その日、女子部屋はまるで落ち着きが無かった。近親相姦組、特に今日ヤル気マンマンの子供達は、朝も早い内からシャワーを浴び身体を綺麗にして、鏡の前で可愛らしく見えるようおめかししている。
残りの非近親相姦組はいつも通りのんびり過ごすようだ。今日は外だけでなく近所の探検をする予定らしい。茜や阿弥、樹理愛などは紅魔館近くにある廃洋館に行ってみようと計画を立てているようだ。
「結局、穹は戻ってこなかったねー」
「やらかしたんでしょ。お父さんも戻ってこなくて結局紅魔館はパチュリーと小悪魔達が修復したし。霊魔、魔力補給の為〜とか言われて、まだ搾られてそうだなー。あれ、お姉ちゃん、何そのポーチ?」
「これ?前に魔界に行った時に買ったんだ〜。色々入れてるんだよー、リップ」
「リップ?ポーチ使うほど?……私も買っといた方が良いのかな……」
「そーだね。あ、でも、変に色がついてるヤツより軽くツヤを出してくれる程度のがイイよ。それと、フルーツ系の匂いがするヤツ。私、全種類持ってるからさ、良かったら貸すよ?」
「わーありがと!弦月姫も何か借りれば?」
霊愛は弦月姫にもリップを勧めるがその弦月姫は鏡の前の椅子に座って、ウトウト船を漕いでいる。その目の下には濃いめのクマが。どうやら彼女は、あまり眠れていなかったようだ。
「……眠いの?」
「────はっ!すみませっ……えっ、えっと、何のお話でしたっけ……?」
「弦月姫もリップ使う?って誘ってみたんだけど。どうかな?甘ぁ〜い匂いするよ?」
「あ、り、リップですか……それでしたらもう、私は無色透明、あと無臭の保湿リップ使ってますよ」
「エスカルゴ、匂い付きのが好きじゃないかな?」
「そう、でしょうか?お母様がPAD付けてた時は
『ありのままの咲夜さんが好き』────と、強く説得して下さったと聞いているので、ならばと私もありのままの姿で居ようと思ってまして……」
「唇とおっぱいは話が違くない?」
「うんうん。リサはどう?」
「私も塗ってるよ〜。多分、巫月お姉ちゃんと同じお店で買ってると思う。ママと夢月もね、リップはよく塗ってるんだよねー。だから、パパはリップは好きだと思うよ。塗ってるとね、い〜っぱいチューしてくれるから、私もよく使ってるのっ♡」
((そんな裏技があったのか……!?))
リサのそのまさかの発言に巫月と霊愛はまさかと驚き、素直に感心する。いつも沢山キスをしていた2人だが、塗っている時と塗っていない時とで数を比べた事など、巫月すら無かった。だから、リサのその発言は2人にとって純粋に勉強になった。
「私のリップ、コレね。やっぱ、巫月お姉ちゃんとお揃いみたいだね。あと化粧水も持ってるよ〜」
「「化粧水??」」
「肌の保湿液、みたいな感じ?魔界には色んな店があるからさ。お小遣い貰えたら絶対に行くんだ♪」
リサは、私服はメイド服しかないのに、その数やバリエーションはかなり多い。チルドレンの中でもかなりオシャレに気を使っているのがリサである。美容とて、その例外ではなかったのだ。
「魅玖お姉ちゃんはどうなの?お姉ちゃんって凄くオシャレじゃない?」
「え。そ、そうかなっ……?」
「お姉ちゃんも何か塗ってたりするの?」
「私は何も塗ってないよ。お年玉とか貯金してて、天界とかで本買うのに、たまに使ってる……」
「ふーん。……にしてもやっぱり、魅玖お姉ちゃんてオシャレだよね〜?」
「分かる〜。魅玖のロリータファッションって何が由来でそうなったの?衣玖ともお父さんともまるで結びつかないファッションだけどさ。……私なんか、フツーに昔からこの巫女服だからさー……」
