今回の波の戦いが終わった後、俺はすぐに旅に出る事にした。
あまり長居しても、良い事はないと判断した俺は、そのまますぐに王国から出た。
あそこでの領地の問題も、解決した訳ではない為、俺はそこへと向かおうとした。
すると、河の近くで座っている集団がおり、そこには見覚えがある人物がいた。
「あっ、岩谷」
「空か。
まさか、お前と偶然一緒だとはな」
「まぁ、あまり長くいたくないからね。
とりあえずは、次の波に備えるつもりだけど、岩谷は?」
「俺はクラスアップをしに向かうつもりだ。
あそこの国じゃ、できないからな」
「クラスアップ?
なんだ、それは」
「お前は、いや、ある意味、お前には必要ない事かもしれないな」
「まぁ、俺は基本は守護者に任せているからな」
そう苦笑いをする。
そんな会話をしている時だった。
「見つけました」
「んっ?」
聞こえた声に、俺は首を傾げた。
見ると、馬車の集団がいるようだが。
「あっ、メルちゃんだ!
おーい!」
するとフィーロは何やら知り合いなのか、手を振っている。
「メルちゃんって?」
「王国の第二王女です。
そう言えば、空さんは面識はなかったんですね」
「まぁ」
言われてみれば、あまり関わらないようにしていたので、当たり前だが。
そう考えていると、こちらに気づいた様子だった。
「もしかして、鍵の勇者様ですか」
「えっあぁ」
「これは、失礼しました。
私はメルティ=メルロマルクです」
「空だ。
えっと、それで、ここで一体?」
「そうでした、盾の勇者様、王国に戻り、再度オルトクレイ王と面会して欲しいのです」
「断る」
メルティちゃんが、岩谷に対しての頼み事を言うが、それに対して岩谷が断る。
「王に対する非礼を詫び、和解して欲しいのです」
「断る」
そう、メルティちゃんが言うが、岩谷はそのまま遮る。
それに対して、メルティちゃんは、かなり怒っている様子。
だけど、どちらかと言うと、なんというか、色々と我慢しているような気がする。
少なくとも、あの王様の娘とは思えない程にちゃんとしている子だと、見える。
実際にフィーロちゃんが親しく話していたり、ラフタリアさんもかなり友好的な様子を見ると、少なくとも、彼女自身は悪い子ではなさそうだ。
「まぁまぁ、とりあえず落ち着いて落ち着いて。
メルティちゃんも、とりあえずは岩谷がなんでそんな事を言ったのか、聞いてみたらどうかな?
それから、どうするのか考えても良いと思うから」
「うっ、まぁ、確かにそうですね。
城にいる者だけの意見で一方的に決めるのも」
会話をする限りでも正常な思考だ。
こちらの意見も聞き、解決策を模索する。
そこから見ても、この子はまともな様子だ。
それに安堵していると。
「んっ?」
そこで気になった事が1つ。
メルティちゃんを護衛していたと思われる騎士団。
その内の1人が、何やら水晶を持っている。
「なぁ、メルティちゃん」
「あっなんでしょうか?」
「あの水晶って、何?」
「水晶?」
その言葉に対して、疑問に思ったのか、メルティちゃんはすぐに振り返る。
「えっ、あれは映像記録用のなんで」
それは、メルティちゃんも知らなかった。
同時に彼女に向かって、兵士の1人が剣を振り下ろした。
「何のつもりだ!」
それに対して、岩谷が盾で、その攻撃を防ぐ。
「おのれ!メルティ王女を人質にするとは!」
「人質だと!」
「騎士たちよ!正義は我らにある!盾の悪魔と鍵の悪魔を断罪せよ!」
「おぉーっ!」
その言葉と共に、兵士達が襲い掛かってくる。
「こいつらっ!」
その言葉と共に、一斉に襲い掛かってきた。
それに対して、俺もすぐに鍵を取り出そうとしたが、岩谷が止めた。
「お前の守護者はここで出すな」
それは、これから起きる事への警戒だろう。
その言葉に、俺は頷きながら、鍵を仕舞う。
騎士団と言っても、フィーロちゃんやラフタリアさんに比べたらかなり弱く瞬く間に倒される。
「すまないが、1人だけ捕らえてくれないか?
