対象:プリンツ・オイゲン
重桜に連れられて数日、監禁紛いなことはされておらず、比較的自由な行動が許されていた。
俺が元々重桜出身で小さい頃からKAN-SENの皆とはほぼ顔見知りであり、赤城姉さんと加賀姉さんの弟だからか行動に規制は無かった。
今でもこうして、適当な個室のある店に入ってはお昼ご飯を食べている。
勿論監視の目はあった。だけどそれが重桜のKAN-SENでは無く鉄血のKAN-SEN、プリンツ・オイゲンだった。
「ん〜重桜のお酒ってほんっっとうに美味しいわ〜♡そーれもう1杯♡」
「……オイゲンって言ってたっけ。飲みすぎだよ」
隣にいる銀髪ツインテールの彼女からお酒の入った瓶を取り上げる。
彼女はこれまで多くのお酒を飲んでいて、さっきの便で瓶15本目だ。そのせいで顔が真っ赤にさせて呂律も回っておらず、今も尚畳の床の上で寝転がってはお酒の臭いを撒き散らしていた。
「つれないわね〜指揮官」
「一応、俺の事を監視してるんでしょ? そんなので大丈夫なの?」
「大丈夫よ。だって……」
オイゲンがいきなり体を起き上がらせ、俺の腕を掴んで押し倒してきた。
振りほどけない程力強く締められ、オイゲンの顔が嫌でも目に移り、扇情的に舌なめずりをしていた。
「こうやって、アナタを無理矢理抑えるのなんて簡単だもの」
今すぐここで始末出来るとでも言うかのように、オイゲンは左の人差し指を使って首を撫で、そのまま首を掴むようにして添えた。
今この場でオイゲンが力を込めたら間違いなく窒息死してしまう。死を目の前にして血の気が引いてしまい、背筋に冷や汗が流れる。
「大丈夫よ。危害は加えないし、むしろ加えさせない。だって赤城達が怖いもの。大事な大事な弟、だものねぇ? ……で、も」
するとオイゲンは耳元に口を近づけ、あと少しで触れそうな程の距離で息をふっと吹いた。
耳から吐息が頭の中に入り、体が反射的にびくついてしまい、形容しがたい感覚が襲いかかる。
その反応にオイゲンは妖しく口を三日月上にして笑い、さらに耳元で囁き続けた。
「アナタの事は……美味しく食べちゃうかもね」
オイゲンはそう言って首から手を離し、力を込めていた腕も解いて俺から離れ、俺が取り上げた酒瓶をコップに注いで飲み続けた。
「アナタも飲む?」
「……まだ未成年ですから」
「あら、残念」
分からない。この人の事が本当に分からなかった。
分かっていると言えば、俺の事を煽ったり弄ったりする事が楽しいのか、ずっとからかってくる事。それに重度の酒好きだけど、二日酔いは苦手。
そして……
「心から笑ってない」
するとオイゲンはお酒の酔いが抜けた様に一瞬冷めた顔を向け、またいつも浮かべている笑みを向けながら、顔を近づけさせる。
「へぇ〜? どうしてそう思ったの?」
「……同じ様な笑顔を見た事あるから」
正しく自分の事だった。欺く為に笑って、周囲に溶け込むように笑った張り付いた笑顔を何度も見てきた。
鏡に向かって、自然であるように、そうじゃなければ生けなかったんだ。
「だから分かるんだ。その笑顔は……寂しさを紛らわせている為のものだって」
「なら、貴方はどうやって私を笑わせてくれるの?」
身を乗り出す様に近づき、顔と顔との距離が近づく。
オイゲンの酒の混じった吐息が鼻をつきながらも、オイゲンはまた張り付いた笑顔を見て俺を見下ろした。
「そうだなぁ……お酒が好きだから、それに合うものをプレゼントするとか?」
「物で私を釣る気? それじゃあ足りないかも」
「じゃ、じゃあ重桜の街を見て回るとか! こっちの食べ物が好きなら、風景とかも好きになってくれるはず!」
「風景だけじゃあねぇ……」
「えぇ? うーん……」
いつの間にか俺はオイゲンが心から笑ってくれるにはどうすれば良いのかで頭を悩ませていた。
そんな姿をオイゲンはじっと見つめており、嘲笑っているのとは少し違う小さな笑みを零す。
「そんなに必死になって考えるなんて……」
「指揮官なんだから当たり前だよ」
「……っ」
オイゲンは突然密着していた状態から離れていった。
