※この作品はR-18です。

人生がおしまい!?   作:柊 蕾

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【7話】もみじとのはじまり ☆

「いいなぁ、今年のニチアサ」

 

俺がみはりを殺そうとしてから1週間、俺はだらけながら、テレビを見ていた。

みはりが復活した直後は、みはりと目を合わせることも出来ず、険悪なムードが続いたが、数日も経てば、俺たちの関係は元通りになっていた。

何時と変わらない、何気ない日常。

ただ、そんな中で変わってしまったものが1つだけあった。

 

「四人になった時は不安だったけど、これはこれで悪くない」

 

テレビを見終えた俺は、天井を眺めながら呟いた。

 

「必殺技も、ネットではダサいとか言われてたけど、全然悪くないしなぁ」

 

その時、棚の上にあったカレンダーに目が向いた。

カレンダーには、先月の暦が記されている。

 

「……よっと、確かこんな感じだったような」

 

俺はカレンダーをビリビリと破き、筒状に丸めた。

そして、

 

「スマイルハリケーーン」

 

鑑の前に立ち、ヒロインの真似をする。

 

……可愛い。

 

鑑に写る自分の姿に思わず見とれていると、

 

「朝ご飯も食べないで何やってるの、お兄ちゃん」

 

いつの間にか俺の真横に立っていたみはりが話しかけてきた。

 

「え……、いや」

 

これは違う、そんな言葉を口にしようとした時、

 

ドカッッ

 

鈍い音が脳内に響く。

 

「うっ、ぁあぐっ……」

 

同時に、頭が割れるほどの激痛に襲われ俺はその場に倒れ込んだ。

 

一体何が……

そう思い、みはりの方に視線を向けると、みはりの手に、さっきまで俺が握っていた、テレビのリモコンが握られていた。

 

「朝ご飯は一緒に食べようって私、言ったよね」

 

みはりは語気を荒らげながら俺に近づいてくる。

 

「や、ご、ごめ」

 

俺が謝罪の言葉を言い切る前にみはりの足が俺の腹に突き刺さる。

 

「アガッ……ゲホッ、ゲホッ」

 

情けない声を上げながら俺は腹を抱え、小さくなる。

しかし、みはりは俺の様子などお構いなしに、俺の顔に蹴りを入れる。

 

「ガハッ……」

 

俺は力なく吹き飛ばされ、机にゴンッと頭をぶつける。

……、頭から失血しているのか、血がドクドクと流れ出る感覚がする。

にもかかわらず、みはりは俺を気遣うどころか、更に蹴りを入れてくる。

段々と視野が狭くなっていき、少しずつ意識が遠くなる。

そんな俺を見て、みはりは微笑みを浮かべている。

 

……、あの日以来、みはりは変わってしまった。

それまで、みはりが与える「罰」は俺を数発殴る程度の軽いものが殆どだった。

しかし、あの日、俺がみはりの首を絞め殺そうとした日から、みはりの罰は、重く残虐なものへと変わってしまった。

具体的には、今のように俺に致命傷を与え、意識が無くなるまで殴る、蹴ると言った仕打ちを与えることが多くなった。

 

―みはりは俺を恨んでいるんだろうか

だからこそ、俺を簡単には殺さず、苦しませ抜いてから殺そうと考えているんだろうか。

分からない。

俺には、天才の考えなど分かるはずも無い。

 

薄れる意識の中、絶望だけを抱え、静かに目を閉じた。

 

―俺が意識を取り戻すと既に昼の12時を過ぎていた

暗い部屋の中には誰もおらず、体にはみはりが俺を治療した跡が残っていた。

ふと、机の上に視線を移すと、メモが置かれている。

俺は未だに痛む体を無理矢理起こし、メモに目を通した。

 

「お兄ちゃんへ 大学の研究が山場を迎えているので今日は遅くなります。お金は置いておくので、夜ご飯はそれで済ませてください。 追記 もし、時間があれば買い出しに行って貰えると助かります みはり」

 

……、つまり今日一日、みはりは居ないってことか。

 

「自由だ~!!」

 

俺は嬉しさの余り、跳ね上がりそうになる。

 

「思う存分だらけるぞー」

 

そう言って寝転がり、目の前に置いてあるゲーム機を手にする。

 

「まずは、ゲームだ!!」

 

そして、ダラダラと過ごすこと30分

 

「どうも身が入らない」

 

みはりに蹴られた部分が痛むというのもあるが、それにしても集中力が続かない。

そのせいで、普段はしないミスばかりしている。

気分転換に漫画も読んで見たが、イマイチ憂鬱な気分から抜け出せない。

 

……、気分転換に外でも歩いてくるか。

 

「確かメモがここに……」

 

みはりのメモを再び手に取る。

すると、裏側に何かの料理に使うであろう数種類の具材と駅前にあるスーパーの名前が書かれていた。

 

