※この作品はR-18です。

人生がおしまい!?   作:柊 蕾

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【2話】きょういぞんのはじまり!? ☆

「お兄ちゃん、もう少しでゴールだよ!頑張って!!」

「はぁ……、はぁ……」

 

息を切らしながら、みはりの後を追う。

そして、

 

「お兄ちゃん、お疲れさま。よく頑張ったね」

 

みはりがストップウォッチを止め、ガサゴソとショルダーバッグを漁り始める。

その中からタオルを取り出し俺に手渡す。

 

―俺が女の子になってから1週間

 

「引きこもり脱却のために、まずは体力作りから始めましょう」

 

というみはりの提案を受け、俺は毎日ランニングに励んでいた。

 

最初のうちは、みはりが作成した初心者向けのコースを、定められた時間までに走るだけの簡単な有酸素運動だった。

 

しかし、日に日に落ちていくタイムに失望したみはりは、俺に罰を与え始めた。

 

「さてお兄ちゃん、休憩もそろそろ終わりにして、今日の罪を精算しに行こっか」

「あ……、え、もうちょっと休ませて……」

「もう、贅沢言っちゃだめだよ。ほら、人が居ないうちに早くこっちに来て」

 

みはりは俺の腕を掴み、強引に人気のない路地裏へと連れていく。

そして、

 

「今日は目標のタイムより、10分も遅れちゃったね。大変だけど一緒に頑張ろうね」

 

と笑いかけ、俺を壁に押し付ける。

次の瞬間、下腹部に内蔵を直接握られたような痛みが走る。

 

「ヴぅえ……、あ……、いぁ……」

 

あまりの激痛に嗚咽が漏れる。

しかし、みはりはそんな様子には目もくれず、俺の腹を殴り続ける。

 

「目標のタイムに1分遅れるごとに1回、お兄ちゃんに罰を与える」

 

それが、みはりの提案した、ランニングで負った罪の精算方法だった。

 

―これで、達成不可能な目標を言い渡されていれば楽だった

 

しかし、みはりは完璧な計算の元、その日のコンディションまでも考慮した到達出来そうなギリギリのタイムを目標に掲げていた。

 

みはりに殴られる度、「なんでもっと頑張れなかったんだろう」という後悔が溢れ出す。

 

そんな惨めな感情とみはりから受ける腹部の痛みで限界になった俺は、遂に耐えられなくなり

 

「おぇぇ、おぇぇええ……、う、うぐっ、ひぐっ……」

 

無様な泣き顔を晒しながら、吐いてしまった。

みはりは地面に落ちた吐瀉物と俺を交互に眺め、

 

「お兄ちゃん、スッキリした?」

 

そう尋ねてくる。

最早呼吸すらままならない俺は

 

「……かひゅっ、あ、かひっ……」

 

と喉の奥から声になっていない音を出す。

するとみはりは、

 

「良かった。あと1回だから頑張ろうね」

 

そう言って俺に笑いかけ、最後の罰を与えた。

 

―ドサッ

 

みはりから解放され、その場に倒れ込む。

 

「……ぁぁ、ああ……」

 

同時に、下腹部の痛みを我慢出来ず、腹を抱え、うめき声をあげる。

 

そんな様子をみはりは満足そうに見つめ、

 

「飲み物、ここに置いておくね」

 

俺の目の前にスポーツドリンクを置く。

 

そして、

 

「最近お兄ちゃんはよく頑張ってくれてるし、今日は特別にご褒美を買ってあげるね」

 

そう言い残し、その場を後にした。

 

下腹部の痛みが引いた時を見計って、スポーツドリンクを手にする。

みはりが置いていったスポーツドリンクは、どこか不思議な味がした。

 

その後、クールダウンも兼ねて、30分ほど歩いたところで、みはりが、

 

「ご褒美に新しい下着を買ってあげる」

 

と言うので、最寄りの下着店に立ち寄る。

 

「はい、動かないで下さいね」

 

店員さんが俺の胸にメジャーを当て、耳元でそう囁きながら俺のバストを測る。

店の冷房が効きすぎているせいか、ブルブルッと体が震える。

 

「うん、なるほどね」

 

俺のバストを測り終わり、下着を取りに行く店員さん。

 

しばらくして、

 

「どれがいいかな?」

 

と言いながら、2種類のブラジャーを持って来くる。

 

そんなこと聞かれてもなぁ。

ついこの間まで男だった俺には女性用下着のことなどさっぱりだった。

 

「うふふ……、じゃあ、試着して見よっか」

 

店員さんの言葉に頷く。

しかし、服に手をかけた瞬間、ある問題に気づいた。

 

―このままだと腹についたアザが見られてしまう

小さな女の子のお腹に大量のアザがあるなど、明らかに異常事態だ。

 

「……どうしたの?恥ずかしいのかな??」

 

店員さんが優しく問いかけてくる。

 

「……はい」

「そっか、それじゃあお姉さんは外に行ってるね」

 

そそくさと更衣室を後にする店員さん。

俺は、その後ろ姿を確認すると、直ぐに上着を脱ぎ、ブラジャーに手をかける。

 

……俺はなんでみはりを庇おうとしているんだろうか

このままバレてしまった方が、楽なのにー

 

そんなことを考えていると、誰かがガラッと更衣室を開ける。

 

―まずい

必死に、アザを隠そうとする俺。

しかし、更衣室に入ってきたのは、

 

「やっぱり、付け方分かんないよね」

 

みはりだった。

 

「うん、これで大丈夫」

「あ、ありがと……」

 

みはりは、手際よく俺にブラジャーを付ける。

 

「どっちにするか、もう決まった?」

「……こっちにする」

 

青い下着を指さす。

さっさと帰りたい。

みはりと密室に閉じ込められる、それだけでも生きた心地がしないのに、さっきから尿意が限界を迎えようとしていた。

 

「そっか、それにしたんだ」

「うん……、だから」

「でも、こっちもいいんじゃないかな?」

「えっ……」

 

みはりの手には違う色の下着が握られていた。

 

「い、いや……、これで」

 

「これでいい」と口にしようとしたその時、鑑越しにみはりの冷たい笑顔が目に入った。

 

「あ、あぁ……」

「どうしたの?お兄ちゃん??」

 

みはりがゆっくりと俺の肩に手を置く。

 

「あの、その……、もう、決めて……」

「ダメだよ、お兄ちゃん。せっかくの機会なんだし、時間をかけてゆっっっくりと決めなきゃ」

 

みはりが低く冷たい声を出す。

それは、俺が「罰」を受ける前に何度も目にした光景だった。

 

ジョワァァ

 

張り詰められた空気に我慢できず、何かが下半身から漏れ出す。

 

「あ~~あ、もうダメじゃないお兄ちゃん。こんな所でお漏らしなんて」

「あ、うぅ……」

 

妹から向けられる哀れみの視線と情けなさで、俺はしゃがみ込み泣き始めてしまう。

 

「うぅ、みはりぃ、ごめんなさい、ごめんなさい」

「よしよし、大丈夫だよ。お兄ちゃんは悪くないからね」

「あぁ、あぁぁぁぁ……」

 

年甲斐も無く、みはりに泣きつく俺。

 

その後、俺はみはりと一緒に、店員さんへお漏らしの件を謝罪した。

今回は、店員さんの厚意で穏便に済ませて貰えることになり、下着も無事購入できた。

 

だが俺はこの日、兄として大切な何かを失った気がしたー

 

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