文と出会って────ま、匿ってもらったんだよ」

 

「匿ってもらう必要あんの?……あ、人間だから?」

 

「まぁ……そんな感じかな。だから、もしお父さんがまた人間に戻ってると仮定するんなら、妖怪の山に向かって、また文に保護してもらっている可能性が高いと思うんだ」

 

「守矢神社の可能性もあんじゃないの?」

 

「あー、その可能性もあるか」

 

「だね。守矢神社だったら、参道もあるし、天狗に護衛もしてもらえるんだったよね。今朝は、普通に吸血鬼だったんだし……。チルノの話と合わせると、お父さんは昼前には消えてた事になる。明るい頃に人間に戻ったって事だよね。それなら参道を使って守矢神社に向かう方が、普通に安全だよね」

 

「そっか。じゃあ守矢神社に向かってみる?」

 

「そーしよそーしよ」

 

「とりあえず、行くだけ行ってみる?」

 

 霊子の提案、霊麗の推理によって、三姉妹は守矢神社へ進路を定める。しかし4人の中で唯一、霊魔だけはその意見に反旗を翻す。

 

「や……それは無いと思うな。お父さん……この前、早苗さんと喧嘩したって言ってたじゃない。だから今も守矢神社はローテから外れてるじゃない?」

 

「「「それが?」」」

 

「だ、だからさ、そんな守矢神社には、困ってても行かないんじゃないかな?お父さんだったらたとえ重いリスクを背負う事になったとしても、文さんや穹お姉ちゃんとの合流を図る……と思うんだ」

 

「「「…………」」」

 

 3人は顔を見合せた。理論的、常識的に考えるとするなら、霊子が考えた通り、参拝客に紛れて守矢神社に向かおうとするだろう。たとえ喧嘩している相手だろうと、命懸けの場面ならそうするハズだ。

 しかし今この4人が探そうとしているのは誰か?常識が通じない男、エスカルゴ・スカーレットだ。果たしてそんな彼が、子供に読まれてしまうような短絡的な行動を執るのだろうか?

 ────4人の決断は、実に迅速であった。

 

「────よし。じゃあ私、霊麗、霊魔、霊子は、それぞれ東西南北に散って反響定位(エコーロケーション)も気配の探知も全開にして、全速力で山を登るよ」

 

「霊愛お姉ちゃん反響定位なんて使えないじゃん」

 

「それでも気配探知はあんたより上だよ、霊子」

 

「うっわ〜、うっざ〜。絶対、お姉ちゃんより早くお父さん見付けてやるから♡」

 

「フン。じゃ、山頂で合流ね」

 

「「「了解っ!!」」」

 

 4人はそれぞれ東西南北に散り反響定位、更には気配探知を全開にして、父を探しに麓から山頂まで足で駆け上る。天狗達は、エスカルゴチルドレンに手を出さないようにと天魔から口酸っぱく言われていた事もあってか、今回こそは完全にスルーを決め込んでいた。

 そして山頂にて4人は合流を果たす。

 

「……どうして、山にお父さんがちゃんと居る前提で動いてたんだろ……」

 

「もし本当に山にお父さんが居たら、文や穹あたりトランシーバーで連絡してくれるよね……」

 

「盲点だった……。時間無駄にしたな……」

 

「まぁ麓から山頂まで20分も掛かってないけどさ。てかどうすんの、完全に手詰まりじゃん?」

 

「知恵袋的存在、居ないの?知恵借りようよ」

 

「永琳先生とか……?だけど、とりあえずこの中なら霊麗お姉ちゃんじゃないかな?」

 

「そう言う霊魔でしょ」

 

「僕はオタクだから一分野に特化してるだけだよ。霊愛お姉ちゃんはエロ漫画だけだし」

 

「おいコラ弟」

 

「私は魔導書しか読んでないから、聞かないでね」

 

「てかここは博麗神社長女の私を指名しなよ」

 

「「「霊愛お姉ちゃんが『知恵袋』は無いね」」」

 

「マジでブッ飛ばすよあんたら」

 

 4人がそんな話をしていると、白狼天狗が2人、山頂でやんややんやとうるさく騒いでいる子供達の元へやってきた。しかしながら、これまでのように警戒している様子は無いなと、その2人の表情から何となく察した。

 

「相変わらずうるせえなガキ共よぅ。俺の子の方が静かだぜ」

 

「……誰?」

 

「おい霊愛、親戚の顔ォ忘れてんじゃねーぞ」

 

「白狼天狗の親戚?……あー、叔父さん?」

 

「そうそう叔父さん……やかましいわ!いつもいつも山で暴れやがって!今日は何しに来やがったんだ?しかも今日は3人も引き連れて来やがって」

 

「お父さんがどっか行ったから探してんの」

 

「兄貴がどっか行ったァ?山になんか居ねーよー。兄貴の気配は俺らがよく分かってるし。な、椛」

 

「うん」

 

