抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? Rewrite 作:楓 湊
妹___如月朱音は、僕の目の前で犯されて殺された。
既に両親は蒸発していて、父方の祖父母が定期的に面倒を見てくれているという形でほとんどは朱音と二人で生活を送っていた。
そろそろ僕が性人に足を踏み入れようとしていた頃、妹が外出先でヤクザに誘拐された。
夜になっても帰って来なかったため一人で探し回っていた時にその光景を目にしてしまった。
詳細はほんの少ししか覚えていない。
妹の生気を失った顔と、妹を犯していたヤクザの男の顔だけが今も頭の中にこびりついたかのように鮮明に残っている。
その男は眼帯を着けていて頬にキズがあったのを覚えている。
そして独りになってからは他人を避けるようになった。
それも、数年で終わってしまったのだが。
___放課後。
「ほらパイセン、あと一周!」
「はぁ…はぁ…おぇ…」
場所は水乃月学園のグラウンド。
「…はぁ…はぇ…終わった…」
悠真は走りきった所で力が抜けるように倒れる。
肩を揺らすほど疲弊しきった姿を上から見下ろすように、和泉海遊は近付いて見詰める。
「あの~、まだ三周しか走ってないんですけどー………。体力なさすぎでしょこのパイセン…」
心底呆れたというように彼女は嗤う。
「それは…っ。はぁ…まぁ、あまり運動してないし…」
悠真がドスケベを避け始めてもう数年も経っている。
最初は必死に、なるべく他人と接触しないような生活を送っていた。
学園での授業やイベントをサボったりしていたが回数を追うごとに教師や他の生徒が心配し始めるようになり、たまに登校するとそういう人たちが距離感を余計に詰めてくる。
それからは上手く断り、躱す方法を取るようになった。
そのせいで、運動をする機会が減ったのである。
「根っからの陰キャみたいですね~…。正直どんなヒトが入ってくるのか気になってたんですけどぉ、まさかこんなに使えなさそうなヒトとはねぇ…」
「返す言葉もないです…」
そもそも、SSには入隊試験なるものが存在する。
主に戦力となるかどうかを運動神経、またはそれに近い知能で測ることになる。
SSはただSHOの下部組織としての活動の他に奨学金の支給などの優遇措置が与えられている。
奨学金目当てでSS入隊を目指す生徒も決して少なくはなく、競争率も高い。
悠真は自分が通例通りSSの入隊試験に挑んでも合格することはなかっただろうと自覚している。
「でも、情報通りだから気にしてないです~。ささ、次の場所に行きましょーか」
「えっ、次なんて聞いてな___」
海遊はあっけらかんとした態度で悠真の腕を掴むとぐいぐいと『次の場所』へと引っ張っていった。
「はい、次は東雲パイセンの番でーす」
悠真が連れて来られたのは学園の空き教室。
机と椅子の位置が動かされていて、教卓の前に一組だけあってそれ以外はすべて教室の後方に置かれていた。
「その顔を見ると、やっぱり情報は正しかったようだな」
「そ~なんですよぉ、まったく体力がなくてたった三周で死にかけでもう…!」
海遊は吹き出しそうなのを堪えながら、チラチラと悠真の方を見てはクスクスと笑う。
「情報通りならいい。そもそも今日やることはテストではなくただの確認だ。朔間に任せているのは確認とはまた違ったものだが」
隣で笑い続ける海遊を余所に、東雲京璃は淡々と告げる。
「それで、ここではどんな確認を…?」
「学力は成績があるからいい。主に確認したいのは条例に対する理解だ」
「ドスケベ条例の…」
「五分程度で終わるものだ。座って取り組んでもらう」
悠真は言われるがまま教卓の正面に配置された椅子に座る。
「じゃあ私はこれで帰りますねーお疲れさまでしたー」
ひらひらと手を振りながら海遊は颯爽と教室から去っていった。
悠真にはそれがまるで京璃から逃げるように見えた。
「気を張らなくてもいい。知らない所は無理に答えなくても構わないから楽に答えてくれ」
「はい…」
京璃に渡された一枚のプリントを見詰める。
主に問われているものは条例に対するSSの行動例のようなもので、確かに
ただ、悠真は普通の生徒ではない。
そもそもドスケベ条例に常日頃から違反している生徒なのだ。
