時間をかなり戻して、スライムちゃんのお別れ会後のお話です。
【追記】に、日刊ランキング2位…!?きょ、恐縮です…皆様ありがとうございます…!!
【追々記】に…、日刊ランキング一位ぃいい!?えっ待って怖い…もしや今日自分死ぬんすか……?
──そう、それは。
……僕、
──らいちゃん……
「……う、う……うう……!」
──僕は、自宅の机に座って、泣いていた。
なぜって、そりゃあ。
僕を好きで居てくれる人と、離れ離れになってしまったんだから。
「らいちゃん、らいちゃん……!」
──……悲しくないわけが、なかった。
彼女のように、この期に及んでも未だ。
──『恋』を、『愛』を抱くことは。
今の僕にはできていない。……それでも。
「らいちゃんの、ウソつき……。僕と一緒に強くなって、ヒーローになるって……約束したのに……!」
ぽろぽろ、ぽろぽろと。涙の粒が床に落ちる。
唇はわなわなと震えて。目頭がとにかく熱い。
──そうした悲しみに暮れて、拳を握りしめると。
「う、うう……! ふ、ぐ、ぅっ……!」
更に大粒の涙が、目から溢れ落ちてきて……。
「────ぴぃ!」
「…………え?」
その時、机の上、パソコンモニターの裏側から。
するりと、ぬるりと。……現れた、一匹の、小さな。
「すらい、む……?」
「ぴーぃ! ぴぃ!」
そこには。 一通の手紙を持った、小さなスライムがいた。
☆★☆★☆★
──その後、数ヶ月が経ち。
「ぴぃ、ぴっ……ぴ……ぴ!」
「美味しいかい?」
「ぴぃ! ぴいぴーぃ!」
朝ご飯のベーコンをあげたら、「ぷくぷく……」と体の内側に小さな泡を上げてそれを消化する。
テーブルの上に乗った一匹の小さなスライム。
名前は、「すらっぴ」、らしい。
らいむちゃんが『すらっぴ』と名付けた、と。
手紙には書いてあった(彼女が生み出したスライムで、ぴぃぴぃ鳴くからすらっぴ、らしい…独特なネーミングセンスだなぁ…と僕は思った)ので、僕も。
この子のことをすらっぴ、と呼ぶことにしたんだ。
──そう、小さなスライムの、すらっぴ。
「す、スラっぴちゃん……? え、ええと……、ビスケット、食べる……かしら?」
「ぴいぴい!ぴーぃ!」
今は、お母さんともすっかり仲良しで。
お菓子のビスケットをお母さんの手からもぐもぐ食べてる。
──最初、この子をお母さんに見せた時は、凄くびっくりして怖がってたけど。
本当によかった、仲良くなってくれて……。
すらっぴを部屋で見つけた後に。僕は、この子をすぐにお母さんに見せたんだ。
「お母さん、お母さん!この子飼いたい!」
でも、お母さんは……とても怖かったみたい。
僕が連れてきたすらっぴを見るなり、お母さんは。
壁までびっくりして後ずさりしていたんだ。
「え、ええ!? い、
「お、お母さん……! 大丈夫だよ、噛まないし……! ほら、こんなに大人しくって……!
「で、でででも! い、イズク! お母さん、す、少し! 少しだけど怖くって──」
顔を真っ青にして、震えるお母さん……
でも、僕は! この子は恐くないって知ってるんだ……!
……だって、この子は、らいちゃんが……!
……! そ、そうだ、手紙!
「そ、そう! この子はらいちゃんの個性でできたスライムなんだ!
──ほ、ほらこれ! 手紙! お母さん、読んで!」
僕は、手紙を差し出した!
「……え、え? 手紙……? わかったわ、読んでみるわね…。」
手紙を受け取り、読むお母さん。
「……! ……
そして、読み終えて。
「……そ、そう、そうなのね…。
わ、わかったわ……。
え、ええと……よ、よろしくね、スライムちゃん……?
