俺達は、尚文の紹介で、無事に案内された。
その場所へと行く道中、俺と猫猫は変装を行っていた。
なのだが。
「・・・主よ、一つ聞きたい」
「なんだ?」
「なんで、私達は、このような格好をしているんですか」
そう、猫猫は問いかけてきた。
俺達が現在、身に纏っている格好はいわゆる探偵と言える格好。
猫猫は普段とは違う格好であり、推理のメインは主に猫猫という事もあり、彼女はシャーロックホームズを思わせる格好をしている。
対して、俺は、ワトソンを思わせるスーツを身に纏っており、所在がバレないように変装もしている。
そんな俺達を見てか。
「尚文君、本当に彼らを、その信用しても良いの?なんだかとっても怪しいのだけど?」
「・・・まぁ、多分、大丈夫でしょう」
前の方で、こそこそと話している声がかなり聞こえているぞ。
というよりも、そこはちゃんとフォローをして欲しい。
なんとか、俺達はすぐに目的地へと辿り着く。
どうやら、武神祭の観覧席であり、アイリス女王以外にも、貴族が多く見られる。
「あの、アイリス様、そこにいる方は?」
「えっえっと、この方達は、尚文君の紹介で来てくれた子達よ。
なんでも将来が有望らしく」
そう、どうしたら良いのか迷っているアイリス様。
だが、そんなアイリス様が話している間に、誰かが来た。
「尚文、あれは?」
「あぁ、例の国王だ」
尚文は、それと共に、俺はその方向を見る。
オリアナ国王の目を、俺は見る。
その目は、見る限りでも虚ろであり、確実に怪しい。
だが、周囲は、それを見ても特に可笑しいとは思っていない様子が見える。
「さて、どうしたらって」
俺がそう悩んでいると、ふと猫猫がオリアナ国王に近づいていた。
「・・・ふむ」
「何かな、そこの娘は」
猫猫の態度に、近くにいる部下の男達を見る。
「あぁ、なるほどねぇ」
それに対して、猫猫はそのまま頭を掻く。
同時に面倒臭そうに、そこから離れる。
「おい、貴様、国王の前で無礼だぞ」
そう、猫猫に対して、近くにいた部下が前に出る。
「無礼ですかねぇ、既に自分の意識もないそこにいる方に」
「っ」
その猫猫の一言。
それに対して、部下の顔は一瞬だけ驚きを隠せない様子だった。
「意識がない、それって、どういう事なの」
そこに、アイリス女王は疑問に思ったのか、問いかける。
「いやぁ、これを言ったら、絶対に周囲の人、私達を殺しに来るでしょう。
だから言う訳にはいきませんよぉ、とてもじゃないけど」
「貴様」
「だって、そうでしょ、私が無礼である事や、理由をつけてね。
どのような証拠を並べても」
そう、猫猫はあえて、アイリス女王の方へと目を向ける。
まるで、試すように。
その視線を見て、アイリス女王は。
「・・・分かりました。では、この場における彼女の話を聞きましょう」
「アイリス女王!何を」
「彼女の言葉が偽りだった場合、責任は私が取ります」
そう、アイリス女王の言葉と共に、猫猫はそのまま頭を下げる。
「そうですね、まず、私が注目したのは、国王様の瞳でございます。
目の焦点が合っておらず、どこか虚ろな状態となっています。
これによって、この方の意思はほとんどない状態となっています」
「何を馬鹿げた事を言って」
「ならば、国王様、質問でございます。こちらにおられるお方が、これまで行った事、答えられますよね」
そう、猫猫は、俺に向けて言う。
「まさか、知らない訳はないですよね、あれ程の有名なお方を」
「知っている」
そう、猫猫の質問に対して、王様は肯定するように言う。
だが。
「そうですか、まぁ、この男はいわゆる面倒な男で、結構な女と関係を持っていますが」
「間違ってはいないけど、その言い方」
猫猫の毒舌に対して、俺は思わずため息を吐く。
「まぁでも、有名なのは私の国ですからね、もしも国王様が知らなくても、仕方なかったのですが」
「・・・なんで、嘘を」
アイリス女王は、そのまま国王を見つめる。
「それは、勿論。自分で判断が出来なくなっているからですよ。文字通り、人形のようにされて」
「どういう事なの」
そうしながら、猫猫は国王に近づく。
「国王様の口元から僅かに見える涎のような後、そして髭に染みこんでいる甘い香り。
これは、おそらくは違法な薬物の匂いでしょう」
「なっ、なぜ、国王が、そんなのをっ」
「おそらくは、それを飲ませて、傀儡にしようとした奴がいたんでしょう。まぁ、このような虚ろな状態ですから、常に人形師のように近くにいる男が怪しいと考えますが」
猫猫の、その一言。
同時にアイリス女王の視線は、その部下へと目を向ける。
「なっ、アイリス女王、何を考えておられるんですか!」
「先程までの話で、少し私も心当たりがありますので。詳しい話を聞かせて貰えないでしょうか、ドエム・ケツハット」
「「「・・・」」」
そう、真剣な場面だろう。
だけど、俺達は、その名前に対して、思わず笑いそうになっていた。
「ちっ、何を言って「あぁ、でしたら、国王ご本人に聞いてみますか?」はぁ?」
すると、猫猫は俺に持たせた鞄から道具を取り出す。
「私、こう見えて薬剤師でね、大抵の毒の知識はあります。
そこまで薬が回っている状態ならば、完全に治す事は出来ませんが、一瞬だけ意識は取り戻せるでしょうね」
「陛下っ「薬、飲んで貰っても宜しいでしょうか、国王様」っ」
「分かった」
「良かったです、国王様からの許可を貰いましたので」
ドエムはすぐに国王に向けて、何かを言おうとした。
だが、それよりも、猫猫の言葉が先だった。
そしてそれに対して国王が答えた。
「それでは、準備を始めますので、少々、お待ちよ。
その間の見張りを誰かを」
「それじゃ、私がやろう」
そう、名乗りだしたのは、ハンバーガーを食べている女性だった。
「べっベアトリクス様がっ」
「何か問題でも?」
それに対して、反対する者はいなかった。
だからこそ、そのまま、そこから離れる事にした。
「それにしても、よく分かったね」
「えっ、半分、嘘っぱちだけど、そこははったりと言っておくわ」
猫猫は、少し放れた所で、疲れたように言う。
「えっ、そうなのか?」
「嘘って、どこからなんだ?」
「薬を飲めば、正気に戻るって所。その前は本当だけど」
猫猫は面倒そうに言う。
「つまり、傀儡にされているのは、本当なのか?」
「一瞬だけ匂ったけど、あの匂いは麻薬に近いね。おそらくは一種の依存症になっており、そこから思考が停止している状態になっているね」
「それじゃ、元に戻す事は」
「無理だね、戻そうと思っても、何年もかかるけど」
「だったら、どうするの?」
そう、ベアトリクスが問いかける。
何時の間にか、乗り気になっているけど。
「その、協力してくれるんですか?」
「そうね、あそこにいた男は気に入らないのもそうだけど、君達、何か面白そうだから」
「そっそうですかぁ」
余りにも天然過ぎる回答に対して、俺も猫猫も困惑を隠せなかった。
「それで、どうするの?」
「正気を戻す事は出来ないんだったら、証拠を見せれば良いと思う。
だから、盗む」
「盗むって」
「あのドエム野郎の所から」