※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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東方忘我凶〜The first vampire.
EX:最後の防衛戦


 

 ────それは、霊夢が相変わらず縁側でお茶を飲み、子供達と旦那の帰りを待っていた時のこと。唐突に、すぐ隣にドサリと音を立てながら何も無いハズの空中から、父を探しに行った霊愛が現れた。

 

「霊愛……ッ!?気絶させられてるの……?霊愛ッ、霊愛!何があったのッ!?」

 

 揺さぶる。頬を叩いてみたり、引っ張ってみる。しかしそれでも、霊愛からの反応は皆無であった。まるで死んでいるような反応の無さだったが、ただ気絶しているだけという妙な確信があった。

 とりあえず、と霊夢は霊愛を抱えて子供部屋へ。布団を引っ張り出し、そこに娘を寝かせる。すると続けざまに、縁側に、ドサッドスッドタンッという連続した音が聞こえてきた。

 霊愛に続けて3連続の音、これはつまり霊麗から霊子までの3人が、同じように転送か何かで縁側に現れたのだと霊夢は察し、畳を踏み壊す程の勢いで縁側まで急行する。

 そこにはやはり、霊夢の予想した通り霊愛と同じように気絶させられた霊麗、霊魔。こちらは予想が外れたが、気絶はしていない霊子が居た。

 

「霊子、あんたは気絶してないのね!」

 

「……」

 

 相変わらず声を殺して涙を流しながら、頷く。

 

「何があったの?誰にやられたの!?」

 

「………………へカーティア」

 

「ッ……!?」

 

 その名を聞き、霊夢はブルッと背筋を震わせた。へカーティアのその恐ろしさは、霊夢だって何度も見てきた。エスカルゴでさえ弄ばれる程に卓越した戦闘能力、無敵とさえ思える魔法力にフィジカル。

 この4人はそんなへカーティアと戦ったのかと、子供達に対して、引いてしまうような気持ちさえも湧いてくる程だった。

 

「とにかく霊子が無事で良かった。へカーティアと何処で戦った?エスカルゴが居なくなった事件は、へカーティアが黒幕だったの?」

 

「……分からない」

 

「違うの?」

 

「ううん……へカーティアが、間違いなく黒だった。へカーティアもお父さんについては認めてる。でも黒幕は居なくて……居るとするなら、へカーティアとお父さんの、2人……みたいな感じだと思う……」

 

「エスカルゴも……?一体どういう事?」

 

 霊子は、目に浮かぶ涙を腕で拭いながらも、先程へカーティアから聞いた話を殆ど一言一句そのまま霊夢に聞かせる。すると、見る見る内に霊夢の顔は険しくなっていく────。

 

「だからへカーティアは、お父さんをこのままあの大紅蓮地獄に…………封印、するって、言ってたの……お父さんが……お父さんがぁ……うあああぁんっ……」

 

「よしよし、大丈夫よ、大丈夫だからね、霊子……。お父さんの事は私が連れ帰ってくるから。……ねっ?だから霊子は泣かない、泣かない。あんたは誰より強い子よ。他所に出しても自慢できるくらいにね。だから泣かないでちょうだい……ね?」

 

「ん……んぅぅ…………!」

 

「是非曲直庁の管轄……大紅蓮地獄に……八寒地獄の最下層に、へカーティアとエスカルゴは居るのね」

 

「うんっ……」

 

「……霊子。お姉ちゃん達のこと守っててくれる?」

 

「!」

 

「お母さんが何とかしてくるから。へカーティアをボコッて、お父さんを元に戻して連れ帰ってくる。だから霊子。あんたには博麗神社の留守番をお願いしたいの。……任せてもいいかしら?」

 

「ッ!分かった……お願い、お母さんっ……」

 

「任せなさい。私は博麗の巫女である前にあんたら4人の母親で……お父さんの妻なんだから」

 

