ある日俺は、腹痛とだるさに襲われ、みはりに看病をしてもらっていた。
「うぅ……、ぐすっ…お兄ちゃんに何かあったらぁ……」
俺の横で泣顔を晒すみはり。
俺はそんなみはりに、
「泣くなよ、大袈裟だなぁ」
と笑いかける。
どこにでもいる、仲のいい姉妹。
ゆっくりと流れる温かい時間。
-あぁ、これはきっと悪い夢なんだろうな。
閉ざされてしまった幸福な日常を羨ましく思いながら、俺はその光景を眺めていた。
-悪夢を見ていた気がする
枕についた涙の跡を見て、そんなことを思う。
どこか懐かしくもあり、羨ましくもあった気がするが、目覚めた影響で夢の記憶は殆ど失われていた。
「まぁ、どうでもいいか」
いくら幸せだったとしても、夢は所詮、夢でしかない。
そんな下らないものに裂く暇があるのなら、その時間をもっと建設的なものに使かった方が良い。
そう自分にいい聞かせ、布団の上から、立ち上がる。
「う……」
同時に、尿意を感じ、トイレに向かう。
「っ……、やっぱり痛い……」
1歩踏み出す度、顔が痛む。
「鼻、折れてるよな。はぁ……」
ため息をつきながら、トイレのドアを開ける。
するとそこには、
「ほ?」
ギャルがいた。
「へ?」
「えっと……、この人は中学時代の同級生で……」
「かえでだよーよろしくね☆」
トレイで出会ったギャル、かえでちゃんは俺を抱きしめ、みはりのいるリビングまで連れてくると、テーブルの前に座り、自己紹介を始める。
「お名前は?」
「ま、ままま、まひろ……です」
「あは、照れちゃって可愛い」
かえでちゃんが話すたび、大きなふたつの塊がブルブルと俺の背中で振動する。
……興奮するから止めて欲しい
女の子の体になってから、あまり欲情しなかったせいで、女の子には性欲なんて無いと思っていたが、どうやら勘違いだったようだ。
実際、かえでちゃんの吐息が掛かる度、ムラムラする。
これが「濡れる」って感覚なのかな。
そんなことを考えていると、かえでちゃんの口からとんでもない言葉が飛び出してくる。
「あれ、けどみはりって妹いたっけ?」
「え……」
予想外の質問に慌ててしまう俺。
女の子になってから、みはり以外の人とまともに話していなかったせいで、こういう時、なんて答えれば良いのか分からない。
どうすれば……。
「ちょと訳ありで……、ね?まひろちゃん??」
パニックを起こしている俺を見かねて、みはりが助け船を出してくれる。
「ふ~~ん、そっか、そっか」
みはりの回答に納得したのか、頷きながら俺にすり寄るかえでちゃん。
かえでちゃんの体からは、良い匂いがして、思わず顔がにやけてしまう。
あぁ……、ここは天国だぁ。
俺は幸せな気持ちで胸が一杯だった。
しかし、背後から感じる視線に気づき、その気持ちは直ぐに冷めてしまう。
視線の主はみはりだった。
みはりが、蔑むような目で俺を見つめている。
「うっ……」
みはりからの視線に耐えきれず、震え上がる俺。
そんな状況を見て、かえでちゃんは
「ふ~~ん」
と笑い
「みはり、まだ大学のレポートが残ってるんじゃなかった?アタシがこの子の面倒見ててあげるから、終わらせてきなよ」
「え、でも……、悪いよ……」
「いいから、いいから。暇人JKに任せなさい」
かえでちゃんはそう言いながら、ポケットにあった携帯を取り出し、みはりに何かを見せる。
するとみはりは
「……っ、分かった」
俯きながらそう答え、部屋に戻っていった。
……?
一体何を見せたんだろうか?