「貴方、指揮官だから私の事でそんなに真剣に考えているの?」
「というより……俺がそうしたいから」
「どうして?」
「どうしてって……悲しい笑顔より、本心で笑って欲しいから」
「ふぅん……じゃあ、貴方は私が笑う為だったら何でもやるの?」
「そうするつもり……かな」
流石にお金に関連する物は無理だと付け加えると、オイゲンは気にしないでと言うと、顔をまた近づけさせた。
「じゃあ、今からここで襲っちゃっても受け入れてくれるってわけね」
オイゲンの吐息が、耳元にかかる。甘く湿った気配。
「襲って……」
「ふふ……いいじゃない、今夜くらい。今宵はお酒によって狂わされた一夜の過ちなんだから」
気づけば、彼女の指が頬に添えられ、視線を逃がすこともできず、心音が鼓膜を叩く。
「私はね、欲しいものは自分から手に入れる主義なの。逃げたければ……今のうちよ?」
逃げられるわけがなかった。彼女の瞳に映る自分が、まるで獲物のように捉えられていたから。
そして──唇が触れる寸前、その笑みはまるで獣のように艶やかに歪んだ。
酒の味が混ざったキスは舌を絡ませ続けられ、話した時には唾液の橋が舌と舌を繋ぎ合わせ、変な味で思わず咳き込んでしまった。
「どう? キスの味は」
「オイゲンっ……! いきなり何を……」
「感想を聞いてるのに、質問するなんて野暮ね」
するとオイゲンは服の筋を撫でながら、ズボンの方に手を伸ばす。
ビクンと震わせる物がオイゲンは見つけ、直ぐにズボンのチャックを下ろし、硬く反り勃った物を見て笑った。
「キスだけでこんなにしちゃうなんて……ふふ、大っきい♡」
オイゲンはソレに唇が触れるほどの柔らかいキスをすると、手袋越しで上下に擦った。
下半身から全身にかけて快感が走り、思わず体を震わせてしまう。
「上下にシコシコする度にビクビクさせて……可愛い♡もーっと早くしちゃいましょうね〜♡」
快感に悶える顔を見ながら、オイゲンの手の動きが早くなり、腰の奥から熱いものが込み上げてくる。
ただ上下に擦るのでは無く、指で輪っかを作って先っぽを中心に擦ったり、更には手のひらで亀頭を責めたり、オイゲンは俺を弄んでくる。
「何か……でるっ」
瞬間、込み上げてくる快感を吐き出すように射精してしまい、オイゲンの顔やグローブを白く汚してしまい、白い橋がオイゲンの目や口まで伸び、オイゲンはすくい取って舐め始める。
「んっ……♡すごい量。次は私を楽しませて頂戴」
するとオイゲンは服を脱ぎ始め、黒い下着さえも脱ぎ捨てると、柔らかな質感の肌が顕になり、自分の秘部を見せつけるかのように机の上に乗り、股を開いた。
「指揮官見える? 私のあそこ……♡」
指で秘部の口を開くと、くぱぁという音と共に鮮やかな色の肉壺が目に入り、思わず手で両手を隠す。
「こーら、目を逸らさないで」
オイゲンが裸のまま腕を組みふし、彼女が上から押さえつけるように力を入れると、呆気なく膝を曲げてしまい、そのままオイゲンの秘部に顔を疼くませる。
鼻筋が割れ目を沿い、このまま行けば割れ目の中に鼻先が入ってしまう。
「舐めて」
オイゲンが見下ろしながら笑い、まるで玩具で遊ぶ子供のようだ。悪いがある分タチが悪いけど、オイゲンの力関係と立場上、従うしか無かった。
その事を理解しているから、勝ち誇った笑みを浮かべたオイゲンに屈服し、恐る恐る舌を伸ばし、割れ目の中へと舌を入れる。
「んッ.///あっ♡」
舌を入れると、オイゲンが腰をビクつかせて甘い声をあげた。
皮膚の汗ばんだ味と、形容しがたい初めて触れる味。
不思議と嫌悪感は無く、むしろオイゲンの初めて見せる顔と声に、喜ばせている嬉しさが湧きあがる。
「止めないで。もっと……」
オイゲンの言う通りに、不器用ながらも下の中で膣内を掻き回し、中が唾液と愛液で濡れ始める。
するとオイゲンが腕から手を離し、自由になった腕が解放されて自由に体が動く。
けど逃げようとはせず、頭がぼうっとしながらオイゲンがこれからする事を受け入れる。
「あなたは何も考えず座ったままで良いから」