 霊夢はお祓い棒を引っ掴むと、衝撃波が発生するかのような速度、まさに全力中の全力の全速力で、博麗神社を出発した。

 中有の道、賽の河原、三途の川、彼岸を越えて、地獄へと到達。その招かれざる客に対処しようと、地獄の警備の者達が奥から脇から次々に現れるが。

 

「あんたら全員、退けッ!!『地獄の英雄』の妻、博麗霊夢のお通りよッ!!」

 

「────彼のネームバリューは、彼だけのもの。妖怪の山ではその辺の認識が緩いようですけれど、この地獄では、妻のあなたにも適用されませんよ」

 

「あんたは……八千慧ッ!?」

 

「お久しぶりです、博麗の巫女────博麗霊夢。我が主人、へカーティア・ラピスラズリの命によりあなたを幻想郷へ送り返しに来ました」

 

「畜生界のヤクザのあんたが、へカーティアの部下やってるっての!?」

 

「少し前のゼウスの件の際に、ヘッドハンティングされましてね。組織力を高めるのにも良いだろうと思い、誘いに乗る事にしたのですよ。故に今の私の肩書きは、クラウンピースさん、エスカルゴさんに続いての『第三の配下』なのです」

 

「……!」

 

「さぁ、博麗霊夢。幻想郷に帰りなさい。まだ幼い子供達があなたの帰りを待っています。その方が、そうした方が良いと────分かってますよね(・・・・・・・・)?」

 

 八千慧の《逆らう気力を失わせる程度の能力》が発動する。霊夢は、徐々に「そうした方がいい」と強制的に思わされてくる。しかし────!

 

「だったら何だってのよッ!そうした方がいい(・・・・・・・・)!?そんなワケは無いのよ!!あの子達には、私には、アイツが必要なのよッ!私達の生活には、人生にはあのバカが……エスカルゴが必要なのよッ!!」

 

「なっ……ギリシャ神ですら屈した私の能力が……」

 

「あんたの話に耳を貸さなければいいだけ!もう、問答無用でブッ飛ばすッ!!」

 

「やめ────」

 

「吹き飛べッ!霊符『夢想封印』ッッ!!!!」

 

 

 ◆

 

 

「霊夢さんッ!」

 

「あ?今度は映姫ィ?めんどっちぃわね……あんたも一緒にブッ飛ばしてや……」

 

「待ってくださいっ、私はあなたを止めに来たわけじゃないんです!」

 

「……あー?」

 

「というか、もうこれ以上我々の地獄で暴れないでください……昔みたいに壊滅しちゃいますから……」

 

「大紅蓮地獄への行き方を私に教えないコイツらが悪いのよッ!!」

 

 死屍累々と積み上がる是非曲直庁の職員を指差す霊夢。すっかり殺気立ってしまっている。もう今の霊夢を冷静にさせる手段など無いのだと映姫は暗に察したが、少しでも宥めようと必死になる。

 

「行き方なら私が教えます、案内させてください。霊愛さん方4人も、私と久侘歌が案内したんです。決して悪いようにはしませんので……」

 

「……あ゙?あんたが、子供達を地獄に案内した?」

 

「は、はい……」

 

「成程ね……。どうしてあんな変な服を着てたのか、よく分かった気がしたわ」

 

「……?霊夢さん、防護服を見たのですか?」

 

「子供達は、大紅蓮地獄でへカーティアにやられて博麗神社に送られて来たのよ!だから見て知ってるだけ!ほら、さっさと案内しなさいッ!!」

 

「は、はいっ!うひゃわっ!?きゃあああっ!?」

 

「うるさい!あんたが飛ぶのとか待ってらんない!私が運んでやるから黙ってついてきな!!」

 

「あばばばばば……」

 

 映姫は、霊夢に小脇に抱えられながら、例の昇降装置の元まで案内をする。霊夢が「1人で行く」と言って聞かないので、簡単に装置の操作を教えると映姫を装置の外へ放り出し、起動させる。

 

「防護服は着てください!でないと死にますッ!」

 

「分かったってのっ!しつッこいわねぇッ……!」

 

「なっ」

 

 映姫が呆気に取られている間に、霊夢は下層へと装置を向かわせる。備え付けの防護服を着用して、大紅蓮地獄に到達するのを、指折り数えていた。

 一層目、二層目、三層目、四層目────青白い似たような景色がどこまでも続くが、確かに階層は変わっていると、何故だか初見なのに確信できた。

 五層目、六層目、七層目。そして遂に────!