みはりのあんな表情始めて見た。
「ねぇ、まひろちゃん」
「はい!!」
部屋に戻るみはりの後ろ姿を眺めていると、かえでちゃんが話しかけてくる。
「まひろちゃんは普段何して遊んでるのかな?」
「漫画読んだり……とか、ゲームとか……」
「ゲーム!あたしもやってるよ!!ほら」
そう言って携帯を見せてくる。
「それはやってない……」
「あ~~、違うかぁ、そっかそっか」
乾いた笑いを浮かべるかえでちゃん。
もう……、無理ぃ
現役JKとの会話に早くも限界を感じ始めた俺は、部屋に戻ろうとする。
すると、かえでちゃんは俺の服を掴み、
「ねぇ、お腹すいてない?一緒にお昼食べよう?」
と提案してきた。
「うん、美味しい」
かえでちゃんの作ってくれたチャーハンを口に運び、俺は喜びの声を上げる。
「本当?良かったぁ」
かえでは満足そうに俺の顔を見つめ、チャーハンを口に運ぶ。
なんか良いなぁ、この感じ。
何時も、みはりに怯えてばかりいる俺にとって、かえでちゃんとの昼食の時間はまさに至福と呼べるものだった。
このまま時が止まってしまえば良いのに……
そう思いながら、飲み物を口に運ぶ。
……?
味の違和感に気づき、俺は手を止めた。
「……どうしたの?まひろちゃん??」
「あ……、いや、なんか変な味がして」
「スーパーで買ってきた新商品だったんだけど、ごめんね。口に合わなかったかな?」
「いやいや、美味しいよ」
せっかく、かえでちゃんが買って来てくれたんだし、残すわけにはいかないよな。
そう考え、俺は飲み物を再び手に取り、意気揚々と飲み干した。
かえちゃんはそんな俺の姿を見て、ニコニコと笑っていた。
「はぁ、食べた食べたぁ」
昼食を終え、俺はかえでちゃんと共に、ソファに腰掛けながらゆったりとした時間を過ごす。
―そんな時間が10分ほど続いた後
「はぁ……、はぁ……」
下半身に、今まで感じたことのないような疼きを覚え始め、同時に息が荒くなる。
体が焼けるように熱い……。
何が起きているの分からず、混乱する俺。
そんな俺の様子を見て、かえでちゃんは
「ふふっ…」
と笑いかけ、俺に近づく。
そして、
「まひろちゃんってさぁ、まだしたことないでしょ?」
耳元でそう囁き、俺の下半身に手を伸ばす。
「っ……、いやっ……!」
俺は驚きのあまり、かえでちゃんから離れた。
今のって……、まさか……。
俺も一応は男。
かえでちゃんが何をしようとしているかは直ぐに分かった。
もし、かえでちゃんに迫られている俺が、昔の俺だったら、溢れ出れる性欲に身を任せて、かえでちゃんを襲っていただろう。
だが、今の俺は違う。
今は、かえちゃんとH出来る喜びよりも、初めての性行為への恐怖心の方が強かった。
「い、いやぁぁぁぁ」
悲鳴を上げながら、リビングを後にしようとする。
かえでちゃんはそんな俺の後ろ髪を掴み、
「こら~~、逃げちゃだめだよっ!!」
と言いながら、俺を地面に叩き付けた
ドスンッという音と共に、顔に痛みが走る。
「あ、ぁぁぁぁあああ」
まだ、癒えていない傷口に塩を塗られ、想像を絶する痛みが俺を襲う。
「あ~~あ、歯、折れちゃったね」
かえでちゃんは、俺の顔を持ち上げると、地面に落ちた歯を拾いそう呟く。
そして、俺をソファに投げ捨て、
「顔も血まみれで大変だ。でも、アタシから逃げようとしたまひろちゃんが悪いんだよ。直ぐに終わるから、まひろちゃんはじっとしててね」
馬乗りになりながらそう言った。
その目に光は無く、まるで罰を与える直前のみはりのような顔をしていた。
―どうして気づかなかったんだろうか
みはりのような「天才」と仲良く出来る人間が「普通」ではないことに。
みはりのような「天才」は、俺の様な「普通」の人間を簡単に狂わせる。
だから、「普通」の人間はみはりの周りからすぐに離れていくし、みはりも昔からそんな「普通」の人達とは関わらないようにしていた。
―そんなみはりと、長く友人を続けている人間が狂っていないはずがなかった
「は、ははは」
「……?緊張しておかしくなっちゃったかな??でも大丈夫、直ぐに気持ち良くなるからね」
かえでちゃんがゆっくりと俺の秘部に手を伸ばす。
俺はそんなかえでちゃんを見て、笑うことしか出来なかった。