※この作品はR-18です。

吸血鬼人間の幻想生活 第2部   作:エスカルゴ・スカーレット

94 / 104
創造魔法とは────

 

「創造魔法を習得したい……?」

 

「ああ。霊夢から聞いてるぞ。この霊幻世界では、得意分野に多少の個人差はあるものの、創造魔法は使用できて当たり前だってな」

 

「まぁ、そうですけれど。私が教えるのですか?」

 

「構わないだろう?お前との勝負に勝ったんだし」

 

「その報酬は先程教えた治癒魔法ですよ」

 

「それはそうなんだが……!」

 

 ──霊幻世界の日付が変わる頃、体力が回復した魔理沙は目を覚まし、様子を見に来たベルに土下座するような勢いで訴え掛けた。

 それが「創造魔法を教えてくれ」というもの。

 

「私達からすれば、創造魔法など、呼吸と同じなのですよ。できて当然。右足を出して左足を出したら歩ける──それと同じくらいの当たり前な事です。ですので、教えたくても教えられるかどうか……」

 

「できるだろう?だって先生やってるんだからさ」

 

「できて当然の事なんか、学校でも教えませんよ。魔理沙さんは学校──幻想郷では寺子屋でしたか。里の寺子屋で『呼吸の仕方』を教わりましたか?」

 

「う……くぅッ……!!」

 

「まぁ、そうですね。無垢な赤子に教える感覚で、分かりやすく噛み砕き、理論立ててお話しする事は努力しましょう。しかし、魔理沙さんがこの世界の理論を理解・実行できるかはまた別問題。『お前の教え方が悪いんだぜ』などと、勝手に逆恨みして、私のせいにしないでくださいね?」

 

「そ、それは勿論だぜ!」

 

「そうですか、それは良かった。もしそんなことを言われたら、如何にお父様の彼女さんだろうとも、何も言わずブチ殺してました」

 

「ッ!?」

 

「その時は、冷静になってから時間を戻すか蘇生を試みましたけどね」

 

「殺すのを踏み留まるワケじゃないのな」

 

「……?それはそうでしょう、考えるよりも先に手が出るのが悪魔ですし」

 

「……」

 

 それじゃただの野生動物じゃないか──と軽めにツッコミを入れたい魔理沙だったが、悪魔といった存在、そして種族に誇りがありそうなベルにそれを言うのは地雷原で踊るのと同じようなものかと思いすんでの所で耐えた。魔理沙の方が大人である。

 それから、ベルの言う所の「この世界の理論」についての授業が始まった。彼女が事前に「あなたが理解・実行できるかは別だ」と念を押していたので身構えていた魔理沙だったが、彼女の授業は、予め想定していたより遥かにスルスルと理解が進んだ。

 しかしその中に1つ、たった1つだけ、魔理沙がどうしても理解ができない文言があった。

 

「『魔力への解釈を改める』だと……?」

 

「はい。恐らくですが、幻想郷や大抵の異世界では魔力を『力の一種。出力や量などに個人差がある。己の思い描く術を実現させる為のエネルギー』と、大体ですが、こんな感じで解釈していませんか?」

 

「え…………違うのか……?」

 

「正解ではある(・・・・・・)、と申し上げましょう。それ自体はこの霊幻世界においても同様ですから」

 

「じゃあどうしてそんな事を聞く?」

 

「この『正解』には『別解』が存在するからです。そしてその『別解』こそが霊幻世界における『創造魔法の理論』の根底にあるモノと言えるでしょう」

 

「……!」

 

「と、その前に。まず魔理沙さんが『創造魔法』をどう思っているのかを、先に聞いておきましょう。話はそれからですよ」

 

「うーん。そうだなぁ、強いて言うなら『錬金』や

『復元』の魔法の上位互換……かなぁ?」

 

「それは何故?」

 

「どちらも、魔法を完了した際に残る『完成品』の材料があるだろう。だが、創造魔法はそれが無い。魔力だけが素材だ。魔力から物を生み出すなんて、まさに『無から有を生み出す』とも言える、世界の理すら捻じ曲げるかのような所業だ」

 

「……成程?」

 

