「っ!」
リリスの襲撃から数日後、魔法の森に住まう自称普通の魔法使い・霧雨魔理沙は、魔法の森に唐突に出現した強い気配を感じ、帽子を被り箒を手に取り急ぎ足で家を出る。
すると扉の目の前には、マイクロビキニの霊麗が立っていた。
「ひゃあっ!?」
「おや。外出するところでしたか」
「れ、霊麗っ!?お前どうしてそんな変態みたいな格好で……///」
「れいら?私はれいらではありませんよ。そもそもあなたとは初対面のはずですよ、霧雨魔理沙さん」
初対面と言う割に名前は知っているのかと疑問に思う。
ともかく、その少女の格好が格好だけに、まずは家に入れと促す。時間を気にする素振りを見せつつ少女は大人しく従い、霧雨邸に入る。
「それで?お前は誰で、何の用で来た?」
「私、霊幻世界の各機関で理事長を勤めています、ベル・スカーレットと申します。霧雨魔理沙さん。以後お見知り置きを」
「お、おぉ?霊幻世界……霊夢から聞いたぞ。確か、エスカルゴとモルモーの作った世界だったか?」
「ご存知でしたら話は早いです。あちらの世界では私は学校機関も運営しているのですが、どうにも、教え子達の強さが伸び悩んでいまして。お父様から魔理沙さんについては『かなり強い魔法使いだ』と伺ってまして、こうして足を運ぶに至りました」
「いや〜、かなり強いだなんてそんな〜……♪」
「そんな魔理沙さんに、可能であれば、お力添えを頂きたく。私やお母様、お父様だけでは、生徒達にとっては刺激に欠けるのでしょう。ですので、外部講師という形で、ご協力を願えませんか?」
「うーん……」
「もちろん、無理にとは言いません。そもそも外出されるところだったようですし」
「いや、それは何でもないんだ。お前──ベル?の強い気配を感じたから、外に確認に向かおうとしただけだったんだ」
「そうでしたか、それならお時間はあるのですね。それでは、来て頂けますか?」
「学校機関……生徒……外部講師……一時的な先生?をやってくれってことか?」
「そうです。とは言っても実技のみです、生徒達とただ戦闘して頂ければそれで構いません」
「ふむ……」
「もし、あなたにご協力願えない場合は────」
「場合は……?」
ベルの悪魔的で邪悪な妖気がゴオッと立ち上る。それを肌で感じた魔理沙は、目の前の少女は顔こそ霊麗に似ていても、霊麗よりよっぽど「悪魔」だと本能で理解した──否、理解させられた。
「紅魔館に向かいますのでご心配なく」
「……え?実力行使とか、じゃないのか?」
「構いませんが……そんな事をしては、魔理沙さんが死んでしまいますので……」
「い゙っ!?」
「実は、悪魔相手にしか魔法を放った経験が無く。それ以外の方々には加減をすべきなのでしょうが、加減の仕方がよく分からないのですよね。お父様に聞いた所によりますと、魔理沙さんは、身体強化の魔法は得意分野ではないとの事ですので……」
「そ、そーか……霊幻世界って悪魔の世界だったか」
「ええ」
「しかも元から不死身なんだろ?そりゃ加減なんて分からないわな……あは、ははは……」
「そうなんです。本当に理解が早くて助かります」
「──いや待て!もしそんなヤツらの学校に行って戦うとしたら、加減ができないヤツのオンパレードなんじゃないのか!?」
「それはそうです。ですが大丈夫ですよ、お父様の見立てでは、魔理沙さんが無双する予定ですので」
「ホントかよ……」
「あの生徒達の実力としましては、20人全員が力を合わせて、私の3分の1、全校生徒を合わせて私の2分の1と同等でしょう」
「ッ!?」
「ご安心ください。霊幻世界での『悪魔』の強さの天井は、この私です。私未満の子しか居ませんから安心してお越しください」
「……と言われてもな……」
そのベル本人が大悪魔クラスなのは、魔理沙でも一目見て分かっていた。例えばレミリア、フラン、幻月、夢月、エリス、モルモー。およそ、この辺の悪魔達と同等の強さを持っているのは見て取れる。
そんな大悪魔クラスの3分の1の強さを持つ者の相手をしてくれ────という荒唐無稽な依頼に、魔理沙は思わず踏み止まってしまった。
「因みに、魔理沙さんに相手して頂きたいのは私とお父様の子のみで構成された学科『総合魔法科』の子供達です」
「おい待て今なん…………魔法?」
「ええ。霊幻世界でも指折りの実力者のみを集めた中央魔法専門学校、その中でもトップクラスの子を集めた、まさに上澄み中の上澄みの子供達です」
(魔法専門学校──名前からして、魔法を専門的に学ぶ学校、寺子屋なんだろうな。ベルの3分の1、とかいう目安がイマイチピンと来ないが────、まぁいい、魔法への造詣を更に深めるチャンスだ。こんな役、パチュリーに任せる訳にはいかん!)