オイゲンは硬く反り立った物を自分の秘部に押し込み、そのままゆっくりと腰を下ろす。
オイゲンの柔らかい腟内をぐちゅぐちゅと音を立てながらかき分け、締め付けながらも包み込まれる感覚が襲う。
「んん♡はっ……あんぅ」
オイゲンが声を殺しながら俺の全部を咥え込むと、瞬く間に腰を上下に動かす。
パンパンと肌と肉がぶつかり合い、上下に擦られる度に頭の中に電流が走る。
今、自分はどんな情けない顔をしているのだろうか。それを見てオイゲンは勝ち誇る顔をし、もう一度俺とキスをする。
互いに性器を舐めた口だけど、嫌な気はしない。
気にも止めていない事と、それが考えられないぐらい頭がぼうっとして、快感にしか感じられなかった。
「ははっ♡良いわ! 指揮官、もっと! もっとだ!」
興奮で気持ちが昂り、オイゲンは高揚した笑みを向ける。
違う。この笑顔じゃない。オイゲンにさせたい笑顔はこれじゃない。
見た目は幸せそうでも、嬉しそうに笑い声をあげても。
「目が……悲しっ……そう」
酸素を求めながら途切れ途切れ放った言葉は、オイゲンにとっては何よりも鮮明に聞こえたのか、オイゲンは一瞬真顔になり、また笑みを浮かばせる。
「なら、笑わせてみせて」
互いに腰を打ち付けながら、淫らに、激しくオイゲンとキスを交わす。
乱暴で、全部がグチャグチャになるキスはお酒の味が染みついていて、この味を二度と忘れることは無い。
「っ……もう」
「んっ、まだ我慢して……! こっちもイきそうだからっ……♡」
2度目の射精が近づく中、オイゲンは動きを止め、我慢するようによ膣内をきつく締め、それを体全体で分からせるように、腕を背中まで回し、体を密着させる。
「
酒気を帯びた甘い囁きが耳と頭を酔わせ、互いの裂け目が分からなる程強く抱き締める。
快感を刻みつけるかのように。
キス越しの酒の味を忘れさせないように。
……寂しさを紛らわせる為に。
オイゲンの悲しい目を見て、不意にオイゲンの事を抱きしめ返すと、オイゲンは目を震わせる。
互いの言葉は交わさず、ただ獣のように快感を貪るだけの時間を共有し、互いの絶頂の時が感じるのはそう長く無かった。
「っ……もぅ、ダメ」
「良いわ。一番奥で吐き出して♡」
オイゲンの何度目かの腰がぶつかり合った瞬間、白い精液がオイゲンの子宮を満たしていき、オイゲンも絶頂で体を強ばらせながら、体を締め付けるほど強く抱いた。
「あっ……♡はぁ……はぁ♡」
オイゲンの済ました顔はもう無く、あるのは満足そうに息を切らし、蕩けた表情だった。
頬は紅くさせ、快楽の後味を楽しむように、唇を重ねるだけの軽いキスをせがむ。
2回の射精で息を切らしてしまい、そのキスを受け入れると、オイゲンは全体重を乗せ、俺は背中から柔らかい畳の上へと抑え込まれる。
「ふふ、良かったわ指揮官。良く頑張ったわね♡」
まるで赤子のように頭を撫で、大きな胸の中に俺の顔を疼くませる。
柔らかい胸の中は汗の匂いが充満し、脳が酔うようにくらりと揺れる様な匂いだった。
オイゲンの心臓の鼓動が聞こえ、ふとその鼓動に耳を傾けた。
「……私の鼓動を聞いて楽しい?」
「うん。生きてるなって、実感する」
ドクンドクンと、生きている証を聞き続けると、オイゲンは顔を曇らせる。
「そう、生きている。仲間が沈む様を見届けた、幸運という皮肉を背負った船の鼓動よ」
この時、初めて着飾らない言葉で話してくれた。
本音を話してくれて嬉しかったと同時に、オイゲンが見せるあの悲しい目がどこから来るものなのかも分かり、俺はオイゲンの胸から顔を出し、オイゲンの赤い目を見つめる。
「……大丈夫、重桜のKAN-SENや鉄血のKAN-SENはきっと、オイゲンを置いていかないから。それと……俺も、置いていかない。だって、指揮官なんだから」
自分だけが生き残ってしまったことへの皮肉を込め、自ら孤独と決めつけた方が楽だと、オイゲンは思っている。
酒で紛らわせて、からかう事で距離を適切に置く。
それが彼女の処世術だ。だけど俺は指揮官だ。