 

「ここだわ……宝符『陰陽宝玉』ッ!!」

 

 装置の中で陰陽宝玉を発動した霊夢は、まだまだ大紅蓮地獄の底には到達しないというのに、装置を破壊して外に飛び出してしまった。

 ここからは自分の気配探知を駆使した方が早いと確信したからだ。

 限りなく広い大紅蓮地獄、その中に気配はたった2つしかない。悪魔のような、限りなく禍々しい、泥のように重い気配と、神のような澄んだ気配……。霊夢はそれらの気配をエスカルゴとへカーティアのモノだと断定し、前者の重苦しい気配の方へ進む。

 確実に近付いている。もう少しで視界にも入る。そう思い飛行速度を更に加速させるが────!

 

「この先へは行かせないわよん♪」

 

「へカーティア!?」

 

 瞬間移動でへカーティアが目の前に現れた。再度気配の探知をすると、へカーティアの気配が3つに分裂しているではないか。混乱しながらも、自分の目の前に居る青いへカーティアをどうにかする為、霊夢は単身、圧倒的な強さを持つ彼女に挑む事に。しかしその前に……。

 

「子供達から聞いたわよ。あんたが、エスカルゴを封印しようとしてるってね」

 

「……本当に申し訳ないと思う。私の目が曇っていて判断を誤らなければ、こんな事には……」

 

「あんたでさえ、今のエスカルゴを殺せないの?」

 

「その前に逃げるのよ。私のバリアすら斬ってね」

 

「は……!?」

 

「彼の魔剣……妖魔雷霊剣だっけ。それに込められた自分自身の力を引き出し、私の魔力に同期させる。完全に同期させてしまえば、結界やバリアの強さは無視できてしまう。霊夢も過去に、彼のその特訓に何度も付き合ったでしょう?」

 

「アレか……ッ!!」

 

 エスカルゴはかつて、結界を斬る特訓と称して、霊夢に結界を生成してもらいそれを突破する技術を磨いていた。彼の妖魔雷霊剣には、彼の4つの力が極めて高水準、高純度で込められている。

 それが妖力、魔力、電力、そして霊力だ。霊夢の霊力による結界を切るのには、妖魔雷霊剣に込めた霊力を引き出し、それを結界を構成する霊力と同期させることで、繊維に沿って紙を破るが如く、楽に結界を突破できるのである。

 因みにその妖魔雷霊剣を鍛えたのは毎度お馴染み多々良小傘である。

 

「────そんなワケで、逃げ足は私より早いから捕まえるのに四苦八苦している状況なのよね。彼を捕まえさえすれば、私が彼を殺し、彼に与えた力を魂と適合させて、万事解決なんだけど」

 

「それで黄色のへカーティアと赤のへカーティアがエスカルゴの方に向かっていて、エスカルゴの方に向かおうとしてる私の妨害を、青のへカーティアが担当するって?」

 

「ご明察。1つ、惜しい所があるとすれば────月と異界の私は彼の所に『向かってる』んじゃないというところかしら」

 

「……!?」

 

「『既に彼と交戦中』────という事よ」

 

「なっ……そんな!早すぎるわっ!だってさっきは、あんなにも遠くに居たのに……」

 

「やぁねぇ〜。どうやって大紅蓮地獄(ここ)に居る私が、子供達を博麗神社に送り届けたと思ってるの?」

 

「ッ!!」

 

