「────外の世界がまだ昼で良かった〜……」
「ホントだね。幻想郷と時間の流れが違うってのも初めて知ったけど」
「お陰で茜お姉ちゃんに頼んで後戸に来れた……っ」
「後戸っていうか、前戸っていうか……扉ばっかだねこの世界。何か気持ち悪いや」
妖怪の山から出発した4人は、外の世界に留学に行っているエスカルゴチルドレンの6女、八雲茜にチルドレンのみが使えるルートでコンタクトを取り後戸の国へとやってきた。
賢者の摩多羅隠岐奈ならば、またはその娘でありチルドレンの1人である阿弥なら、何かしら情報を持っているだろうと踏んでの行動だった。
「深夜のお客さんは……」
「お断りだよぉ〜……」
「今度は眠そうながらもまともそうだね。さっきの文みたいな事にはならなさそうで、良かったぁ……」
「はぇ?そりゃ眠いよ、もうそろそろ朝方だしぃ」
「僕ら、妖怪っていうより人間寄りだからさー……。生活リズムもどちらかと言うと人間的なんだよねぇ」
「なら寝てればいいじゃん。分かってると思うけど私らが用あんのは隠岐奈と阿弥の方だからさ」
「それは分かるんだけど……」
「僕らも仕事だからさ?」
「そうなんだけどさー……私達に負けた事にしてさ、もう解散しない!?その方が平和的じゃないの?」
「それが出来たら苦労しないんだよね〜」
「お師匠様の事だから、多分、どこかから見てると思うんだぁ」
「キッショ……覗き見とか悪趣味だわ……」
((隠岐奈さんも、霊愛お姉ちゃんにだけはソレを言われたくないと思うけど……))
(霊愛お姉ちゃんってば、自分が両親のセックスを覗いてんの忘れてんのかな?)
霊愛の発言が盛大なブーメランになっているのは博麗神社の面々しか知らない事だろう。幸運な事に里乃も舞も眠いらしく、戦闘はしたくない様子だ。
それならと霊愛はどうにか平和に終わらせようと2人を説得するが……。
「お子様も寝る時間だよ〜」
「そーだよ、寝ないと身長おっきくならないぞー」
「お子様扱いはやめて。私、もう、1歩ずつ大人に近付いてるから」
「あははっ、そういう背伸びが子供に見えるのよ、霊愛ちゃん♪」
「毛も生えてないおこちゃまでしょー。……あ、毛が生えてないのは僕と里乃もだね……失敬失敬……///」
「ちょッ、舞、寝ぼけて何言ってんの!?」
「うっさい!ほんのたまにしかお父さんにエッチの相手してもらってないクセにッ!!」
子供達も絶賛徹夜中である。先程の文や、里乃と舞を笑えないくらいに、本人達も気付かぬままに、深夜テンションに突入していた。
「……およよ?その口ぶり……まさか?」
「いやぁ……流石のお兄さんも、自分の子に手出しはしないんじゃないかなぁ?……あ、でもお兄さんってとっくに純粋な妖怪じゃないんだったっけ?」
「そのはずだよ〜。お師匠様、お兄さんのデータを再整理する必要があるとか言って、頭抱えてたし。確か、一部だけど神様なんだっけ?」
「神様なら近親相姦もアリだねぇ」
「
「そうなの?あはっ、ならぶっちゃけるけどさァ、私達の方が経験豊富じゃん?笑えるんですけど♡」
「うん?君は、確か……?」
「エスカルゴチルドレン第1の四天王、博麗霊子!賢者の補佐役をやるんなら覚えときなッ!!」
「直接喋るのは初めて、だよね?僕は丁礼田舞!」
「私は爾子田里乃!」
「霊子ちゃん?君がどれだけ経験豊富かは知らないけど、そういうので相手を見下すのは良くないね!お兄さんや霊夢さんから教わらなかったかな?」
「そういうのを『マウントを取る』って言ってね、外の世界は勿論どの世界でも嫌われる事なんだよ?覚えておこうね」
「……ふぅん。分かった、覚えたよ」
「そっか!うんうん、やっぱり良い子────」
「つまり2人は私にマウント取られて悔しいけど、マウント取り返せないから悔しくて、私にマウント取るのを止めさせたい……ってコトだね?ふふふっ、それならマウント取っちゃってゴメンなさ〜い♡」
霊子のニヤケ顔でのこの発言に霊魔は頭を抱え、霊愛は顔をヒクつかせ、霊麗は苦笑いした。しかし二童子の2人は顔面にニコニコとした明るい笑顔を貼り付けたままで声のトーンを落とした。
「……あの白い子、ナマイキじゃない?」
「どうする舞、処す?処す?」
「そんなの、聞かれるまでもなく処すよ────!笹符『タナバタスターフェスティバル』ッ!!」
舞がスペカを宣言、発動し星型弾幕を降らせる。止まっては方向を変えて急加速、止まっては方向を変えて再加速────初見の弾幕ではあるが単調な弾幕である事もあってか、子供達は相殺も何もせず回避していく。
「霊子のバカァ!あんたが煽ったんだからあんたがその2人倒しな!責任取れ!!」