KAN-SENも、人間も、故郷も全部守りたい。守らないといけない。
「オイゲンを孤独させないように、俺、頑張るよ……だから、もう自分を孤独にさせないでくれ」
この言葉がどこまで響くかは分からない。けれども、オイゲンはその言葉を聞くと、オイゲンは顔を耳元まで近づかせる。
「……じゃあ、絶対に離さないで」
一糸まとわぬ姿でオイゲンは目を瞑り、眠ってしまった。
オイゲンに抱かれているせいで思うように体が動かないながらも、体制を変えて彼女をおぶりながら、部屋の布団を押し入れから出し、オイゲンを起こさないようにゆっくりと横になる。
「大丈夫、離れないから」
眠っているオイゲンの手を握ると、オイゲンも握り返し、互いに体を寄せ合いながら、俺達はこの夜を過ごした。
翌朝、オイゲンは何食わぬ顔でいつも通りの態度に戻っていた。
からかう口調、孤独を隠す笑顔は相変わらずだった。
あの夜の事なんて、まるで無かったかのように。
こっちは、未だにあの時のオイゲンの乱れた姿がチラつくというのに。
けど、俺を見かけると必ず身振り手振りを返すようになり、俺も簡単な身振り手振りで返すことが、互いのルーティンとなっていった。
時間が空いている時は重桜の事を案内したりと、いつしか捕虜と監視の関係は曖昧になっていった。
だけど、曖昧な関係はやがて壊れていくのが運命だった。
数日後、ロイヤルのKAN-SENが俺を助ける為に重桜に侵入し、その甲斐あって彼女達と重桜から離れる事に成功。
もちろん追撃はあった。だけど、その時いたのはオイゲンであり、オイゲンはそんな俺を冷めた目で笑って見ていた。
罵りも何もせず、ただ俺をじっと見ていた。
そして数ヶ月が経った。
重桜と鉄血の衝突はあれど、オロチとテネリタスという共通の敵が産まれ、アズールレーンとレッドアクシズは元の1つのアズールレーンに戻った。
そして、そんな時にふと俺は未成年なのに基地で作られたバーに足を運んだ。
幸いにも誰もおらず、俺は適当に空いている席に座り、バーの饅頭が未成年はアルコール提供ダメと首を振っていた。
「お酒は飲まないよ。ジュースとか無い?」
ちゃんとルールを守る事に満足気な饅頭は早速俺の為にジュースを入れてくれると同時に、このバーに足を踏み入れたKAN-SENがいた。
銀髪の赤いメッシュに鉄血の服を着たKAN-SEN……プリンツ・オイゲンだった。
「あら指揮官。こんなところにいるなんて……誰かを待っていたのかしら?」
「ここに来ると会えると思ったから」
「なんの為に?」
いじらしく見つめると、オイゲンはいつも通りの笑顔で笑った。
「ふふ、分かってるわよ。……あ、ルームサービス頼める? 今から私の部屋に重桜のお酒を持ってきて。あ、指揮官のジュースも忘れずにね?」
オイゲンは席を立ち、ウィンクをして饅頭にそう頼むと、俺の手を掴んでどこかへと行かせられる。
……いや、場所なんてもう分かりきっていた。
俺が連れてこられたのは、鉄血寮のオイゲンの部屋。
オイゲンの事だからお酒とか転がっているのかなと想像しながら中に入ると、意外と部屋は清掃されていた。
「あ、ベルファスト達のおかげかな」
「ちょっと、私の部屋を勝手に汚い物だと決めつけないでくれる?」
「あはは……」
オイゲンは仕返しと言わんばかりに俺の額にデコピンする。
むすっとした顔で俺をにらむと、オイゲンは部屋のベットの上に座り、空いている所をポンポンと手を叩く。
座れ、ということだろう。
オイゲンの隣に座ると、彼女はじっと見つめて手の指先をちょこんと触れさせる。
「……今度は離さないで」
その声は冷たく、絡め捕るように耳元で囁かれ、その声に従い、オイゲンの手の上に手を重ねる。
「離さないって言ったのに。とんだ嘘つきね」
「……ごめんなさい」
「まぁこうして会えたから、少しだけ許してあげる」
結局あの後、俺は重桜から離れた。
自分の姉を止める為に。
それ自体後悔なんてないし、正しい選択だとも思っている。
けど、オイゲンという心残りはあった。重桜なのに心残りが鉄血のKAN-SENなのはなんとも皮肉なんだろう。だからこそ、聞こうとした。