「瞬間移動などお手の物。そういう事よ。彼の元に向かうのに、瞬間移動を使わない手は無い。ましてあんなに気配をダダ漏れにしてちゃあ、ねぇ。彼も霊夢の気配に気付いたみたいでさ、気配を高めて(・・・)、こっちに向かおうとしてんのよ。だから今は、探知しようと思うまでもなく、嫌でも探知できるのよ」

 

「ッ……」

 

「というか、霊夢?あなたが私の邪魔をする必要は無いのよ?これは私の責任なのだから、私が、彼を殺すべきなのよ。あなたは子供達と博麗神社で彼の帰りを待っていなさい」

 

「ダメよ!夫を抑えるのは妻の、私の役目!原因はあんたなんだろうけど……アイツの事は私が殺るの!あんたには絶対、殺らせないから!!」

 

「……なら、私と手を組みましょう?今の彼は恐らくどんな結界やバリアも斬れてしまう。でも、剣から力を引き出して斬る場合には、『1つずつしか力を引き出せない』という欠点があるのよ」

 

「!!」

 

「もう分かるでしょ?私のバリアと霊夢の結界を、交互に、何重にも重ねてやれば────彼は剣から引き出す力をいちいち切り替え(・・・・・・・・)なくてはならない(・・・・・・・・)。その隙をついて、私か霊夢が彼を殺せばいいわ」

 

 そう諭された霊夢は構えを解く。確かに、それが最善策なのだろう。確かに、そうするのが最適で、最も効率的なやり方なのだろう。

 しかしそれでも。それでも霊夢はへカーティアに頼りたくないと判断し、決別の意を告げた。

 

「……あんたには頼らない。エスカルゴは私が殺す」

 

「そう……なら、交渉決裂……ね」

 

「交渉?変な事を言うのね。私、ハナからあんたと交渉してるつもりなんか無いわよ」

 

「あら、酷い事を言うのね。それなら女神の好意を踏み躙った罪で、地獄落ちにしてやるわッ!」

 

「!!」

 

 青髪の────地球のヘカーティアは月と異界の2つの球体を振り回し、高々と飛び上がる。霊夢は飛び退いて回避するがヘカーティアは特に軌道修正する事もなく、元々霊夢が立っていた位置に2つの球体をぶつける────!

 

「『アイス・インパクト』ッ!!」

 

「うッ……!?」

 

 大紅蓮地獄の地面を割り、その氷や地面の破片を霊夢に向かって、いや、全方位に放ったのだ。その威力たるや、グレイズしただけで防護服に穴が空く程度には強力らしい。

 

「嘘でしょ!?コレ脆すぎない!?」

 

「あらあら、穴が空いたわねぇ。直したげる」

 

「……礼は言わないわよ!」

 

「礼なんて求めてないわよん。あなたを殺したら、幻想郷は滅茶苦茶になってしまうだろうし……きっとエスカルゴくんに怒られるもの」

 

 修復系の魔法にて霊夢の防護服を修復させるも、即座に追撃に移る。高く飛び上がり球体を叩き付け氷の礫を放つ────。

 接近しようにも、近付けやしない。

 

「霊符『夢想封印』ッ!!」

 

「何度も見たわ」

 

 強力なホーミング性を帯びた夢想封印の弾幕は、へカーティアが振り回す球体によって掻き消され、弾けるように消えていく。

 

「やっぱりやるわねへカーティア……!」

 

「あなたは相変わらず(・・・・・)ね」

 

「そういうあんたも相変わらずワンパターンよ!」

 

「────いいえ?」

 

「!?」

 

 破片は、密度が濃くとも直線軌道のみだ。霊夢はそれを読み切り、へカーティアが次に地面に球体をぶつける直前の一瞬を突いて攻撃を仕掛けるが……。

 

「氷像『アイス・ギガース・インパクト』」

 

「な……いや……はぁ!?何よ……何なのよこれぇ……」

 

