「────ふゥん、ここが幻想郷か。安穏としててつまんなさそうなトコね……」
幻想郷に、1人の悪魔が舞い降りる────。
まだ見ぬ敵、否、自分の世界に存在せぬ「神」を求めて、少女はこの世界へとやってきた。
しかしその感想は上記の言葉の通り。あまりにも安穏としていて、自分達より上位の存在の「神」が跋扈しているような世界だとは到底思えなかった。
「……うげー。ひょっとして、山、登る必要あンの?私、都会育ちなんですけど。マジ最悪……飛んでこ」
眼前に広がる妖怪の山を目にして、あからさまに嫌な顔をする少女。地道に道に沿って登るようにと幻想郷に来る前に聞かされていた。しかしそんなの面倒だと切り捨てた少女は、言いつけを無視して、木々の上を飛んで山を登り始めた。
しかし……。
「止まれ!」
「何者だっ!?」
「参拝客じゃあないな!?」
「あぁ?何、あんたら。邪魔なんですけど?」
参拝客向けの登山道を通らないのだから、登山道周辺を警戒してくれる天狗達も、その道を外れれば敵となってしまう。
しかし、大勢の天狗に囲まれても、少女の顔色は変わりやしなかった。
「山に何をしに来たと聞いているッ!」
「しかもお前のその気配、悪魔だなッ!?幻想郷に記録の無い悪魔だ──どこから侵入してきた!?」
「また博麗大結界に穴を開けたのか!?」
「あー、うるさいうるさい。全くもー、3人一気に喋んないでよウザイなぁ。私は聖徳太子か何か〜?────とりま、黙らせよっか」
「「「黙るのはお前の方だァッ!!」」」
少女から魔力が立ち上る。細く揺らめくような、ロウソクにも似たあどけない魔力の流れ。形の無い魔力に対し「あどけない」なんて気妙な表現だが、天狗達からすれば、その少女の放つ魔力はまさに、赤子のような無邪気で可愛い魔力────まさに、その程度の認識だった。
「『
針を創造した少女は、創造した針をマシンガンやガトリングのように放ち、天狗達に鋭いダメージを与えていく。針は腕や足といった末端に刺さった。即座に針を抜くもそこからジワジワと毒が広がり、腕や足が腐り落ちていく。
「なッ!?」
「ぎっ、ぎゃあああぁああぁっっ!?」
「足がっ、う、腕がぁッ!?」
「『
「「「うわああああぁぁぁーーーーっ!!!」」」
天狗達の背後に魔法陣を出現させ、そこから腐り落ちる毒を付与した針を発射。それは全て天狗達の翼に突き刺さり、翼が腐り落ちた彼らはバランスを崩し、揃って墜落していってしまった。
「ふふん、お手本のような噛ませ演出、どーも〜。痛み無くすような毒に調整すんの、研究とかマジで疲れたんだからね?神経を殺せばいいだけだけど、それに気付くのに何日掛かったことか。全く、私に感謝しなさいよね」
どこも感謝できる要素は無いのだが、そんな事を呟いた少女は更に山を登っていく。
やがて見えてきた湖、そして守矢神社。「神」を求めて幻想郷にやってきた彼女は、舌なめずりして喜ぶ。
「さぁ〜て…………
◆
ある日の守矢神社にて。
エスカルゴの宿泊ローテーションを外されている守矢神社では、彼のたまの帰還が無くなった事で、彼の彼女である諏訪子は、かなり退屈をしていた。
依然として神奈子と共に早苗を説得しているが、ここの所の早苗は「考えておきます」の一点張り。2人からすれば、もう話にならない状態であった。
娘の樹理愛は、既に、2人の和解を諦めている。父の女遊びの悪癖は幼い頃より知っている、しかし樹理愛からすれば生まれ育った環境が全てなので、父親が女遊びするのは樹理愛にとって「当たり前」だった。
だが外の世界で生まれ育った早苗の方はやはり、そうもいかない。ましてやただの女遊びではなく、弟の嫁に手を出していたとなれば彼を心の底からは赦せなくなる。だからこうして、数ヶ月が経過した今でも問題を引き伸ばしにしているのだった。
「ねぇねぇ早苗ぇ、エスカルゴ呼んでいーい?」
「構いませんが泊めるのは禁止ですよ」
「え〜ッ!?私の部屋なら良いでしょお!?」
「ダメとは言いませんが、あまりにも急過ぎます。宿泊のローテーションを外されて久しいのに、急にそんな事を言われても、他の方が……」
「それは早苗のせいじゃん?私に言われてもなー」
「っ……ですからそれは────」
反論しようとしたその瞬間、神社の上空に強力な魔力の気配を察知する。料理中の早苗、早苗からの課題を解く樹理愛、煎餅を食べる諏訪子、昼寝中の神奈子──現在守矢神社に居る全ての神が、敵襲と感じ取り、そして樹理愛以外の全員が臨戦態勢に。
