「新生エスカルゴチルドレン、ですって?」
「ええ……。我が父、エスカルゴ・スカーレットは、私達の住まう世界の創造主なのです。その血を強く引く、直接の子供達こそが────私達こと『新生エスカルゴチルドレン』なのですよ」
「お、お父さんが世界の創造主ぅ……?」
「まるで意味分かんない……」
「BLEACHの霊王みたいに、世界を繋ぎ止める楔、じゃなくって……創造主そのもの……なの?」
バラされてしまった。霊幻世界の事はモルモーと俺だけの秘密にしようとしていたのに。リリスが、幻想郷に来たばっかりに……バレてしまった。
「エスカルゴ、どういう事?アンタとうとう、神綺みたいに世界なんてモンを作っちゃったの?」
「……」
「お父さんの事だから、エロいことまみれの世界になってそうだねぇ」
「おや。そちらの娘さんは────霊愛ちゃんは、お父様の事を深くよく理解してらっしゃいますね。そう、私達の住まう世界『霊幻世界』は、エッチな事ばかりの世界です。許されざるは非合意と苦痛。そして私は『苦痛』を愛する大罪人なのです」
「!?」
「皆さん、リョナられた経験は?────ま、無いでしょうねぇ。お父様にはそのようなグロテスクな趣味は……ありませんから……ね♡」
含みを持たせた言葉でそんな事を言う。すると、ふわりと舞い上がり、リリスは立ち去ろうとする。
「待てリリス!どこに行くつもりだ!!」
「私は、私の目標が達成されるまで、幻想郷を去るつもりは毛頭ありません。いつでも見ていますよ、お父様……。それでは皆さん、ごきげんよう♡」
にこりと微笑み、姿を消した。そして博麗神社の面々から俺への、記者会見に近いような矢継ぎ早な質問攻めが始まったのである。
「世界作ったってどういう事?また神綺から力でも借りたりしたの?」
「や、母さんは完全に無関係……」
「お父さんにそんな力あったワケ?」
「ある程度の力量があれば誰でも……」
「あの人が四女って事は、少なくとも長女から三女までの3人は居るんだよね」
「そうだな」
「
「基本的には治安イイんだよ!?」
仕方ないので、博麗神社の面々にのみ霊幻世界の存在及び世界創世の経緯などなどを話す事にした。始祖は俺とモルモーであることや、新生エスカルゴチルドレンというのは「原初の三女神」と呼ばれるモルモーとの子供だけの予定だったこと……。
「────そんなワケだ。だから、限りなく完全に近い世界だと言える。だけどリリス、アイツの存在だけは、誰も予想しないようなもの、それはもう、完全なバグだった」
霊幻世界の住人は、魂が本体。肉体は器である。それは俺とモルモー以降の世代、つまりは三女神の世代からそうなっているので、血の繋がりを持った子孫は、あの世界には三女神以外には存在しない。
少なくとも、そうなるはずだったのに、初めての
「三女神以降の世代」であるリリスが生まれた時にそのバグは起きていた。
「リリスはね、特異体質なんだよ。魂が本体になるという世界の理に反し、魂と肉体の両方がリリスの本体なんだ」
「それだと何か問題があるの?」
「あると言われればあるし、無いと言えば無いよ。だけど、リリスは俺の子であり────孫なんだ」
「「「「えっ」」」」
三女神長女・マリンと俺の間に生まれたリリス。マリンは俺の娘だから、娘の娘という視点で見ればリリスは俺の孫である。俺から見れば孫であるし、マリンとの娘なので娘とも言える。つまり孫であり娘である、娘であり孫である存在なのだ。
「まぁそれはいいんだ。霊幻世界では近親相姦などタブーではないし、遺伝子欠陥によるバグなんかも排除してある。だけどまだ計算違いな事があった。ノーリスクだと思ってた『血縁を含んだ近親相姦』だけど、俺の血が濃くなると、残虐な性癖を持って生まれてくるみたいで……」
「ハァ?」
「え?」
「は?」
「?」
「霊幻世界では、非合意の行為は禁じてるんだよ。レイプとかそういう。そして当然、本体は魂でも、肉体は存在するから、痛みはある。痛いのは嫌い、それはこちらの世界でも普通だ。だからグロいのが好きなリリスは、ずっとその欲求が解消できずに、フラストレーションを溜め込んでいった」
しかしある瞬間、耐えきれなくなったリリスは、霊幻世界の住人達を傷付けてまわるという、残虐な事件を起こした。肉体を傷付けるだけだったらまだ良かったとさえ言えるだろう。
他者を傷付けたリリスはその肉体を犯し、嬲り、汚し、これでもかと蹂躙した。それらを禁じている俺は、孫であるリリスを、世界唯一の監獄に投獄。ただしより深層、より強固な封印のかけられている監獄の中でも最下層……第七監獄ゲヘナに、だ。
「……娘を投獄だなんて、アンタらしくないけど……一応苦労してんのね、アンタも……」
「好き勝手やった代償でしょ?仕方ない仕方ない」
「あれ、てことはあの子って……私達の妹なんだ」
「妹の暴走を見て見ぬふりは……ちょっと……」
「いや。アイツの目的は俺とのリョナ的子作り……。ドンドン血を濃くするのが目的だから……」
「待て待てリョナ的子作りってなに」
「めちゃくちゃグロいことしながら中出しセックスするってこと……です……ハイ」
「じゃあすればいいじゃない。アンタが我慢すればいいだけでしょ?近親相姦なんか今更よ、今更」
「せめて霊夢は止めてくれると思ってた……」
