「ねぇ、お兄ちゃん。今日、もみじって子に何かされなかった?」
ドアの前に立っていたみはりが冷たい声で俺に問いかけた。
「え、いや、何も……」
そう言いかけた所で、俺は思った。
かえでちゃんとみはりは、一応は昔から付き合いのある、仲の良い友達。
その友達の妹が困っていると知れば、みはりも、何か思うところがあるんじゃないだろうか。
もしかしたら、一緒に解決の糸口を考えてくれるかもしれない……。
「……?どうしたの?お兄ちゃん??」
みはりが何時に無く不機嫌な様子で俺に近づいて来る。
「あ……」
その雰囲気に圧倒され、一瞬、言葉に詰まってしまったが、これも、もみじのため。
そう思い勇気を振り絞った。
そして、
「実は……」
今日起きた出来事をありのまま、みはりに話した。
「そういう訳で、もみじとかえでちゃんを救うために、協力して欲しい」
「……」
「みはり?」
途中までうんうんと頷きながら、俺の話を聞いていたみはりだったが、もみじにキスをされたという話を始めた辺りから、みはりの反応が薄くなった。
何か気に障ることでも、言ってしまったんだろうか……。
そんなことを考えていると、今まで黙り込んでいたみはりがようやく口を開いた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?なんだ??」
「お兄ちゃんが今まで私にしてきたこと、忘れたの?」
「え……、いや、それは……」
みはりの口から出た、思いがけない言葉に、俺は息を飲んだ。
同時に、体中から冷や汗が止まらなくなった。
「それとも、お兄ちゃんは、今まで自分がやってきたことを全部棚に上げて、私と一緒に、もみじとかえでを救えって言うの?」
「そ、それは……」
みはりが鬼のような形相で俺に近づいてくる。
「もしかして、お兄ちゃんは、私が今まで苦しんで無かったって思ってるの?」
「いやっ……」
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは、私なんかよりも、あの2人の方が大事なの?」
「ちがっ……」
「何がちがうのっ!!」
みはりが、今までに無いくらい声を張り上げる。
「あ、いや……。俺は、そんなつもりじゃ……」
怒りを露わにするみはりに対して、俺は何も言葉を掛けることが出来ず、その場でへたり込んでしまう。
下半身からは暖かいものが漏れ出て、床がぐっしょりと濡れている。
するとみはりは、
「お兄ちゃん。服、全部脱いで」
冷たい声でそう言った。
「え、いや……」
「いいから、はやく!!」
「は、はい……」
みはりの気迫に圧倒され、俺は泣きながら、服を脱いだ。
すると、みはりは俺の体に手を当て、
「お兄ちゃん、お兄ちゃんがあの子に舐められたのってここ?」
そう言ってアザをなぞった。
「え……、なんでそんな」
「いいから!答えて!!」
「う、うん」
「ふーん……、そっか、ここから……」
みはりが、俯きながら何かを呟く。
「み、みはり、お前、どうした……」
どうしたんだ?俺がみはりにそう声を掛けようとした瞬間、
グサッ
「へ?」
俺の腹部に何かが突き刺さった。
そして、数秒後、
「ぁぁ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
想像も絶するような痛みが全身を駆け巡り、俺はなす術も無くその場に倒れ込んだ。
あまりに突然の出来事に、理解が追いつかない。
……一体何が起きたんだ?
そう思い、視線を横に向けると……。
「少し待っててね、お兄ちゃん。お兄ちゃんの体に入った悪い菌は私が全部取り出してあげるから」
笑顔で俺の腹をまさぐる、みはりがいた。
「あ゙がっ、み、みはり……、っな、なんで……」
口から血を吐きながらも、俺はみはりに問いかけた。
するとみはりは、
「あの子の悪い菌が、お兄ちゃんをおかしくしちゃったから。私がお兄ちゃんを元に戻してあげようかなと思って」
そう言って、俺の腹から包丁を引き抜いた。
みはりが包丁を抜いた部分からは、血が噴き出し、床を真っ赤に染め上げている。
「今助けてあげるからね。お兄ちゃん」
みはりが包丁を振り上げる。
「や、やめっ」
ザクッ
無慈悲な音と共に、包丁が振り下ろされた。
「がっ゙、゙痛゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
恐ろしい程の痛みが、再び全身を駆け巡った。
しかし、みはりはそんな俺の様子など気にも留めず、ザクザクと俺の体の中を切り裂いていった。
「い゙っ゙、゙ぎ゙ゃ゙っ゙、゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」
みはりが臓器を弄るたび、体中に痛みが走り、そんな声を上げた。
しかし、しばらくすると、何も感じなくなっていた。
その変わり、体中が凍えるほど、寒くなった。
「見て、お兄ちゃん。お兄ちゃんのここ、まだこんなに綺麗だよ。良かった」
みはりが、俺の下半身から赤い何かを取り出し、嬉しそうに抱きしめている。
しかし、もはや機能不全に陥っている俺の脳では、みはりが何を言っているのか理解出来なかった。
……、少しづつ視界が狭くなり、みはりの声も遠くなっていく。
そんな俺の様子を見て、みはりは、
「バイバイお兄ちゃん。でも、安心してね。私も、あの子も、直ぐにそっちに行くから。でも、もしかしたらあの子は、そっちに行く頃には誰か分からなくなっちゃってるかも」
何かを呟き、微笑んだ。
そして、これが俺の見た最後の光景だった。
リアルの都合で次回の更新が少し遅くなります。
楽しみにして下さっている方、大変申し訳ございません。