この異世界での、二回目の波の戦いが始まる。
事前に波が起きた場合の準備を行なっており、道具の類の準備も万全であった。
それと共に岩谷の方には新たな仲間も増えていた。
彼女の名前はフィーロ。
見た目は金髪で背中には羽を生やした天使のように見える少女だが、その正体はダチョウに似た鳥型の魔物「フィロリアル」らしい。
岩谷に育てられたことにより、変身能力を持ち人語を喋ることも出来る「フィロリアル・クイーン」と呼ばれる上位種に変化した。
どうやら、最初は普通に卵で、魔物を育てたらいつの間にかなっていたらしいが、俺はその見た目で、最初はチョコボだと思わず思ってしまった。
そうして、仲間が増えた状況の最中、波での動きで、まず行なったのは村人の避難だった。
幸い準備をしていた数々の物は無駄にならずに済み、治療や防衛に役に立った。
だが、その最中に一番驚いたのは村人の一人である老人の動きだった。
その動きは達人であり、おそらくこの世界の住人では一番の強さを誇っている。
どうやら、過去に岩谷が薬を渡して、助けた人物らしい。
だが、病弱だったとは思えないその動きに対して、岩谷本人を含めて何を飲ませたのか、この戦いが終わったら電池が切れたみたいに死ぬんじゃないか?
そう思わず不安になってしまうほどだった。
しかし、これは嬉しい誤算である。
戦闘能力に長けたあの老人がいる事で、この場は安心して良いだろう。
幸い、ライザが造ってくれた数々の道具で、防衛網は十分に行えている。
だからこそ、俺達はすぐに目的地である波の本体がいると思われる場所へと辿り着く。
そこにいたのは巨大な船だった。
空を飛ぶ船という事で、奇妙に思える光景に目を向けていると、何やら地上で船に向けて攻撃している弓の勇者である川澄がいる。
「他の連中は」
そう、岩谷が尋ねると、こちらを睨んだ。
どうやら、遅れてきたのに、偉そうにと思っているのだろうか?
そう思いながらも、弓は真っ直ぐと船に向けて、攻撃を続けながら
「あの象を破壊して、ソウルイーターを出さないと行けないのに。
身勝手にも、程が」
何やら文句を言っている様子だが、なんでそんな情報を知っているんだ?
「はぁ、空、乗れ」
「了解」
このままでは埒が明かないので、俺もまたフィーロちゃんに乗って、そのまま船に突入する。
見れば、北村も天木も、目の前にいる魔物と戦っている。
既に波の戦いが始まって3時間なのに、未だにこの状況とは。
だが
「骸骨を倒さないと、ソウルイーターは出てこないんだっ」
「何を言っているんだ、こっちを先に倒さないと出てこないんだよ!」
そう、互いに互いに全く異なる主張をしている。
それに対して、岩谷は呆れた様子で、見ていた。
「・・・なぁ、岩谷。
ようするに、これが波の魔物の本体なんだろ」
「あぁ、そうだ」
「だったら、簡単だ。
3人がバラバラの意見が出るんだったら、最速で!最短で!まっすぐに!一直線に!倒せば良い!」
「お前、何を言って」
そう言いながら、俺は鍵を取り出す。
「賭けてくれるか?
どうせ、分からないんだから」
「・・・」
それに対して岩谷は少し呆れた顔をした。
同時に。
「こいつらに任せるよりはマシだ。
勝算は」
「空から一気に叩き壊す」
「分かった。
という事で、お前ら、さっさと船から出て行け」
「お前達、何を言っているんだっ」
「一気に倒すと言っているんだ。
巻き込まれても、知らないぞ、フィーロ」
「了解!」
その言葉と共に、俺達はそのままフィーロちゃんに乗る。
「ごめんな、無茶な事をして」
「気にしないでよ。
それよりも、一体どんな事をするのか、見せてよ!」
「あぁ」
この波に備えて、錬金の他にレベルアップも十分に行っている。
だからこそ。
「一発で、決める」
そう言いながら、俺は鍵に籠める魔力を溜める。
同時に、空を飛んでいる間に、その手の鍵を真っ直ぐと下ろす。
「現れろ、雄牛の守護者!ユウナ!」
その言葉と共に、俺の目の前に出てきたゲートと共に、その子は真っ直ぐと船に向かって落ちる。
一瞬だけ、こちらと目を合わせると共に、その拳は船に向かって行く。
ほとんどの魔力を使っての召喚。
それによって、身体に力が入らない状態だ。
その代わり、召喚したユウナの身の丈をはるかに超える巨大な鋼の右腕と共に、そのまま船に向かって行く。
「なっなぁ!」「逃げるぞ!」
その言葉と共に、船の上にいた勇者達はすぐに退散する。
同時に
「勇者パンチ!!」
その叫び声と共に、船に鋼の拳が貫く。
その衝撃は凄まじく、船は真っ二つに割れる。
同時に現れる魔物の本体と思われる存在もいたが、それを巻き込みながら、そのまま地面に叩き込まれる。
「ふぅ、これで少しは」
「いや、おそらくは倒せただろう」
そう言いながら、見ると地上でユウナがこちらに手を振っている。
周りには、魔物の増援が出る様子は見えない。
「倒せたか?」
「あぁ、ほとんどチートだろ」
「一発しか出せないこの状況で言えるか」
もしも、ほとんど物理攻撃が通じなかったら、やばかった。
そう考えながら、地上へと降り立つ。
「空さん!やりましたよ!!」
「あぁ、本当に、ありがとうユウナ」
そう言いながら、動けない身体のままユウナに声をかける。
だが。
「これはまた、凄まじいですね」
「っ!」
聞こえた声。
見れば、そこには黒い着物を身に纏った女性がいた。
この波の中で一般人が?
そう疑問に思ったが、ユウナはそのまま構えた。
「ユウナ?」
「分かりません。
けど、なぜか」
そう言いながら、ユウナは構える。
「ふむ、なるほど。
状況的に、一番厄介なのは、そこにいる鍵の勇者と盾の勇者の2人だけですか。
他の3人は、話にならないから問題ないとして、今、ここで始末しますか」
その言葉の意味を探るように周りを見る。
そこには、俺達以外の勇者やそのパーティは気絶している。
その状況から考えても、目の前にいる人物だけが行ったのだろう。
「盾の勇者さん。
ここは私がなんとかします」
「なっ、何を言っている」
そうユウナの言葉に、岩谷は戸惑う。
「おそらく、今のままじゃ勝てません。
ここで戦っても全滅するだけです」
「だからと言って、このままじゃ、波は「終わります」なに?」
「上を」
その言葉と共に俺達は見上げる。
そこには、確かにまだ波が広がっている様子はあるが、徐々に閉じかけていた。
まだ、目の前に波から出てきたと思われる存在がいるはずなのに。
「どういう事だ?」
「とにかく、今はここを。
空さんを託せるのは、今はあなただけですから」
「ぐっ」
苦渋の決断だ。
けど、今はこの方法しかない。
それが分かっているのか、岩谷は苦い顔をする。
「私は守護者です。
ここで守らなければ、何もないですから。
岩谷さんは、どうか、その人、空さんを護ってください」
その言葉を最後に、俺の意識は、遠くなって、消えていった。
最後に見えたユウナの笑みを見ながら。