……い、イズクと、仲良くしてあげて、ね……?」
「ぴっ!」
おそるおそる手を伸ばした、お母さん。
……すらっぴが、その手に……しゅぱっ! と手を上げて、「わかった!」って言うみたいにタッチしてて。
びくびくしてるお母さんと、喜ぶすらっぴの対象的な顔が……、うん。なんだかとってもうれしかった。
……そう。
そして、その日から。
僕のおうちに新しい家族が増えたんだ。
「──さ、行こっかスラっぴ。……お母さーん! ランニング行って来るねー!」
「──ぴい!」
「はーい! 車に気をつけるのよー!」
「わかったー!」
そう、僕はさいきんランニングを始めた。
あの時、らいちゃんと約束した……「ヒーローになる」って約束。それに少しでも近づきたかったからね。
本当は筋トレとかして、もっとオールマイトみたいなムキムキの体になりたかったけど……
「『小さい内からの筋トレはあまり良くない』って、筋トレ系ヒーローの「
──うん! まずはスタミナ、だよね! スラっぴ!」
「ぴいぴーい!」
よーし、今日は快晴、絶好のランニング日和!
──うん、少し遠くまで、足を伸ばしてみようかな!
☆★☆★☆★
「け、ケロっ……暑い、暑いわ……」
──今日は家族でドライブ。お母さんと、弟の二人と。
たまの休みの日に遠出して、最近オープンした自然公園に遊びに来たのだけれど。
「お母さん、どこに行ったのかしら……ケロケロ」
道端、湖のほとりのカエルさんに気を取られて。暫く眺めて居たら。
なんと、はぐれてしまったの。とても……困ったわ。
「それに、この暑さ……カエルにはちょっとキツいわね……」
……そう、自然公園だからかしらね。木陰で休んではいるけれど……やけに春の陽射しが強いような気がするわ……。
持ってきたスポーツドリンクももうすぐなくなってしまいそうだし……。
「ケロ……万事休す、かしら……」
いざとなれば、誰か大人を頼って……
「──ねぇ、キミ……大丈夫?」
「──……ケロ?」
──……声を掛けられて、視線を上げると。
そこにいたのは。
くせっ毛が特徴的な、同い年の──男の子だったのよ。
★☆★☆★☆
「へぇ……ランニング……いいわね。気持ち良さそう」
「うん、そうなんだよ! 今日みたいな日はとっても風が気持ち良くってさ……!」
私に声を掛けてくれた彼は、
ちょっと日に焼けた、
今日はランニングでこの自然公園に来ていたそうよ。
「本当にありがとう、いずくちゃん。助かったわ」
「ううん! 気にしないで!」
彼のスポーツドリンクを貰って、ひと息付いた私は。
園内の迷子センターに辿り着いて、そこで雑談していたのよ。
「今日は日差しが強いもんね……大丈夫? 頭とか痛くない?」
「いえ、大丈夫よ……。あなたも、ありがとうね。本当に助かったわ」
「ぴいぴい!」
この子は、スライムの「スラっぴ」ちゃん。
いずくくんが昔、友達の女の子……「スライム」の個性を持った子から譲り受けたそうよ。
私を見つけたのも、彼の頭の上に乗っていたこの子らしいわ。
一言断ってスラっぴちゃんを触らせてもらったけれど……とてもひんやりとして、柔らかくぷにぷにしていたわね。
でも、そのスライムの個性を持った子とは、今は引っ越しちゃって離れ離れになってしまったけれど。
いずくちゃんとその子は…お互いに、将来ヒーローになるって約束をしていて。
いずくちゃんはその為に、今のうちからトレーニングを頑張っているらしいわ。
ランニングも、その一環なんですって。
──……うん。 それって、とてもとても素敵な約束だわ。……ケロケロ。
……それから、私達は色々なお話をしたわ。
好きな食べ物、好きな場所、好きなテレビの番組。
あと、好きなヒーローの話。
……彼、いずくちゃんはオールマイトのことが特に好きみたい。
「でね、オールマイトが!
「へぇ、そうなのね」
だって、オールマイトの事を話す時に。目がとってもキラキラしてて、とっても素敵で……
「……あら?」
……何かしら、少しドキドキするわね。ほっぺたも少し熱いような……?