「甘えんな。とにかく、これはアンタの問題だし、どうにかしてよね」
「ウッス……どうにかリリス止めます……」
「分かってないわねどうも。まぁいいわ、さっさと解決してきなさいよ」
しかし更なる誤算があった。リリスにはどうも、俺をも上回る魔法力が生まれつき身についていて、俺以上に「何でも」魔法で解決してしまうことだ。
だから、俺にはもうリリスを見つけられないし、リリスの元には行けない。アイツの魔法力は、概念操作の手前にまで及んでいる。
言わばリリスは、へカーティアと俺の間にある、絶対的な壁を超えんとしている存在なワケだ。
「……そんなワケでアイツには俺の能力は通じないし色々と上回られてます……ハイ……」
「父親として、祖父として、恥ずかしくないワケ?いやまぁアンタに言ってもしょうがないけど……」
「リリスの確実にヤバい所って遊んでる所だよね。お父さんをそんなに上回ってるんなら、さっき誘拐くらいできたでしょ。それをしないで敢えて放置、これはもう完全に舐められてるよ?お父さん?」
「……」
こちらからは探せず、向こうからは一方的に俺を補足することが可能。気が重い────。まさか、こんな目に遭う事になるなんて。
「とりあえずリリスの事は宿泊ローテに含まれてる各家庭には通達しよう」
「それはまぁ、確かに。最低限やらなきゃね」
まずは霊夢達にリリスの能力なんかを軽く説明。永遠亭、妖怪の山────いつもの宿泊する順番に連絡しようと、そんな話をしていた。
既にリリスの行動は始まっていたというのに……。
◆
「ほぉ〜!とすると、そのリリスとかいう女悪魔はエスカルゴの初孫にあたるのか!アッハッハッハ、そりゃ〜めでたいめでたい!紫も喜べ!」
「全く隠岐奈は気楽よね……誰が喜べるの?そいつの手によって、幻想郷が荒らされる事になったら!」
「エスカルゴを罰する、か?」
「ッ!」
「……ま、言わんとすることはわかるがね。とはいえ紫よ。力ある者が己の世界を所有するというのは、古今東西、当たり前に行われている事だよ。私の、この『後戸の国』も幻想郷から見れば異世界だぞ?エスカルゴが自分の世界を所有したとて特に問題はあるまい。人間上がりの仙人すらも、仙界とかいう自分の世界を持てるような世界だぞ?」
「それはそうだけどその住人がこっちに来て問題を起こすのは話が別よ!」
「そうか?少し前には魔界人が幻想郷に溢れ返って大変な事になって、博麗の巫女が魔界に攻め込んだじゃあないか。あちらさんは観光だったが、今回もあまり問題ではないと思うがね」
「問題よ!被害が出たらどうするの!?」
「ま、出るだろうさ。しかし、そこまで目くじらを立てる必要性を感じない。私達のこの幻想郷には、自浄作用があるじゃないか」
「エスカルゴは身内には甘い男よ!今回に限っては頼りにはならない!」
「はははっ、面白い事を言うようになったな、紫。幻想郷の自浄作用を担うのはエスカルゴだけか?」
「ッ……私は、身内の不始末は身内につけさせるのが道理、そう思ってるんだけど?」
「茜しか身内の居ない紫の不始末は茜に……か?私の不始末は誰が?華扇の不始末は誰がつける?萃香?それとも勇儀にでも押し付けるか?」
「!」
「紫。お前はエスカルゴばかりを見すぎなんだよ。いや、恋するのは良いことだと思う。何と言うか、良くも悪くも真面目すぎるんだ、紫は。これまで、賢者として働き過ぎたのかな。その反動か、自分で思ってる以上にエスカルゴという男に入れ込んでるようだぞ?」
「そんな事はっ……」
「恋は盲目だよ、八雲紫。出産後に、改めて初恋を経験する事になろうとはまるで思わなかったろう。フフフッ、やはり面白いな。お前達を見ていると、つくづく思う。幻想郷は面白いなとね」
「……じゃあどうするのよ、リリスのことは……」
「放置でよろしい。大人しく見ていなさい。今に、エスカルゴではない、博麗の巫女や魔理沙でもないどこかの誰かが────あの女を満足させて、自ら自分の世界に帰るよう、促してくれるから」
「………………今や魔術の神でもあるエスカルゴすらも上回る魔法の力を持っている、と言っても?」
「お前はエスカルゴのことを『上』に見すぎだよ。アイツは最強でも何でもないじゃないか。まして、未だにアイツが目指す『準最強』でもないんだぞ」
「……」
「いいか紫。神に等しい力を持つお前に勝ったとてエスカルゴは最強でも準最強でもない。お前に勝つというのは、エスカルゴにとっても『通過点』だ。ゴールではない。……今の幻想郷は群雄割拠の戦国の世と変わりないよ。エスカルゴ以外にも『強者』はゴロゴロ存在しているんだよ。エスカルゴが頼りにならない、大いに結構!エスカルゴ以外を使えば、それで済む話なのだから!」
「……まさか、隠岐奈……」
「久しぶりに、切り札を出すときが来たようだね。まるで、エスカルゴが幻想郷に来る前のようだな。あまりに久しぶり過ぎて、鈍ってないといいが」
「……」
「エスカルゴに劣る強さだろう、とでも言いたげな顔だな?ハハ、確かに彼女の強さはエスカルゴ以下かもしれない。しかし今回は、戦いで勝つ事だけが正解ではない戦いだ。────紫、見ていなさい。私達が思っているよりも早くに決着がつくよ」
「……そうなるといいけど」
隠岐奈との会合を終えた紫さんは、深い溜め息と一緒に、幻想郷へ舞い戻る。その頃、幻想郷では、リリスによる襲撃が始まっていた。