「だから私からすれば、創造魔法を扱えるヤツは、例えティッシュの1枚しか創造できないとしても、そいつは『スゲェヤツ』だよ。無から有を生み出すなんて、神か何かかよ……とすら思ってるぜ?」

 

「じゃあ魔理沙さんも今日から『神か何か』です。一度教え始めた以上、あなたが幻想郷に帰る前に、未熟だろうと創造魔法を習得して頂きます」

 

「私は一生幻想郷には帰れないってか?」

 

「今の魔理沙さんのままでは、ね。今のままでは、恐らく人間の一生が少なくとも5、6回は巡ることでしょう」

 

「喧嘩売ってるのか?」

 

「だからこそ『霊幻世界の創造魔法理論』を学んで頂く必要があるワケですね。ご理解頂けました?」

 

「大丈夫だぜ」

 

「良かったです。では、魔理沙さんの考えも幾らか把握できた事ですし、理論の概要を教えましょう」

 

 いよいよ創造魔法の授業も本番に差し掛かる──魔理沙はベルの発言からそう察し、肘をついていた手を膝の上に置き、背筋をピンと伸ばす。

 

「──先程『魔力への解釈を改める必要がある』と言いましたね。それは、この世界では、魔力というものを『なににでも変化させることができる原子のようなもの』──とも解釈されているからです」

 

「なににでも変化させることができる原子……?」

 

「これは『魔力=エネルギーの一種』等としか解釈していない内は恐らく辿り着けない発想でしょう」

 

「うっ」

 

「そして、この発想を元にするのであれば、先程の魔理沙さんの『創造魔法とは無から有を生み出す、錬金魔法や復元魔法の上位互換である』という旨の発言が誤りであると言えますね。何故ならば、創造魔法とは『後天的に変質可能な万能な原子を任意の物体に変質させる魔法』と言い換える事ができるのですから」

 

「それはそうだが……魔力を、そんな万能な原子とは解釈しづらいな……」

 

「……それは分かります。なのでこの理論の提唱者も解釈の呵責に苛まれたそうです」

 

「解釈の呵責ってなんだよ……」

 

「ですからだからこそ『正解』ではなく『別解』、すなわち『もう1つの正解』と位置付けたのです」

 

「……成程な。魔力を力として捉えるのが普通なのは一応正解ではあるんだな」

 

「ええ。なので、殆どの霊幻世界の住人はこうして言語化できません。皆、呼吸をするのと同じように本能で、無意識で、それを実行しているからです。場合に応じて自然と解釈を使い分けているのです。歩くのと速く走るのとでは、身体の使い方はまるで違うでしょう?でも、意識せずにできるでしょう?大体それと同じ事ですよ」

 

「……まぁ、な」

 

 ベルが聞かせた「創造魔法の理論」とは、およそ魔理沙の予想と別の方向に向かっていた。だから、理解も殆ど進まないし、飲み込むどころか、自分で噛み砕くことすらままならなかった。

 うーんうーんと頭を悩ませ、少し創造魔法を実践してみようと魔力を行使するも全く上手くいかない様子の魔理沙を見て、見かねたのか、軽く溜め息をついたベルは、更に解釈を噛み砕こうと試みる。

 

「────魔理沙さんは、水属性でしたっけね」

 

「え。……あ、あぁ、そうだけど……?」

 

「なら、水にたとえてみましょうか。魔理沙さんの身近にも、あるハズですよ。『無から有に見えるが実際は有から有である』モノが」

 

「……うーん……?」

 

「寒い日の窓、暑い日に冷たい水を注いだコップ。どういうワケか、意図して濡らしてもいないのに、勝手に濡れていませんか?」

 

「そりゃ、お前……アレだろ?結露だろ?温度差で、空気中の水分が集まって水滴として現れたんだろ」

 

「創造魔法は『意図して発生させる結露』ですよ」

 

「……なんだと?」

 

「水と違い、変化する先は術者に委ねられるというだけでね。理屈としては、似たようなもんですよ。己の有する魔力、または空気中に漂う魔力を集め、形成し、物体を創造しているのですから」

 