「最近、みはりに家事を任せっきりだったからなぁ」

 

こんな事でみはりの態度が軟化するとは思えないが、何もしないよりはましだろう。

俺はアザが見えないよう、服を着込み、外に出た。

 

しかし、

 

「やっぱ無理ぃ、近所のコンビニならまだしも、人が多すぎる」

 

スーパーの前まで来て、怖じ気づいてしまう。

 

最近は外出する機会が増えたとはいえ、何時もみはりが一緒だった。

だけど、今、みはりは側に居ない。

それが心配で仕方なかった。

 

「し、しかしここで怖じ気づいてどうする」

 

自分に言い聞かせるようそう呟き、1歩を踏み出そうとした瞬間、

 

「あ、あのー」

「ひゃ、ひゃい」

 

誰かに後ろから声をかけられる。

振り向くとそこには、

 

「大丈夫?体調悪いの?」

 

俺と同じように厚着をした男の子が立っていた。

 

「なんか、ごめんね」

「ううん、役に立てて良かったよ」

 

少年が、俺の代わりにカートを引っ張りながら気さくに答えてくれる。

一回りも歳が違う子に買い物を助けられるというのは、中々心に来るものがあったが、今は緊急事態、そこには目を瞑ることにしよう。

 

「確かに、人混みは嫌だよね。それで何を買うの?」

「えっと……、メモが」

 

俺はみはりから渡されたメモを取り出す。

メモを見た少年はうんうんと頷き、

 

「なるほど。じゃあ、野菜から見ていこっか」

 

そう言って、近くにあった生鮮売り場に向かった。

 

「どれも同じに見える」

 

みはりのために、少しでも良い野菜を、と思ったが、良い悪いの区別が付かない。

 

「人参は色が濃くて、芯が小さいのが美味しいんだって」

 

少年が野菜の入った袋を2つ手に取り、見比べ始める。

 

「たっのもしー、普段料理とかするの?」

 

俺は、少年に尋ねた。

すると、少年は野菜の入っている袋を置き、

 

「うん、うちはお姉ちゃんと私しか料理作らないから……」

 

今にも泣きそうな顔でそう答えた。

 

……やばい、地雷を踏んだかも

いわゆる、家庭の事情ってやつだろうか

 

「あ、えっと、ごめんね……、変なこと聞いちゃって」

「ううん、こっちこそ」

 

少年は、野菜をカゴに入れ、無言で次の売り場へ向かう。

俺はその後ろを黙って追いかけて行った。

 

こうして、微妙な雰囲気の中、買い物は終わった。

 

……、気まずい。

俺は帰りたいという思いで一杯だった。

 

「そ、それじゃあ、私はここで……」

 

そう言いかけた時、少年の携帯が鳴った。

 

「あ、ああ……」

 

同時に、少年がワナワナと震え出す。

その姿は、まるで何かに怯えているようだった。

 

「ちょ、大丈夫?」

 

俺は咄嗟に駆け寄った。

 

「お、お姉ちゃんが、お姉ちゃんが……」

 

少年がボソボソと何か喋りながら、しゃがみ込んだ。

 

お姉ちゃん?

お姉ちゃんがどうかしたんだろうか?

そんな事を考えていると、

 

「お、いたいた。もみじ~~」

 

聞き覚えのある声が遠くから迫ってくる。

 

「か、かえで……ちゃん」

「あれ、まひろちゃん。こんにちは。元気だった」

 

かえでちゃんは笑顔で俺に話しかけてくる。

 

「あ、えっと……」

 

俺は返す言葉が見つからず、たじろいでしまう。

かえでちゃんは、そんな俺には見向きもせず、少年の方に目をやり、

 

「あれ、うちの妹と知り合いだったんだ。どこで仲良くなったの?」

 

間髪入れず、そんなことを聞いてくる。

 

……ん?

今、妹って……

 

「え、お、女の子??」

「あはは、ぱっとみ男の子だよねぇ」

 

そんなことを言って、かえでちゃんはもみじちゃんの帽子を取る。

……、確かによく見てみると、顔の輪郭が女の子っぽいような

それに、出てる所も出てる?ような気がする

俺がボーッともみじちゃんを見ていると、

 

「ふーーん」

 

とかえでちゃんが不敵な笑みを浮かべ頷く。

 

そして、

 

「まひろちゃん、ごめん、今日はこれで失礼するね。またね」

 

そう言って、もみじちゃんの腕を無理矢理引っ張り、駅の方へ消えていった。

 

……、何だったんだ?

それにもみじちゃんの、あの怯えよう、本当に大丈夫なんだろうか

まさか、今頃かえでちゃんに殴られてるんじゃ……

 

そう考えると、もみじちゃんの事が心配になってきた。

だけど、今更俺が追いかけていった所で、どうにもならない。

……、帰ろう。

 

俺は胸にモヤモヤした気持ちを抱えながら、帰宅した。

 

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