「ただいま〜♪」
「……ただいま」
朝食より前、まだ子供達がパジャマから普段着に着替えている頃に、彼女の家で夜を過ごした霊魔、駆翔の2名は男子部屋に戻った。霊魔は晴れやかな顔で、そして駆翔は眠そうに、それでいてモヤモヤしてるような、踏ん切りのついてなさそうな顔で。
「「お、おかえり……」」
「おかえりなさい。どうでした?」
妖舞と恋夜は控えめなのに、虔魔は感想を尋ねるあたり、やはり彼は物の考え方というか、捉え方が珍しい方なのだろう。でないと彼も、妖舞のような反応になるはずだ。
「うん、楽しかったよ」
「……」
「駆翔、あんなに意気込んでいたのに静かですね。まさか、中折れでもしたんですか?」
「……ンだよそれ。してねーと思うけど」
「行為の最中に、勃起が治まってしまう事ですよ」
「それは……ねェよ」
「おや、そうでしたか。では何故そんなにも静かにしているのです?」
「別に。『朝に強くないから』でいいだろ、もう。はぁ。………………はぁ……」
ボフンと自分のベッドに倒れ込む。疲れたからか続けざまに溜め息をついてしまう始末だ。これは、霊魔のような非童貞ではなくとも、察せてしまう。ここあとの間に、何かあったのだと。
「まさか、セックスさせてもらえなかったとか?」
「んなワケねーじゃん。つか、付き合い始めたぜ。ここあ姉ちゃん、もう俺の女な」
「「はぁ!?」」
「良かったじゃない。おめでとー。……ふあぁ……」
「おめでとうございます。今夜はお赤飯ですね」
妖舞と恋夜は驚愕、既に彼女持ちの霊魔は余裕の対応。虔魔は本心か洒落か、お赤飯などと抜かす。しかし当の駆翔はそうもいかなかった。
挿入直後に射精したなんて、言えるはずもない。ましてや隣の部屋からはあんなにも激しい喘ぎ声が聞こえてきていたというのに、自分は姉に、喘ぎ声ひとつ上げさせられなかった。
男ではない。「雄」としてのプライドが、駆翔を苦しめていた。
「……一先ずそろそろ朝食です。食堂にてお姉様達と合流しましょう」
「そーすっかぁ」
「行こ行こ」
虔魔の案内にて男子部屋から食堂へ。そこで本日初めて女子部屋の他のメンバーとも合流を果たし、共に朝食を摂る。流石に25人も居れば壮観だった。レミリアは子供達の様子を観察しつつ、遠くを見るような目で眺めていた。
小春は、慣れないフォークやスプーンなどに苦戦している様子だったが、そこは、敢えて小春の隣に座る事を選んだ霊愛がサポートをしているらしい。
◆
「ちょっと咲夜ぁ!?」
「……」
「咲夜ってばぁ!!」
「何よ天子、口より先に手を動かしなさい」
「動かしてるわよ!動かしてるでしょお!?だから文句の1つや2つくらい聞きなさいよッ!!」
紅魔館にて居候している比那名居天子は、厨房で咲夜さんと共に調理に励みつつ、叫ぶように上司を呼び付ける。そんな天子の対応にも慣れっこなのか咲夜さんは実にクールに受け流している。
「ハイハイ、何?」
「
「そうね。毎食これじゃあ、2、3日後には食材が足りなくなる計算になるわね。天子、調理はいいから魔界に買い物に行ってきてくれない?」
「じょおおおおだんじゃないわよおおッ!朝早く、4時前から仕込みして!そろそろ休憩させてぇ!?眠いし疲れたしィ!!」
エプロンを叩き付けて、天子が怒鳴る。早朝から仕事に駆り出され、調理し続けているのだ。根性でどんな攻撃をも耐えられる天子ですら、音を上げるというもの。
元より天子は、早起きが得意ではない。そもそも天子は「実家を追い出されがちなお嬢様」であり、天界から勘当された事によって地上の紅魔館に居候する羽目になった程だ。
「じゃあ、買い物が終わったら今日はもうあがりでいいから」
「ホント!?」
「調理してる傍で騒がれるよりはマシだしね。あ、勿論お給料は働いてる時間分しか払われないから、今日の分のお給料は少し少なくなるわよ。
「うぐっ!?」
「黙って買い物に行って仕事に戻るか、安い給料で我慢するか。さっさと選びなさい。どちらにせよ、メイド妖精の中から適当な者を2人ほど引き抜いて連れてきてもらうけどね。あなたが抜けるから」
「……分かったわよ、買い物行くわよ!」
「そ、ありがと。メモは買い物袋の中だから」
「はいはい!」
しかし────と咲夜は思う。天子の言う通り、毎食毎食こんなに用意していては、幾ら今の貯蓄があっても足りなくなるだろうし、当然、それだけの時間も掛かる。なんなら、調理関連の仕事だけで、1日が終わる可能性すらある。
「時間を止めるにしたって、モルモーはともかく、何処にいるか分からない旦那様の妨害もしてしまう可能性もある……中々にやりにくいわね」
天子との交代で厨房に入ったメイド妖精の2人に指示を飛ばしながら、咲夜さんは相変わらず手を動かす。