「うーん……分かるような、分からないような……」

 

「空気中に目には見えない水分があるのと同様に、目には見えない魔力があります。それを魔法で集め任意の物に変化させる。それが創造魔法なのです。故に創造魔法は『魔力操作』の延長でしかないので特定の属性を持たない『無属性』魔法なのです」

 

「……!」

 

「魔理沙さんは、魔力の溢れる魔法の森にお住まいですよね。普通の環境より遥かに強い魔力が、沢山ある土地です。本来であれば(・・・・・・)、魔理沙さんの方が、お父様を遥かに上回るレベルで、創造魔法をモノにできたでしょうね」

 

「……え」

 

「さ、魔法理論はお話ししました。ここから先は、全て魔理沙さん次第ですよ」

 

「ちょっと待ってくれ、本来であればって何だよ?まるでもう追いつけないみたいな……」

 

「だってそうでしょう?魔術の神となったお父様と魔法使いの魔理沙さんの間にはもう、越えられない壁が出来てしまっていますし。お父様が創造魔法をモノにする前に、魔理沙さんが創造魔法に手出しをしていれば、魔法の森という環境もありますから、きっと魔理沙さんの方が、お父様よりも高レベルな状態で創造魔法を扱えたハズですよ」

 

「っ……そう、なんだよな……アイツはお零れだって言ってたけど、お零れだろうと何だろうと、仮にも神になっちまったんだもんな……」

 

「ええ。ですがそれは、仕方の無いことなんです。魔理沙さんがお父様に追いつくには、解釈を改めてあらゆる魔法をモノにし、その上で、魔理沙さんも神になるしかないかと思います」

 

「ハッ!流石にそいつは無理だな、ロクに信仰心を集められる気がしないぜ」

 

「でしょうね。まぁ頑張ってください。結局の所、魔術の神として練度が低い今のお父様なら、魔法で上回るのも不可能ではないでしょう。出力自体は、魔理沙さんの方がフツーに上ですし……」

 

「……あぁ、頑張るぜ」

 

 それから創造魔法の訓練に入る魔理沙。しかし、霊幻世界での1週間を過ぎても、水滴1つすら創造できず、中々に苦戦していた。

 相変わらずベルが指導してくれているし、何なら総合魔法科の生徒もお手本を見せてくれるなど多少交流を深め、時には戦闘したり、時には襲われたり生徒に出産させたりなどして過ごし、気が付けば、魔理沙が霊幻世界に来て、1ヶ月が経過していた。

 なお、幻想郷では大した時間は経っていないし、三女神であるベルの魔法なら任意の時間に帰る事ができるが……。

 

「────因みにですが。あの理論、水だと例えに使いやすいんですよね。というのも、提唱者が水を参考にしたそうですから」

 

「そうなのか!?」

 

「理論の提唱者曰く『発想元は胚性幹(ES)細胞であり、水である。この細胞は何にでも変化ができる万能な力を有する細胞であり、故に、どんな機能だろうと保持させる事ができる。水は形を持たないが故に、どのような形の容器にも入れる事ができる』──。つまり提唱者は『魔力』を『エネルギー』ではなく

『どんな物にも変化できる水のような形を持たないモノ』と、そう解釈した──というワケですね」

 

「細胞……?」

 

「あ。この理論の提唱者はお父様です。昔、学校で生物学も修めてたそうで。なんでも、昔学んだ事が参考になったとかで喜んでましたよ」

 

「ッ────!!」

 

「魔理沙さんも魔力や魔法について解釈を深めて、広げて──もっと強くなって、今度は、魔法勝負でこの私を倒してみてくださいね?」

 

「……努力するぜ」

 

 それから更に1ヶ月後、魔理沙もとうとうコップ1杯の水を創造するのに成功した。ただ消費魔力の効率がかなり悪く、練度だけで言うなら小悪魔やら小悪魔姉妹よりも遥かに低かった。

 今後の課題だなぁ────と、自宅に帰ってきた魔理沙は早速、魔法の森の魔力を吸収しつつ魔法の訓練と理論の構築に取り掛かった。




ストック切れです。次回更新、遅れるかもです!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。