※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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2日目:メイドの決意

「美鈴さぁん……」

 

「弦月姫ちゃん?どうしたんです?」

 

「ちょっと疲れたので門前(ここ)で休ませてください……」

 

「は、はぁ……それは構いませんが」

 

 2日目のある時、紅魔館内で子供達がワイワイと楽しく過ごしている頃、副メイド長である弦月姫は1人抜け出して、門前で門番をしている美鈴の元へやってきていた。

 どこか酷く疲労した様子で心配になった美鈴は、弦月姫に詳細を尋ねてみる事にした。

 美鈴も弦月姫を赤子の頃から見てきただけあり、美鈴の弦月姫への想いは「同じく紅魔館で働く者」などではなく、実の娘にも近い想いを抱いていた。

 だから、弦月姫にこうしてやんわり接するのも、年長の者としてというよりかは、母性に近いものがあるのだ。

 

「何か、問題でもあったんです?」

 

「いえ……ただ館の中がこんなにも絶えずうるさ……賑やかな事なんて初めてですから……なんだか、頭が痛くなってきちゃって」

 

「あはははっ、慣れない状況ですもんね〜。普段の宴会やパーティですら、長くて半日も無いですし」

 

「ええ、本当に。しかも……お姉様達の話に、まるでついていけなくて……」

 

「……弦月姫ちゃんのお姉様って言うと、穹ちゃん、霊愛ちゃん、巫月ちゃんですか?」

 

「その中でも巫月お姉様と霊愛お姉様です。あと、霊麗、霊子、緋月、ここあ、シガレット、リサ……」

 

「お、多い多い……その方々は何の繋がりなんです?結構な人数が居ますけど」

 

「私と同じファザコンの中でも既に『至っている』お姉様達、そして妹達です……」

 

「え゙っ!?『至ってる』ってまさか……」

 

 弱々しい笑みを湛えて、コクリと頷いて答える。ファザコンの「至り」、その言葉が意味するのは、つまり「セックス」である。

 近親相姦はご法度、美鈴だって知っている事だ。しかし美鈴は、弦月姫の事はずっと応援していた。それなのに……。

 

「そのまさかです。美鈴さんだから言いますけど……まさか巫月お姉様以外にこんなに居たなんて……」

 

「巫月ちゃんは昔っからエスカルゴさんにベッタリでしたから、不思議は無いですけど……。いやまさかエッチまでシテるとは思いませんよ……!?」

 

「そうですよね……。私ってば、夢の世界の私にまで追い越され、お姉様、果ては妹にまで先を越されてしまうなんて……」

 

「エスカルゴさんのロリコンも病的ですねぇ」

 

「多分ロリコンは病気ですよ。でも仕方ないです。私達姉妹は、それに乗じて想いを遂げているので……寧ろお父様には、そうあってほしいです。ずっと……ずっと、そうであってほしいんです」

 

 遠くを見つめ、祈るような声で囁くように言う。

 しかし美鈴は知っている。エスカルゴ自ら、もう何年も前から────それこそ、「夢の弦月姫」を抱いたあの頃から、弦月姫とは、ある程度の距離をとるようになっている事に。

 弦月姫には、咲夜さんにも似た天然な所がある。だから気付いてはいない。誰にも指摘されないし、本人も互いの距離感をそこまで意識していない故に気付けていないのだ。

 

「あーあっ!私にも虔魔くらいの思い切りの良さがあればいいのに!……そうなれば、こんなにウジウジ悩む事なんて無いのになぁ……。ね……美鈴さん?」

 

「弦月姫ちゃん……」

 

「────実は、ここに来る前に……お姉様達から、お父様を堕とすコツを聞いてきたんです」

 

「え」

 

「巫月お姉様は『ストレートに絡むこと』でした。霊愛お姉様は『何度も迫って、自分の気持ち良さを身体に分からせる』。霊麗は『好きにさせる事』、霊子は『教えて』とお願いする────よくもまぁそんな簡単そうに言ってくれますよね、それが私に出来たら、こんな苦労、してないのに……」

 

「……ここあちゃん達は?なんて言ったんです?」

 