話を聞きたいからな」
「了解です!」
その言葉を聞くと共に、すぐに兵士の1人を捕らえた。
「兵!退けーっ!」
そう叫ぶと共に、すぐに引き下がった。
幸い、捕らえた兵士に関しては気づかれない様子であったが。
同時にショックを受けたように、メルティちゃんはその場で倒れる。
「それで、どうするんだ」
「ある意味、頼りたくない守護者ではあるけど、この状況だったら仕方ないからな」
その言葉と共に、俺は牡羊座の鍵を手に取り、開く。
「んっ、もぅ、呼び出すのが久し振り過ぎるゾ」
その言葉と共に出てきたのは、学生服に腰まで伸びる金髪という、これまでの守護者とはまた違った個性を持つ人物だった。
「あっあの、空さん。
こちらが牡羊座の」
「私ぃー牡羊座の守護者の食蜂操祈っていいますぅ。ヨロシクね♥」
そう、わざわざ俺の手を組んで言う。
「・・・それで、こいつの能力は?」
「無視ですかぁ、まぁ良いですけど。
それで、今の私はレベル的にやれる事は、そんなにないですよ」
「今のレベルでやれる事は」
「記憶の読心と映像化」
「十分だ。
この兵士の記憶を頼めるか?」
「良いわよ」
そう言うと共に、そのまま食蜂が、その手を兵士の頭を触れる。
「なっ何を」「よっと」
その言葉と共に食蜂が手を翳すと、そこから映像が現れる。
「なっ」
「ほぅ」
そこから流れた映像を見る。
『分かっているな。
メルティ王女が、奴らと接触した瞬間、そのまま殺せ。
もしも、失敗しても、この水晶で映した映像で、奴らを追い詰める事ができる』
「「ほぅほぅほぅ」」
それに対して、俺達は頷く。
「なっなんていう事を」
それにはメルティちゃんは怒りを露わにしている様子だった。
「とりあえず、逃げるか」
「そうだな」
俺の一言に対して、岩谷もまた頷く。
「にっ逃げるって、それじゃ、冤罪になってしまいます!
何よりも、証拠だったら、食蜂さんが」
「食蜂、聞きたいが、お前の能力は、何なんだ?」
そう岩谷は見つめる。
「なぁんで、ダーリン以外に言わなきゃいけないのよ」
「・・・ダーリン」
「勝手に言っているだけだ。
とりあえず、能力の説明を頼む」
それと共に俺はため息を吐く。
「はぁ、仕方ないわねぇ。
私は戦闘はほとんどできないけど、精神系は一通りできるわね」
「それは、洗脳もか?」
「勿論。
まぁ、今のダーリンのレベルではできないわね」
「だが、それができると言えば、あのビッチの事だ。
それを言い訳にする可能性は大きいな」
この事態を知る事ができた能力によって、窮地に陥る。
「母上の所に行ければ」
「母上?」
「女王に会いに行けば、この状況を打開する事ができるはずです」
そうメルティちゃんは言う。
だが、岩谷は、その言葉に対して、疑惑的だった。
王族に対して、疑問視しているから当たり前だろう。
「・・・はぁ、メルティちゃん」
「なんでしょう」
「今から、君の記憶を岩谷達に見せても良いか」
「おい、空、何を勝手に」
「岩谷も、疑い深いのは分かっている。
だからこそ、彼女が本当の事を言っているのか、どうか、見れば良いだろ。
少なくとも、メルティちゃんに対しての疑いは消えるだろ」
「・・・はぁ、良いだろう。
ただし、妖しければすぐに」
「分かっている。
という事で、良いかな?」
「えぇ、勿論です。
それで、疑いが晴れるのならば」
「という事で」
「了解。
あとでの報酬は弾んで頂戴ねぇ」
そうして、メルティちゃんの記憶を読む。
その結果は、白である。
同時に、これからの目的も決定した。
「とにかく、女王の所に行くぞ。
そこで無実を証明する」