「言われなくてもそうするってぇの。そうしたくて煽ったんだし♡」
ヒヒッと牙を出す獰猛な笑みを浮かべた霊子は、バシュンと空気を震わす勢いで飛び立つと、弾幕をヒラリヒラリと風に吹かれる落ち葉のように回避。
一息で舞の目の前に迫ると────。
「ギュワッ♡」
「ひっ────」
真上から振り下ろされる引っ掻き攻撃で負傷し、そのままの勢いで、地面も見えぬ遥か彼方の下方へ墜落して行った。
「くっ、舞!……冥加『ビハインドユー』ッ!!」
「っ!」
スペカ名から攻撃内容を予測した。正面から迫る鱗弾幕を回避しながら「何もない」後方をも警戒。しかし次の瞬間、霊子の背後に、次は紫色の御札に似た弾幕が現れ、霊子目掛けて飛んできた。
「やっぱりかっ!」
「……うーん、流石にスペカ名が直球過ぎるかな?」
「多分ね!〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎ッ!!」
「「ギャッ!?」」
超音波にて後方の弾幕を掻き消し、正面の弾幕の回避に専念する。しかし後方には、姉と兄が控えているのである。霊子の超音波は、無惨にも姉と兄にクリティカルヒットしダメージを与えてしまった。
「霊麗、霊魔!?……あっ、これって…………霊子ォ!あんたってばまた超音波を……!相殺に超音波使うのやめてくんないかなぁ!?」
「防音の結界とかそういうの使って防御してよっ!さっさと倒すのにはこれが手っ取り早いしさァ!!ほォら、これで終わり────いぎゃっ!?」
霊愛からのクレームも、何のその。霊麗と霊魔が回復する前に終わらせようと迫るが、霊子の魔手が里乃に到達する前に、先程見たばかりの星弾幕が、霊子の全身を強かに打ち付ける。
「はぁっ、はぁっ……間に合った……!」
「舞!気絶したかと思った……」
「落ちる途中で何とか目が覚めたよ。さぁ……里乃!トドメといこうっ!長引くと不利だ!」
「うんっ!」
「……チッ。面倒だけど直接殴るのはやめにしとこ。こうなれば……」
「「舞符『ビハインドフェスティバル』ッ!!」」
「!!」
霊子は、2人が宣言したそのスペカ名からどんな攻撃が来るのかを察知してしまう。即ち、さっきの2つのスペカが合体したスペカなんだろう、と。
事実、目の前からは鱗弾幕と星弾幕、背後からは御札のような弾幕が飛んできて、霊子を、高密度な弾幕でサンドしようとしている。
「密度は凄いね。けど……
「「!!」」
「チルドレンNo.2、舐めんじゃないよッッ!!霊符『夢想封印』ッッ!!!」
「こっちだって!」
「夢想封印は見慣れて……見慣れ…………」
夢想封印の弾幕へ向かって集中的に弾幕を放ち、相殺を図る二童子。しかし霊子の夢想封印は霊愛のそれと同じく、威力も霊力の密度も弾幕の量も全て変幻自在。
二童子の弾幕すら打ち破る圧倒的霊力、弾幕量で相殺する為に放たれた弾幕を逆に相殺してしまい、2人をブッ飛ばしてしまった。
「……配分ミスった。霊力、無駄に使っちゃったな。霊麗お姉ちゃん、霊魔お兄ちゃん、耳生きてる?」
「「?」」
「……まだ復活してなさそうだね。とりあえず霊子、お疲れ。2人の誘導して連れてきな」
「うぃ〜す。行くよお姉ちゃん、お兄ちゃん」
霊愛の先導で後戸の国の中を進む。すると椅子に座ったままフワフワ飛んでくる者が、1人。後戸の国の主、そして賢者の1人。摩多羅隠岐奈である。
「やぁ子供達、良い月夜だね」
「ここから月は見えないけどね」
「見えるさ。ほら」
バスガイドのように手をとある方向に向けると、その先にあった扉が、ギィ……と不気味な音を立てて開かれる。その向こうは確かに夜空が広がっていて美しい月が顔を覗かせていた。
「……。隠岐奈。お父さんの行方、知らない?」
「知らないよ。……と言っても、信じてくれないとは思うけれど────」
「信じるよ」
「うん?……え、ホントぉ?いやぁ、その言葉の方が信じられないんだけどなぁ」
「いや……私ももう眠くて頭痛くなってきたし…………とりあえず知恵を借りに来ただけなんだ……」
「ふむ。では、こういう事かな?『神』ではなく、
『賢者』としての摩多羅隠岐奈に会いに来たと?」
「そうだよ」
「うーむ。……ふふ、成程ね。頼られるというのは、存外、悪い気はしないね」
(ニヤニヤしてて気持ち悪いな)
「ニヤニヤしてて気持ち悪いよ」
「グフッ」
霊愛が思った事をそのまま霊子が口にするので、霊愛はまるで咳き込むような、強く吹き出すような笑いが口を突いて飛び出した。