故に問われている問題は本来悠真に対して行われるであろう行動について答えるものなのだ。
_____数分後。
「………終わりました」
悠真は書き終えたプリントを教卓に置いた。
「ん…」
京璃は置かれたプリントを上から下へと流れるように見て、直ぐに裏返した。
「………流石だな」
口端に笑みを浮かべながら、悠真に視線を向ける。
「えっと…それはどういう意味で…?」
意図が読めないからか、悠真は申し訳なさそうに尋ねた。
「それはもちろん、良い意味で、だ。SSが数年捕まえられなかったんだ、条例の抜け道くらいは理解しているだろうとは思っていたがすべて正解だとはな」
「いや…それは選択問題だけだったからで…」
「謙遜しなくていい。どんな形式だろうが結果は実力を示す」
京璃はきっぱりと言い切るタイプだと悠真は思っている。
だからこそ彼に褒められると何処となく嬉しくなる。
「……ありがとうございます」
「次は戦場跡地で朔間が待っている。俺はここを元に戻してから行くから先に行っているといい」
「あ、はい…わかりました」
片付けを手伝った方が良いのだろうか、と悠真は考えるが京璃は既に次の行動に移っている。
邪魔するわけにはいかない、と言われた通りに先に向かうことに決め、教室から出ようとした。
「あ、ちょっと待て。そのまま出歩くと襲われかねない。これを腕に巻いとけ」
そう言って京璃は赤い腕章を悠真に投げた。
「っ……これは?」
「俺たちの立場を証明するものだ。それがあればSSもSHOも無視してくれる」
「無視ってそんな都合がいいことが___」
「ある。俺たちはそういう部隊なんだ」
京璃の堂々とした姿に悠真は黙って腕章を信じるしかなかった。
___そして戦場跡地へ。
実際、京璃の言うことは間違ってはいなかった。
言っていた通りSSやSHOは誰も話しかけてこなかった。
但し一般人は関係なく誘ってきたりするもので、結局悠真は普段通り逃げるように早足で目的地まで向かったのだった。
「はぁ…疲れた…」
戦場跡地に着いた悠真は息を切らしていた。
幾ら時間が空いていてたとはいえ、グラウンドで走った後だと疲労が早くやってくる。
「遅かったな。」
階段を上り、屋上に出てくると待っているであろう朔間巴と既に追いついていた京璃が居た。
「まぁ…普通に声を掛けられたりしたので…」
「声…掛けられたんだ…かわいそうに」
悠真にはそう言う巴の表情は明るいように見えた。
「それで…ここでは何を測るんです…?」
「ここで測るのは…武器適性…体力は一般以下、知識の要求レベルは十分。あとは武器の扱いで使えるかそうじゃないかがわかるから」
巴は腰に提げているホルダーからハンドガンを抜いて悠真に見せる。
「取り敢えず最初に確認するのはコレ」
そのまま悠真との距離を詰め、片手を持って確りとハンドガンを置いた。
「えっと…」
それは確かに、玩具ではない重さだった。
直ぐに巴はハンドガンを回収してホルスターに戻した。
「的とか、他の武器は別に用意してある。ついてきて」
「は、はい…」
「俺はこの辺りで帰るとしよう。後は頼んだ」
悠真たちが移動するタイミングに合わせて京璃は帰るようだった。
「お、お疲れさまでした…!」
悠真は思わず挨拶の声を上げる。
京璃は背を向けたまま手を振って去って行った。
「じゃあ行こっか」
「はい」
京璃の後を追う形で二人は階段を下りた。
建物から出て、山道から離れて荒れた場所を進む。
少し歩いて木々を抜けた先に、簡易的に作られた射撃場があった。
長机に様々な種類の銃器が並んで置かれており、その先数メートル先の木々に的のようなものが括り付けられていた。
「ここ。今日の為に作ったから…終わったら片付け手伝って欲しい」
「これを、一人で…?」
「うん。海遊ちゃんと京璃先輩が悠真くんの相手をしてくれてる間に何往復かした」
「そこまでしてこんなところで確認することに意味が…?」
悠真は首を傾げながら巴に尋ねる。
設備は学園に揃っているうえに的や銃器を持ち出すのは許可などを要するものだろう。
そこまで回りくどいことをしてでも他のSSを避けて実力を確かめる必要があるのだろうと悠真は考えた。
「…単純で簡単な話。実力を秘密にすることが意味。実力が知られてると私たちがSSの陰に隠れてる意味がない」
