※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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第5章:ハーレムクラッシャー編
新たな「人間」の幻想入り!?


 

「今日も今日とて、何か流れ着いてないか無縁塚に遊びに行くぜ」

 

 普通の魔法使いこと霧雨魔理沙、種族魔法使いになった今も、人間の頃からの蒐集癖は治らず、寧ろ悪化しているまであった。

 この日、魔理沙はほんの少し久しぶりに、何か、掘り出し物が無いかと無縁塚に遊びに来ていた。

 しかしあるのはガラクタばかり。やはりレアモノなんかそう簡単に見付かるはずない。小一時間程度そうして無縁塚やその周辺をガサゴソしていたが、遂に諦めて帰ろうとした、その時。

 

「……んんっ!?なんだお前……人間かっ!?」

 

「……んっ……」

 

 魔理沙は地面に寝転がる1人の少女を発見した。見慣れない服装だ。人里特有の和装でもない、寺社仏閣などの関係者であろう格好ですらもない、妖怪特有の奇抜なファッションでもない。

 ────いや。ある意味で、奇抜なファッションかもしれなかった。何故なら彼女が着ていたのは、幻想郷ではまるで見掛ける事の無い……。

 

「んぅ…………ここは……?」

 

「その服……以前、本で見た事がある。確か、そう、セーラー服ってヤツだな?」

 

「……あなたは、誰?ここがどこか、知ってるの?」

 

「ここは無縁塚、物が流れ着いたりする所でもある場所だが人が来るなんてのは中々無いぜ────。あ、私は霧雨魔理沙だ!気軽に『魔理ちゃん』って呼んでくれても構わないぜ!」

 

「魔理ちゃん……」

 

 寝ぼけたような目のままで、オウム返しのように呟く少女。魔理沙は、目の前の「人間の気配を放つ何者か」に友好的に接しながらも、警戒していた。

 少し前には、人間に擬態した天使などが幻想郷に侵入してきた事もあった。少女の髪色は、比那名居天子のような水色。そして瞳の色は、およそ普通の日本人には絶対に有り得ない、ピンク色だった。

 

「こっちは名乗ったぜ。お前の名は?」

 

「私は────誰?」

 

「え」

 

 天を見上げ、頬に指を当て「うーん」と考え込む少女。記憶喪失のように見えなくもないが、少女はどこか天然らしくも見えるので、おふざけなのか、本気なのかが魔理沙にも掴めずにいた。

 

「……誰でもいいや。なんだか、誰かが、私を助けてくれそうな気がするし」

【挿絵表示】

 

 

「おい。それ、私の事じゃないよな?」

 

「そーかもしれないしそーじゃないかもしれない。分かんないや」

 

 にへらと笑う彼女を見て、魔理沙は警戒心が少し解けたのが自分でも分かった。けれど、邪悪な気配なんかもしないし、敵意なども感じない。そして、相手が女である事も考慮して、箒の後ろに乗るよう彼女に指示を飛ばす。

 

「ほれ、乗れ。私の友達んとこに飛んで連れてってやるよ」

 

「こんなので空飛べるの?」

 

「魔法使いだからな!あ、落ちないようにちゃんと私に掴まっとけよ?」

 

「ふぅん、飛ぶんだ。……じゃ、お言葉に甘えて」

 

「ッ〜〜〜〜〜ッッ!?」

 

 むにゅん、と柔らかい感触を背中で感じ魔理沙は思わず背筋を震わせてしまう。服の上からでも胸の大きさは何となく見て取れた。しかしそれは彼女が普段から見慣れない服だからそう見えてるだけかもしれないという、ある種の現実逃避ができた。

 それがどうだ。箒に跨られ、腰に掴まられると、自然と魔理沙の背中には彼女の胸が押し付けられる事になるが────その大きさは成人男性の手からすらも零れかねない程の肉肉しさがあった。

 

(デッカ!胸、デッカ!4人も産んでデカくなった霊夢よりも更にデカいぞ……!?)