そんな中、解決しにくい問題だと静かに溜め息。確かにやりにくい、しかしやらなくてはならない事なので投げ出さず丁寧に仕事に取り組もうと決意を新たにする。
が、その時、駆翔の食器を回収に向かった妖精が手に何も持たずに帰ってきた。
「メイド長ぉ〜」
「何かリクエストでもあった?……お皿は?」
「駆翔さんからで、『朝ご飯はもうお腹いっぱい』だそうですぅ……」
「え?まだ14人前しか持って行ってないわよね?」
「そうなんですけど、あまり食欲が無いそうで……」
「……口に合わなかったのかしら?」
「どうなんでしょう……『料理じゃなくて俺の問題』だとは伺ってますけれど……」
「そ。それならいいわ。じゃ、あなたは引き続き、お嬢様や子供達のお皿の回収をしてきて。あなたは回収されてきたお皿を洗って。それが終わったら、回収に合流して。私は作りかけ料理の完成と保存をしてるから」
「「はいっ!」」
咲夜さんの時間能力は物にまで適用可能である。完成した瞬間に時を停めてしまえば、その料理は、能力を解除するまで「完成したてホヤホヤ」。再度料理を温める必要すらもない。
「……咲夜さん」
「シャロンちゃん?どうしたの?」
「いえ。何かお手伝いできる事があればと思って」
「今日も旦那様は居ないんだし、好きにしていればいいのに。ま、手伝ってくれるのは有難いけどね。調理、手伝ってくれる?」
「あ、はいっ!」
メイド妖精の1人が皿洗いをする中、ただ1人で黙々と調理を続ける咲夜さん。そこに、旦那の専属メイド妖精・シャロンが現れ、主人の妻であり己の上司でもある咲夜さんのサポートをすると言う。
疑問を覚えつつも、手が足りなかったので素直に手伝いを求めた咲夜さんは、確かにレミリアの言うように、昔に比べたら丸くなったのだろう。
やがて2人が調理をする中、2人のメイド妖精は皿の回収、皿洗いを終え、通常業務に戻っていく。子供達も朝食を終えると、思い思いに過ごし始めたらしかった。
「ふぅ……これで
「凄いです、咲夜さん……まだ午前中なのに、もう、夕ご飯まで準備してしまうとは……」
「朝早くから仕込みをしてくれてた天子のお陰よ。今夜は天子を寝かせて、私だけで仕込みしなくちゃいけないかもね。一度ヘソを曲げると長いのよね、天子って。お嬢様の頃の性格がまだ抜けてないわ」
「そう、だったんですね。弦月姫さんが抜けた穴……大きいですね……」
「……そうね。悔しいけど、今の紅魔館は昔のように私のワンマン運営はできそうにないわ。虔魔はまだ見習いだから置いとくとしても、弦月姫はね……」
一段と大きな溜め息をつく。自分で産み、育てた副メイド長がそれだけ立派に育っているのだから、素直に喜ぶべき事である。しかしそれだけ、彼女が仕事を外した時の穴が大きくなるという事なのだと強烈に思い知らされて、残りの18泊19日もの期間をどのようにやり過ごそうかと考えを巡らせる。
が、そんなワンマンな考えをしている咲夜さんの考えを吹き飛ばすように、シャロンが彼女の思考にグッと割り込む。
「もし宜しければ、明日は私が仕込みしますか?」
「え?」
「先日、仕込みの事も咲夜さんに教わりましたし、その日の朝、昼、夕飯のメニューさえ事前に教えて頂ければ、できる限り私が準備しますけれど……」
「うぅん……有難いけれど…………遠慮しておくわ」
「……ですよね、
「……あなたに任せるとしたら、旦那様がお泊まりに来られる日の仕込みを任せるわ」
「え……?」
「昼前に来るか夜に来るかは全て旦那様の気分次第だけれど、大抵の場合、紅魔館に泊まる日の夕飯は紅魔館でお召し上がりになるから。あなたの料理で旦那様の胃袋、ギュッと鷲掴みにしなさい♪」
「咲夜さんっ……!」
「私は料理で彼の胃を掴んだわよ。だからあなたもそうしなさい。お嬢様方や霊夢に強さで劣る私達は異なるルートから彼を攻略するの。……でしょ?」
「……はいっ♪」
2人はメイド。異なる種族、異なる境遇、異なる能力を持っている。そんな2人にも共通する事実、それは突出した実力者に比べたら力が弱い、しかし同じ異性を好きになり、それでいて胃を掴みやすい立場である。
咲夜さんは、その共通項をシャロンに見出して、事ある毎に、素直に彼女なりのアドバイスをする。シャロンもまたそのアドバイスを素直に受け止め、実行しているので、主人と専属メイドという関係と思えないくらいに距離を縮めている。
「旦那様は、今夜は博麗神社で、明日が文の家で、明後日が紅魔館に泊まる予定なの。だから明後日の朝は、あなたに仕込みをお願いするわ」
「お任せ下さいっ!」
「明後日の夜はカルボナーラにしましょう」