「どうしてあの時、あんな事を?」
あの時どうして、いきなり服を脱いで、肌を合わせたのか。
今までも、今この瞬間でもあの光景が忘れられず、今でもあのお酒の味は忘れられない。
するとオイゲンはあの時と同じお酒を飲む。
艶めく唇でそれ飲みほした後、あの時と同じように同じように身を乗り出し、酒の匂いを纏った唇を近づかせた。
「貴方と私、似た者同士だから」
「似た者同士?」
「孤独を抱えて、それを見透かされないように笑うところとか。あと、赤城が執着する弟がどういう人か、気になったから」
「執着って」
でも確かに、そういうところは似た者同士だ。けど、それは昔の俺とオイゲンの話だ。
「今は違うはずだよ」
オイゲンは決して離れない仲間がすぐ傍にいたことに気づき、俺も家族と過ごせて心から笑えられている。
もう、悲しい笑顔は必要ないはずだ。獣のように、四つん這いで迫るオイゲンの顔は下を舐めずりながら……心からの笑顔を向けていた。
孤独を紛らわせる笑顔はなく、ただ純粋に共にいたい。
そんな意を受け止めるように、あの時お同じ酒の味がするキスを交わす。
「……なんか違う」
あの時のお酒は
けどこれは少し……辛い。
「あら? どうしたの?」
オイゲンは蠱惑に笑い、嘘偽りない笑顔を向ける。
お酒にはもう一度飲みたいように作られるらしい。アルコールがそうさせるらしい。
だけど、俺はあの時のお酒の味を忘れられず、いつでもあのお酒の味を求めていた。
でも未成年だから飲めない。あの味を感じられる方法は1つだけだ。
「……あの時の味をもう一度味わいたい」
「…………ふふ、ふふふ……あはっ♡」
細めた目はいつまでも俺を見つめていて
二度と離さないように指を絡ませながら手を握った。
「どれだと思う?」
机の上に並ぶのは、色んなボトルの酒瓶で、全部小さくて一口で飲める程度だった。
適当な物を1つオイゲンに差し、飲み干し、そしてキスを交わす。
……違う。もう少し甘かった筈だと呟き、過去の記憶を頼りに、あの時あった瓶を探し始める。
「うーん……」
「ほら、頑張れ♡頑張れ♡」
横で面白そうに見るオイゲンの合いの手に乗せられ、今度は1番近い酒をオイゲンに渡す。
「ほんとにそれで良いの?」
「そう言われても……」
……ダメだ分からない。諦めて空いている手をあげると、オイゲンは自分の胸の谷間から、ほんの小さな酒瓶を顕にさせた。
「正解はこれよ」
絶句した。そりゃあ見つからないわけだと苦笑いを浮かべ、オイゲンは瓶の蓋を開け、一気にそれを飲み干す。
舌でお酒を転がし、飲み終わったところでオイゲンは口を開けて口の中を見せる。
俺に僅か一滴でも酒を飲ませる事が無いかの確認を求めているんだ。中にお酒は残っておらず、あの時と同じ甘い匂いが届く。
「好きよ指揮官。
オイゲンが笑ったその瞬間、あの時と同じ味のキスを交わす。
あぁ、ようやくあの時と同じ味と出会えた。
そのまま微睡みに溺れて、二度と離さない様にオイゲンは俺を抱きしめながら背中から倒れ、柔らかいベッドの上で一夜を過ごした。
彼女の本当の笑顔を焼きつけるため、このお酒の酔いに溺れ続ける。
これからも、この幸せな笑顔のオイゲンと一緒にいつまでも溺れ続けよう。
ねぇ指揮官、知ってる?
孤独を解消する為には同じ痛みを持つ者が共有し合わないといけないの。
孤独という痛みを貴方は持っていた。
だから興味を持った。
そして、私と離れて貴方は私と同じ痛みを持った。
痛みを持つ者同士は惹かれ合う。だから貴方は私を求め、私は貴方を求めた。
だって、もう寂しい痛みは感じたくないでしょう?
「私たちは、孤独という痛みを分かち合うことで繋がれるの」
だから指揮官、この痛みに気づかないで。
気づいたら最後、きっと貴方はまた離れてしまう。
それに気づかせないように、私は指揮官を酔わせてあげる。だからずっと、この酔いに溺れていて。
そうすれば、私がずっとそばに居るから。
そうなれば、貴方はもう二度と
私を離さない。