※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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博麗神社防衛戦

 

 これは、リリスが紅魔館にて、咲夜の手によって瀕死まで痛めつけられていた頃の話である。

 その頃のエスカルゴは、リリスを探しに幻想郷を飛び回り、博麗神社では、各々がリリスへの対処を考えながらいつも通りの日常を過ごしていた。

 ただ1人、霊魔だけは、他の子や霊夢とは違い、罪悪感にも似た気持ちを抱えてしまっていた。

 もし自分がリリスの誘惑に負けていれば(・・・・・・)、こんな事にはなってなかったのかもしれない、と普通とは逆の方向に考えていた。

 霊夢は、部屋の隅で漫画すら読まず蹲る霊魔に、どうにか慰めの言葉をかけてやりたいと思ったが、今の彼には何を言っても逆効果になりそうで、もう黙って見守るしかないか、と溜め息をついていた。

 

「お兄ちゃんさ、そんなウジウジしてたって、もうしょうがないんじゃないの?終わった事だしさ」

 

「ウジウジって。……そーだけどさ」

 

「ウジウジじゃん。お母さんや私やお姉ちゃん達がアイツへの対処とか攻略法とか考えてるってのに、お兄ちゃん、さっきから何を考えてんの?」

 

「!」

 

「どーせ『僕がちゃんとリリスの話を聞いとけば』みたいな、そんな事を考えてるんじゃないの?」

 

「……うん」

 

「自惚れてんなよ、アホくさ。どーせお兄ちゃんがアイツの言う事をホイホイ聞いてたとしても結果は変わんなかったよ」

 

「なんでそう言えるのさ」

 

「だってそーじゃない。リリス、お父さんが目的で行動してるクセに、お父さんから逃げるかのように姿を見せないし。それって『お父さんとのリョナ的子作り』以外にも、別の目的があるからでしょ?」

 

「!」

 

「お父さんとグロいセックスする前段階として何かやりたい事があるんだよ。それなら、パンツ見せてお兄ちゃんを誘惑したって話から考えると、多分、エスカルゴチルドレンとのセックスって事になる。だから、お兄ちゃんがその誘惑に乗っても、結局、アイツは他のチルドレンを襲いに行くんだよ」

 

「だから『結果は変わらなかった』……ってコトか」

 

「分かったんならアイツへの対処法でも考えなよ。お兄ちゃん、あの誘惑に乗ったフリして、リリスにハニートラップ仕掛けりゃいいじゃん」

 

「ヤダよ……」

 

「あっそ。別にいいけど、私の案を否定するなら、よりマトモな対処法をヨロシクね。私はいつも通り魔導書読んでまーす」

 

「はぁ……僕もBLEACH読も……」

 

「いや対処法考えなって」

 

 霊魔は子供部屋に戻り、霊子はその場で魔導書を開く。霊夢はいつも通り推理小説を読むが、霊愛と霊麗は、先代や先々代の遺した手記を読んでいた。

 非常に平和な、博麗神社の読書タイム。しかし、次の瞬間、和やかな日常は一気に戦場に変わった。

 

「ッ……この気配……まさか!」

 

 博麗神社の上空に、リリスによる二重の(・・・)魔法陣が出現した。しかし家族全員、揃って屋内に居るのでそれに気付ける者は居なかった。

 唯一、博麗神社で一番魔法への造詣が深い霊子を除いて。

 

「ヤバイ!襲撃!!」

 

「「「「!?」」」」

 

 縁側から素足のまま外に出た霊子は、博麗神社の上空の魔法陣を視認するや否や、屋内の家族全員にそう言葉を飛ばす。

 直後、二重になっている内の、上の魔法陣から、赤黒い細いレーザーのようなものが現れる。それが下の魔法陣に触れたかと思うと、数が数十倍に増え一気に降り注いでくる。

 

「くぁっ……お、重いッ……!?な、何この攻撃っ……ふざけてるっ……!!」

 

 咄嗟に結界を貼る霊子だが、瞬時にヒビが入り、破られそうになる。霊力を送り込むも結界の補強が間に合わないと思った、そのとき。

 

「危ない危ない。……何なの、この攻撃?血の匂いが凄いわね」

 

「お母さん……」

 

 霊夢が、霊子の結界の真下に新たに結界を作ったので、霊子はヒビだらけの結界を解除。フーッと、息をついたのも束の間。博麗神社への攻撃は、増々熾烈なものになっていく。

 

「霊子、分析」

 

