「ん……凄い、普通に美味しい……ていうかこの味、咲夜のカルボナーラに近いような」
「ね!美味しいでしょっ!このお店が人気店なのもよく分かります……!実はこの『
「え」
「首席クラスもその次も、大差ないんですけどね!味やコクの再現が極めて難しいってだけですから。食べ物を完成した状態で創造するのは常識ですよ。美味しいかは別として、ね」
夫のエスカルゴは、完成したモノを創造するのは難しいと発言していた。これは、「美味しいものを創造するのは」という意味だったのか、と、霊夢は密かに納得した。
だから、創造するのは材料だけに留めておいて、料理自体は自分の手で行っていたのかと、改めて、創造魔法の難易度の高さを思い知った。
そもそも創造魔法自体が高難易度の魔法なのだ。身の回りの者は気軽に物体を創造してくれるので、霊夢はその感覚が麻痺していたが、そう思い返して改めて魔法力の高さに舌を巻いた。
よく考えれば、物体創造なんてそれこそ神の領域なのだと分かるはずなのに。
「学校系は全て2番目のお姉ちゃんが元締めです。だから首席クラスともなると、魔法のクオリティもスッゴく高いんですよ」
「そうなんだ」
「夢魔はエッチなので性産業に向いていて、悪魔は魔法に優れるので、こういった創造魔法系の産業に向いています。現に今出勤されている店員さんは、3人共、悪魔なんですよ」
「!……じゃあ吸血鬼は何に向いてるの?」
「吸血鬼はオールマイティですからね。割と好きな事が出来ます。私は魔法力より体力がウリなので、性産業か観光業を生業にしようと決めてたんです」
「生産業ねぇ。何を生産する業種?」
「へ?……あっ、違いますよ、霊夢さん!生産するんじゃなくて『性』!エッチなのをウリにしてるってことです!『生産、業』ではなく『性、産業』!」
「あ……///」
思わずフォークを皿に落としてしまった。同じく
「セイサンギョウ」でも、当てる漢字を変えると、意味がまるで変わってしまう。難しいものだ。
「まぁでも、性産業も生産業と言えるかもですね。霊幻世界の人口増加に一役買ってくれているのは、紛れもなく夢魔の皆さんですから」
「え」
「そうだ!霊夢さん、後で子作りしませんか!?」
「はぁ!?ちょっと、こんなとこで何を言って……」
「女の子同士で子作りなんて常識ですよぉ!」
「ええッ!?いや確かに、この世界に男とか居ないみたいだけど!なんで私があんたと子作りするって話になるのよ!」
「いやー、ここ数日、産んでなくって。お姉ちゃんなんて────一番上のお姉ちゃんなんて、毎日、何人産んでるのかも分かりませんからね?」
「ハァ!?あ、あんた、経産婦だったの!?」
かなり幼児体型、なんなら霊愛より幼く見える。そう、まるで霊麗や霊子にも近い目の前の幼女が。レミリアよりも更に幼く見える彼女が妊娠、出産の経験がある────ニワカには信じ難い話だった。
「そうですよ?10人から先は、数えるのすら面倒になっちゃいましたけどね」
「!?」
「妊娠・出産はセックスの副産物ですよぉ。子供を作る為にセックスする方が、少数派ですからねー。それから、この世界は『原罪』がありませんから、妊娠や出産に『痛み』は無いんですよ」
「え……痛くないの?」
「痛いんだったら何十人も産みませんって〜。私、痛いの凄く嫌いですもん。SMプレイする人の気が知れませんよ、全く」
「その、げんざい、って何よ?」
「えぇと、お父さんから教わった話だと────」
この霊幻世界に「産みの苦しみ」が無い理由を、セツは知っている。だからそれを、「原罪」すらも知らない霊夢に、時折メモ帳を見ながら懇切丁寧に教えた。
それを知った霊夢は、頭を鈍器で殴られたような凄まじい衝撃を受けた。そんな世界があるのかと、そんな世界を実現してしまえるのかと。
「────というワケですね。この『魂を分ける』方法での出産は、創造主様の娘3人、所謂『原初の3女神』が始祖です。『血』の繋がりがあるのは、それぞれ創造主様と3女神。3女神以降は『魂』の繋がりに遷移していったんですよ」
「はあ〜、成程……おっそろしいわね……」
「そうですか?」
それからも、この世界についての話をしながら、ドンドン料理を食べる2人。特にセツは小柄ながらそれなりに食べるようで、ドンドン注文する。
「……あ、いつの間にか食べ終わっちゃいましたね。霊夢さんも追加で何か注文しますか?」
「いや、いいわ。お腹いっぱいよ。美味しかった、ありがとうね。案内してくれて」
「いえ、それが仕事ですからっ。美味しかったって感想は店員の子に伝えてあげてくださいね。あと、幾ら払うか決めてから店員の子を呼びましょう」
「それなんだけど、幾ら払えばいいのよ?お料理に値段が無いのは、ハッキリ言って困るんだけど?」
「ですから、払う額はあなたの『気持ち』ですよ」
セツが言うには、この世界の通貨とは、百円玉、千円札、一万円札の3種類しかそもそも存在しないらしい。お金がお金として意味を持たず「気持ち」としての意味を持つなら、額の多少にも意味は薄いという事らしい。
0円:まずい、対応も最悪
100円:普通
1000円:美味しかった!
