※この作品はR-18です。

人生がおしまい!?   作:柊 蕾

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【1話】おわりのはじまり☆

「「天は二物を与えない」」

 

この言葉を考えた人間は、何一つ、「現実」というものが見えていなかったんだろう。

実際、才能のある人間は、全ての物事を要領良くこなし、周りから賞賛ばかりされる。

一方凡人は、何をやってもダメで、常に冷たい目線に晒されている。

 

そして、俺は後者の人間だった。

 

何をやってもダメで、いつも周囲の人間を失望ばかりさせていた。

だが、それだけなら良かった。

周りからの視線も、冷たい感情も慣れてしまえば気にならなかったからだ。

 

俺が不幸だったのは、才能のある人間、凡人と対になる存在が身近にいたことだろう。

 

そのせいで俺は、いつも「比較」されることになった。

テストも、運動も、ゲームでさえも、ありとあらゆるもので「比較」された。

俺は「妹」の美しさを引き立てるためだけの装飾品だった。

そして、そんな俺を気遣い、優しさを見せる妹。

俺はそんな、自分が、無様で、惨めで、悔しくてたまらなかった。

だからこそ、俺は憎んだ。

俺の「人生」を奪った妹を。

 

―そして

 

「や、やめて。お兄ちゃん……」

「うるさい、黙れ!お前のせいで……、俺は……、俺は!!」

 

みはりの両腕を掴み、馬乗りになる。

いくら運動神経がいいと言っても、所詮は女の子。

一回りも体格の違う男に襲われればひとたまりもない。

 

「ね、ねぇ、やめよう?こんなこと。今ならまだ引き返せるからさ?」

 

ワナワナと震え出すみはり。

その瞳は赤く純血し、今にも泣きだしそうだった。

 

「もう……、遅いよ」

 

俺はそう呟き、みはりの腹に一撃を入れる。

 

「ゴフッ……、あ、あぁ……」

 

みはりが嗚咽を漏らす。

俺はそんな、みはりの様子を眺め、間髪入れずに2発、3発と殴りかかる。

 

「ガハッ……、ごめん……なさい、もう……やめ……」

 

口から吐瀉物を吐き出し、泣き出すみはり。

その顔を見て正気に戻ってしまう。

 

「ハァ……、ハァ……、ああああ、俺は、俺は……」

 

取り返しのつかないことをしてしまったと気づき、急いでその場を後にする。

 

―これが、大学受験の前日、初めてみはりに手を出した日の出来事だ。

 

その日から数日間、俺はいつ警察に連行されるのかと震えながら眠れない日々を過ごした。

しかし、なぜか、みはりは俺に手を出されたことを誰にも口外せず、いつも通りの日常を過ごしていた。

 

そして、俺はそれを良いことに、ストレスが貯まる度、隠れてみはりに手を出した。

みはりは、最初こそ抵抗していたものの、次第に

 

「お兄ちゃん……、ごめんなさい」

 

とだけ言って殴られ続けられるようになっていた。

 

―そんな日々が続いたある朝、俺は女の子になっていた。

原因は直ぐに分かった。

だって、こんな事を出来る人間は世界に一人しかいないのだから。

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

そう言ってみはりは部屋に入り、鏡の前で愛くるしい姿を披露していた俺の横に立つ。

 

「み、みはり……」

 

声が震えていた。

 

「ん?なぁに?お兄ちゃん??」

 

みはりの顔を見ることが出来ない。

今まで彼女にどんな酷い仕打ちをしてきたか、それは俺が一番良く分かっていたからだ。

 

「あ、あぁ」

「ふふ、そんなに怯えなくても大丈夫だよ」

「ご、ごめ…」

 

ごめんなさい。

そんな軽い言葉で許されるハズが無い。

頭の中で理解していても、謝ることしか出来なかった。

 

「それにしても、可愛くなったね。お兄ちゃん」

 

そう言って俺の脇腹をスッとなぞる。

 

「あ…、いや……」

 

みはりの一挙手一投足が恐ろしく身震をする。

そんな緊張感に耐えられず、下腹部からツーッと温かいものが垂れてしまう。

 

「あらら、もう、ダメじゃないお兄ちゃん、お風呂で綺麗にしないとね」

 

強引に俺の手を引くみはり。

 

そして、洗面所に着くと、俺の服を脱がせ、浴室に連れて行く。

みはりは、その間無言で顔も合わせようとしなかった。

 

しかし、シャワーに手をかけると

 

「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんが最初に私を殴った日のこと、覚えてる?」

 

そう俺に問いかけてきた。

その目に光は無く、俺はただ、戦慄するしかなかった。

 

「あ、お、覚えて……」

「そっか、良かった。覚えててくれたんだね」

 

みはりの顔がパァっと明るくなる。

 

「私ね、最初に殴られた時はとにかくビックリして、一日中泣いてたの」

 

少しづつ、みはりがこちらに近づいてくる。

 

「でもね、ある日気づいたの。これは、お兄ちゃんの気持ちを無視していた私への罰なんだって。だから、私はその罰を甘んじて受けることにしたの」

 

みはりに気圧され、思わず後ずさる。

 

「でもね、もう十分罰は受けたと思うの」

 

壁際に追い込まれ、逃げ場を失う俺。

 

そしてみはりは、

 

「だから、次はお兄ちゃんが自分の罪と向き合う番だよ」

 

そう言ってシャワーから放たれる熱湯を俺にかけてくる。

 

「あ、あつい、あついよ、みはりぃぃ、やめ、やめてぇぇ」

「頑張ってお兄ちゃん。じゃないと、お兄ちゃんの罪は消えないよ」

 

みはりは真顔で俺を見つめ、熱湯をかけ続けた。

 

 

「じょ、冗談じゃない!!」

 

 

このままでは殺されると思い、急いで浴室を出る。

 

しかし、直ぐにみはりに追いつかれ、廊下で押し倒される。

今度こそ殺される。

覚悟を決め、目を瞑ったが、みはりは

 

「そのままじゃ、風邪引くよ。お兄ちゃん」

 

と言って、俺の頭にバスタオルをかけ、髪を拭き始める。

 

……もしかして、今ので気が済んだのか。

 

そう思い、安堵していると

 

「これからゆっくり、罪を償っていこうね。お兄ちゃん」

 

みはりがそう耳元で囁く。

 

「は、はははは」

 

俺はみはりの言葉に笑うしかなかった。

 

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