「……上の魔法陣は転送魔法だと思う。どこからか、あの血の攻撃を出して、それを転送魔法で博麗神社まで転送してきてる。お父さんがよく使う、スキマみたいなモンだね」

 

「上の魔法陣が攻撃の起点ね。なら、下の魔法陣は複製とかそういう魔法かしら?」

 

「多分そう。上の魔法陣から出た物が下の魔法陣を通過すると共に数を増やしてるからね。複製とか、倍増させるとか、そういう魔法で間違いないよ」

 

「……でも下の魔法陣(・・・・・)、大きくなってきてない?」

 

「え」

 

 攻撃範囲がジワジワと広がってきている。霊夢も慌てて自身の結界を拡張させるが間に合わない、と悟るが、そんな博麗神社に、ある助っ人が現れる。

 

「*よう。あいかわらず おそわれてるな」

 

「三途!」

 

「えっと、エスカルゴの骨の式神だっ!」

 

「*Sansだ」

 

「Sans、法被は今日は居ないの?」

 

「*パッピのことを いってるのか? Papyrusは えいえんていに ごえいしに むかった」

 

「そっか永遠亭に……っていうかSans、バリアとか、そういうの出せないでしょ」

 

「*オイラの でばんは これからだよ」

 

「?」

 

 その時、リリスが現れた。この直後に咲夜により時間が止められたのだが、博麗神社の面々は、時間停止に適応はしていないので、ここから先は全て、時間停止が解除された後の話である。

 

「リリス!!」

 

「ふふ……紅魔館はやはり難易度が高かったですね、仕方ありません。しかし私は『学習』する女です、まずはこちらから襲っていきましょう……!!」

 

 以前に博麗神社に現れた時とは、まさに別人だ。霊夢ですら、別人かと思ってしまうくらい、彼女の纏う気配は全く別人のものだった。

 リリスは二度の敗北を経て更に「学習」を深め、そして襲ってきていた。夢幻館での初めての敗北、紅魔館での二度目の敗北────これまでの人生を含めても数少ない「敗北」を噛み締め、リリスは、更に強くなった。

 

「*お。アイツが てきなのか?」

 

「お父さんからデータもらってないの!?」

 

「*あいにく あれから アプデなしだ」

 

「ッ……お母さん、結界の方はお願い!」

 

「は!?あんたがリリスと戦うのっ!?エスカルゴよりも上なのよ!?」

 

「そーだよ霊子、やめときな!私がやる!」

 

「私とお姉ちゃんで、ね」

 

 霊夢や博麗姉妹は霊子の提案に反対するがそれを素直に受け入れるような霊子ではない。その場に、遅れて霊魔が現れ、リリスを発見するや、ビクリと身体を震わせるが──そんな兄を尻目に、リリスへぶつける魔法の準備をする。

 

「お姉ちゃん達、あとお兄ちゃん。魔法への対応力私より低いんだから、スッ込んでた方がいいよ」

 

「んなっ……霊子!」

 

「こういう時くらい協力すべきじゃない、かな?」

 

「必要無いね。私は私で戦う。もし私が負けたら、お姉ちゃん達やお母さんはそれ参考にしてアイツを叩けばいいだけでしょ」

 

「捨て駒になるつもり!?」

 

「はぁ?チルドレンでナンバー2のこの私が?自ら捨て駒に?寝言は寝て言うから、寝言って呼ぶの。目ェ覚まして現実を見て、聞いたら?私とSansで、アイツを倒すよ」

 

「*そいつは オーバーキル じゃないか?」

 

「お父さん曰くアイツは不老不死らしいよ。だから寧ろ、殺すのが手っ取り早く『分からせ』られる。いいでしょ?」

 

「*ほんとうに ころすんだな?」

 

「怖いの?」

 

「*そうじゃない。……オマエが そういうのなら そうしてみても いいかもしれないが……」

 

「?ハッキリしないなぁ。まぁいいや。リリスゥ!今から殺しに行くけど、良いよねェ!?」

 

「構いませんよ?あなたに私が殺せるのな……」

 

「滅却『消散の霧』!」

 

「……?何です、この煙……鬱陶しい事この上な……」

 

 黒い霧のようなものをリリスへ向けて放つ霊子。リリスはその霧に対し、煙を手で払うように、手でパタパタと霧を仰ごうとするが。

 

「え。……えっ。はあ?」

 

 霧に触れた箇所は、跡形もなく消えたのである。それはもう、一滴の血すらも流すことなく。まるで麻酔でも打たれ手術でもしたように、痛みも無く、手首から先が消えて無くなったのだ。

