※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

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魔理沙、先生になる

 

「ハッ、ハッ……クソッ、どーなってんだコイツら、吹っ飛ばしても吹っ飛ばしても────」

 

「ガァウッ!!」

 

「うぉあっ!?」

 

 三女神の1人にして、新生エスカルゴチルドレン次女のベルに霊幻世界へ招待された魔理沙。彼女は現在、ベルの監督下にて、総合魔法科・総勢20名の猛攻に遭っていた。

 

「もーっ!あなた、さっきからなんで避けるの!?ハナはエスカルゴ先生の第2のお嫁さんになるの!だからっ!邪魔ぁッ!しないでッ!!」

 

「ひょえっ!?お前っ、さっきと言ってること違うじゃないか!アイツとの子供だけのクラス作るとか何とか言ってただろ!?」

 

「どっちも同じよ!!うがァァァッ!!」

 

「ぎゃあああ!?火ぃ吹いたっ、炎の精霊か何かかお前はぁっ!?」

 

 ────ピンクの犬耳幼女・ハナ。

 犬のような身体的特徴を有する彼女だが、種族は普通の悪魔である。大悪魔にこそ及ばないものの、悪魔の中では普通に格が高く、素で強い。

 有する属性は炎。そして無属性で特に得意とする魔法は、聖白蓮と同じ────。

 

「ガァッ!!」

 

「ぐぁっ……!!クソッ、エプロンが斬られた!」

 

「へっへーん!当てたら勝ちの勝負だったらハナが勝ってたよっ!わふわふっ♡」

【挿絵表示】

 

 爪を伸ばして急接近してくる彼女の身体能力は、強者の集う総合魔法科の中でも更にトップレベル。彼女の得意とする魔法は、聖白蓮と同様、身体強化である。

 

「退いてハナ!ソイツを倒すのは私よ!!」

 

「いや私よ!!」

 

「あたしに決まってんだろ!」

 

「全員吹っ飛べ」

 

「うわうわうわうわ……!!」

 

 ようやくハナと魔理沙の戦闘に追い付いたらしい他の生徒達によって、一気に包囲されてしまった。火、水、風、木などの様々な属性の魔法が魔理沙を襲う。それら全てが悪魔的難易度の弾幕、密度。

 しかし、それらを全て掻き消せるだけの力量が、魔理沙にはある。

 

「恋心『ダブルスパーク』ッ!!」

 

「「「「ッッッ!?」」」」

 

「しゃあっ残り……16人か!」

 

 生徒達の魔法ごと、生徒を吹っ飛ばした。2本のマスパ、ダブスパにて4人を吹っ飛ばす程となるとその太さも窺い知れるというもの。

 

「何なの今のレーザー!?」

 

「どうでもいいわ、リフレクトバリアで跳ね返せばそれで済む話よ!!」

 

(リフレクト……魔法を反射する魔法か!それなら、こうしてやるまでだぜ……!)

 

 ミニ八卦炉を箒に設置。すぐさま魔力を充填し、超スピードで飛び出す────!!

 

「彗星『ブレイジングスター』!!」

 

「「ひっ…………!?」」

 

 唐突な急加速、2人は対処できずに吹き飛ばされ地面に墜落。当然その程度で気絶などはしないが、追い討ちの星弾幕に加えて……。

 

「星符『ドラゴンメテオ』ッッ!!!!」

 

「ぎゃふっ!!」

 

「おぐっ……!?」

 

「フーッ。よしっ、残り14に……」

 

「相手は地面よ!」

 

「壁に追い詰めたようなもんよ、畳み掛けるわ!」

 

「…………なるほど、一気に来ると相討ちになるから少しずつの人数で攻めてくるのな。そう来るんなら私でも20人抜きできるぜ……!!」

 

「「「「「それはどーかなっ!?」」」」」

 

「!?」

 

「「「「「地面大魔法『大地震(グランデニスタ)』ッ!」」」」」

 

「な、地面が揺れ……割れたッ!?クソッ!!」

 

 立っていられないほどの地震に次いで、魔理沙の足元がガッポリと開かれる。当然のように空を飛び回避する魔理沙だったが、そこには更なる生徒達が待ち受けていた。

 