「ほんとかなぁ。天狗の里、だっけ?そん中も確認させてもらいたいんだけどダメ?」

 

「ダメだ。兄貴の子だろうとな」

 

「クソケチじゃん」

 

「お前なぁ……数年に1回しか会わない親戚に……」

 

「関わりの薄い親戚なんか他人と変わんないよ」

 

「それを言っちゃお終いだろぉ!?」

 

 霊愛とヒビキが騒いでる中、霊魔と霊子の2人はポカンとしている。というより霊魔は霊子の後ろに隠れてしまっている。

 

「霊麗お姉ちゃん、誰その2人?」

 

「ヒビキ叔父(おじ)さん、椛義叔母(おば)さん」

 

「しんせき?ってヤツなの?てか『しんせき』って何なの?」

 

「んー……身内の別の言い方?」

 

「それはエスカルゴチルドレンとその親じゃない?この2人も身内なワケ?」

 

「まぁ、叔父さんはお父さんの実弟だし、椛さんはその奥さんだからね」

 

「ふぅん……似てないね。ナヨナヨしてそうだし」

 

「あはは……お父さんってば、時折、野生っぽいとこ見せる事あるしね」

 

「……僕、叔父さんのこと苦手かも。なんかガサツな感じする」

 

「気にする事ないよ。私達の方から山に入らなきゃ会わないし、山に入ったところでほんのたまにしか会わないような人達だから」

 

「……」

 

 やはり「関わり」というものは何より大事なものなのだろう。ましてエスカルゴチルドレンは事ある毎に「家族の催し」を開催している。犬走夫妻は、特に特別扱いもされていない山組織の一員であるが故に、その催し物にも一切「家族」という形で出席した事がない。

 この2人に関しては面識があるチルドレンの方が圧倒的に少数派なのである。ましてや従姉弟の存在なんて、その存在を話でしか聞いておらず、長女の巫月ですら顔も知らない。それくらい、犬走夫妻とエスカルゴファミリーの関わりは薄いのだ。

 

「……ん?おい、そこの白い娘」

 

「あ゙?」

 

「何なんだその服。下着で出歩く性癖なのか?」

 

「は?キャミソールも立派なオシャレですけど?」

 

「ソイツは結構な事だが、一般的にキャミソールは下着扱いなんだぜ。幻想郷でも、そんな格好で夜に出歩く奴は居ねえ。勿論、外の世界でもな」

 

「だから?」

 

「だから、姉ちゃん達みてえに巫女服を着ろって」

 

「下着で出歩く事に何か問題でもあんの?」

 

「変態に襲われるかもしんねーだろが!」

 

「襲ってきたら殺すだけだから問題無いよ。変態にそういう目で見られただけでもソイツ殺すけどね」

 

「お前なぁ……俺はお前の身を案じて……」

 

「余計なお世話。というか、そんなのいちいち気にすんのは、雑魚のする事。私、雑魚じゃないので。以上。あとこっち見ないでもらえない?下着だとか指摘してきたり、フツーに叔父さんキモイからさ」

 

「んなっ……コイツ……」

 

「この程度でピキるとか、ホントに『親』?親には

『ガキ』の生意気な発言くらい、笑ってスルーする度量が必要なんだよ?うちのお父さんなんかまさにそうだけど。叔父さん『親』するのに向いてないんじゃないかな?」

 

「ッ……ぐッッッ…………この……ッ…………」

 

「抑えてヒビキ!あの子の言う通り子供の言うことなんだから……っ」

 

「兄貴の野郎、躾とかどうなってんだ!?」

 

「生憎、うちのお父さん達は放任主義なのでぇ〜?基本的には子供の自由にさせてくれるんだよねー。組織でしか過ごせない奴とは大違い♡」

 

「このガキッ……ぐぼぇっ!?」

 

「ヒビキ!?」

 

 煽る霊子にイラついて拳骨をしようとしたのか、握り拳を振り上げるヒビキ。が、そんなのを見逃す霊子ではない。正当防衛と言わんばかりにヒビキの腹を思い切り殴ると、遙か彼方の、山の麓の方へと綺麗な弧を描いて吹き飛ばしてしまった。

 

「……あーあ、叔父さん消えちゃった。椛も叔父さん追い掛けてったし」

 

「腹に穴ァ空けなかっただけ優しくシテあげたって思ってもらいたいもんだね。私、ああいうガサツな男、嫌いなんだよね」

 

「「同じく」」

 

(……だからって殴らなくてもいいんじゃないか……なんて言ったら僕まで殴られそうだからやめとこ。バイバイ初対面の叔父さん、二度と会う事はないと思うけど……)

 

 そして他者の知恵を求めた4人は、まずは手近な所から────文に助けを求めてみる事にした。




わーい、この話の投稿日が誕生日だぁ。
年齢、久しぶりにゾロ目になりました〜。
そうッ!22歳ですッ!
これを書いたのは4月14日なんですけどね。

コロナ陽性確定なう(2023/08/31 11:59:30)
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