 

「*よそみとは ずいぶんと なめられてるな」

 

「ッ!!」

 

 サンズは左眼を水色に光らせながら、手が消えたリリスの目の前に瞬間移動。刹那、無事な方の手を挙げたかと思うと、複製する方の魔法陣をグワッと広げ、霊夢の結界を超える範囲にまで、攻撃の手を拡大させた。

 バキンバキンと瓦が砕ける音がするし、何発かは納屋の方にも当たっているようだ。

 

「あっ!?コラッ、Sans!煽るのはやめなさいっ!神社が壊されるでしょーが!」

 

「いーよお母さん、こっちでカバーする!やるよ、霊麗!」

 

「うん」

 

「……♪」

 

 姉妹がリリスの攻撃範囲外に移動したその瞬間、霊夢の結界拡張すら間に合わない速度で攻撃範囲を広げ、姉妹を脳天から串刺しにしようとする。が、次の瞬間。

 

「────卍解『安穏遊戯』」

 

「!?」

 

 霊魔の卍解の速度は名実ともに幻想郷イチ。その異次元な速度はリリスの攻撃すらも振り切り、姉を安全地帯へ移動させた上で結界まで張ってしまう。

 

「っ……ありがと……」

 

「助かったよ。……どんどん範囲が広がるね、アレ」

 

「でも長くは続かない。だよね、霊子?」

 

「うん。お兄ちゃんも多少は魔法使うから分かったみたいだけど────あの攻撃、初めは本物の血を発射してたけど、今は違うね。血を媒介に、魔力に形を与えて、槍として降らせてる。レイチェルの、あの紅い戦斧みたいな感じかな」

 

「てことは消耗させれば血も魔力も消費するだけ、みたいな感じ?」

 

「それもそうだけど、殺したら、復活と一緒に血も再充填されるから……ま、どうでもいっか」

 

「はぁ!?そ、そんな投げやりな!」

 

 作戦を考えていたような素振りを見せていた霊子だったが、それを一気に投げ捨てるかのような事を言ってのける。それには流石に霊愛も、霊夢も軽く怒りを隠せない様子。

 霊子は気分屋な所があるが、なにも、今この場で発揮しなくても──とギリッと奥歯を噛み締める。

 しかしそんな家族を差し置いて、霊子はニヤリとこれまでに無いくらい口角を釣り上げ、目を細め、満身創痍の獲物を見つけた肉食の獣のような獰猛な笑顔で舌なめずりする。

 

「えー?どうでもいいよぉ。だって、どうせもう、リリスは逃げられないんだからさぁ……♡」

 

「逃げ……ッ」

 

「「「「……ッ!?」」」」

 

「瞬間移動だか転送魔法だかも使えないよ?ふふ、ふふふっ……アハハハハハハハハハッ!!」

 

 心の底から可笑しいと言わんばかりに抱腹絶倒の霊子。それを見て一気に頭に血が上ったリリスは、無言で指先を噛み切り霊子の腹部を貫く。

 

「ゲフッ……あー、これ、再生しない系かぁ」

 

「!?」

 

「ねー、見てお母さんお姉ちゃんお兄ちゃん、あの血の攻撃、喰らったら再生しないで死ぬよー」

 

 白キャミを捲り、腹にあいた穴を見せびらかす。死の恐怖で頭がイカれたか、とリリスは放置して、魔力を高め、束ね、大技の準備を始める。

 

「死ぬって……霊子!?」

 

「あ、私は死なないよ?再生力が高いからね。まぁ見てなって」

 

 傷口から徐々に細胞が崩壊している事に気付いた霊子は、右手を大きく振りかぶって自分に腹パン。飛び散った体組織は境内を血生臭く汚し、霊夢達はつい目を閉じるが、恐る恐る目を開けるとそこには再生を終えて何食わぬ顔をしている霊子が居た。

 

「え」

 

「穴は……?」

 

「傷付いた部位ごと殴り飛ばして、再生させたの。でもこんな方法が使えるのは私くらいだよねぇ♪」

 

 4人は黙り込んでしまった。

 霊子は、以前のトーナメントを経て自己肯定感が高まるまで病んでいた時期があった。自傷に微塵の躊躇いも無いのはその時の弊害、副産物である。

 しかし今は、その過去のお陰で、命が助かった。何とも皮肉なものである。

 4人は警戒を強め、絶対に被弾しないようにと、改めてリリスへの敵意を新たにした。

 