「ご主人様のお気に入り料理ですね……!」
「前にも言ったけれど温度調節、ソース作りの際のチーズの量には注意よ。他に注意すべき事は?」
「粉チーズの追加は無し!ですっ!」
「そう。温度の調節やソース作りも大事だけれど、それらよりも粉チーズが大事よ。それだけで食欲は軽く4、5倍は変わるからね」
「ヒェッ」
「大袈裟じゃなくてよ?粉チーズアリは普通盛り、粉チーズ無しは大盛りを腹9分目以上食べるから」
「……弦月姫さんですか?」
咲夜さんがそんなミスをするとは思えない。そう考えたシャロンは、失礼とは思いつつ副メイド長の名前をあげる。咲夜さんはそれに小さな溜め息と、柔らかな苦笑いを返す。
「ええ。旦那様って出された料理に文句を言わない性格だからね。おかわりを頼まれなくって、変だと思ったら……。あの時の弦月姫ってば、お嬢様の分と逆に配膳してたのよ」
「あらら……。…………あれ?それでしたら、粉チーズ無しのを
「と思うでしょ。旦那様曰く『粉チーズあると食欲減退するので……』って」
「うーん……?よく分かりませんね……」
「粉チーズの匂いが苦手らしいわ。匂いというのは食欲に多大な影響を及ぼすもの。あの匂いが好きな人もいれば、苦手な人もいるの。それだけの事よ」
「成程、難しいんですね……」
「そうねぇ」
料理をする乙女2人、「うーん」と呻きながらも嗜好は人それぞれなんだなと改めて実感していた。2人にそこまでの好き嫌いなどは無いので、余計にそう強く感じていた。
「それと、旦那様にだけ通じる必殺技があるわよ?あなたにも使えるから教えておくわね」
「えっ……必殺技……ですか?」
「そう。彼のハートを止める必殺技」
「『射止める』ではなく……?」
「今のは私の言い間違いじゃないわよ。こう……手でハートを作ってから、笑顔で『美味しくなぁ〜れ、萌え萌えきゅんっ♡』……って言うの」
「『もえもえきゅん』……って何でしょうか?魔法の詠唱とかですか……?」
「外の世界の文化よ。『萌え』っていう、私もよく分からないんだけど、旦那様曰く、『これが嫌いなオタクは居ない』って。『オタク』っていうのも、実はイマイチよく分かってないんだけど……。でも、美鈴は何か知ってそうだったわね」
「とりあえずご主人様はそれが大好きなんですね」
「どうもそうみたいよ。初めてコレを見せた時は、その場で倒れて心臓麻痺でお亡くなりになったわ」
「物理的にハートを止めてらっしゃる!?」
「だから、そう言ったのよ。『彼のハートを止める必殺技』って」
「ひゃあ〜……」
休憩がてらそんな話を続ける2人。咲夜さんも、部下とはいえここまで腹を割って話せる存在は殆どどころか全くおらず、夫の専属メイドという立場の彼女は、咲夜さんにとっても、かなり役に立つ存在だった。
その頃、その「
────同一作者のお気に入りの使い回しキャラを連れてきたよ。
「「「同一作者の使い回しキャラだって?」」」
──原点にして頂点。東方二次小説「吸血鬼人間の幻想生活」第1部からのヒロイン、モルモー。
https://syosetu.org/novel/143253/
モルモー「世界中の吸血鬼は全て私の子孫よ」
──↑のモルモーの設定をブルアカ風にちょっぴり改変して設定し直したブルアカ二次小説の「先生、ハーレムルートを目指しませんか?」のヒロインの1人にカウントされる、
https://syosetu.org/novel/319579/
モルモ「キヴォトス最速は私っしょ♪」
────モルモというよりはモルモーからの派生。オリジナル小説「乱れた世界で私が理性を保てなくなる話 〜思いつきで世界をつくるようなヤバいヤツに愛され私の生活は破綻寸前!?」の登場人物、世界の創造主の1人、モルモー
https://novel18.syosetu.com/n8073if/
モルモー「この世界の南北は私のモノなのでぇw」
「「「全部同じじゃないですか!?」」」
──これだから素人はダメだ!もっとよく見ろ!
──モルモーは主人公にレイプされチン堕ちした。後にもっとヤバい事になるが今はまだ気にするな。次の章で明かされる。どちらかと言えば膣内派だ。
──モルモはギャルだし先生を巧みに誘惑して割とサクッとセックスしてる。クリ派だ。愛用品はクリ吸引に特化したグッズ、ウーマナイザー。設定も、オリジナルのモルモーと同じくらい練られている。下手したらそれ以上かも、と作者は自負している。作者は殆ど常にイオリとモルモの絡みが書きたくてウズウズしているそうだ。
──最後のモルモは人間の彼を人間→吸血鬼にして人生を狂わせた、言わば「全ての元凶」とも言える存在だ。設定は殆ど深く練られていない。ヒロインではないからな。