「「「「雷大魔法『狂乱の楽園(エネミー・イン・サンダーランド)』ッ!」」」」

 

「おいおいおいおい……!?そいつは、エスカルゴのかなり厄介な強ホーミングのスペカかッ!?魔法で再現してやがる、なんて数だ……!!」

 

 魔理沙がパチュリーの技を真似るように、生徒もまたエスカルゴのスペカを真似している。魔理沙の頬を冷や汗が流れ落ちる。

 どうにか飛んで回避していくが、今度は地面では先程の5人が更なる魔法の準備をしていた。

 

「「「「「地面極大魔法(グランデ・グラン・マジック)『火山(グランディアナ)』!」」」」」

 

「…………嘘だろオイ……!まっさらな土地に……活きた火山が生えてきやがったぁぁぁっっっ!!??」

 

 1人の魔力では発動は不可能だった。2人でも、3人でも同様に。4人ならばギリギリ。生徒レベル5人が集まってどうにか安定した発動が可能となる極大魔法を、上空との雷大魔法との挟撃の為だけに発動させた。

 全ては、霧雨魔理沙を追い詰める為だけに──。

 

「やるじゃねーか、パチモンの割には私並みに(・・・・)本人レベルまで仕上げてきてやがる!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「恋符『ノンディレクショナルレーザー』ッッ!!今回は特別にィ……高速バージョンだッ!!」

 

 ここは幻想郷ではない。故にスペルカードルールなども度外視している。戦闘の中でそれに気付いた魔理沙は不可能弾幕なんかもお構い無しに超高速でレーザーを振り回し、雷魔法での弾幕を掻き消す。

 その上で彼女本人は火山から吹き出す噴石などを模した弾幕を回避する事に集中している。

 

「流石にノンディレクショナルレーザー(コイツ)で悪魔達を倒すには至らないか…………だがッ!今の私なら!!悪魔だろうとパチュリーだろうと倒せるぜ!!」

 

「……誰か援護!」

 

「リフレクトお願い!!」

 

「いくぜ────変ッ身ッ!!」

 

 瞬間──壊れた蛇口のように噴き出す、魔理沙の意識的に抑え込まれた強大な魔力。

 種族魔法使いに変貌を遂げてから、彼女は、身に纏う魔力は常に、人間の頃と変わらないように調整していた。そうでないと、余計な物が余計な魔力を纏って、余計な挙動を起こしかねないからだ。

 抑えていた分はこうして、有事の際に使用する。翼の形をとって顕現したソレは、まさに悪魔の翼。悪魔の妹・フランドールの翼のような魔理沙の翼はしかしフランのモノと違い透明な結晶であった。

 

「恋符『マスタースパーク』────!!」

 

 生徒3人が、5人の雷魔法の生徒を保護する為にリフレクトバリアを展開。3人の魔力が込められたバリアはマスパと拮抗するが反射するには至らず、ただただ受け止めるだけに留まっていた。

 しかし今の生徒達にはそれで良かった。目の前の霧雨魔理沙という魔法使いは、霊幻世界の中で特に上澄みである自分達のことすらも、たったの1人で圧倒してきていたから。

 そんな存在、統括理事長であり母であるベルと、父であるエスカルゴ以外には誰1人知らなかった。

 

「ッ……ハアッッッ!!!」

 

 より一層の魔力を込め、バリア諸共3人、そして後方に控えていた5人を吹き飛ばす。

 これで残り6人。地上に居る火山担当の5人と、あと1人────と思ったその直後。

 

「……ッ!?」

 

「ちっ。ギリギリ避けたわね」

 

「当たったよ……!」

 

「掠りは被弾にカウントしないわよ。あなたがそうカウントするんなら勝手だけど」

 

 魔理沙の背後に居たのは、金髪ロングに紫の瞳、紫のリボンを備えた巫女服の少女。八雲紫が霊夢のコスプレをしているかのように見えてしまったが、体格などはまるで違う。

 魔理沙は彼女の攻撃を喰らった。掠りではあるが傷が付くくらいにはまともに被弾していた。

 彼女の頬を掠めたのは針。投げ針だった。

 

「……く、そ……顔が……しび……れ…………ッ」

 