 へカーティアが地面に手を当てると、そこから、氷の巨人が現れた。1つ目で、棍棒のような武器を片手に装備している。巨人が1歩歩く度に氷の礫と弾幕が発生。礫は全方位に散って行き、弾幕の方は霊夢へと向かっていく。

 

「何よこの巨人は!?しかもコイツ、1つ目なの?一つ目小僧じゃあるまいし!」

 

「うーん。やっぱり普通の巨人じゃ鈍重よね。なら本物のギガースを見せてあげる……♡」

 

「!?」

 

 2体目の巨人を出現させる。今度の巨人は何と、両脚がそれぞれ大蛇のようになっていて、まるで、滑るように霊夢に接近し始めた。

 

「うっ!?動きキモッ……!巨人のクセにカサカサと動いてんじゃないわよ!」

 

 ゴキブリのような素早さで動き回る蛇脚巨人は、瞬時に接近したと思うと霊夢へ棍棒を振り下ろす。当然、そんな攻撃を受ける霊夢ではなく、スキマで回避し、その巨人の股下へ移動。

 

「神技『天覇風神脚』ッ!!」

 

「……へぇ♪」

 

「もう、一丁ォオッ!!」

 

 連続で昇天脚を繰り出すスペカを使い、巨人達を粉微塵に破壊してしまった。ただ、霊力で最大限に身体保護、強化しなくては破壊できないくらいに、凄まじい硬度を誇っていた。

 大紅蓮地獄の氷から造られたように見えた巨人達だったが実際はそれに少し手を加えてあるようだ。

 巨人達の消滅を見届けると、ヘカーティアは再度霊夢に球体や鎖で直接攻撃を仕掛けようと構える。が、踏み込む直前でピタリと立ち止まってしまう。

 

「ッ……嘘でしょ…………『月』の私がやられた?」

 

「!」

 

「力に呑まれたエスカルゴくんは……理性を失って、今もなお暴れながらも、段々と、着々と力をモノにしているとでも言うの!?」

 

「……やっぱ……『自分』だから、何かあったら別の

『自分』にも伝わるんだ?」

 

「ええ、気配探知なんかよりずっと正確に。だから分かっちゃうのよ。『月』の私が、戦闘不能にまで追い込まれたって事が……!でも有り得ないわ、幾ら成長したとはいえ、彼が────エスカルゴくんが

『月』を倒せるとでも言うの!?」

 

「……あのバカなら有り得なくもないんじゃない?」

 

「あの子の成長曲線、どれだけ歪なのよ……。もはやただのフニャフニャの線になってるんじゃない?」

 

「かもね。少なくとも凡人には、いいや、妻である私にさえも予測不能な成長速度よ。私も、さっさと終わらせて……次に進まないとね」

 

「ッ!」

 

「神降ろし────武甕槌命ッ!!」

 

 霊夢は神降ろしをすると、旦那経由で知り合った日本神話最強の雷神、武甕槌命をその身に降ろす。バチバチと全身が帯電し、触れるだけで焦げそうなくらいに雷の力を感じられる。

 

「エスカルゴの技、借りてやろうかしら」

 

「や、やめっ……」

 

「雷神『龍雷閃』────ッッ!!!」

 

 龍を模した極太の雷が飛び出し、餌に群がる獣の如く噛み付くように次々にヘカーティアへ向かう。勿論、感電しないよう防御するが、魔法でない攻撃だったが故に吸収ができず、しかも武甕槌命の力を殆ど全力で奮ったので、ヘカーティアのバリアをも力押しで破壊してしまった。

 

「くっ、この……っ!!」

 

「まだまだァァッ!!」

 

「こんなの、でぇ、やられる、もんですか……ッ!」

 

「!」

 

 雷の龍を掻い潜り、霊夢に接近戦を挑む。霊夢はエスカルゴと違い、完全な雷耐性は無い。だから、こう接近してしまえばド派手で高威力な雷の攻撃は使えないと読んだからである。すると霊夢は……。

 