「ここあは駆翔に絡みに行き、シガレットは霊魔とイチャついてたので……話し掛けられなくって」

 

「うーん、そうでしたか……。あ、リサちゃんは?」

 

「リサは────なし崩し的にそうなったようで、そこまで意図してエッチをし始めたワケではない、らしいです……。そもそもエッチに誘ったのも、リサからではなくて、お父様からみたいですし」

 

「えぇ……リサちゃんって末っ子に近いですし、あの身長、あの体格ですよ?殆ど犯罪じゃないですか」

 

「妖怪を取り締まる法があれば、ですが。とにかく一番参考になりませんでしたね」

 

「となるとやはり博麗姉妹のやり方でしょうかね。巫月ちゃんのやり方は……難しいでしょうし」

 

「霊子の『教えてと頼む』やり方だったら、私でも出来そうですしね」

 

 うんうん、と2人で頷き合った。するとその時、カチリと時が止まった。この気配、魔法ではない。厳密には分からないが、これは魔法ではなく能力。つまり母か弟だ────そう気付いた直後に、門の陰から実の母、咲夜さんが現れた。

 

「メイド長ッ!」

 

「『お母様』でいいわよ。業務中じゃあるまいし。あなたは休暇中よ」

 

「っ……」

 

「……あのね、弦月姫。あなたねェ……」

 

 何か不機嫌そうに口を尖らせる咲夜さん。何やらマズい。心底マズいと感じた弦月姫は、腰を折って誠心誠意の謝罪をする。

 

「もっ、申し訳ございませんでしたっ!」

 

「……?」

 

「若輩の身でありながらっ……実の娘でありながら、お父様に想いを寄せるなどっ……!人として、いえ、1人の吸血鬼として最低な────」

 

「弦月姫……あなた、何の話をしているの?」

 

「……へ……?」

 

「私はただ美鈴に差し入れに来ただけなのだけど。ほら、10時のおやつの時間だし」

 

「あ」

 

「……『お父様に想いを寄せる実の娘』……ねェ」

 

「ひっ……あっ……あぁあっ……ああぁ……!!」

 

 バレてしまった。バレていなかったのに、自分でバラしてしまった。目の前で腕組みし、黒い笑みを湛える咲夜さんを────母を見て足を震わせる。

 しかし咲夜さんは、弦月姫の予想を大きく裏切る言葉を口にする。

 

「あなた……まだ旦那様と交わってなかったの?」

 

「……へっ!?」

 

「いや、だって……。旦那様の為に髪を伸ばしたり、スカート短くしたり、『萌え萌えきゅん』の練習もしたり……私から見れば丸分かりよ?」

 

「ええっ!?スカートまで……なんでぇ!?」

 

「そのメイド服、誰が誂えたと思ってんのよ。丈が短くなっていれば気が付くわ」

 

「か、髪だって!お母様との対比の為に……」

 

「違うわね。弦月姫は、そんな下らない事をする子じゃないはずよ」

 

「……何で、アレを練習してると?」

 

「時を止めて練習してるんだものバレバレよ。寧ろその練習は、時を止めずに行うのがベスト。周囲の雑音に掻き消されるからね」

 

「────ッ!!」

 

「時を止めてしまえば動けるのはモルモー、我々と旦那様のみ。風すら止まる。生活音なんてのは無に等しい。そんな中で『萌え萌えきゅん』だなんて、自殺行為に等しいわよ……?」

 

 若干顔を引き攣らせながら解説をする咲夜さん。弦月姫もこれには羞恥心を爆発させ、美しい銀髪を乱しながら頭を抱える。

 

「はうあああぁ〜〜〜っ……!!私は、私は何て事をしていたんですかぁぁああっ!!」

 

「……虔魔にも聞かれてると思った方がいいわよ」

 

「ぎゃあああっ!?いやああああっっ!!」

 

「時既に遅し。『2年前に出直しな』ってとこね」

 

「最悪ですぅ……」

 

 目に涙を浮かべる弦月姫を見た咲夜さんは流石にもどかしくて居た堪れなくなり、彼女に1つ、あるアドバイスをする事にした。

 