「*オイラとも あそぼうぜ」

 

「お父様のような気配を纏って……不快な骨です」

 

「*エスカルゴの ホネから つくられたからな」

 

「!」

 

「*くらえ」

 

 オレンジのガスターブラスターを装備して、空に向ける。何のつもりだ、と警戒を強めるが、それと同時に水っぽい何かが弾けるような音が。

 

「え゚」

 

「*やはりな。あのちの やりは たいないから ちょくそう だったんだろう」

 

「あ……ぴ……ぃ…………ぷぇ……」

 

 弾けたのはリリスの頭。博麗神社に降らせる血の槍の生成に使う血は、リリスの頭部から転送魔法で直送していた。紅魔館から博麗神社に来るときに、切り替えをしていたようだ。

 転送魔法とは、魔法陣を介して転送先と転送元は繋がっている。だから、博麗神社上空の魔法陣は、リリスの体内に繋がっているとサンズは予想した。

 予想は見事に大当たり。頭を破壊されたリリスは力無く墜落し、ぴくっ、ぴくっという小さな痙攣と一緒に、サラサラと肉体が消えていく。

 

「あ……魔法陣が消えたわ」

 

「はーっ……雨を受け止めてる気分だったよ」

 

「あんな密度の攻撃を受け続けることなんて、殆どないもんね……」

 

「足が棒みたいに……うぐ……」

 

 攻撃が止んだと思うと、博麗神社上空の魔法陣が2つ共、揃って溶けるように消えた。

 霊夢と博麗姉妹は、それを見届けて結界を解除。霊魔は3人の結界でカバーしきれない分の血の槍、もといレーザーへの超高速な対処に追われてたのでその場に倒れ込んでしまった。

 

「多分だけど、脳ミソから血を直送してたんだよ。だからこそ、脳ミソがSansに消し飛ばされたことで魔法を強制終了させられたってワケ」

 

「血を直送ってのもよく分からないけど。不老不死だから失血死しても関係ないって事かしら」

 

「そーだと思うよ。でも、自殺はしたくないタイプだと思う。あいつ、無駄にプライド高そうだもん。多分、そろそろ復活してくるよ」

 

「だとしても、死んで復活するタイプの不老不死は魂が主体なんでしょ?だったら、もう、魂の状態で逃げてんじゃないの?」

 

「お姉ちゃんの割に鋭いね。でも、言ったでしょ。もう、リリスは逃げられないってさ」

 

「それがよく分かんないんだよね。どういう事よ?結界で囲んでるワケでもない、ほんの一部でも封印してやったワケでもないのに、逃げられない意味が分からないよ」

 

「……霊愛お姉ちゃんは、もう少し能力とかの研究をした方がいいかもしれないね」

 

「あー?」

 

「Sansの《重力を操る程度の能力》はお父さんのと少し方向性が違うんだよ。というより、適用範囲がお父さんより広いって言い方の方が正しいかな?」

 

「?」

 

「Sansはタマシイを重力で捕(とら)える。だから、Sansがその方向で能力を使えば……」

 

「*もう にげられやしない ……ってコトさ」

 

 その時、6人の背後で、リリスが復活した。酷く狼狽した様子で、肉体を再構築したばかりなのに、もう冷や汗やら脂汗やら、汗をかきまくっている。

 博麗神社から出られないと悟り、自分がどれだけ絶望的な状況に立たされているのか、嫌という程に理解したのだろう。

 

「*たいした ケツイもないのに すきほうだいに あばれるのが わるいんだぜ」

 

「ッ!うるさいですよ、骨の分際で……!」

 

「*ごしゅじんからの でんごんをつたえてやる。

『こちらはお前の封印の準備を進めている。恐らく半永久的に解けない封印だろう。皆に痛めつけられ泣きながら封印されるがいい』────だそうだ。エスカルゴは いたく ごりっぷくだぜ」

 

「え」

 

「*さぁ リリス。そろそろ じごくのごうかに やかれる じかんだぜ」

 

「……ならば!お前を倒し、脱出するまで!!」

 

「*れいむ。みんなをつれて なかにもどれ」

 

「えっ、でも」

 

「*オマエらは ふじみじゃない。エスカルゴを なかせたくは ないだろう?」

 

「……みんな!神社の中に避難よ、今すぐ!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「Sans!援護はするから!」

 

「*OK たのんだぜ」

 

 霊夢&サンズvsリリス、最後の戦いが始まった。しかしその直後、事態は急展開を迎える事になる。

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