10000円:最高!好き!
のように、
「私は創造魔法が使えますからそっちで払います。まぁ、見てて下さい。……ユイちゃーんっ!!」
「はーいっ!」
セツに呼ばれた店員「ユイ」は頭に生えた2枚の翼をパタパタさせながら、小走りで現れた。
「追加でのご注文でしょうか?」
「ううん、お会計!」
「かしこまりました、ではこちらを……!」
そう言ってユイは名札を見せる。名札を見ると、大きく書かれた名前の下に、ズラリとリストが記入されているのが分かる。
「ふむふむ、ユイちゃんの欲しい物リストはこんな感じかぁ……えっ、ローター?ネグリジェ?」
「最近、前にも増して忙しくなってきましたから、お店に買いに行く時間もあまり無くって……店舗数も少ないですからね」
「あははっ、そうだよねー。大抵の子は創造魔法で済ませるから、ショップ自体が数少ないもんねー。そもそも機械系のグッズに手を出す子が少ないし、下着系のお店も少ない、と」
「そうなんですぅ……中央都市なのに店舗数が……」
「んー、後でベルお姉ちゃんに掛け合ってみる?」
「いっ……良いんですか!?セツ様が、自ら!?」
「もっちろ〜ん!機械系の創造が出来る子なんて、かなり数少ないんじゃない?ユイちゃんのリストを叶えられる子、それなりに少ないでしょ?」
「うっ……実はそうなんです……。だから最近、私の対応の後はお金でのお会計が多くて。貯金するのも悪くは無いんですけど、なんだかな〜って所です」
「そっかー。お金なんて紙と金属だから、創造魔法苦手な子でも創造できちゃうしね。そりゃ必然的にお金でのお会計も増える……か。成程ね」
「そうなんですよねー」
「分かった。後で、ベルお姉ちゃんに伝えとくね。じゃ、創造するけど、何色がいい?」
「えっ、と……ローターはピンクで、ネグリジェは、真紅というか、赤黒いというか……」
「オッケー!……はいっ!」
「わぁ!ありがとうございますっ!!」
「うむっ!じゃ、霊夢さんのお会計もしたいから、あっちの子も連れてきて!」
「はいっ、かしこまりましたっ!」
物体転送の魔法で自宅に贈り物を送ったユイは、霊夢の対応をした店員を呼びに行った。それを見てハッとある事を思い出した霊夢は慌ててセツの肩を掴み、自分の方に向き直らせる。
「ちょっとセツ!私、幾ら払うか決めてない!」
「あっ!どどど、どうしましょう、追加で注文して時間稼ぎしちゃいます!?」
「お腹いっぱいだっての!呼び出しキャンセルは、流石に呼びに行ったユイって子に申し訳ないし……!あぁもう、どうしろってのよ!?」
「じゃ、じゃあ思い思いの金額を渡してください、それでいいですから!ただし1万円を渡すのだけはやめてくださいね!」
「はぁ!?なんで────」
「お待たせ致しましたっ!お会計ですね!それではコチラを……♡」
にこやかに店員は名札を見せてくる。先程ユイの名札を見た時と同じく、名前の下に彼女の欲しい物らしき物の名前が書かれたリストが並んでいる。
どうして1万円はダメなのか────聞く機会を逃した霊夢は、とりあえず「凄く美味しかった」と店員に伝えて、1000円札10枚のうち6枚、つまり、6000円を支払う事にした。
「わぁっ!こんなに良いんですかっ!?ありがとうございますっ!」
「え?え、えぇ、あなたの料理、ほっぺたが落ちるくらい美味しかったからね」
「えへへ、嬉しいですっ!またのご来店を、心よりお待ちしておりますっ♡」
ユイとその店員に見送られて、2人は店を出る。列の方を見ると、丁度お昼時になったからか、列はかなり遠くの方まで続いていた。吸血鬼の凄まじい視力を以てしても、列の最後尾が見えやしない。
そして店の入口の前で、霊夢は忘れないうちにとセツに耳打ちする。
「……で?なんで『気持ち』なのに最高額の1万円はダメなのよ?」
「1万円とは『もう最高!好き♡』を意味します」
「いいんじゃないの?最高に美味しかったっていう意味なんでしょ?」
「全っ然、大違いです!『あなたが』という意味がついちゃいます!『あなた最高!あなたが好き♡』という意味になるので、その場で、お客と店員とのエッチが始まります!」