3柱──3人は、気配に気付いた直後には神社の真上に結界を張り敵の攻撃に備えていた。そして、3人の予想通り、ドドドドド──と凄まじい衝撃が結界から伝わってくる。
「て、敵襲ですっ!攻撃を受けてます!!」
「感じた事の無い気配だ。しかもこの邪悪な気配、悪魔か?エスカルゴよりも禍々しい気配だ、一体何者だ……?」
「今のエスカルゴは神も混ざってるから、そりゃあ邪悪さは薄れてるってモンよ。さぁさぁ、樹理愛、結界を張って押し入れに隠れてなさい。ここからは私達3人の出番だよ」
「は、はいっ、諏訪子様っ……」
パタパタと避難していく子孫を見送り、諏訪子は咳払いを1つ。目を輝かせ──否、いたずらっ子のような目をしながら、2人に声を掛ける。
「──さぁて。樹理愛にはあぁ言ったけど、早苗と神奈子もスッ込んでな」
「ええっ!?」
「は?」
「これは私の戦いだよ。巻き添えくってアッサリと死にたくなきゃ、出てこない方がイイよ?」
「待て諏訪子。『私の戦い』だと?知ってるのか?攻めてきた敵の事を?」
「うんにゃ、何も知らない。でも──退屈なんだ、ここ暫く。ずぅっと、さ」
「「っ……!」」
「ようやっと、こんな退屈も終わりを告げるんだ。ワクワクするよねぇ。今ばかりは、DBの孫悟空の気持ちが私にも分かる気がする。────よもや……この私の邪魔をしようとは、するまいね……?」
ぞぁッと沸き立つ諏訪子の気配。普段は意図的に抑えられている、負のオーラ。色を付けるなら紫、いや、黒紫だとか、そういった重苦しい系統の色がよく似合うだろうか。
「……フン。久方振りの戦闘だ、腕が鳴るね」
鉄の輪を持ち外に出る、すると境内には巫女服で金髪、紫の瞳を持つ、悪魔の少女が立っていた。
「……えぇ?もしかして今の、君の攻撃かな?」
「そーよ。あんた、ここの祭神ね?」
「んまぁ、
「よく分かってるじゃない。私の名前はミコ!巫女見習いじゃなくて、神見習いのミコよ!でも私には神らしさが無いから──あんたを、いや守矢神社の神を全員、問答無用でブチ倒して、『神らしさ』をモノにしてやるわ!」
「???……ま、細かい事はいいや。戦いに来たって認識で合ってるようだね」
「そーよ!だから勝負なさい!勝負しないんなら、その神社、ブッ壊してやるから!!」
「勝負するよ、するから落ち着きなって。とりま、ルール決めるゥ?スペルカードルール、知ってる?知らないなら懇切丁寧に私自ら教えてあげるけど、どうする?」
「ルール?……もちろん──殺し合いよッ!!」
手元に針を創造する。片手に3本ずつ、指の間に挟んで、地面を蹴って急速に肉薄してくる。
目の前にミコが迫ってきたところで、諏訪子は、鉄の輪をミコの前に出した。結界だとか壁ではなく輪っかだからと、サーカスの火の輪くぐりのように通り抜けようとした瞬間。
身体が輪の真ん中を通過する辺りで、諏訪子は、思い切り輪を横に引くことでミコの身体を横方向に吹っ飛ばす。
「ぐぇっ!?」
「んふっふっふ〜♪」
「くっ、このッ……笑うなァッ!!」
「!」
「『
ガトリングのように連射される針、諏訪子は己の前面に結界を張ることでそれを防御する。しかし、あまりにも一点集中で攻めてくるので徐々にヒビが広がり始めやがて砕けてしまったので流石の彼女も回避を余儀なくされた。
「お、いいねいいねぇ♪ スペルカードルールでは味わえないヒリつく感覚──
「避けたり守ったりするばっかりじゃあなくって、そろそろ
「ん〜?じゃあ……
「舐めてんじゃないわよッ!これでも
『
「おっと。……おッ!?」
断続的に大量の針を放つミコ。それを的確に回避していく諏訪子だったがある瞬間に、足の甲に針を1本受けてしまう。
今回の毒は痺れ毒。諏訪子は麻酔を受けたように足の動きや反応が鈍くなってしまった。
「およよ?……ふぅん、痺れ毒か何かかな?」
「ちっ。一瞬で看破するんじゃないわよ」
「……ふぅ。なんかまだ動けないや。ジンジンするの慣れないよー、ちょっとお話でもしよう?」
「……」
「君の言う『神らしさ』って、何なのかな?」
「私達が魔力を消費して魔法を使うのと違い、神は神というその存在自体が物を司ると聞いたわ!」
「へぇ、若いのによく知ってるねぇ」
「存在そのものが物を司るって、ドエライことよ。私もそうなりたいのよ」
