妻は欲しがっているようだが、二人の間に子供はいない。
だからなのか、離婚したいと男は思うようになった。
妻が病院に行き、今度は自分も一緒に行ってほしいと言われた事が男には不満だった。
まるで、不妊の原因は夫である自分にあるのではと言っているようではないか。

だが、別れても男は幸せにはなれなかった。

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男の後悔

 離婚したい、妻と別れたいと思うようになったのは男にとって最近のことではなかった。

 妻は子供を欲しがっていたが、仕事に忙しく余裕がなかったといえば、それまでだ。

 周りの人間が結婚して幸せだというなら、男の意識もかわっただろうが、全員がそうではない。

 子供の世話で大変だ、妻は自分の事は、ほったらかしだという声を聞くと結婚してよかったのかと疑問を抱いてしまうのだ。

 もう少し一人で自由に過ごしたいという気持ちが大きく膨れ上がってきたのだ。

 不満を抱く日々が続く中、気に入らないのは妻の発言だ。

 病院に行って欲しいと言われて男は何故という疑問を抱いたのは無理もない。

 子供ができない不妊の原因は夫である自分に原因があるのでは、その言葉は男を不快にさせるには十分だった。

 そのせいかもしれない、別れたい、離婚したいと思うようになったのだ。

 「離婚しよう」

 夫の自分に原因があるのではと言われては愛情も子作りする気持ちもなくなってしまう。

 その言葉に妻は驚いた。

 検査を受けてほしいという言葉が、それほど傷つけたのなら謝ると何度も頭を下げてくる。

 だが、妻の言葉に謝る姿を見ても男の心は動かなかった。

 プライドを傷つけられたといえば聞こえは良いが、妻に対する気持ちがなくなっていたのかもしれない。

 別れたいという言葉を繰り返すだけで再構築も不可能だと悟ったのか、妻である女はあっさりと離婚を受け入れた。

 

 一人になった男は自由を満喫できると嬉しくなった。

 別れた妻より、もっといい女と付き合いたいと思ったのだ。

 考えてみれば妻は何か特別な才能があるわけでもなく、美人でもないつまり、どこにでもいる平凡な主婦だったのだ。

 食事や掃除はよくしてくれたが、簡単にいうと、それだけだ。

 だから、簡単には決断しない、再婚するにしてもだ。

 慎重に行動しようと考えたのだ。

 離婚した事を知ったのか、社内の女性達がら声をかけられると、よほどの事がない限り、断る事はしなかった。

 だが、それは長くは続かなかった。 

 一ヶ月が過ぎ、二ヶ月になると女性達からの誘いがなくなったのだ。

 何故だと不思議に思ったが、理由が分からない。

 「ねえっ、美奈子、あんた、川野さんと付き合ってるの」

 「食事しただけよ」

 女性社員の会話が聞こえてきた。

 男が顔を上げると社員食堂のテーブルで女性達が自分の噂話をしているようだ。

 男は女性達に近づき、声をかけた。 「よかったら、今夜、仕事帰りに飲みに行かないか」

 女性グループの中で一人に声をかけるのはいかにもという感じだ。

 だから皆でと声をかけたのだ。

 「すみません、予定があるんです」

 「あたしはデートが」

 「忙しいんですよ」

 迷う様子もなく、次々と断られて男は不満を感じたが、それを顔には出さなかった。

 「そうか、残念だ、じゃあ、また今度でいいから」

 未練がましい態度は良くない、ここは軽く、さらりと、そう思っていたが、呼び止められた。

 「今度なんてないですよ、川野さん」

 美奈子という女性は、かなりの美人で一度デートに誘ったのだ。

 ところが、口あわせの時間ギリギリになって仕事が終わりそうにないのでとキャンセルされたのだ。

 意味が分からず男は不思議そうな顔で美奈子を見た。

 にっこりと笑いながら、知ってますよと美奈子は笑った。

 「川田さん、焦っているんですよね」

 焦る、言葉の意味がわからなかったが、聞いても答えてはくれないだろうと思い男は、その場を去った。

 

 社内の噂話は女性達にとっては仕事の合間に息抜き、楽しみの一つだ。

 少し前に離婚した川田という男の噂話なら女達は飛びついた。

 仕事はそこそこできるし、顔もなかなかだ、妻帯者ということはしっかりしているという美点だ。

 別れた原因は妻にある、子供ができないこと、不妊の原因は妻側にあるという川田の言葉を周りは鵜呑みにしていた。

 

 「えっ、嘘なの」

 「奥さんの不妊じゃなかったって、どういうこと」

 「奥さんは病院で調べて川田さんは、どうして」

 「もしかしたら、調べて、まずいと思ったとかね」

 病院で不妊の原因を調べる、それがまずいというのは男のプライドは別にしても結婚した夫婦なら。

 「川田さん、結婚前はモテていたでしょ」

 女性社員、美奈子の言葉に皆が驚いた顔をした。

 「もしかして不妊の原因以前に病気とか」

 「ねえっ、美奈子、どうして」

 そんなに確信のある言い方なのと友人が尋ねた。

 「奥さんだった人に会ったのよ」

 

 以前なら自分の誘いを断る女性などいなかった、それなのに、今では男たちを飲みに誘っても断られてしまう。

 そして気づいたのは皆が自分を見る目付きだ。

 まるで汚いものでも見るような、侮蔑の眼差しなのだ。

 疑問に思っている中、上司が声をかけてきたが、それは移動の話だった。

 何故、今頃、こんな時期はずれの時期にと思っていると噂を知らないのかと聞かれてしまった。

 「離婚した理由、不妊の原因は夫の君らしいじゃないか、それを別れた妻が悪いというなんて」

 不妊の原因は自分だと、そんな馬鹿なこと、しかも、上司が知っているというなら他の社員もだ。

 そんな噂を、一体、誰が。

 もしかして別れた妻かと思ったが、妻とは離婚して以来、一度も会っていない。

 

 「川田さん、移動するんですってお別れ会をしましょうか」

 久しぶりに自分から声をかけてきた美奈子の言葉に男は首を振った。

 「不妊の原因は奥さんにあるからって嘘をついて、同情を集めて女と付き合うなんて」

 最低ですねと女の言葉にかっとなり、男は手を出した。

 思いっきり、手加減せずに頬を叩いた、いや、殴りつけたといってもいいだろう。

 周りを確認すればよかったのだろう、完全に人がいなかったわけではない。

 殴った理由を黙っている男、だが、女はそうではない。

 

 別れた元、妻が再婚して子供を産んだことを、夫だった男は初めて知った。

 そして彼女の夫が、自分の会社の取引先であることもだ。

 移動だけですますつもりだったが、女性社員に暴力を振るうようでは。

 自主退社をという上司の言葉に、どうしてこんなことにと男は思った。 恨み事をいいたくても相手がいないのだ。

 美奈子と妻が知り合い以上の関係だったことを知ったのも退社しますと自分から頭を下げた後だ。

 




 久しぶりに書いた、ざまぁ系です。
 さらりと読んでください。

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