 

「飛ばないの?」

 

「お、おう、飛ぶから掴まってな!」

 

「もう掴まってるよ」

 

「うひゃあっ!押し付けるな!」

 

「……魔理ちゃん、カワイイね♪」

 

「ッ!?……か、揶揄うな!そらっ、行くぞ!」

 

 鳥が天敵から逃げるかのような、普通の人間なら振り落とされるような初速で、魔理沙は無縁塚から出発。

 今は昼間────異変など起きていない、平和な日常だった。とすれば、博麗の巫女である霊夢は、いつも通り博麗神社に居るだろう。

 幻想入りした人間の相手をして、外に返したり、幻想郷に住む意思があるなら里に住めるように軽く手配したりするのも、博麗の巫女の仕事。

 魔理沙は得体の知れぬ彼女を霊夢に任せながら、彼女について、調査をしようと考えていた。しかしこの時の魔理沙は、彼女を取り巻く陰謀の正体にはまだまだ気付いておらず、事態は彼女の想定よりも遥か数倍、それ以上に大きなものとなっていた。

 

 

 ◆

 

 

「あ、魔理沙」

 

「よう霊愛。霊夢は?」

 

「居るわよ、コッチ見れば分かるでしょ?霊愛より先に私に声掛けなさいよ」

 

「賽銭を探してるようだが、生憎だったな。中身は無いぜ。魔理沙様が綺麗サッパリ貰っちまった☆」

 

「元から無いわよ」

 

「ハハッ、違いない!」

 

 博麗神社では相変わらず、エスカルゴチルドレン次女であり次期博麗の巫女である娘、博麗霊愛が、いつも通りに掃除に励んでいた。……励むというより霊夢に押し付けられたというのが、表現としては、幾分か正しいかもしれない。

 

「あれ?そういや霊愛、紅魔館とかでチルドレンが勢揃いのお泊まり会してたんじゃ?」

 

「つい昨日終わったよ」

 

「あ、そうだったのか。お疲れさん」

 

「ん。弾幕ごっこで暴れるのは実に楽しかったよ」

 

 他にも新たに近親相姦するメンバーが増えたりと実に大荒れしたお泊まり会であった。紅魔館が幾つあっても足りないような乱闘まで何度も起きたし、その度に創造魔法の使い手は駆り出され、再建し、レミリアの胃には大穴が空きそうになっていたが、そんな波乱万丈なお泊まり会もつい先日、終わりを告げたのであった。

 

「まぁた巫月と頂上決戦、か?」

 

「まーね。今回はたまたまトーナメントの当たりが良くてね。霊魔と霊子が潰し合ってくれたからサ」

 

「姉としてどうなんだその発言」

 

「今更だよ」

 

「今更だったな。まぁお泊まり会のことはいいや。霊夢、仕事だぜ」

 

「────そうみたいね。こっち連れてきて」

 

 箒を降りて魔理沙のすぐ隣に立った少女を見て、霊夢の目の色が変わった。霊愛もそうだ。なんなら魔理沙と会話していたときから、視線は彼女の方に向いていたまである。

 魔理沙は少女を伴って霊夢の前に行くと、霊夢は警戒心を込めた目で問う。

 

「あなた、名前は?」

 

「……分からない」

 

「記憶喪失?」

 

「そうみたい」

 

「それ、セーラー服よね。外の人間?中学生、には見えないわね。……女子高生ってヤツ?」

 

「……分からない」

 

「ご両親の事は?」

 

「……分からない」

 

「魔理沙と一緒に空を飛んできたみたいだけれど、怖くなかった?」

 

「怖くなかったよ」

 

「どうしてここに居るの?」

 

「えっ、と……魔理ちゃんが、寝てた私を見付けて、連れてきた……から?」

 

「魔理ちゃん???」

 

「私がそう呼んでいいって言ったんだよ。特に深い意味は無いぜ。あと、そいつを拾ったのは無縁塚、そんでもって時刻は分からんが、ついさっきだよ。私が見付けたときはスヤスヤ寝てたぜ」

 

「……。まぁいいわ。単刀直入に聞くけど、あなた、人間なの?」

 

「……人間、だと思う」

 

 エデン異世界調査隊の問題があったので、霊夢も魔理沙と同様に、彼女が「幻想入りしてきた人間」であると考えるより前に「そもそも人間なのか?」という所から話を掘り下げる。

 魔理沙は当然の事ながら、霊夢、そして霊愛も、水色の髪でピンクの瞳を持つ彼女を「人間」だとは思えなかった。

 人間の気配とは独特だ。それこそ天使のように、極めて高位の存在でないと、真似る事すらも難しいくらいなのが通例だ。

 河童などの普通の妖怪でも、人間に化ける事など簡単にやってのける。しかしそれは「変装」の範疇であり、気配に敏感な者なら「お前妖怪だな」と、すぐに看破できてしまうのだ。

 それくらいに「気配」とは普通には誤魔化せないシロモノである。

 