「弦月姫。1つだけアドバイスしてあげる。これを有効活用するも無駄にするもあなた次第よ」

 

「!」

 

「旦那様は『可愛い』に弱い。可愛い仕草や可愛い反応、なんでもいいわ。あなた顔はイイんだから、その引っ込み思案というかモジモジするその態度をどうにかしなさいな」

 

「か、顔はイイだなんてそんなっ……///」

 

「あら、否定するの?あなた私に似てるし、それは私が可愛くないと断言するのと同じなのだけど」

 

「はひっ!?」

 

「あと旦那様の美醜感覚も。旦那様、よく私のこと可愛い美しいと褒めてくださるもの」

 

「あぅ……」

 

「『私は可愛い』って心の中で思っておきなさい。口に出したらタダの『可哀想な女』だけれど、思うだけなら自由だし────その想いは、時として、女に大きな力を齎してくれるものよ」

 

「大きな……力…………」

 

「この次に旦那様が紅魔館に泊まられるのは、確か明後日の夜だったかしら?エーハクヤマコー……ん、確かに明後日ね」

 

「あ、はい。お姉様達も、先程、そのように話していました」

 

「だったら都合がいいわね。弦月姫。明後日の夜、旦那様と2人で寝なさい」

 

「え?」

 

「それでそのまま旦那様に処女を捧げなさい」

 

「ええっ!?」

 

「明後日は入れ食い状態になるわよ。何せ紅魔館に泊まってる子供達の多くは、禁欲状態なんだから。シャロンちゃんや天子と旦那様とが交わる時間すら満足に確保できるか怪しいものだわ」

 

「……確かに……」

 

 モルモーの事は特に考えていない。未だに地下牢暮らしだし、紅魔館の住人にカウントして良いのか疑わしいというのもある。しかしそれ以上に彼女はスカーレット家、ひいては現存する全ての吸血鬼の始祖なので、加える方がキツイというものだった。

 

「ま、昼間や夕方はそれでもいいのよ。でも深夜は私の時間。私と、旦那様が『寝る』時間────。それを弦月姫、あなたにあげる」

 

「え……?」

 

「旦那様を私の寝室に連れ込んだら、なんかこう、適当に『明日の仕込みが』とか何とか言って、私は席を外すから。そしたら弦月姫は旦那様のベッドに潜り込むか、添い寝を希望しなさい」

 

「ええっ!?」

 

「旦那様は断らないわよ。そこから先に進むのも、ウジウジ踏み止まるのも、あなたの自由よ。あとは好きにしなさい」

 

「……どうして、そこまで……?」

 

「……」

 

「実の親子なんですよ?」

 

 弦月姫の疑問も尤もである。何故、近親相姦だと知りながらも、こうも勧めるのか。何故、手伝ってくれるのか。弦月姫には、不思議でならなかった。

 

「……あなたは、似てるのよ。……昔の私に」

 

「え」

 

「お嬢様や旦那様から『吸血鬼にならないか』と、何度も何度も誘われて、私は何度も何度も断った。結果、霊夢や魔理沙、早苗と比べて、私は遅れた(・・・)。出遅れたのよ。もしこれがよーいドンのレースなら私は圧倒的にドベ。ビリもいいところだわ。光速(・・)の名が泣くわ」

 

「……」

 

「勿論、子供であるあなたと、私の人生が全く同じなんて思ってないし、あなたに、母親の思うような道をそのまま歩かせようなんて思っちゃいないわ。親子も所詮は他人。別の生き物なんだから。けど、それでも、子供のあなたが悩んでいるんだったら、私は手を貸してやりたい……それだけよ」

 

「お母様…………ありがとうございますっ!」

 

「せいぜいお嬢様や妹様にバレないよう注意して、上手くヤるのよ。次からは手を貸さないから。あともし昼間に交わりたくなったなら時を止めなさい。私はいつもそうしてる」

 

「……わかりましたっ!」

 

 アドバイスを受けて、弦月姫は遂に長年恋慕した父親と枕を共にする覚悟を固めた。

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