「顔は知られてても、実力はわからないから脅威になり得るということ…?」
「そう」
巴は首肯する。
「…どれからでもいいから、試してみて。カメラ回すよ」
「は、はい」
理由どうこうよりも、巴は本題を進めたいらしい。
悠真は長机の右端にあるハンドガンを手に取った。
いきなりスナイパーライフルやアサルトライフルを触るのは危ないと悠真自身は直感的に避けていた。
「………っ」
両手でグリップを握り、腕を引き絞って的を凝視する。
そして、引き金を引く。
確認しなかったが、最初から弾は入っていたようで狙った方向に銃弾が飛んでいく。
反動で腕が上に跳ねるように揺れ、直ぐに戻ってくる。
まるでテレビや映画で見たような、子供には扱い切れないものかと思いきや、そこまで反動は強くなかった。
悠真は自分が放った銃弾のことよりも撃った感覚しか頭になかった。
「………全部、撃って」
「え、ぜん、ぶ…?」
巴からの指示を反芻する間もなく、意識は次の銃撃へと向けられる。
二発目以降は、一発目ほど感覚に刻まれることはなかった。
気付けば、残りの数発を的に叩き込んでいた。
的に当たっているかどうかはともかく。
「………終わりました、けど…」
机にハンドガンを置いて、巴の方を振り向く。
「…予想以上」
「予想以上…?良い意味ですか、悪い意味ですか」
「良い方。ハンドガン、向いてるんだと思う」
「そうなんですか…なんでそう思うのかわかりませんけど」
「簡単。的を見て」
言われるがまま、悠真は正面の木に固定されている的に目を向ける。
「真ん中に、当たってる…」
的の中心には一つの穴が開いていた。
然し、そこ以外には一つも銃弾が当たった様子はないようだった。
「一発でも、中心に当てられる人は多くない。センスがあると思う」
巴からの賞賛の言葉は変わらず無感情な声色だったが、悠真は素直に嬉しかった。
「ありがとうございます…」
「じゃあ…次、やって」
「はい…!」
こうして悠真は順にそれぞれの武器を試し撃ちした。
_____帰宅後。
結局、すべての種類の銃器を試し撃ちした後に巴は悠真にはハンドガンが一番合っていると告げた。
その言葉の通り、ハンドガン以外の銃ではまともに的に当たらなかったからだ。
だったらハンドガンだって偶然一発が中心を貫いただけでは、と悠真は口答えしたが巴はハンドガンを極めることを強く言っていた。
「そんなに良かったのかな…」
悠真にとってはどの銃も変わらないように感じていた。
どれも初めて扱うモノで、当たったのは偶然で狙って当てた感覚なんてものはなかった。
一体巴があの一発に何を見出したのはわからないが、最初から練習するならハンドガンは妥当だろうと悠真は自分の中で理由をこじつけた。
「明日から頑張ろ…」
素直に訓練を積んで、せめて足を引っ張らないようになろうと決意する。
実力を付けることはSSに貢献するだけではなく自衛の為にもなる。
そんな、高い目標を見据えながら悠真は深い眠りに落ちた。
__________
巴は帰宅後、直ぐに京璃に電話を掛けた。
「もしもし…。東雲先輩。如月くんの武器はハンドガンに決まりました」
『そうか。判断理由は?』
「…試し撃ちした全ての銃弾を、的の中心に命中させたからです」
淡々とした言葉を返した京璃に、巴はスマホを持つ手を震わせながら答えた。
彼女の目線の先には自身の机、その上の回収した的があった。
悠真が唯一弾丸を命中させた的。
「最初の肉眼での目視だと一発だけが当たったものだと判断していました。然し、録画を見たところ…」
『全て、寸分違えることなく?』
「多少のズレはありましたが、中心だけは逃していませんでした」
『そうか…』
通話先の京璃の声も震えているように聞こえた。
それが、ポジティブな意味なのかネガティブな意味なのかは巴にはわからない。
だが、自分だけではなく京璃も驚くほどのことなのだとわかり、どこか安堵していた。
『…ハンドガンの扱いとなると、矢張り基礎的な訓練が何より大事だろうな』
「はい。体力を付けてもらう方が先かと」
『同感だ。訓練の方は
「はい、ありがとうございます」
そうして、通話が終わった。
__________
今後、盛大なルート分岐を予定しています