「成程、そいつを知る為に、か」
「ええ、そう!さぁ、殺し合い再開よ!」
「源符『諏訪清水』!!」
「え……きゃああああああああっっ!??」
フゥッと吹き付けた諏訪子の息が水流に転じる。その水流は着地直後で隙のあったミコの足元を掬いいとも容易く転ばせてしまう。
「くっ!不意討ちとか卑怯だと──」
「開宴『二拝二拍一拝』!!」
「うわわわわわわっっ!?地面から何か生えた!?クッソ……『
足を取られたミコは、双子の姉であるマコの空気魔法の独自アレンジバージョンを使う事で、無理な姿勢にも関わらず、巨大な手からの回避を果たす。
「逃げるねぇ。んじゃ、これを併用してやろう!!神具『洩矢の鉄の輪』ッッ!!」
跳躍する鉄の輪を3個投擲。地面に当たり反射、巨大な手に当たって更に反射。しかもあの手の方はバレーボールのスパイクでもするかのようにミコに向かって輪を弾いてくるから厄介だ。
「神具『洩矢の鉄の輪─Lunatic─』!!」
「ッ……!?輪っかが6個になっ……くっ!!」
悪魔の力を以てしても、針で岩の手は壊せない。その拳で殴れば壊せるのだろう、しかし一方を破壊しようとすればもう一方の手で殴られたり握られて潰されるのがオチだと、ミコは怖気付いていた。
こんな時エスカルゴなら、鉄の輪への被弾なんか恐れずに手の方を破壊するか、超広範囲技を使って全てを破壊するんだろう──と、諏訪子は目の前の見知らぬ悪魔の少女とエスカルゴを
そして、決着の時はやってきた。
「っあ……!!」
「終わりだ。────祟り神『
「……ひっ!?」
諏訪子を中心にして、呪いの土が広がり始める。ミコはそれに足を取られてしまい身動きが取れなくなってしまった。
「ここまで楽しませてくれたご褒美だ。苦しませず逝かせてあげるよ。スペルカードルールを無視した君への、せめてもの慈悲でもある。今回のコレは、一撃必殺だよ。文字通りの……ね」
「いっ、いやぁっ!う、動けないっ……なんでっ……どうしてっ……!?」
「悪魔だろうと天使だろうと、それこそ神だろうと人間だろうと関係ない。そういう『呪い』なんだ。この呪いに囚われたが最後────さぁ、おいで」
「ッ……いやぁああああああっっ!!!」
眼を赤く光らせた白蛇が4匹、諏訪子からの呼び掛けに応じてミコを囲むように地面から出現した。まさに「蛇に睨まれた蛙」、ミコは呪いと相まって更に動けなくなってしまった。
「────お食べ」
諏訪子の合図で、蛇はミコに噛み付き──全身を余す事無く喰らい尽くしてしまった。スペ化を終了させて事後観察。彼女の魔力の残穢も時間の経過と共に段々と薄れていく。
終わりだな──と境内に背を向け、神社の中へと戻ろうとした諏訪子、しかし。
「『
「────ッッ!?」
爆発的なまでの魔力を立ち上らせ、ミコが復活。まさか復活すると思っていなかった諏訪子は自分の目を疑う、だが紛れもなく先程のミコ本人だった。分身や式神の類では無い事は、神である諏訪子ならよく分かるからだ。
「よくも、この私を殺してくれたわね……!」
「っ、まさか復活するとはね……」
「第2ラウンドといこーじゃない……クソ
ビッと親指で首を掻き切る真似をしてやるミコ。それを見て諏訪子は生唾を飲み込み目の前の少女を改めて真正面から見据える。
諏訪子vsミコ──第2ラウンドが始まる。
子供の人格形成には、生まれ育った環境が関わる。
これ第1部の頃から強調して書いていますが、割と真理だと思っています。
親に盗みを教わった子供にはそれが当たり前だし、犯罪と知って「自分の家がおかしかったのだと後で知った」なんてのは珍しくもない。
妖怪が居る世界しか知らないと「妖怪が居る」のが常識であり、妖怪が居ない世界など常識外である。
だからもし生まれた時から父親が中心のハーレムが築かれていたら、子供にとってはそれが当たり前と認識してしまうのも仕方の無いこと。
それが当たり前の環境で育ったから。
新生エスカルゴチルドレンの家系図を製作したら、予想以上にエグい事になってたみたいで頭抱えた。
異母兄弟姉妹だけでも結婚すると家系図のバランス崩れるのに、ガチガチの近親相姦(同性も可能)をOKにすると、家系図ってこうなるんだなぁ。
下手したら、いや下手しなくてもこれもう幻想郷のエスカルゴチルドレンの数倍カオスなんだよな。
ハプスブルク家、沢越止の家系図がカスに見える。
(沢越止:誠死ねで有名な伊藤誠の父親キャラ)