「そっ。私の属性は重金属、そして毒よ」

【挿絵表示】

 

「どく、だと……!?」

 

「安心して、致死性じゃあないわ。ただの痺れ毒。あなたを平和的に戦闘不能にさせるには、この私かマコの攻撃が効率的だからね」

 

「……ッ!?」

 

「トドメギリギリまで弱らせて、マコ」

 

「任されたわ──ミコ」

 

 瞬間移動のような速度でミコの隣に現れたのは、シスター服の少女──いや「少女」と呼ぶには少々大人っぽすぎるかもしれない。2人は共にニマニマ悪どい笑みを浮かべている。

 

「私達、こう見えて双子なの」

 

「コンビネーションだけなら霊幻世界一(せかいいち)」

 

「属性的な相性はあんまし良くないんだけどね」

 

 魔理沙はある違和感に気が付く。火山担当は5人だったはずだ、魔力が5種類混ざって感じられる。しかし目の前には2人────どうもズレがある。

 

「……やられたフリをしていたな!?」

 

「ええ。私は空気属性を操れるので。最序盤にまずあなたの出方を伺い、実際に受けて。それ以降は、立ち回りの観察に徹していましたわ」

 

「……魔力の気配を消すのが上手すぎだぜ……本職の魔法使いを見事に騙せたんだ、誇れよ」

 

「ふふふ。シスター・マコですもの。シスターは、皆の悩みを聞き助言するものです。そう、クラスの皆の欲望を、叶える。────あなたを倒す事で、あの方への想いを成就させる……!!」

【挿絵表示】

 

(────来る!)

 

 マコの魔力が立ち上る。攻撃が来ると感じた次の瞬間、彼女の魔法は、眼下に広がる火山を風の刃で切り刻んでいた。

 

「……え?」

 

「煙と弾幕が鬱陶しいのですよね、さっきから……。大した効果も挙げられない魔法など中断すればよいものを。あなた方は、いつまでそうやって、無駄に魔力を消費しているおつもりですか?」

 

「な……そんな言うことないだろ!?あいつらだって私を倒す為に必死になってるんだから!」

 

「実力至上主義なのですよ、ここは。同じクラス、同じ両親を持つ私達ですが──この際、ハッキリと言いましょう。……私達の邪魔でしかないのです」

 

「……ッ!」

 

「ミコ」

 

「はいはい、分かってるわよ」

 

 マコに促されて、ミコが火山担当の5人の方へ。そこで何やら会話しているようだが……。

 

「────さぁ、舞台は整いました。私達3人(・・・・)と、どうかお手合わせ願いますわ」

 

「3人だと?」

 

「4人にはリタイアしてもらったわよ、無闇矢鱈にクラスメイトに血を流させるワケにもいかないし」

 

「ハナ、ふっかーつっ!!がうがうっ!」

 

「ッ────!?!?」

 

 真っ先に近接戦闘で攻めてきた犬耳幼女、ハナ。彼女がミコと共に現れたのだ。驚愕のあまり固まる魔理沙に、マコはフフッと小さな笑いを零しながら得意気に話す。

 

「5人のうち1人にはハナを殺してもらいました。ルール上、あなたが気絶させた生徒を殺した生徒はルール違反で退場になりますが、それと引き換えに殺された生徒は復活できる。……覚えてますね?」

 

「…………ッ!!ルール違反、だぞ……!?」

 

「面白い事を仰る。ルール違反も(・・・・・・)ルールのうち(・・・・・・)──ただそれだけの事です」

 

 マコの悪魔のような物言いに魔理沙は目眩がする想いだった。しかし、呑気に溜め息する間も無く、ミコは魔法陣を展開し、大小様々な針を創造する。

 

「私達はクラスの上位3人(・・・・)。だけどね、私達3人でこのクラス、他のクラスの事も蹂躙できるくらいの実力差はあんのよ────ッ!!」

 

「ミコは委員長、私は副委員長。そして、ハナは……総合魔法科(うち)の可愛いマスコットキャラクターです」

 

「ここからが本番だよぉっ!」

 

 ──霊幻世界でも指折りの実力者達との決戦が、遂に始まった。

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