魅玖は、母の衣玖と大きく異なる衣服だ。巫月は鈴仙と同じような制服スタイルだし、霊愛と霊麗は霊夢と同じ巫女服、穹は文と似たり寄ったりの服、弦月姫は咲夜さんと全く同じメイド服。
帽子は被らないという違いはあるレイチェルも、レミリアと同じロリータファッションだし、小悪魔姉妹の2人だって普段は母の小悪魔と同じ、司書のような格好だ。
男子の例で言うなら霊魔などはまさに、父と同じファッションセンスで、Tシャツにジーパンというファッションに無頓着な男子にありがちな服装だ。
リサでさえ、母の幻月とは大きく違うが、叔母にあたる夢月と同じく普段着がメイド服なのだ。
しかし魅玖は、親に似るどころか全く違う方向にファッションのスキルツリーを伸ばしている。姉や妹達にはそれが純粋に疑問だった。
「私も。鈴仙の制服のちっちゃいバージョンのコレ何の疑問も無く着てるけど。思い切って別な服とか着てみようかなぁ……エスカルゴに聞いてみよ」
「お父さんに聞いたら、キャミソールかメイド服か裸エプロンとか、その辺のになるでしょ。無意識に自分の好みをブチ当ててくるじゃん」
「アハッ、そーかもね!真宵だけじゃなくて霊子、モルモーさんもキャミソール常用だもんね……って、そういえば、霊子は?まだ寝てたっけ?」
「図書館で読書中。とうとう、無属性魔法にも手を出すみたい?再生がどうのとか言ってたよ。この、紅魔館でのお泊まり期間中にマスターするってさ。というか緋月こそどこ?来てなかった……よね?」
「緋月、そこまで性欲強くないからねー。始めたら長いけど、始まるまでも長いっていうかさ。うん、そんな感じなんだ」
「あ、そーなんだ。じゃあ霊子と緋月のことは特に考えなくていっかな。……ていうかさぁ、霊子、最近ますます魔法の特訓してるんだよ。もうマジ無理、いつかコテンパンにされそう……」
「特訓か……魔力量すら未知数なのに?こりゃ将来はかなり化けるねぇ。なら、霊子が勉強してる間に、私達は大人の遊び、シちゃいますかぁ♡」
ヘアゴムを唇で咥え、鈴仙譲りのその綺麗な髪を手で纏めると、ヘアゴムを使って、慣れた手つきでポニーテールを作る。
「これで良し、と。ねー霊愛、コレ曲がってない?大丈夫かな?」
「イイんじゃない?というかお姉ちゃんって、髪、縛るんだね。何気に見るの初めてかも?」
「かもね。
そこから今度は「髪を
「エスカルゴはロング好きだし、できるだけ鈴仙と大差無いように自然体を心掛けてるよ。縛る時は、どっちの気分か確認するようにしてる」
「ふーん。私もリボン付けてる時は自然と縛る事になるけど、それについて何か言われた事ないなー」
「そりゃ、霊愛は縛ってるのがデフォルトじゃん。変化が出た時にギャップでキュンキュンさせるのが目的なんだから、霊愛が比べるとしたら、そうね、例えば解いた時だよ」
「あー。温泉の時はいつもより髪撫でてくれるし、褒めてくれるし……じゃあアレで正解か」
「そーそー。弦月姫、は……これからだよねっ!」
「は、はい……頑張りますっ……!」
「魅玖は髪で遊んだりするの?ショートだけど……」
「私?私は髪は何もしないよ」
「だよねー。ていうか、魅玖はアホ毛あるじゃん。なんか羨ましいなぁ。チャームポイントじゃん」
「えぇ……?まぁ確かによくイジられるけど……」
「リサも割とロングだけど、ツインテール以外にはしないの?」