「はぁあああああああ〜〜〜ッッ!?」
「……あ!噂をすれば!」
「え」
「見てください霊夢さん!ユイちゃんとお客さんのエッチが始まりますよ!」
「!?」
近くの窓から店内を覗き込む。そこではイヌ耳でマイクロビキニの幼女が、酷く照れながら、ユイに2万円を渡していた。
「え、2万円?」
「わぁ……!2万円は凄いですよ、これは凄いモノが見れそうですよ!霊夢さんっ!」
「え、えぇ……?」
妖艶な笑みを浮かべたユイは自分の指をペロリと舐め、唾液をまとわせる事で滑りを良くして、目の前の幼女の股間に、マイクロビキニの隙間から指を滑り込ませた。しかもユイの方から幼女にガッツリ舌を絡めるキスをしている。
ガニ股になってしまうくらい感じる幼女。しかしユイはそれでも攻めを続ける。見れば、もう片手で自分の陰部を刺激して、前戯していた。
やがて店内の床に寝転んだユイはパンツを消してスカートを捲る。幼女はマイクロビキニの下を脱ぎ陰部同士を擦り合わせるように身体を動かす。
「わ、わぁ〜……貝合わせですね……///」
「し、信じらんないわ、店内でエッチなんて……」
やがて絶頂を迎えた2人。はぁ、はぁ、と大きく肩を動かして息をしていると、次第に2人のお腹が膨らみ始めた。
「えっ!?えっえっ、何!?何なの、あれ!?」
「2万円は『2人共妊娠』の意味なんですよ」
「って、あのイヌみたいな耳の子、幼いでしょ!?あんな幼い身体で出産なんて……」
「この世界の住人は柔軟性に優れる肉体ですので、痛くはなくても出産のショックで死ぬ、なんてのは有り得ません。そもそも死にませんし。翼とか角があれば、たまに、膣内やおまんことか傷付ける事はありますけど、それなんて、すぐに治りますから」
やがてイヌ耳幼女とユイは同時に出産を果たす。店内は割れんばかりの拍手で溢れ、指笛すら外まで聞こえるくらいにピューピューとうるさい。
「えっ、もう出産したの!?」
「1、2分もすればこの世界の基本的な情報が頭にインプットされます。……ほら、見てください」
全裸のまま赤ん坊2人は自立。そして魔法を使い光に包まれたかと思うと1人は銀髪ロングヘアーの美しいドレスを纏った少女になり、もう1人は黒髪ショートのボサボサヘアーのタンクトップのような下着姿の元気っ子となり、店を出て行った。
「……って、あの2人は追い掛けないの!?」
「はい。『子作りした』『2人の子供をこの世界に産み落とした』という事実が大事なんです。だからあの子、ユイちゃんが好きって事なんですねぇ」
先程セツが言った、「家族」という枠組み自体が希薄という意味が、やっと分かった気がしていた。しかしどうもエスカルゴらしくない観念だと疑問に思ったが、そもそも、創造主と3女神とは「血」の繋がりがあるとセツは言っている。
つまり「創造主」とは男と女の2人が居るはず、という推理ができる。故に、このヤケに身内にまで希薄な概念についてはエスカルゴではなく「女」が設定した概念なのだろう、と霊夢は推理した。
「あら、あの子も出てきた。汗まみれだけど……」
「そりゃエッチしましたもの。さ、私達もそろそろ次の目的地に行きましょう。駐車場に戻りますよ」
「え、あ、うん……」
道中、セツは妊娠と出産の概念、店員とのエッチという概念について、霊夢に少し詳しく説明した。
曰く「望めば孕み、望まねば孕まない」世界と。
曰く、1万円は「私が妊娠・出産するので、私とエッチしてください」という意味もあるのだと。
だからさっきの子は2万円をユイに渡すことで、
「あなたとの子が欲しい、あなたも妊娠して」と、金額で伝えて、ユイはそれを了承したのだそう。
それを聞いて霊夢は「2万円が上限なのか?」とセツに尋ねるが、セツはそれも否定。3万円以降はどちらか、もしくは両方が双子、三つ子────を妊娠する事になるのだ、と言う。
ただし、店員にお金を渡すのは、イコール子作りすることではない。ただエッチしたいだけの場合もお金を渡す。もしくは、欲しい物リストの中から、何種類も与えるのだそう。
「……ブッ飛んだ世界観ね」