眠気にやられイライラするような者なら、霊子のこの発言に対しても、先程の二童子のように怒りを露わにしただろう。しかしそこはおちゃらけているように見えても賢者の1人。逆に鼻で笑い飛ばし、如何にも余裕であると態度で見せ付けるのである。
「フン。……で、エスカルゴが何処にいるのか知恵を貸してほしい────か。そうだな……最近のヤツの思考回路を鑑みるに……あくまで予想に過ぎないが、ヤツの行き先は、幻想郷を除く異世界を含めても、凡そではあるが4箇所にまで絞れるぞ?」
「えっホント!?」
「嘘クサァ。私達が4人居るからって、戦力を分散させる為に『4箇所』とか言ってんじゃないの?」
「っ!そ、そうだよ!霊子の言う通り!そんなに、馬鹿みたいに都合良く4箇所も候補あるワケ!?」
まずは疑って掛かる霊子だからこそ、博麗神社の子供の人数に符合した「4」という数字に対して、強烈な疑念を抱いた。
それを聞いた霊愛も、あまりに出来すぎていると気付いたのか、手のひらを返したように霊子に味方する。
「まぁ聞きなさい。根拠はあるんだよ」
「「!?」」
「まず1箇所目。これは永遠亭だね。長女の巫月、童貞卒業の相手である鈴仙に、搾精プレイの達人、輝夜。そして最近になり交わるようになった永琳、黒髪ショートのロリウサ耳のてゐ、ロングの緋月。まさに、エスカルゴには最強の布陣だ。羽休めにはもってこいの環境だろう?」
「永琳も!?」
「永琳……あの白髪っぽい、青と赤の服の?だけど、お父さんのタイプには見えないけど」
「甘える対象というか『大人の女性』としてかなり甘えているようだ」
「「はァ!?ロリコンのクセに!?」」
「……。2箇所目は魔界、パンデモニウム。こちらは言わずもがな、エスカルゴの義母の神綺が居るね。義姉の夢子、義妹のアリス、更に子供が2人居る。最近のエスカルゴは甘えたがりなんだよ。だから、神綺が居るパンデモニウムが怪しいと私は思うね」
((……そういえば、Sansの拠点は魔界の氷雪世界に置いてるってお父さん言ってたな……))
「3箇所目は、純狐の仙界。理由は先程と同じで、エスカルゴが『甘えたい』と感じて、『ママみ』を得る為に純狐の仙界を訪れているのでは?……という考察だね」
「……お姉ちゃん。『ママみ』って何?」
「私も知らない……『バブみ』ならエロ漫画でたまに目にするけど、こっちも意味は分かんない」
「それも意味分かんないんですけど」
「……」
「最後に4箇所目。これは簡単、白玉楼。その場合目当ては恐らく幽々子だろうね。……いいや、純粋に幽々子と共に小春を愛でたいのかもしれない」
隠岐奈がここまで話した辺りで霊麗と霊魔の耳が復活。やっと聴力が元に戻ったらしく、控えていた2人は前で隠岐奈と話している霊愛と霊子に合流。
掻い摘んでここまでの流れを説明すると、2人は声を揃えて言う。
「「4手に別れるのは悪手だね」」
「やっぱそうだよね」
「初めて一度に4人の意見が一致したじゃん」
「……!ほう……面白い。霊愛。自信満々なお前が、何故、そんな時間も手間も掛かる手を選ぶ?霊子。何故、チルドレンのNo.2を自称しながらそんな数に頼った選択をする?」
「そりゃ……私1人じゃフランやレミリアに勝てない程度の強さだからだよ。夢想天生も無しでフランやレミリアに勝てるんなら、私は1人、それ以外3人みたいなチーム分けにするよ。でも現実問題、私はまだそんなに強くないの。なら組んだ方が得策ってだけだよ」
「霊愛お姉ちゃんに近い意見かなー。私、月属性の魔法は鍛えてるけど、それ以外は鍛えてないから。そんならいざって時に頼れるようにお姉ちゃん達とつるんだ方が、楽だし、お得感もあるしね」
「……ふむ。面白い話を聞かせてもらった」
それだけ言い残して、満足そうに大きく頷くと、ギシと音を立てながら椅子ごと踵を返し、どこかへ向かおうとする。霊愛はそんな隠岐奈を呼び止めるものの、彼女は「私が助けられるのはここまで」と言い残し、近くの扉を開け、その向こう側に姿を消してしまった。
「────あ。見て、お姉ちゃん。扉、開いてる。しかも4つ」
「しかもご丁寧に永遠亭、パンデモニウム、純狐の仙界、白玉楼に繋げてくれてるね。幻想郷に帰って考え直すって選択肢はハナから無いんだね」
「ぶっちゃけパンデモニウムの可能性が高いよね」
「私もそう思う」
「……僕は永遠亭かな」
「白玉楼でしょ。お父さん、ピンク髪が大好きとも言ってたじゃん。だからモルモーを殺さずわざわざ手元に置いてるんでしょ?幽々子は……ねぇ?」
「「「あ〜……」」」
霊子の鶴の一声で、4人の行先は決まった。
第一部からの読者さんにとっては再三になりますが外の世界と幻想郷での時間の流れが違うというのは本作でのオリ設定なので悪しからず。