「しないよー。そもそも、金髪ロングってだけで、既にママとキャラ被ってるし。今の夢幻館、堕天使2人が居候に来てるんだけど、その中の1人が私やくるみと同じく金髪のロングでさ。多すぎだよね、金髪ロング」
「お父様のお付きのメイドのシャロンさんも金髪のロングですし……お父様の性癖なのでしょうかね」
「じゃないかなぁ。あとたまにさ、舐めてる時に、ツインテをガシッて掴んで喉の奥の方にブチ込んでくるの♡……それが、苦しくて気持ちよくて♡」
「えっ何それ面白そう♡」
「おっと待ってください急に下ネタをブチ込むのはどうかと思うんですが」
(ツインテハンドルだ……お父さんエグイな……娘にツインテハンドルするのか……)
(ショートだとツインテールは難しいよね……)
リサの暴露により、今度は下ネタの嵐が始まる。先程までのリップの話や髪型の話などは「嵐の前の静けさ」だったのではないかと思えてしまうくらい彼女達の下ネタ話は止まらない。
一説には「男子の下ネタはネタ、女子の下ネタはリアルで下品」というものがある。よく外の世界で言われるこの説だが、エスカルゴチルドレンにも、よく当てはまっているようだ。
そして時計を確認した弦月姫は、そろそろ朝食の時間だからと、朝のおめかしの時間を締めようと、この場の全員に告げる。
「……あれ?そういえば霊麗はどこ?一緒に来たはずだけど……いつの間にか消えた?」
「霊麗は浣腸&シャワー浣腸中。スキマでトイレと浴室を何回も往復してるっぽい」
「浣腸するならどっちかで良くない?」
「霊麗、緩いようだけど徹底的にヤリたい派でさ。シャワー浣腸も、出てくるのが透明な水になってもしばらくは繰り返すからね……」
「それ以前に
「お姉ちゃんが負けを認めるとは、よっぽどだね」
「認めざるを得ないでしょ」
「それはそう」
◆
「あやややや……もう朝ですか、早いですねぇ」
目を覚ました文は、隣で眠る俺をそのままにして水を飲もうと布団を抜け出した。コップ1杯の水をその場で飲んで、追加でコップに水を注いで、再び寝室に戻ってくる。
「ああ全く……こんなにヨダレ垂らして。ふふ、子供みたいで可愛いですねぇ」
いつも自分がやられるので、お返しとばかりに、旦那の頬をプニプニと指でつつく。唇に触れると、鬱陶しいと言わんばかりにモニョモニョ唇を動かし逃げるので、思わず文はクスクスと笑ってしまう。
「ほれほれ攻守逆転ですよ〜?ほっぺつんつんして起こしちゃいましょうか?♡」
「んみゅ…………うぐ〜……」
「ぷくくっ……面白い反応ですねぇ」
コップの水を口に運び、窓の外を見る。朝なので妖精も活動を始める。向日葵妖精やその辺の妖精は既に外ではしゃいでいるようだ。
「ほらエスカルゴさん、見てくださいよ。朝の月も中々に乙なものですよ」
「……スー……スー……」
「────月が綺麗、ですねぇ」
「死んでもいいねぇ……ぼく、ふじみらかりゃ……」
「!?」
「スピィ……むにゃ……にひひ……あにゃにゃぁ……」
「寝言、ですか?」
「いぇす……えたぁなる、らぁ〜ぶ……うふふ……」
「全く、相変わらずあなたは恐ろしい人だ。こんな気持ちよさそうに……。どんな夢を見ているのやら。夢の中でも、誰かと交わっていそうですねぇ」
「…………スゥ……」
「私も愛してます……永遠にね」
第1部の頃からほんのたまに描写していますが。
エスカルゴの普段の一人称は「俺」ですが、ガチの本音の時というか、ガチで甘えたい時なんかには、こうして「僕」を使うんですよね。
エスカルゴ、カッコつけたがりなので。