「あなたがいつから無縁塚に居たのかは分からないけれど、昼間とはいえただの人間があんなところに居て無事とも思えないのよね。……魔理沙ぁ、近くに特に何か不審物とか無かった?マジックアイテム、いや、まじないとか込められてそうな呪具とか?」

 

「無かったよ。そもそも、こいつを見つけたのが、そうやってマジックアイテムとか落し物を探してるときだったからな。もしそんなモンがあったなら、絶対に持ってきてるさ」

 

「でしょうね。魔理沙はそういうヤツだから」

 

「照れるぜ」

 

 そんな会話をしていく内に、霊麗をはじめとする他の博麗家の子供達がゾロゾロと出てきた。ただし霊魔だけは霊麗の背中に隠れているが。

 

「魔理ちゃん……あの子……」

 

「ん?……あぁ、アイツは博麗霊魔。照れ屋なんだ、気にしないでおいてやってくれ」

 

「りょうま……。ふーん……あの子もカワイイ♪」

 

「彼女持ちだから、手出しは無用だぜ」

 

「なーんだ。つまんない。ねぇ霊魔くん、あなたはハーレムにしないの?」

 

「ふぇっ!?ぼ、ぼぼっ、僕は、ハーレムなんか、望んで、ないから……っ!」

 

「……そっかー。ざーんねんっ」

 

 しかしこの会話を経て、霊夢は、そして霊麗は、ある事に気付く。霊魔はというと、少女の可憐さに照れてしまい屋内に引っ込んでしまった。魔理沙は霊魔の相変わらずの照れ屋ぶりに苦笑いしていて、霊夢達が気付いたことをスルーしてしまっていた。

 

「あなたやっぱり、幻想郷を知ってる?」

 

「え?」

 

「待て霊夢、何故そうなる?」

 

「今の霊魔に対する発言よ。『あなたはハーレムにしないの?』……って、これはまるで他のハーレムを知ってるかのような発言じゃないの」

 

「!」

 

「……確かに。おいお前、どうなんだ?」

 

「え、え〜……『ハーレム』くらい知ってるよ…………男が多数の女を囲ってる事、でしょ……?」

 

「そうじゃないわ。あなたのさっきの言い方だと、あなたの知ってる男がどこかでハーレムを作ってるように聞こえる」

 

「んー……漫画の話だよぉ。ここに来る前に読んでた漫画のお話。男の子が、出会う女の子を篭絡して、女の子の中の1人から『ハーレム作りましょう!』なんて提案される、御伽噺みたいな、漫画のお話」

 

「「「…………」」」

 

 嘘つけと否定したい気持ちはあったが、自分達が知らないだけで、そんな漫画も存在しているのかもしれない。魔理沙はともかく、霊夢は小説なんかを主としつつも最近は漫画にも手を出しつつあるし、霊愛は当然、エロ漫画が中心ではあるものの漫画を好んで読むので、否定できないでいた。霊麗もだ。唯一、霊子だけは、何も言わず警戒心を強めた。

 

「────ともかくだ。お前がどこの誰で、そして何をしようとそれはお前の勝手だ。幻想郷に住むも元の世界に帰る手掛かりを探すも、お前の勝手だ」

 

「そーなんだね」

 

「手っ取り早く返せるヤツを2人知ってるけれど、1人は今夜は永遠亭、1人は好きに連絡が取れないという面倒さ……。うーん……」

 

「エスカルゴと紫の事だな?外の世界だったら紫、近隣の異世界だったらエスカルゴに頼めばいいさ。エスカルゴのあの《異世界へ行く程度の能力》なら紫でさえ行けない場所に行けるからな」

 

「……そーね。えっと、あんた」

 

「っ!はい?」

 

「私の旦那ならあんたを元の世界に返してやれる。だけど今夜は留守の予定だからさ。あんた、今夜はここに……博麗神社に泊まりなさい」

 

「いいの?」

 

「ええ。寝室は私と同じだけど、構わないわね?」

 

「うん、いーよ」

 

「決まりね。────ありがとうね魔理沙、仕事を増やしてくれて」

 

「おう!そんじゃ私はもう少し、こいつを見つけたあの辺を調査してみることにするぜ」

 

「任せたわよ。何かあったら教えて」

 

「へっ、任せな!」

 

 こうして魔理沙は調査の為にもう一度無縁塚へ。霊夢は少女を伴い神社の中へ。霊愛は掃除を再開、霊麗は姉を手伝う為に箒を取りに納屋へ。

 唯一縁側に残された霊子は、パチュリーのように魔導書を読みながら、あれこれと思案を巡らせて、何やら深く考え込んでいるようだった。

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