「……? どうしたの、つゆちゃん? ほっぺた赤いよ?」
「い、いえ……なんでもないわ……ケロっ。たぶん気のせい……
──こつんっ
──……ケロっっ!?!?」
「うーん、熱は……ないか。大丈夫? どこか痛いところとかないよね?」
「え、ええと……っ!?」
え、あ、あああ──!? ち、近い……近いわ、いずくちゃん!
ど、どうしたのかしら……! わたし、私……!
なんだかすっごくドキドキして、どんどんほっぺたが熱くなって……っ!
「……つゆちゃん?」
──……っ、くちびるが、近いわ。
いずくくんの少し暑さで少しカサついたくちびると、ぱっちりとした目が。
私の顔のすぐ側に……数センチの距離にあって。
それで──それで──……
「──……
バタン!
「……っ! お母さん……!」
「
「……ケロっ、平気よ、お母さん。この子に助けてもらったの」
「そ、そうなの? ありがとうね、ボク……?」
「……あ、ごめんなさい」
「いえ、ら、
──咄嗟に突き飛ばしちゃって。ソファーの上にグテっと寝転んだ彼を、お母さんは不思議そうに見ていたわ。
★☆★☆★☆
……それから。
改めてお礼を言って、お母さんが代わりのスポーツドリンクを買って、彼に渡していたわ。
彼……いずくくんの持っていたペットボトルのスポーツドリンクは。
封をまだ切っていなかったものを、私が飲んだから。
私がそのまま、彼から貰う事になったの。
そして、帰りの車の中で。
「ケロ……ケロケロ……」
私は、揺れる車の中で、そのスポーツドリンクの中身、チャプチャプと揺れるドリンクをなんの気なしに眺めて。
「……」
なんだか不思議な、胸の内に残る暖かさに。
ふんわりとした心地よさを感じていたの。
「……ケロ……」
そして、彼との再会は。
「……あら? ……
「……え、え……? ……つ、
思わぬ所、雄英高校に進学した先で叶うのだけれども。
──うん。……それは、まだ先のお話よね。……ケロケロ。
[川澄来夢がお別れの手紙を書いた際の幕間]
「おかーさんおかーさん!いずくくんにお別れのお手紙書きたい!手伝って!」
「……! ……うん、わかったわ! じゃ、来夢が書き終えたら持ってきてね? 私もイズクくんのお母さんにお手紙書きたいから…ね?」
「おーけーわかったー!」タッタッタ…!
「………はぁ……。」
「……ごめんね、来夢……親の都合に突き合わせちゃって……」
「ね、練子さん…私も何か手伝──」
「──あ゛?テメェコラなんか言ったか調太郎ォ!?」
「ひ、ヒィッ!?練子さんがブチ切れて昔のヤンキーモードに!?」
「てんめぇよぉ……なんでよりにもよってこのタイミングなんだ!?ァァん!?アタシらのかわいい一人娘……来夢の初恋だぞ!おいテメェわかってんのかゴルァ!?」
「そ、そんなぁ…!わ、わた…ぼ、ぼ、僕に言われてもぉ……!」
「〜♪」(手紙かきかき)
「……よしできた!じゃ、すらっぴ!
あとでこれをイズクくんに届けてね!で、そのままイズクくんのおうちに居候してて!無理だったら戻ってきてもいいよ!よろしくね!」
「ぴぃっ!」
[…幕間終了]
…以下、現在の原作との違い一覧
・緑谷出久の意識改革
→オールマイトとの遭遇、及び特訓開始時に、原作より多少マシかな…?程度に鍛え上げた状態から育成を始めることが可能。
緑谷出久の趣味に「ランニング」が追加される。
・すらっぴ(スライム分身)緑谷家残留
→緑谷家のメンタルケアが可能。緑谷ママンのストレス太りナシ状態での原作スタート。
なお、遠方のためスライム(主人格)の介入は不可能。
……おや? すらっぴ の ようすが ……?
・幼少期での蛙吹梅雨との邂逅
→オタクくん特有の思春期における女子への照れがない為、お互いを名前で呼ぶことに抵抗が無くなった。
(…なお、緑谷出久のみ成長後の思春期における羞恥心から、蛙吹梅雨を敬称で呼ぶ。)
「……え?イズクくんが梅雨ちゃんと遭遇……?……マジで?」(by後から知った成長後ver.スライム)
……次回から原作突入です。