「どうですか?来て頂けますか?」
「少し待ってな、マジックアイテムの準備するぜ。そしたら出発だ!」
「ありがとうございます。では、先に行って準備をしています。魔理沙さんは、その準備が出来てからお越しください。──魔法陣に魔理沙さんの魔力を流して頂ければ自動で転送魔法が発動しますので」
「え」
「それではお先に」
ぺこりと丁寧に頭を下げると、ベルは、魔法陣の描かれた1枚の紙だけ置いて消えてしまった。その魔法陣をベルは転移魔法と呼んでいだが、魔理沙の転送系の魔法と術式の構築がまるで異なっていた。
まるで子供の落書きのような簡素な造形だった。こんなもので魔法が発動するかよ、と鼻で笑いたくなってしまうくらいに。しかし魔法陣が簡素という事は、それだけ、その魔法は研ぎ澄まされている、という事でもある。
──ある数式を解く際、ダラダラと長ったらしく不必要な途中式を書くよりも、より簡略化した方がミスも発見しやすく、見た目で分かりやすい。
魔法もそれと似たようなもの。ただし、ある程度その者の実力が伴っていれば──といった条件付きではあるのだが。
「……こんなモンかな」
あまり重くはならない、動きに支障の無い程度にマジックアイテムを持った魔理沙は、ベルの残した魔法陣が描かれた紙を手に取り魔力を流し込む。
「っ……!?」
ウトウトしている時のような意識の薄れ方をした直後、彼女は学校のグラウンドに来ていた。規模はとてつもなく広く、一介の学校には許されない程の広さを有していた。
そのすぐ背後には、子供達が幾つかの列を為して並んでいた。
「っ!!」
「わぁ〜!なんか来たよぉ、先生!」
「大人じゃないのね」
「この方が外部講師さんですの……?」
「はい静かにしてください。こちら、本日の講師の霧雨魔理沙さんです。エスカルゴ先生の彼女さんの1人です。皆さん、頑張ってこの先生に勝ってみてくださいね。もし勝てた子には、エスカルゴ先生にご褒美を用意するようお伝えしておきます」
「「「「「ッ!!」」」」」
生徒達の目付きが変わった。中でも、ピンク髪、犬耳に犬尻尾の幼女。
「ベルせんせー!ご褒美って、エスカルゴ先生に、なんでもお願いしていいの!?」
「ええ、なんでも構いません」
「わぁ〜!じゃあね、じゃあね!ハナとエスカルゴ先生の子供だけのクラス作ってもらうとかは!?」
「いいでしょう、お伝えしておきます」
「わ、私を祭神とする神社を建ててもらうとかも、可能ですか?」
「恐らく可能でしょう」
「私、ずぅっとエスカルゴ先生に夜伽をお断りされ続けているのですけど……逃げずに、ちゃんとエッチしてくれるよう、迫ってもいいのです?」
「もちろん。しかしそれは全て、皆さんがこの方に勝てたら────の話ですがね」
40個の目が魔理沙を一斉に貫く。
20人の生徒が、それぞれ願望を叶える為に、外部講師・霧雨魔理沙を打倒しに来る。魔理沙の緊張が一気に高まったのは言うまでもない。
「魔理沙さん。生徒達は、それぞれ、様々な属性の魔法であなたを襲ってきます。頑張ってください」
「お、おう!やってやるぜ!」
「ではルールを定めましょう」
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・魔理沙の勝利条件:生徒を全員気絶させるor戦闘不能状態にする
・魔理沙は生徒を殺しても構わない
・殺された生徒は戦闘不能にはカウントはされず、その生徒の意志によって戦闘は続行可能である
・魔理沙が気絶させた生徒を別の生徒が殺して復活させるのは禁止
・その場合は復活した生徒を戦闘に投入し、殺した生徒を戦闘不能扱いとして戦線離脱させる
・生徒の勝利条件:魔理沙を気絶させるor戦闘不能状態にする
・なお「戦闘不能」の定義は審判のベルの判断
・審判は基本中立、どちらかと言うと魔理沙寄り
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「子供達の種族を参考までに。悪魔19人、夢魔1人という圧倒的悪魔の占めるクラスです。中でも戦闘特化の悪魔のクラスですが、魔理沙さんであれば、まぁ勝てるとは思います。では、始めましょうか」
「ッ!」
「皆さん。魔理沙さんの殺害はNGです。最悪でも瀕死に留めてくださいね」
「「「はいっっ!!!」」」
「……え?」
「それでは、始めッ!!」
ベルの合図で子供達が一斉に襲いかかってきた。こうして、1vs20という、圧倒的に不利なゲームが幕を開けた────。