「えへへ、そうみたいですね」
「ていうかセツ、あんたさっき私と子作りだなんて言ってたけど……」
「あっ、はい。霊夢さんとこの世界の誰かが子作りしても、霊夢さんは妊娠しません。というか、妊娠できません。霊夢さんとエッチしたその子が、ただ妊娠・出産するだけなんです」
「じゃあ、単にあんたが私との子が欲しいって事になるけど」
「はいっ!」
「……。何かもうツッコむのも疲れたわ。聞くけど、私が妊娠しないっていうのは、ただ単に私が妊娠を望んでないからってこと?」
「それが適用されるのはこの世界の住人だけです。霊夢さんは幻想郷の住人ですから、妊娠するには、精子と卵子の結合が必須なのでしょう?私達には、精子と卵子という概念がありませんから、もし仮に霊夢さんが望んでも、この世界の住人とは、決して妊娠できないんです。創造主様は別として。肉体の構造とかがそもそも大きく違いますもんね」
「いやまぁ旦那以外とエッチする気にはならないし子供も要らないけど」
「ふふっ、シビアですねえ」
やがて駐車場が見えてきた。先程は第6駐車場にバスを停めたんだった、と思って見ていると、その第6駐車場は既に満車、しかもその奥の第7駐車場までも満車になっていて、車が停められない状態になってしまっていた。
昼時の前あたりに店に来たのはこれが理由か、と深く納得してしまった。昼前でさえ、第6駐車場が埋まりかけていたのだ、昼時となれば更に混むのは仕方ないものである。
「……駐車場、足りてないわよね」
「ええ。しかし店周辺の土地は限られていますから仕方のない事なんです。だから『
「そういう事か……」
「しかし料理の腕は店員の魔法の精度によります。店によって味は多少変わりますから、チェーン店と言えども、混む店が違うのは仕方ないんです」
だから「魔法の精度に優れる首席クラスの子しかこの店で働けない」などといった噂が立つ、という理由にもなっているのだ。
噂の真偽はどうあれ、噂が立つ由来なんかは人の世界も悪魔の世界も変わらないらしい。
やがて、駐車場の中でバスを探しているうちに、ゴロゴロという雷の音が聞こえてきた。
「あっ!?……あうぅっ、やってしまった……!」
「……?どうしたのよ?」
「今日の天気は『晴れ時々
「いんう?何それ?」
「それはバスに戻ってからお話しますっ!今の雷、もう何回くらい鳴りましたか!?」
「え。数えてないけど5回は鳴ったんじゃない?」
「5回くらい……それならいいんですけど……」
「???」
「うわあぁぁん!迷ってしまいましたぁ!!」
「ええっ!?」
グルグルと駐車場を走るが、1分もしないうちに音を上げるセツ。ただでさえ広い駐車場だし、車は大型の車両が殆ど。バスさえ見失うのは仕方ない。
しかしそこに、先程も聞いたブレーキ音を奏でてバスが現れた。
「セツ様ッ!霊夢さん!!乗って!!」
「わぁ!やっぱり有能運転手さんです!ありがとうございます!ほら霊夢さんも!」
「ええ、分かっ……」
直後、ピンク色の雲から雷が落ちてきた。しかしその雷はイヤに濃厚なピンク色、しかもホーミング弾幕のように、好き放題に動いて、個人個人を追尾しているではないか。しかもその中の1つは確実に霊夢を狙っている。
「な……何よあれ!?」
「早く乗って!!」
「きゃっ!?」
腕を引かれ車内に放り込まれて、直後、バタンとドアを閉める。雷は車に当たり、どうにか霊夢への被弾は免れたようだった。
「あっぶな〜……九死に一生を得ましたね……!!」
「いやいやどういう事よ、何よアレ!?弾幕!?」
「と……とりあえず移動しましょう。運転手さんっ、次は『中央淫魔専門学校』にお願いします」
「え。霊夢さんには刺激が強くないですか……?」
「大丈夫ですよぉ!霊夢さんって、こう見えて百合エッチもまじまじと見れちゃうんですから!」
「コラッ、セツ!?さっきのアレはそのっ……」
「ヒュ〜、霊夢さんもやりますねぇ!任せて下さいセツ様!窓は閉めて下さいね、そろそろ
「了解です!」
換気を終了し、バスは走り出す。中央の中でも、より優秀な者が集められた学校を目指して……。