「神技『八方鬼縛陣』ッ!!」

 

 自分を中心に広範囲の結界を生成。迎撃の態勢を整える。「掛かってこい」と、へカーティアを暗に挑発しているのは、誰が見ても明らかだった。

 へカーティアは、あの結界がカウンターの効果を有しているのを見抜いていた。しかしそれでも神は謀らぬ、力で押すのみだと言わんばかりに真っ直ぐ霊夢へ襲い掛かる────。

 

「カウンターを頼りにしたのが敗因よ!霊夢ッ!!喰らいなさい!ハアアァァアアアアアッッ!!!」

 

 本気も本気で超強化されたへカーティアの拳は、真っ直ぐに霊夢の胴体を貫いた。霊夢も吸血鬼だ、この程度の攻撃でなら死にやしない。そう踏んでの攻撃であった。

 しかし霊夢は口元から、いや傷口からも、血すら流さず不敵な笑みを浮かべている。そもそも霊夢を殴った感触がおかしかったな、と、へカーティアは心の中で首を傾げる。

 そりゃあ防護服を着ているのだから、普段と全く感触が違うのは当然だろう。しかしそうではない。そうではないのだ。

 

「────マヌケね。一体いつからこの私が本物の博麗霊夢だと錯覚していたのかしら?」

 

「…………ッ!?」

 

「ふふ……。おかしいとは思わなかったのかしらね?この私から、魔力を感じられる(・・・・・・・・)事が……」

 

「…………あ……あぁっ!?」

 

 霊夢は普段、あまりにも強大すぎる霊力によって魔力が覆い隠されており、吸血鬼化してからでも、魔力が全く感じられない特異な吸血鬼である。

 霊魔は霊力を使い切らないと魔法を使えないが、彼のそういう特性は、霊夢のこの部分に似たのだ。

 しかし普段からへカーティアはエスカルゴという

「魔力を感じる吸血鬼」と接してきていた。いや、エスカルゴ以前にも、へカーティアは神代の頃からモルモーという強力な魔法を操る吸血鬼と長い間に亘って接してきた過去がある。

 吸血鬼と相対した時は今の目の前の霊夢のように

「自然な魔力を感じる事」がへカーティアにとって当たり前になっていた。だから気が付けなかった。吸血鬼化してからは霊夢との接点も無かった上に、関わりを持つ機会も少なかったのでへカーティアも気が付けなかった。

 霊夢は本来、素の状態だと魔力を感じられない、特異な吸血鬼であるという事実に────!!

 

「じゃあ、あなたは……まさか…………まさかッ!!」

 

「御札を固めただけの、ただの分身よ。本物は今頃月のあんたと異界のあんたと戦ってるか手を組んでエスカルゴと戦ってる頃ね。────ま、さっきのあんたの発言からすると、『月』を倒したのは私……いや、本物の博麗霊夢でしょうね」

 

「な……そんな…………じゃあ私の『月』を倒したのはエスカルゴくんではなく、霊夢……!?」

 

「そういう事よ」

 

「ッ……いや、それでもおかしいわ!さっきあなたは武甕槌命を神降ろしした……!御札の分身体なんて、巫女でもなんでもない!あなたは何者……!?」

 

「あら?自分も『神』なのに、随分とおかしな事を聞くのね。『神』とは本来、『物』に宿るのよ?」

 

「────ッッ!!」

 

「御札という名の、器となる『物』に、武甕槌命の分霊を入れた。それだけの事よ。じゃあ、もう私の

『分身』としての役目ももう終わりだから……」

 

「……一杯食わされたわね……」

 

 バラッとバラけた分身霊夢は防護服をも突き破る弾幕となり、「地球」のヘカーティアへと、最後の追撃を開始した。

 そして、この大紅蓮地獄のどこかで本物の霊夢が

「異界」のヘカーティアを戦闘不能に追い込むのと同時に、「地球」のヘカーティアは降参。後は全て霊夢に任せる事にした。

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